Side:アインス


刹那に話を聞きに行って戻ってきたら、又しても見知らぬ顔が増えていました……顔の半分を仮面で覆った青髪の少女……どことなく
アーナスと似た雰囲気を感じるが、知り合いか?



「うふふ、私の名はクリストフォロス……闇に生きる純血の妖魔の一人。
 お前も中々に普通ではないようだが……あの混ざりものの娘と会ったか……まさか、アイツも此方に来ているとはな。
 取り敢えず、退屈だけはしなくて済みそうね――まぁ、此れからは仲間だから、宜しくお願いね、ミステリアスなお嬢さん。」

「芝居がかった奴だなマッタク。」

純血の妖魔と言う事は、純粋な力はアーナスをも越えると言うのか……アーナスを『混ざりもの』と言う事は、アーナスは純血ではない
のだろうからね。
それともう1人ニューフェイスが……赤毛のディーラーか?



「私はリオ!カジノのディーラーよ。
 何で私なんかが呼ばれちゃったのか分からないんだけど、勝利の女神として精一杯頑張らせて貰うわ。」



カジノのディーラーが英雄として召喚されるって、この世界の英雄の定義がどうなってのか知りたい……刹那の軍勢には『魔人の娘』と
かも居るしな。
そもそも、子供のヴィヴィオが英雄として召喚されるって、色々おかしいからな……此れは、この先もまたとんでもない『英雄』が現れる
のかも知れないな。











討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務102
『魔物の正体~志貴の真意~』










環軍の戦力が増強されたのは喜ばしい事なので、サクッと次行ってみようか?
刹那の事情は分かったから、次は志貴だ――志貴は一体なぜ実兄でありながら環と対立するのか、そして何故『魔物』との戦いの準
備を進めているのか、其れを聞かねばな。
因みに面子は刹那の時と同じ、私と桜花と元姫とソフィーだ。

「と言う訳で、志貴が居る場所の近くまでやって来たのだが……」

「志貴殿の仲間が、周囲を警戒している――素直に道を開けてくれればいいけど……」

「……なんか、緊張して来ちゃった。お話し、聞いて貰えるかな……」

「聞いて貰えないなら、力ずくで行くしかないだろうな。」



イッツ高町式。
本当なら、もっと慎重かつスマートに行きたい所だが、この世界に残されている時間は余り多くはない……もしも志貴が、重大な事実
を知っているなら、此処で聞いておかねば後悔するだろう。
何としても志貴に真意を問い質さねばな。――行くぞ!!



「はいっ!――って、こんなに敵が多かったら、お話しなんて出来ないよ!
 え~い!皆倒しちゃえ!!」

「まぁ、もとよりその心算だが先制攻撃としてフラムを大量に投げつけるってどうなんだ?……効果は抜群みたいだが。
 にしても此の場所は『雅の領域』か?……良く再現されているな。」

「あぁ、そうだな。
 だが、見知った場所であるなら地の利は此方にあると言えるだろうアインス?」

「だな。」

雅の領域は、元の世界で何度も訪れているからね……私が志貴だったとしたらこの場でどんな布陣を張るかなんて言うのは、容易に
想像できるからな……

さて、戦いながらになるが、志貴の真意を聞きたいな?――本当に妹と戦う心算なのか?……其れと、魔物とはなんだ?



「答える義理は無い……参る!」

「忍者?志貴軍の英雄か!!」

「邪な存在を口にするな……巻き込まれたくなければな。」



邪な存在……魔物の事か?
如何やらお前は、何か知っているようだな――話して貰うぞ忍者!!



――ガキィィィン!!!



「一度に六本の刀を使う環軍の英雄……六刀流のアインスとはお前の事か。
 無茶苦茶な戦い方ではあるが、此の踏み込みの鋭さと攻撃の重さ……お前、只者ではないな?」

「お前こそよく今のを防いだな?……如何やら、相当な修羅場を潜って来た猛者らしい――こんな状況でなければ、心行くまで戦いた
 いモノだが、如何にもそうは行かないみたいなのでね。
 お前を叩き伏せて、知ってる事を吐いて貰うぞ。――!?」

「む……?」



今の気配は……『鬼』!
大型程強力ではないが、小型の『鬼』の中では格別に強い気配……マフウだな此れは!!



「化け物が現れるとは……騒ぎ過ぎたか……俺としたことが。
 貴様達の事、志貴に伝えておこう。」

「おい、待て!!」

「いえ、待って桜花殿。
 彼は私達の事を志貴殿に伝えると言っていた……若しかしたら、直接話す機会が出来るかも知れない。」

「元姫の言う通りだな……今は、取り敢えず現れちゃった鴉天狗の成れの果てを何とかしよう。」

「って、言いながらすでにその右手で掴んでる物は何ですかアインスさん……」

「マフウだったモノだ。」

いきなり後ろから襲い掛かって来たから、カウンターのアイアンクローをブチかましてそのままネックハンキングにして魔力の竜巻を目
一杯喰らわせてやったわ!
単発で満タンから半分持って行く『やみどうこく』の破壊力は矢張り素晴らしいな。

さてと、こんな状況になってしまっては志貴軍も対処に追われるだろうが……



「化け物が現れたか……此れより殲滅する。」



軍服に白いコートを纏った男が小隊を引き連れて行ったな?『鬼』を一掃する心算か……この世界の影響かどうかは知らんが、この世
界に現れた『鬼』はモノノフでなくても倒せるんだよなぁ……なんか複雑。



「あの人、化け物退治をするみたいだよ?
 お手伝いをすれば、話を聞いてくれるかも。」

「でも、化け物の仲間と思われたらよろしくない……彼等よりも先に化け物を倒さないと。
 彼等より先に倒せば、疑われる事は無い筈。」



だな……ならば任せて貰おう、毎度お馴染み瞬間移動!!



――バシュン!!



『!?』


「おぉっと、行き成り目の前に天敵のモノノフと、その仲間達が現れて驚いたか?」

「斬り捨てる!!」

「お仕置きね。」

「鳥の丸焼きになっちゃえー!!」



私と桜花に斬られて、元姫に鋲で貫かれ、ソフィーにフラムで爆破され……やっておいて言うのもなんだが、見事なまでのオーバーキ
ルだな此れは。



「私達の知らない真実がきっとある……何としても、其れを知らないとね。」

「魔物って、私が知ってるのとは違うのかなぁ?
 みんな、魔物って言葉を避けてるような気がするんだよね……」

「魔物の正体が分かれば、環も志貴と戦わずに済むのだろうか……?」



さてな。
だが今はやるべき事をやるだけだ……誠に勝手だが、『鬼』退治は此方で済ませたぞ、志貴軍の英雄殿。仕事を奪ってしまったか?



「いや、化け物を退治してくれたのならば礼を言う。」

「すみませーん!ちょっとお話がしたいんですけど。」

「緘口令が敷かれているんだ、すまない。」



ヤレヤレ、そう簡単に口は割ってくれないか。
だが、これでは埒が明かん――ちょっと空から戦局全体を見て来るとしよう。……序に魔法で聴覚と視覚を強化して、良しよく見えるし
良く聞こえる。――む?



「如何やらお仲間が尽く撤退された様子……あやね殿、我等も出陣いたしましょう。」

「そうね、挟み撃ちにしてしまいましょう。」



アレは、真田幸村と、この間プラフタが瞬殺したくノ一か。
くノ一の方は短気のようだから、其処を突けば何とかなるだろうが、真田幸村は手強いだろうね……ミタマとしての彼を知ってるから、
その強さも理解しているからね。
だが、彼等を撃破出来れば戦意を大幅に削ぐ事が出来る筈……此処で叩く!!



桜花、元姫、ソフィー、手強いのが出て来たから、速攻で叩くぞ!二手に分かれて攻めてくるようだから、挟み撃ちにされる前に各個
撃破する!



「了解した……では、如何分かれる?」

「桜花と元姫、私とソフィーで行くのが妥当だろう。」

「そうね、戦力配分は其れが適切だと思う――宜しくお願いするわ桜花殿。」

「ふ、元姫が一緒と言うのは心強いな。」

「と言う訳で私のパートナーはお前だソフィー。まぁなんだ、思いっきりやれ。」

「はい!!」



と言う訳で本日2度目の瞬間移動で幸村の前に登場!
まさかこの目で本物の真田幸村を拝む事が出来るとは……乙女座の私は、運命と言うモノを信じずにはいられない!!抱きしめたい
なぁ、ガンダ○!!



「……何言ってるんですかアインスさん?」

「スマン、なんか言っておかねばならないような気がしてな……さて、妙な登場の仕方になってしまったが、一勝負願おうか?
 名将、真田幸村殿!」

「貴女は……此れは可成りの手練れとお見受けする――真田幸村、いざ参る!!」



――ガキィィィン!!



此れは……うむ、重い一撃だな。
真田幸村は槍の名手としてもその名を後世に伝えているが、この槍捌きは確かに天下一と言ってもいいだろう――基本である円運動
の斬撃だけでなく、遠心力をたっぷり乗せての突きも見事だ。
こんな言い方をしたら悪いが、息吹の槍捌きも見事だったが、幸村の槍捌きと比べればまだまだとしか言えん……まぁ、息吹には幸村
にはないタマフリがあるから、一概にどちらが上とは言えないかも知れないがな。

「流石、強いね幸村?」

「貴女も相当な使い手……しかも、マダマダ力を隠していると見た。
 そして、其方の御方も貴女には及ばないモノの、可成りの使い手とお見受けする――否、実際に私が連れて来た者達を、面妖な爆
 発する玉で蹴散らしてしまわれたのだから。
 これ程の強き相手とまみえる事が出来た事を誇りに思うばかり……名を伺っても?」

「そう来たか……私は、アインスだ。」

「えっと、ソフィーです。」

「アインス殿に、ソフィー殿……その名、この幸村の魂に刻んでおきましょう。……ですが、私とて此処で退くわけにはいかぬ……最後
 まで、戦い抜かせて頂く!!」



ふ、流石は真田幸村、そう来なくてはな!!







「もういい、良く戦ってくれた。
 ハヤブサ殿から、報告を聞いている……貴女方の話を聞こう。」

「志貴殿!!」



志貴……まさか、お前が出てくるとは思わなかったが、そうか、あの忍者がちゃんと伝えてくれていたのか――ちょっと疑っていたんだ
が、嘘ではなかったか……疑ってごめんよ忍者。



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如何やら桜花達の方にも志貴が伝令を出していたらしく、戦いは終わって現在志貴軍が雅の領域に張った本陣に……桜花達と共に
やってきたくノ一が、えらく不機嫌だったが、あの様子では桜花と元姫にこっぴどくやられたんだろうね。

さて、単刀直入に聞くが、夜見とは一体なんだ?――お前が戦うのも、夜見が理由なのか?



「そうだ、英雄殿。
 誰もが伝説の存在だと思っているが……夜見は存在する。
 夜見は、初代の王によって、泉の底に封じられた。――だが、長い時を経て封印が綻び、奴の意識は目覚めてしまった……
 夜見は今、泉から力を奪って、完全に封印を解こうとしている。――世界が滅びへと向かったのは、其れが原因だ。」

「でも……それならどうして、環ちゃん達と協力しないの?
 兄妹で争ってる場合じゃないと思うんだけど……」

「亡くなった私の父は、今わの際に教えてくれた。
 夜見は己の意識を何者かに取り付かせ、私達の動向を監視している、と――それは……環かも知れないし、刹那かも知れない。
 誰か分からない以上、此方の情報を迂闊に教えるのは危険だ。」



一理あるな。
私達は別の世界の人間だから、危険は無いと言う事か。



「その通りだ。
 貴女達の力は強い……封じられている今の夜見では、操れないだろう。
 私達は『黎明の碑』と言うモノを探している。其処には、夜見の封印方法が書かれている筈だ。
 ……環は、強い力を秘めている――彼女が王になり、泉を蘇らせれば、いたずらに夜見に養分を与える事になるだろう。
 下手をすれば……泉を通して力を吸われ、殺されるかもしれない。」

「「「「!!!」」」」


なん、だと?
其れが本当だとしたら見過ごす事は出来んが……如何すれば、環を助けられる?



「黎明の碑を見つけ出す事が出来れば或いは。
 良ければ、私に力を貸してくれ……此方へ来て、共に碑を探してくれればありがたい。」

「だが……そうすれば、環と戦う事になる、か。」

「悪いけれど……直ぐに決められる事じゃない。
 貴女の話が本当かも分からないし……少し、考えさせて貰える?」

「ああ、勿論だ。……色よい返事を期待している。」



果てさて、これは予想外に事が大きくなって来たな?――取り敢えず瞬間移動で聖域に戻って来て、泉の前で緊急会議だ。
刹那も志貴も、環が王になれば死ぬかもしれないと言っていたな……さて、私達は如何すべきだろうな?



「少なくとも、此のまま環に協力し続ければ、あの子の命を奪う事になるだろうな。」

「でも……刹那殿は、夜見の事を知らないようだった。
 となると、一番真実に近いのは志貴殿……刹那殿が言っていた、王が犠牲者と言うのも、夜見に力を吸われていると考えれば納得
 がいく。」

「でも、志貴さんの所に行ったら、環ちゃんや皆と戦う事になるんですよね?せめて、プラフタや時継さん達も一緒に……」

「出来れば、そうしたいが……此処で騒げば、夜見に察知されるかも知れない。
 其れに……私達が裏切れば、環はきっと心を痛める……彼女を支える人間も必要だろう。」

「勿論、此処に残って他の方法を探す手もある。
 どれだけ時間が残っているか分からないけれど。」

「うう……如何しよう……」



そうだな……環の元へ戻ろう。
環たちと一緒如何にかする方法を考えようじゃないか――仲間と戦うなんて言うのは、流石に嫌だし、裏切りなんてもってのほかだ。
何よりも、環が夜見に操られているとは思えん。
彼女に夜見の事を話して、力を合わせれば、希望も見えてくるだろう?



「そうね。
 其れに、志貴殿の元へ行かずとも、碑を探す事位なら出来る筈――其れさえあれば、きっと夜見も封じられる。」

「うん!環ちゃんや、この世界の為に、一生懸命頑張りましょう!」

「だな。」

漸くこの世界の真実が見えてきた感じだが……何だろう、この違和感は?
環も刹那も志貴も、余りにも知っている情報が偏り過ぎている気がするのは私だけか――この違和感が、単なる私の杞憂であればい
いんだがな……











 To Be Continued… 



おまけ:本日の浴場


はぁ~~……一仕事した後の温泉は極楽だ、そうは思わないか桜花、元姫、ソフィー?



「其れには同感……そして、温泉での一杯もまた至福の時。」

「気持ちのいい温泉に、美味い酒……何とも贅沢だな。」

「うぅ、飲めないのがちょっと辛い。」

「ハハ、ソフィーの酒はまだ少し先だな。
 だが、そんな君の為にこんな物を用意してみた……採れたて新鮮なヤシの実の先端を切り落としてストローを刺した、ココナッツジュ
 ースだ!
 トロピカルな味わいが堪らないぞ?」

「うわ、甘くておいしいです!」



因みに、その果汁にナタ菌と言うモノを加えて固めたのが、ナタデココだ。ハイ此処、テストに出まーす!



「なんのテストですか?」

「其れは秘密のアッコちゃん。」

まぁ、冗談だしな。――取り敢えずなんだろう、元姫のバスタオル姿はとってもエロかったとでも言っておこうかな。