Side:アインス


プラフタの記憶を取り戻す為に出撃して戻ってきたら、何やら見慣れない顔が居るな?――新入りか時継?



「おうよ。
 お前さん達が居ない間に新たな英雄の情報が舞い込んできてな……行ってみたら大当たりって奴だ――あの嬢ちゃん、可愛い顔
 しながら、刹那軍と志貴軍の連中を蹴散らしちまったんだから正直言って半端じゃねぇ実力だぜ。」

「だろうな。」

馬鹿正直で隠そうともしない純粋な闘気だが、だからこそ頼りになる――お前、名前は?



「えっと、ほのかです。えへへ、此れから宜しくお願いしますね?」

「ほのかか……悪くない名前だ。」

まさか、お前ほどの奴が居るとはな――刹那や志貴に奪われなくて良かったと言う所だな……お前ほどの奴が相手では、如何に私と
言えども骨が折れるし、一筋縄ではいかないだろうからね。

だが、此れだけの力を持った者が仲間になってくれると言うのなら有り難い事この上ない事だよ――ふふ、その活躍に期待しているぞ
ほのか!!











討鬼伝×リリカルなのは~鬼討つ夜天~ 任務101
『真に望む物――刹那の思い』










さっと、新たな仲間が出来たのは良いとして、此れから如何動くか……重要なのは其処だ。
とは言え、あまり大勢で動くと言うのも良くないので此処は少数精鋭――私と桜花、元姫とソフィーで独自に動いてみようと思うんだが
如何だろうか?



「其れは構わないけれど、何をする心算なのアインス殿?」

「刹那と志貴の事を調べる。
 二人とも環を王にしたくないのは同じだが、刹那は如何言う訳か本気を出してないみたいだし、志貴も別の何か――魔物と呼ばれる
 存在と戦う準備をしていたようだからな。」

「魔物って……でも、其れは其れとして、家族と戦う事になるなんて……環ちゃん、かわいそうだよ……」

「環は、随分と落ち込んでいたな。
 志貴や刹那とは仲が良かったらしいし、無理もない。」

「家族と戦うのは辛い物――ただ……妙なのよね。
 世界が滅びに近付いているこんな時に、なぜ彼等は戦う事を選んだのかしら?――もしかすると、事情があるのかも知れない。
 環殿には言えないような何かが……」

「何かって……なんだろ?
 うー……うーん……。うーん……?」

「そう言えばアインス、君はさっき志貴は『魔物』と戦う準備をしていたようだと言っていたが……?」



伝説の魔物・夜見……だったかな?
私も気になっているが、その存在が真実に関係あるかは分からんが――そう言えば、あの後聖域の宮殿に行ったら普通に小夜は居
たし、夜見についての占いに聞いてもサッパリだった……矢張り占いの結果を持って来た小夜は偽物だったと言う訳か。

「何にしても、この世界に来たばかりの私達には判断材料が少なすぎる。だから、少し独自に調べようと言う事だ。」

「そうですよね……。
 あ、其れなら、いっそ聞きに言っちゃうとか!」

「「「!!!」」」

「え?あの、如何したんですか吃驚して?」

「いや、可愛い顔して随分と大胆な事を言うなと思ってな?
 だが、直接聞きに行くと言うのは案外悪くないかも知れない――向こうの英雄が出て来た所で、この面子なら後れを取る事もないだ
 ろうと思うし。」

「戦う事前提か?……まぁ、行き成り敵方の軍勢がやって来たとなれば大人しく話を聞いてくれるとは思えんからな。
 だが、巧く行けば環の前では言えない事でも、若しかしたら話して貰えるかもしれない。」

「そうね。
 いずれにしろ、此のままでは方針も定まらない。志貴殿や刹那殿と話してみましょう。」



決まりだな。
さて、どちらから話を聞くべきか?……刹那の方にするか――何やら私は色々と恐れられてるみたいだが、既に何度もボコられた刹那
軍の兵士の方がビビって逃げ出して余計な戦闘を行わずに済むかもしれないからね。

と言う訳で、瞬間移動!!



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・・・



行き成り目の前に現れては幾ら何でも驚かれてしまうと思ったので、刹那の気配を探りつつ少し離れた場所に移動したんだが、これは
戦の準備?
刹那達は此方に攻めてくるつもりだったのか……



「ってことは……勿論、話なんて聞いて貰えないですよね。」

「その通りね、ソフィー殿。
 どちらにしろ、攻めてくると言うのなら止めなくては。」

「結局、力尽くと言う訳だな。
 ……仕方ない。刹那の元に乗り込むついでに、敵を止めるぞ。」



ふ、ぼやくな桜花。
私達モノノフにとってはこっちの方がやり易いだろう?……ならばさっそく攻め込むとしようか――幸い、此方は刹那軍の背後を取って
いる状態だからな。
と言う訳で、背後からこんにちわだ!!



「うわぁ!コイツ等何処から!!って、六刀流の悪魔だーーー!!」

「「「「に、にげろーーーー!!」」」」

「……姿を見られたら逃げられるとは思ってたが、やはりこれは少し落ち込むな。」

「まぁ恐れられるほどの強さだと言う事だから良しとして置こうじゃないか。
 しかし、此方に攻めてくると言うのならば、ソフィーの言う通り話など通じないだろうな。」

「だからこそ、先ずは制圧してからになるんだがな……見ろ、おいでなすったぞ。」

刹那軍の英雄、アーナスにかすみ、織田のぶニャがな。
さてと、この面子ならば負ける事は無いだろうが、如何する?――って、ソフィー?



「私達、環ちゃんを助けたいんです!何か知ってるなら教えてください!」

「……そうだね、あの子の事を思うなら、何も言わずにここから去る事だ。」



ふむ、こうして真っ直ぐ相手に聞く事が出来ると言うのはソフィーの凄い所かも知れないが、流石に相手も簡単には話してくれないか。
仕方ない、話してくれないなら身体に聞かせて――って、何だこの気配は?まさか、化け物か!!



「!!化け物が行き成りこんなに……幾ら何でも対処しきれないわ。」

「お互い争ってる場合ではなさそうだ……君達次第だが、如何する?」

「一時休戦させて。先ずは化け物を倒さないと。」



これは、期せずして共闘状態となったか――なら、早い所化け物をぶちのめす……合わせろ元姫!!



「了解した……此れに耐えられる?」

「刃以って血に染めよ……穿て、ブラッディダガー!!」

「天下布猫ぞ……戯けめ!!」



私のブラッディダガー、元姫の鋲の乱舞投擲に加えてのぶニャがの鉄砲攻撃で取り敢えず周囲の化け物を蹴散らす事が出来たか。
協力感謝するぞ、猫殿。



「猫ではない。ワシは織田のぶニャがぞ!」

「マッタク、敵だったのに切り替え早いね。
 でも……なんか良いな、君のそう言う所。
 ――だけど、こんな所で邪魔されるなんて、中々刹那さんの思い通りには行かないもんだな。」

「天下への道は険しきものよ……致し方あるまい。」



何と言うか、嘗てここまで威厳に満ち溢れた猫がいただろうか?……だがしかし、のぶニャがも猫であるのならば、シュテルと会ったら
滅茶苦茶懐くのかも知れん……ちょっと引き合わせてみたいな。
んん!其れは兎も角、環は相当に心を痛めている――何故刹那は彼女と戦う?奴の本心が知りたい。



「ごめんなさい、私からは何も言えない。
 でも、ただ見守るだけが優しさじゃないわ。」

「意味深だなかすみよ……」

結局の所は刹那本人に聞くしかないって言う事か――ならばまずはこの化け物共を一掃するだけだ!!此れだけの戦力があれば化
け物共に後れを取る事も有るまい……一気に殲滅するぞ!!



「あぁ、行こうアインス!!」

「敵は倒さないとね。」

「よーしやっちゃうぞ!!」



其処からはもう私達と刹那軍の英雄達の連合軍による一方的な蹂躙劇だ。
私と桜花の連携が無双だっただけでなく、かすみの分身を使った体術に、元姫の相手の意表を突いた攻撃にアーナスの使い魔(従魔
と言うらしい。)を使った多彩な攻撃に、のぶニャがの銃攻撃、そして極めつけはソフィーの錬金術による巨大イガグリ落下と連続フラム
投擲による爆撃だな……此れで、化け物共はほぼ一掃出来たみたいだ。



「ありがとう。
 貴女達のおかげで味方を助けられた。――刹那さんのところへ案内するわ。彼が如何するかは、私に分からないけど。」

「そうか、其れは助かる。」



そんな訳でかすみに案内されて刹那の元に到着だ。
さて、話を聞かせて貰おうか刹那?……お前、一体何を考えている――何度も戦ってるが、お前はただの一度も本気を出した事はな
かっただろう?
何故だ?事情があるなら話してくれないか――事と次第によっては、お前に力を貸すのもやぶさかではないぞ?



「アレだけの化け物を倒したって言うのか?
 其れに貴女のその力……成程、この力が手に入れば心強い……貴女達に全てを話そう。
 ……王は、犠牲者なんだ。」



犠牲者……だと?



「王は、自ら命を燃やして、泉の強大な気を操る――そのせいで代々の王は短命に終わる。
 俺の父も、環の父もそうだ。
 環は……俺にとって、一番大切な家族なんだ。だから、絶対に死なせたくない。」

「でも……如何して、其れを環ちゃんに言ってあげないんですか?
 刹那さんと戦って、あんなに傷ついてたのに……」

「アイツは優しい子だ。
 俺や志貴を死なせる位なら、自分が犠牲になろうとするだろう――だから、俺は真実を知られたくない。
 いや……それどころか、憎まれたいんだ――俺が消えても、アイツの心が痛まないように。」

「それで……君はずっと悪役を演じて来たのか?
 王位を取り戻したいなどと、嘘をついて……」

「ああ、そうだ。そして、俺はやり方を変えるつもりはない。
 貴女達が、もし環を死なせたくないと思ってるなら……俺に、力を貸してくれないか?」



お前はお前で考えていたんだ刹那……だが、悪いがすぐに決められる事じゃない。
お前の話が本当かも分からないのでな……少し、考えさせて貰っても構わないか?



「そうだよな……悪い、急ぎ過ぎた。
 若し覚悟が決まったら、俺のところに来てくれ。」

「あぁ、了解した。」

しかし、王が犠牲者とはな……つまり刹那の話を信じるのならば、刹那は環を死なせたくないがために王位を奪いたいと言う所か。
環の代わりに、己が犠牲になると言う覚悟……壮絶なモノだな。

だが、分からんでもない――私も主の為に、己の消滅を願った事があるからね。

何にせよ刹那の事情は分かった……ならば次は、志貴の事情だな。
魔物と――その魔物が夜見だとしたら、志貴は其れと戦う準備をしていた事になるからね……何故そんな事をしていたのか、聞く必要
があるだろうからな。











 To Be Continued… 



おまけ:本日の浴場


と、言う訳で一仕事終えた後は聖域の温泉が一番だな。
あらたに加入したほのかも居るし、女性同士で温泉を楽しむとしよう。――で、何だってソフィーとヴィヴィオは私と元姫とほのかをジー
っと見てるんだ?



「うぅ……やっぱりあれは羨ましいです……」

「元姫さんはC、ほのかさんはD……アインスさんに至ってはFですか……シグナムさんよりも大きい人が居るとは驚きです。」



……何がとは言わんが、大きければいいと言うモノじゃないからな?
まぁ、お前達にはまだ伸びしろがあるから頑張ってくれ……取り敢えず、そうとしか言えんな。