――ネオ・ドミノシティ、旧サテライト地区


 「すまないなアキ、買出しに付き合わせてしまって。」

 「気にしないで。私も暇だったもの。」

 D・ホイールのパーツの買出しに来た遊星とアキ。
 ジャンク市場を出て散歩がてら、この旧市街地…かつてのサテライト地区を歩いている。

 何も無い平和な日常。
 だが、其れは唐突に打ち破られる事と為る。



 ――ブロロロロロロ…



 「…?…!危ない!」

 居眠り運転でもしているのだろう、1台の車が歩道に突っ込んできたのだ。

 「え?きゃ!」

 とっさにアキを突き飛ばして進路上から外す遊星。
 だが、自身の回避は間に合わない。



 ――ドガ…



 身体に感じる思い衝撃と、アキの悲鳴を聞きながら遊星の意識は闇に沈んでいった…










 『奇跡のデュエル』〜前編〜










 「…?此処は?(俺は車に撥ねられたはず。身体は…何とも無いな)」

 確かに自分はアキを庇い車に撥ねられたはずだ。
 其れにしては身体は無事どころか、掠り傷1つ無い。
 そして自分が居る場所、。
 明らかに『ネオ・ドミノシティ』とは違うその風景。
 だが、遊星にはこの景色に見覚えがあった。

 「(此処は…そうか、遊戯さんの時代。パラドックスと戦ったあの時代の風景と同じ。)」

 時を越えたのだろうか?
 其処まで考えて、遊星の思考は遮られる。

 「オイ、お前デュエリストだろ?何してんだよこんなとこで。始まっちまうぜ!」

 唐突に声を掛けてきたのは学ランを着た茶髪の男。
 ハッキリ言って見た目はガラが悪い。
 所謂『不良』と称されるであろう男。

 「…始まる?」

 「だ〜か〜ら〜!大会始まるってーの!迷ってんならこっちだぜ!」

 碌に話も聞かず男は遊星の手を引っ張ってある場所に向かう。







 で、



 「俺は何故こんなところに…」

 遊星は誰に言うでもなく呟く。
 男に連れてこられたのはKCデュエル・スタジアム。
 今日この場でデュエル大会が開かれているらしいのだ。
 其れは良い。

 驚いたのは男の友人にあの『武藤遊戯』が居たという事。
 如何やら時代的にはパラドックス事件の後らしく、実に親しげに遊戯に挨拶され遊星は恐縮してしまった。

 で、自分を此処に連れてきた男―城之内と言うらしい―に半ば強制的に大会にエントリーにさせられ今に至るのである。


 遊星とてデュエリスト、デュエルは大好きだが問題は対戦相手にある。

 「うひょひょひょひょ!遊戯と戦うまで負けられないぜ!お前は俺の踏み台になってもらおうか!」

 オカッパ頭の眼鏡男。
 気持ち悪い笑い方で、分かるであろう『インセクター羽蛾』である。
 あろうことかこの男が1回戦の相手なのだ。

 デュエリストたるもの相手を選んではいけない。
 だが、今回ばかりは流石に選びたい…

 そう思いながら遊星はデュエルディスクを展開する。
 羽蛾もデュエルディスクを展開する。


 「「デュエル!!」」


 遊星:LP4000
 羽蛾:LP4000




 ともあれ1回戦の第1試合が幕を上げた。


 「ひょひょひょ、俺のターン!『融合』を発動!手札の『究極完全態グレート・モス』と『ゴキ・ボール』『寄生虫パラサイド』を融合。
  来い『超究極完全態グレート・モス』!」
 「ブシャァァァァ…」
 超究極完全態グレート・モスATK4000

 いきなりの大型モンスター。
 手札を4枚も消費したが此れは大きなアドバンテージとなる。

 「ひょっひょっひょ、ターンエンド。」

 勝ちを確信しているのだろう、気味の悪い笑顔を浮かべる虫男。
 だが、相手が悪かったといえる。
 遊星の前に攻撃力4000など大した意味はないのだ。

 「俺のターン。魔法カード『調律』を発動。デッキから『シンクロン』と名のつくチューナー1体を選択して手札に加える。
  その後デッキをシャッフルし、デッキの1番上のカードを墓地へ送る。俺はデッキから『ジャンク・シンクロン』を手札に加える。」

 対象カードがサーチされ、その後の効果が発動。
 墓地に送られたのはボルト・ヘッジホッグ。

 「更に『ワン・フォー・ワン』を発動。手札のモンスター1体を捨ててデッキからレベル1のモンスターを特殊召還する。
  手札のスピード・ウォリアーを捨てデッキからチューナーモンスター『エフェクト・ヴェーラー』を特殊召還!」
 エフェクト・ヴェーラー:ATK0

 「俺の場にチューナーが存在する時墓地のボルト・ヘッジホッグと手札のブースト・ウォリアーを特殊召還出来る!」
 ボルト・ヘッジホッグ:ATK800
 ブースト・ウォリアー:DEF200


 「チューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召還!」
 「はぁ!」
 ジャンク・シンクロン:ATK1300


 「ジャンク・シンクロンの効果発動、召還に成功した時墓地からレベル2以下のモンスターを守備表示で特殊召還できる。
  蘇れ『スピード・ウォリアー』!」
 スピード・ウォリアーDEF400


 此れだ。
 1ターンで5体のモンスター。
 この展開力こそが遊星の強さである。
 だが、この展開力に驚きつつ誰もが思う、『低レベルモンスターばかり集めて如何するのか』と。

 無論遊星の真髄は此処からだ。

 「行くぞ!レベル2ボルト・ヘッジホッグにレベル3ジャンク・シンクロンをチューニング!
  集いし星が、新たな力を紡ぎ出す、光指す道となれ!シンクロ召還、出でよ『ジャンク・ウォリアー』!」
 「フゥゥゥ…ハァ!」
 ジャンク・ウォリアー:ATK2300



 恐らく初めて見るであろう未知の召還術『シンクロ召還』。
 1度見ている遊戯を除き、誰もが驚いている。
 勿論羽蛾もだ。

 「し、シンクロ召還だとぉ!?だが、それでも俺のモンスターは倒せないぜ。」

 「ジャンク・ウォリアーの効果発動。ジャンク・ウォリアーはシンクロ召還に成功した時自分フィールド上の
  レベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分自身の攻撃力をアップさせる『パワーオブ・フェローズ』!」

 遊星の場にレベル2以下のモンスターは3体。
 エフェクト・ヴェーラーの攻撃力こそ0だがブースト・ウォリアーとスピード・ウォリアーの攻撃力の合計は1200になる。
 よって…



 ジャンク・ウォリアー:ATK2300→3500



 一気にパワーアップする。

 「更にブースト・ウォリアーの効果で戦士族のジャンク・ウォリアーの攻撃力は300ポイントアップする。」
 「フォォォォ!」
 ジャンク・ウォリアー:ATK3500→3800



 低レベルの展開力とシンクロ召還、そして爆発力。
 遊星の真髄ともいえる戦術が繰り広げられる。


 「攻撃力3800…だが、まだ攻撃力は俺のモンスターの方が上だ、残念だったな。」

 「確かに今のままではジャンク・ウォリアーの攻撃力はお前のモンスターには及ばない。
  だが、俺の戦術はまだ尽きてない。レベル1のブースト・ウォリアーとレベル2のスピード・ウォリアーにレベル1のエフェクト・ヴェーラーをチューニング!
  シンクロ召還、現れろ『アームズ・エイド』!」
 アームズ・エイド:ATK1800

 新たなシンクロ召還で、今度は手のようなモンスターが現れる。

 「ブースト・ウォリアーがフィールドを離れた事でジャンク・ウォリアーの攻撃力は300ポイントダウンする。」
 ジャンク・ウォリアー:ATK3800→3500

 「だが、アームズ・エイドの効果発動。このカードはフィールド上のモンスター1体に装備できる。
  そして装備モンスターの攻撃力は1000ポイントアップする!」


 ジャンク・ウォリアーの右腕にアームズ・エイドが合体する。
 あまりにも巨大な其れは、しかし見るものを圧倒する。



 ジャンク・ウォリアーATK3500→4500



 「こ、攻撃力4500だとぉ!」

 まさか1ターンで自身のモンスターを越えてくるとは思わなかったのだろう、羽蛾の顔が驚愕に歪む。

 「バトル!叩き込め、ジャンク・ウォリアー、超究極完全態グレート・モスに攻撃!『パワー・ギア・クラッシュ』!!」




 ――ドガシャァァァ!




 巨大な爪が羽蛾のモンスターを握りつぶし爆発させる。

 「うひょぉぉぉぉ!」
 羽蛾:LP4000→3500


 「アームズ・エイドの効果発動。アームズ・エイドを装備したモンスターが戦闘でモンスターを破壊した場合
  相手に破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

 「んな!!」

 超究極完全態グレート・モスの攻撃力は4000。
 羽蛾のライフは3500…勝負あり。

 「うひょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 発生した衝撃波でリングの外まで吹き飛ばされる虫野郎。
 小物の負け方なんぞ所詮こんなもんである。


 見事な1ターンKillに会場からは割れんばかりの歓声が送られる。


 「す、すげぇ…!」

 「流石だよ遊星君。」

 その中で遊戯も城之内も、遊星のデュエリストとしての力量の高さに舌を巻いていた。








 ――――――








 大会は進む。
 城之内、遊戯共に危なげなく1回戦を突破。
 此れより大会は準決勝となる。


 そして準決勝第1試合は…遊星vs城之内!


 「1回戦見事だったぜ、やるじゃねぇか遊星!」

 「貴方こそあの逆転劇は凄かった。」

 互いに相手の1回戦を称えあう。
 意外と気が合うようだ。

 「「デュエル!!」」

 遊星:LP4000
 城之内:LP4000



 開始されるデュエル。
 タイプこそ違うが、この2人のデッキ内容は結構似ている。
 戦士・機械をメインに構築され、切り札には強力なドラゴンが待ち構えているのだ。


 「俺の先攻!魔法カード『集結!ランドスター戦隊』を発動。デッキから『ランドスター』と名のつくモンスターを3体特殊召喚する。
  来い『ランドスターの剣士』『ランドスターの銃士』『ランドスターの賢者』!」
 ランドスターの剣士:DEF1200
 ランドスターの銃士:DEF1200
 ランドスターの賢者:DEF1200

 「更に『漆黒の豹戦士パンサー・ウォリアー』を召喚!」
 漆黒の豹戦士パンサー・ウォリアー:ATK2000

 「カードを2枚伏せてターンエンドだぜ。」

 1ターンで4体ものモンスター。
 恐るべき展開力だが、遊星は些か疑問を抱いていた。

 「俺のターン。(おかしい…城之内さんのデッキには強力な上級モンスターが居るはず。手札に呼び込めなかった可能性もあるが…)」

 1回戦、城之内は『集結!ランドスター戦隊』から『ギルフォード・ザ・ライトニング』を召喚し勝利につなげた。
 とも為ればモンスターの大量展開は大型上級モンスターへの布石と思う。
 だが、このターンは低レベルモンスターが4体…矢張り腑に落ちない。

 「(何か狙っているのか?だが!)手札のボルト・ヘッジホッグを捨てチューナーモンスター『クイック・シンクロン』を特殊召喚。」
 クイック・シンクロン:ATK700

 「俺のフィールドにチューナが存在する時、墓地のボルト・ヘッジホッグを特殊召喚できる!」
 ボルト・ヘッジホッグ:800

 準備は整った。


 「レベル2ボルト・ヘッジホッグに、レベル5クイック・シンクロンをチューニング!
  集いし思いが此処に新たな力となる。光指す道となれ!シンクロ召喚、燃え上がれ『ニトロ・ウォリアー』!」
 「ムゥゥン!」
 ニトロ・ウォリアー:ATK2800


 遊星はまたしても1ターン目からの強力モンスター。

 「此処は臆せず攻める。ニトロ・ウォリアーでパンサー・ウォリアーを攻撃!『ダイナマイト・ナックル』!」

 遊星のデッキでもトップクラスの攻撃力を持つモンスターの攻撃が炸裂する。
 その威力は中々の物。

 「うぉ!」
 城之内:LP4000→3200

 「ニトロ・ウォリアーの効果発動。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、
  相手の守備表示モンスター1体を攻撃表示にしもう1度攻撃できる!『ダイナマイト・インパクト』!」

 「何だそりゃぁ!!」
 ランドスターの剣士:守→攻    DEF1200→ATK500


 「させるかよ、トラップ発動『体力増強剤スーパーZ』
  俺が2000ポイント以上のダメージを受ける場合、その前にライフを4000回復するぜ!」
 城之内:LP3200→7200

 「だが、バトルは続行される!行けニトロ・ウォリアー!『ダイナマイト・ナックル』!」

 「うおわぁぁぁ!!」
 城之内:LP7200→4900


 遊星の強烈な攻撃。
 だが、城之内はトラップで其れを回避、寧ろライフにおいて僅かながらアドバンテージを得た結果となる。


 「(俺の攻撃を想定してのライフ回復カード…流石だ。)カードを1枚伏せてターンエンド。」

 「俺のターン!ふっふっふ…行くぜ遊星!『時の魔術師』を召喚!」
 時の魔術師:ATK500

 「時の魔術師…?(この状況で?外れれば自分がダメージを負うだけでなく俺に有利な状況になるってしまう…)」

 言うなれば『一発逆転』のギャンブルカードである『時の魔術師』。
 其れをこの状況で出すと言うのは如何言う事か?
 よほど自身があるのだろうか?

 「時の魔術師の効果発動!当たればお前のモンスターが全滅、外れれば俺のモンスターが全滅!行くぜ!『タイム・ルーレット』!」

 時の魔術師の針が回り始める。
 当たる確立は1/3。
 そして…


 ――カチリ


 針が指したのは『ハズレ』
 だが…

 「外れちまったか…しっかーしトラップ発動『確立変動』!ルーレットが外れた場合に発動しルーレットをやりなおすぜ!
  だが、ルーレットの針は同じ場所には止まらない!」

 「何!?それじゃ、まさか…!」

 「その通り、タイムルーレットは必中!喰らえ『タイム・マジック』!」

 同じ結果は示さない…一度外れている時の魔術師は2度と外れない。
 つまりは必殺!


 ――ゴォォォォ!


 遊星のモンスターが時空の渦へと飲み込まれていく。
 此処で城之内は一気に畳み掛ける

 「『時の魔術師』の効果成功により、俺のデッキの最強モンスターを特殊召喚するぜ!」

 「最強モンスター?」

 「『時の魔術師』『ランドスターの銃士』『ランドスターの賢者』を生贄にささげ…来い『時を司る神クロノス』!」
 「フオォォォォォ…」
 時を司る神クロノス:ATK4000


 「(攻撃力4000…このモンスターの召喚を狙っていたのか…!)」

 「バトル!クロノスでダイレクトアタックだ『時空断裂爆殺波』!」


 遊星の場にモンスターは居ない。
 決まればゲームエンドだ。

 「そうはさせない!トラップ発動『くず鉄のかかし』。相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」

 遊星お得意のトラップが攻撃を食い止める。

 「そうは簡単にいかないか…ターンエンド!」

 「俺のターン!(今の俺の手札にあのモンスターを倒すカードは無い…此処は耐えるしかない!)
  チューナーモンスター『チェンジ・シンクロン』を守備表示で召喚。」
 チェンジ・シンクロン:DEF0

 「カードを2枚伏せてターンエンド。」

 「守備力0…罠で迎え撃とうってのか?無駄だぜクロノスは効果では破壊されない!俺のターン!『黒竜の雛』を召喚。」
 「ぷぎゅ。」
 黒竜の雛:ATK800


 「更に黒竜の雛を墓地へ送り『真紅眼の黒竜』を特殊召喚!」
 「ギョォォォォ!」
 真紅眼の黒竜:ATK2400


 更なる上級モンスター。
 城之内のエースである黒き竜。
 ダメ押しには十分といえるが…

 「トラップ発動『モンスター・チェーン』!城之内さん、貴方のモンスターの数分のターン俺達は攻撃する事ができない。」

 此処も何とか凌ぐ。

 「へ、だが魔法カード『黒炎弾』!このターン真紅眼の攻撃を封じる代わりに真紅眼の元々の攻撃力分のダメージを与えるぜ!」

 「く…!」
 遊星:LP4000→1600

 「更にクロノスの効果。ライフを1000払い、カードのターン数を強制的に薦めるぜ!」
 城之内:LP4900→3900

 「何だと!」

 「此れで『モンスター・チェーン』のカウント数を0にする!ターンエンドだ。」

 折角の防御策も簡単に打ち破られてしまう。
 流石は『神』の種族を持つモンスター…半端ではない。

 「俺のターン(…!コイツは…此れなら!)トラップ発動『シンクロ・マテリアル』このターン相手モンスターをシンクロ召喚の素材として使用できる。
  俺が指定するのは『真紅眼の黒竜』!」

 「なにぃ!」

 「レベル7の真紅眼の黒竜にレベル1のチェンジ・シンクロンをチューニング!
  集いし願いが新たに輝く星となる、光指す道となれ!シンクロ召喚、飛翔せよ『スターダスト・ドラゴン』!」
 「ショォォォォ!」
 スターダスト・ドラゴン:ATK2500


 「チェンジ・シンクロンの効果発動。このカードがシンクロ召喚に使用されたとき相手モンスター1体の表示形式を変更する!」

 「にゃろ…」
 時を司る神クロノス:攻→守   ATK4000→DEF2000

 「だが、クロノスの効果。相手モンスターの召喚時その攻撃力と守備力を通常時の60%にダウンさせる!」
 スターダスト・ドラゴン:2500→1500


 恐るべき効果である。
 つまりは1ターンで3600以上の攻撃力を持つモンスターを召喚しなければし守備表示のクロノスすら倒せないのだ。


 「如何だ!此れでクロノスは倒せないぜ!」

 「確かに今のままではクロノスは倒せない。だが!チューナーモンスター『エフェクト・ヴェーラー』を召喚!」
 「さて…頑張ろうかな♪」
 エフェクト・ヴェーラー:ATK0


 「このターンで終わらせる!レベル8スターダスト・ドラゴンにレベル1エフェクト・ヴェーラーをチューニング!
  集いし祈りが星の輝きを映し出す、光指す道となれ!シンクロ召喚、光臨せよ『守護銀龍スター・ヴェール・ドラゴン』!」
 「さぁ…行くよ!」
 「ショアァァァァ!」
 守護銀龍スター・ヴェール・ドラゴン:ATK2800



 スターダスト・ドラゴンにエフェクト・ヴェーラーが騎乗して現れる。
 眩い銀色の光を纏うその姿は『守護銀龍』の名に相応しい。


 「クロノスの効果発動!」

 「無駄だ、スター・ヴェール・ドラゴンは俺のターン中相手のカード効果を受け付けない!」

 「うげ!!」

 つまりはステータスを下げられない。
 此れでクロノスを撃破できる。

 「更に装備魔法『ジャンク・アタック』をスター・ヴェール・ドラゴンに装備!
  バトル、スター・ヴェール・ドラゴンでクロノスを攻撃!『エフェクト・ソニック・ブラスター』!」
 「くらえぇぇぇぇ!!」



 ――ゴバァァァン!




 効果破壊はされなくとも戦闘破壊は有効。
 更に装備魔法の効果が発動する。

 「ジャンク・アタックの効果発動。装備モンスターが相手モンスターを破壊した時、相手に破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを与える!」

 「うそだろぉぉ!!」
 城之内:LP3900→1900

 「更にトラップ発動『シンクロ・オーバードライブ』!このターン先頭で相手モンスターを破壊したシンクロモンスターはもう1度攻撃できる!」

 「うっそだぁぁぁ!!」

 まさかの大逆転。
 城之内も驚くしかない。

 「2度目の攻撃、守護銀龍スター・ヴェール・ドラゴンでダイレクトアタック!『エフェクト・ソニック・ブラスター』!」




 ――ドガシャァァァァ!!




 「うおわぁぁぁぁぁ!!」
 城之内:LP1900→0


 決着!
 見事な逆転劇で遊星が勝利を収めた。


 「てて…やるな遊星。まさかクロノスがやられちまうとは思わなかったぜ。」

 「最後のターン、エフェクト・ヴェーラーを引いていなかったら俺が負けてました。ありがとうございました城之内さん!」

 「おう!又今度戦おうぜ!」

 2人はがっちりと握手をした。








 ――――――








 ――2021年ネオ・ドミノシティ・中央病院



 その1室でアキはベッドに横たわる人物の手を握っていた。
 ベッドに寝かされているのは遊星。

 そう、事故の後遊星は意識だけが過去へと飛ばされたらしい。


 酸素マスクを取り付けられていることから、重体である事が伺える。
 頭や腕に巻かれた包帯が痛々しい事この上ない。
 心電図の音が一定で鳴っていることでアキは一応の落ち着きを保つ事ができた。


 「意識はまだもどらねぇのか…」

 声を掛けてきたのは遊星の親友であるクロウ。
 あの日…事故があった日から1週間が経とうとしているが遊星の意識は戻らない。

 「アキさん、少し休んだほうがいいんじゃない?」

 「そうだよ。殆ど寝て無いじゃん。アキ姉ちゃんが倒れちゃうよ!」

 双子の兄妹、龍亜と龍可はアキを心配する。
 遊星が入院してからと言うものアキは付きっ切りで看病し殆ど寝ていないのだ。

 「大丈夫…私は大丈夫よ。」

 「強がるな馬鹿者!」

 何でも無いと言うアキだが其れは遊星のライバル、ジャックによって否定される。

 「目の下にそんな隈を拵えて平気なはずが無かろう!大人しく休んでいろ。」

 「で、でも!」

 「煩い!遊星が目覚めた時、貴様が過労で倒れていたら元も子もなかろう!」

 確かにその通りだ。
 遊星は自分を庇って車に撥ねられたのだから看病するのは至極当然。
 しかし其れで自分が身体を壊したら本末転倒である。

 「そうね…少し休ませてもらうわ…遊星をお願いね。」

 「フン、このジャック・アトラスに任せておけ!」

 「心配すんな、このクロウ様が付いてんだ!」

 「任せてよアキ姉ちゃん!」

 「ゆっくり休んできて。」

 仲間達の声に軽く微笑むと、アキは病室を後にし、休憩室へ向かうのだった…










 後編へ