――ネオ・ドミノシティ中央病院


 「ふぅ…」

 休憩室へ来たアキは溜息一つ。
 矢張り疲れていたのだ。
 ソファに腰掛けるなり、急激に眠気が襲ってくる。

 「遊星…大丈夫よね…」

 遊星が目を覚ます事を祈りつつ、アキは眠りに落ちて行った。










 『奇跡のデュエル』〜後編〜










 ――童美野町・KCスタジアム


 準決勝の第2試合は遊戯が圧倒的な力で勝利を収めた。
 此れより始まる決勝戦。


 方やデュエルキングたる遊戯。
 方や(この時代の人間には)見たことも無い戦術を使う遊星。
 観客の期待は否応無しに高まっている。


 「遊星君、君とデュエルできるなんて思ってもみなかったよ。」

 「遊戯さん…俺こそ、貴方とデュエルできるなんて凄く光栄です。」

 互いにデッキをカット&シャッフル。
 そして2人は自分の場に戻る。

 「遊星君、君のデュエルを見てもう1人の僕はもう我慢できないみたいなんだ。だから…」

 遊戯の千年パズルが光を放つ。

 「遊星、此処からは俺が相手になるぜ。」

 遊戯のもう1つの人格、闇遊戯が姿を現す。

 「もう1人の遊戯さん…はい!全力で行きます!」

 「来い遊星!」


 「「デュエル!!」」

 遊星:LP4000
 遊戯:LP4000




 名も無きファラオと、ドラゴンヘッドの痣を持つシグナー。
 其々の時代で『最強』と称されるデュエリスト同士の時を超えた『奇跡のデュエル』が始まった。


 「俺のターン。手札から『融合』を発動。幻獣王ガゼルとバフォメットを融合!来い『有翼幻獣キマイラ』!」
 「グォォォォ!」
 有翼幻獣キマイラ:ATK2100


 「カードを1枚伏せてターンエンド。さぁ遊星、君の力を見せてみろ!」

 初手からレベル6の上級モンスター。
 攻撃力はさほど高くは無いものの、強力な効果でフィールド損失が少ないキマイラ。
 遊戯の戦術として、先ずこのモンスターで相手の力量を測るのは常套手段と為っている。

 「俺のターン!(攻撃力2100…だがこの手札なら!)魔法カード『ワン・フォー・ワン』を発動。
  手札のボルト・ヘッジホッグを捨て、デッキから『ディメンジョン・ウォリアー』を特殊召喚!」
 ディメンジョン・ウォリアー:ATK100

 「ディメンジョン・ウォリアーが特殊召喚された時、手札からレベル1のモンスターを特殊召喚出来る。来い『ロード・ランナー』!」
 「きゅ!」
 ロード・ランナー:ATK300


 「チューナーモンスター『デブリ・ドラゴン』を召喚!」
 デブリ・ドラゴン:ATK1000

 「フィールドにチューナーが存在する時墓地のボルト・ヘッジホッグを特殊召還できる!」
 ボルト・ヘッジホッグ:ATK800

 お得意の高速召喚で、一気に素材をそろえる。
 相手が誰であろうと、遊星は己のスタイルを崩す事は無い。

 「シンクロ召喚。其れもレベル8…!」

 かつて共に戦った事もあり、遊戯には何が来るのかが分かっている。
 そしてそのモンスターの強さも。

 「ディメンジョン・ウォリアー、ロード・ランナー、ボルト・ヘッジホッグの3体にデブリ・ドラゴンをチューニング!
  集いし願いが新たに輝く星となる…光指す道となれ!シンクロ召喚、飛翔せよ『スターダスト・ドラゴン』!」
 「ショォォォォ!」
 スターダスト・ドラゴン:ATK2500



 遊星のエース、星屑の輝きを纏った白い龍が舞い降りる。


 「来たかスターダスト・ドラゴン。相手にとって不足は無いぜ!」

 遊戯も不敵に笑う。
 其れは如何にも攻撃を誘っている表情であり、並みのデュエリストなら攻撃を躊躇するだろう。

 「此処は臆せず攻める!バトル!スターダスト・ドラゴンで有翼幻獣キマイラに攻撃!響け『シューティング・ソニック』!」

 遊星は並みのデュエリストではない。
 数々の強敵と文字通り『命懸け』のデュエルをしてきた未来の強者なのだ。
 たった1枚の伏せカードに尻込み等しない。



 ――ガァァン!



 遊戯:LP4000→3600




 銀色の閃光がキマイラを破壊し、遊戯のライフを削る。
 だが遊戯は慌てず、寧ろ攻撃してきた事を満足だと言わんばかりの笑みを浮かべている。

 「ふ、いい攻撃だぜ遊星。トラップ発動『死者の置き土産』
  俺のモンスターが破壊された時、このターンモンスター効果の発動を封じる代わりにデッキからカードを2枚ドローする。」

 「(狙いは此れだったのか。)カードを2枚伏せる。そしてこのターンのエンドフェイズにディメンジョン・ウォリアーの効果発動。
  このカードがシンクロ召喚に使用されたターンのエンドフェイズ、ゲームから除外されている俺のモンスター1体を墓地に戻す事ができる。
  俺はボルト・ヘッジホッグを墓地へと戻す。ターンエンド。」

 手札を使い切りながらも先手を取った遊星と、先手を取られながら手札の増強で戦術を広げる遊戯。
 一瞬の判断ミスが命取りになり兼ねない一流同士のデュエル。

 「俺のターン。手札より魔法カード『カオス−超戦士と黒魔術師の儀式』を発動。
  デッキからレベル合計が16に為るようにモンスターを墓地に送り、
  手札の『カオス・ソルジャー』と『マジシャン・オブ・ブラックカオス』を儀式召喚するぜ!」

 「!!」

 「デッキから『クィーンズ・ナイト』『磁石の戦士α』『黒犬獣バウ』『マジシャンズ・ヴァルキリア』を墓地へ送り、
  現れろ『カオス・ソルジャー』、そして『マジシャン・オブ・ブラックカオス』!」
 「セァ!」
 カオス・ソルジャー:ATK3000
 「フン…」
 マジシャン・オブ・ブラックカオス:ATK2800




 遊戯のデッキを代表する最強クラスの儀式モンスター。
 其れが2体も!



 「(たった1ターンで此れほどのモンスターを揃えて来るとは、流石遊戯さんだ…だが!)
  この瞬間トラップ発動『前線守備』。フィールド上のモンスターは全て守備表示となる。」
 スターダスト・ドラゴン:攻→守   ATK2500→DEF2000
 カオス・ソルジャー:攻→守   ATK3000→DEF2500
 マジシャン・オブ・ブラックカオス:攻→守   ATK2800→DEF2600




 遊戯の上級モンスターを読んでの攻撃封じ、一見完璧とも思えるが…


 「やるな遊星。さて、僅か3ターンで俺達はずいぶん手札を消費してしまった。このままでは充分なデュエルは望めない。
  そこで…魔法カード『天よりの宝札』。互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにデッキからカードをドローする。」

 あくまで余裕綽々、最大の手札増強魔法を発動してきた。

 「このターン俺はまだモンスターを通常召喚していない。『磁石の戦士γ』を召喚。」
 磁石の戦士γ:ATK1500



 先程の遊星よろしく遊戯もまたモンスターを高速展開してくる。



 「俺の上級モンスター召喚を読んでいたのは見事だが未だ甘いぜ遊星!」

 「如何いうことです、遊戯さん。」

 「確かに2体の儀式モンスターは強力だが俺の手札には既に最強のモンスターが存在していたのさ。
  フィールド上の『カオス・ソルジャー』『マジシャン・オブ・ブラックカオス』『磁石の戦士γ』と
  手札の『ビッグ・シールド・ガードナー』を生贄に、現れろ『原初神カオス』!」
 「ウォォォォォ!」
 原初神カオス:ATK]]]]



 「攻撃力不明のレベル12のモンスター…狙いはこっちだったのか!」

 「その通りだぜ。そしてカオスの攻撃力は互いのフィールドと墓地のモンスターの属性×3000と為る。
  フィールドと墓地のモンスター属性は合計4種類。よって攻撃力は12000!」
 原初神カオス:ATK]]]]→12000

 「攻撃力12000!」

 「バトル、原初神カオスでスターダスト・ドラゴンを攻撃!『カオティック・ディメンジョン』!」

 「く…トラップ発動『シンクロンリフレクト』
  俺の場のシンクロモンスターが攻撃された時、その攻撃を無効にし相手モンスター1体を破壊する。」

 罠で対抗しようとするが。

 「残念だが無駄だぜ、カオスが俺のフィールドに存在する限り俺のモンスターは破壊も除外もされず攻守の値も下げられない。」

 「何だって!?」

 「更にこいつがいる限り俺の手札デッキのカードを墓地送り或いは除外する効果も無効となる。」

 つまりは12000もの攻撃力を持ちながら除去不能なのである。
 更にこれから現れるモンスターも同様である。
 したがってスターダストは戦闘破壊されてしまう。

 加えてプレイヤーをも守るとは最強此処に極まれりである。

 「く…スターダスト…。」

 守備表示であったためダメージは受けないものの此れはきつい。

 「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ。」

 「俺のターン。(流石に苦労して召喚しただけの事は有る。だが気遅れるな、諦めなければ必ず勝機は訪れる。)
  マッシブ・ウォリアーを守備表示で召喚。」
 マッシブ・ウォリアー:DEF1200

 「カードを1枚伏せてターンエンド。」

 下手に攻め出る事の出来ない遊星は限定的な戦闘耐性を持つモンスターとリバースカードで対抗する。

 「俺のターン。魔法カード『黒魔術のカーテン』を発動する。
  本来このカードにはライフ半分のコストが必要だが、カオスの効果で俺がカード効果を使う際のコストは消滅する!」

 「発動コストまで…!」

 「デッキより現れろ『ブラック・マジシャン』!」
 「ハァ!」
 ブラック・マジシャン:ATK2500



 遊戯のエース、闇を制する最上級魔法使いが現れる。


 「魔法カード『黒・魔・導』を発動。俺の場にブラック・マジシャンが存在する時相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊するぜ!」

 「く…」

 破壊されたのは『くず鉄のかかし』。
 防御を固めようとしていた遊星にとってこのカードが破壊されたのは痛い。

 「バトル!ブラック・マジシャンでマッシブ・ウォリアーに攻撃!」

 「マッシブ・ウォリアーは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されずプレイヤーへのダメージも0にする!」

 「だがこの瞬間トラップ発動『ブラック・マジシャンズ・サークル』
  俺のブラック・マジシャンの攻撃宣言時にデッキから『ブラック・マジシャン・ガール』1体を特殊召還できる!」

 「馬鹿な、黒魔術のカーテンを使ったターンはあらゆる召喚が制限されるはず!」

 「そのデメリットもカオスの効果で無効となる!」

 此処まで来ると最早反則である。

 「現れろ『ブラック・マジシャン・ガール』!」
 「えへへ〜よろしくぅ!」
 ブラック・マジシャン・ガール:ATK2000



 「く…ブラック・マジシャンが2体。」

 「ふ、攻撃を続行だブラック・マジシャン!黒・魔・導(ブラック・マジック)!」


 効果によりマッシブ・ウォリアーは破壊されないが…


 「ブラック・マジシャン・ガールで追撃!黒・魔・導・爆・烈・波(ブラック・バーニング)!」
 「いっけー!」


 2度目の攻撃で破壊されてしまう。


 「原初神カオスでダイレクトアタック!『カオティック・ディメンジョン』!」

 「この瞬間手札の『速攻のかかし』を捨てて効果発動!相手がダイレクトアタックをしてきた時このカードを墓地に捨てることでバトルを終了させる!」

 此処は手札のモンスターでしのいだ。

 「やるな…ターンエンドだ。」

 「俺のターン!(く…カオスが居る限り遊戯さんのモンスターは無敵。
  更にプレイヤーを縛る枷も無い…こんな強力な効果を持つモンスター相手に如何すれば………モンスター効果?
  そうだ、此れはあくまでモンスター効果其れなら!)『シールド・ウィング』を守備表示で召喚。」
 シールド・ウィング:DEF900

 「カードを2枚伏せてターンエンド。」

 「俺のターン(あの表情…カオスの効力法を見つけたか。)行くぜ遊星!ブラック・マジシャンでシールド・ウィングを攻撃!」

 「シールド・ウィングは1ターンに2度まで戦闘では破壊されない!」

 「ならば2度目の攻撃だ、ブラック・マジシャン・ガール!」
 「おまかせぇ!」


 此れでシールド・ウィングの効果は使い切った事になる。


 「3度目の攻撃!原初神カオス!」



 ――バリィィン!



 3度目の攻撃に遂にシールド・ウィングは消滅する。

 「カードを1枚伏せてターンエンド。」

 「俺のターン!(来たか!)トラップ発動『ロストスター・ディセント』。墓地のシンクロモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。
  ただしこの効果で特殊召喚されたモンスターはレベルが1つ下がり守備力は0。効果は無効にされ表示形式の変更も出来ない。」

 「ずいぶん制限されるんだな。」

 「ですが、此れで俺の新たな戦術が可能となる。蘇れ『スターダスト・ドラゴン』!」
 スターダスト・ドラゴン:Lv8→7   DEF2000→0

 「チューナーモンスター『救世竜セイヴァー・ドラゴン』を召喚。」
 救世竜セイヴァー・ドラゴン:ATK0

 「俺のフィールドにチューナーが存在する事で墓地のボルト・ヘッジホッグを特殊召喚する!」
 ボルト・ヘッジホッグ:ATK800


 「レベル合計10だと…!?」

 「レベル7と為ったスターダスト・ドラゴンとレベル2のボルト・ヘッジホッグにセイヴァー・ドラゴンをチューニング!
  集いし星の輝きが、新たな奇跡を照らし出す…光指す道となれ!シンクロ召喚、光来せよ『セイヴァー・スター・ドラゴン』!」
 「キュオォォォォォ!」
 セイヴァー・スター・ドラゴン:ATK3800



 紅き龍の化身たる、救世の力を秘めた青く輝く龍。
 遊星の窮地を救うべくこの地に舞い降りた。


 「セイヴァー・スター・ドラゴンの効果発動!1ターンに1度相手モンスター1体の効果を無効にしそのモンスター効果を得る。」

 「何だと!?」

 「遊戯さん、確かにカオスは強力だ。自軍のモンスターを無敵にし、プレイヤーの枷を取り払う。
  だが、其れはあくまでもモンスター効果。セイヴァー・スターの効果はカオスの効果範囲の外だ『サブリメイション・ドレイン』!」
 原初神カオス:ATK12000→0
 セイヴァー・スター・ドラゴンATK3800→15800




 自身の効果で攻撃力が上がっている以上その効果が無効となれば攻撃力は0。
 逆に遊星のモンスターは大幅にパワーアップした事になる。


 「セイヴァー・スター・ドラゴンで原初神カオスを攻撃!『シューティング・ブラスター・ソニック』!」



 ――バギャァァン!



 渾身の一撃がカオスを破壊する。

 「この瞬間、手札から『クリボー』の効果を発動。このカードを手札から墓地に送る事で戦闘ダメージを1度だけ0にする。」

 「(此処でセイヴァー・スターの効果を使ったら再び流れは遊戯さんに向かう…ならば此処は更なる戦術につなぐのみ)
  カードを1枚セット。そしてこのターンのエンドフェイズ、セイヴァー・スター・ドラゴンはエクストラデッキに戻り墓地のスターダスト・ドラゴンを特殊召喚する。」
 スターダスト・ドラゴン:DEF2000


 「だがこの瞬間にトラップ発動『シンクロリターン・チューン』!俺の場のシンクロモンスターがエクストラデッキに戻った時に発動できる。
  デッキか墓地から攻撃力1000以下のチューナー1体を手札に加える。俺はデッキから『エフェクト・ヴェーラー』を手札に加えターン…」

 「このエンドフェイズ時に俺もトラップ発動『神族の導き』!」

 「…神族の導き?」

 「俺の場の『神』が破壊されたターンのエンドフェイズに発動できる。デッキか手札から3体まで『神』を特殊召喚できる!」

 「何だって!」

 「さぁ出番だ!現れろ『オベリスクの巨神兵』『オシリスの天空竜』『ラーの翼神竜』!」
 「ウォォォォォ!」
 オベリスクの巨神兵:ATK4000

 「グギョォォォォ!」
 オシリスの天空竜:ATK]000

 「キュォォォォ!」
 ラーの翼神竜:ATK?



 「この効果で特殊召喚された神の効果は無効となるが、元々の攻守は4000になるぜ!」
 オシリスの天空竜:ATK]000→4000
 ラーの翼神竜:ATK?→4000



 「(この局面で神…効果は無効になっているとは言え攻撃力は4000…!)ターンエンド。」

 「俺のターン。手札より『次元魔術師−ザゼル』の効果を発動。
  このカードを手札から除外する事で俺の墓地の魔法カード1枚を発動できる。俺が発動するのは『天よりの宝札』!」

 再びの手札強化。
 此れで遊戯と遊星の手札は6枚に増える。

 「さっきのターンは見事だったぜ遊星。今度はこっちから行くぜ!手札から魔法『原初神の加護』を発動!
  俺の墓地に原初神カオスが存在する場合このターン俺の場のモンスターは相手のカード効果を受け付けないぜ!」

 「ならばトラップ発動『ヴィクティム・サンクチュアリ』
  俺の場にスターダストが存在する時、俺のモンスターは発動ターンのみ戦闘と効果で破壊されない!」

 遊戯の無敵効果付与に対し、遊星はスターダストが守備表示である事を生かして破壊耐性を付与する。
 このデュエルもいよいよ佳境である。

 「ふ、破壊耐性か。なら魔法カード『メテオ・フォール』を発動。このターン俺の場のレベル7以上のモンスターは貫通効果を得るぜ!」

 「貫通効果!」

 「遊星、君のライフは無傷の4000だがスターダストの守備力は2000…攻撃力4000の神3体の前では耐え切れないぜ!
  バトル!行けオベリスク、スターダスト・ドラゴンを攻撃!『ゴッドハンド・クラッシャー』!」

 「この瞬間手札の『牙城のガーディアン』を捨てて効果発動!このターンのエンドフェイズまでスターダストの守備力を1500ポイントアップさせる!」
 スターダスト・ドラゴン:DEF2000→3500

 「ふ、やるな遊星。だがダメージは受けてもらうぜ!」



 ――ガァァン!



 「く…!」
 遊星:LP4000→3500


 「2撃目!オシリスの天空竜『超電導波−サンダー・フォース』!」



 ――バシュゥゥゥゥ!



 「ぐぅぅ…!」
 遊星:LP3500→3000


 「ラーの翼神竜『ゴッド・ブレイズ・キャノン』!」



 ――ゴバァァァァァァ!!



 「くぅぅ…耐えてくれ、スターダスト!」
 遊星:LP3000→2500



 神の猛攻を何とか耐え切る。

 「俺はメインフェイズ2で魔法発動『混沌の鉄槌』を発動。
  俺の墓地の原初神カオスが存在する時、相手の残りライフポイントを100ポイントにするぜ!」

 「何だって!?」
 遊星:LP2400→100

 耐え切ったものの魔法カードでライフを100にまで…
 僅か1ターンでライフアドバンテージまでも奪われてしまった。

 「ターンエンドだ。」

 「俺のターン!(強い…3体の神に己のエース、そして墓地に存在してもコンボカードのキーとなるカオス。此れが初代デュエルキングの力!
  ならばこの最強のデュエリストに勝つには、己の限界を超えるしかない!スタンディング・デュエルでも成功させる!)
  チューナーモンスター『エフェクト・ヴェーラー』を守備表示で召喚!」
 エフェクト・ヴェーラー:DEF0

 「カードを4枚伏せてターンエンド。」

 「俺のターン。(4枚の伏せカード…何を狙っている?其れにまだ策があるっていうのか?)ふ、君とのデュエルは楽しいぜ遊星。」

 「遊戯さん、俺もこのデュエルとても楽しいですよ。」

 「さぁ見せてくれ、君の取って置きって奴を!オベリスクでスターダストを攻撃!『ゴッドハンド・クラッシャー』!」

 オベリスクの拳がスターダストに迫る。
 2体のモンスターが破壊されれば遊星の敗北は確実。

 だが…


 「永続トラップ『エンジェル・リフト』!俺の墓地からレベル2以下のモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。蘇れ『ロード・ランナー』!」
 ロード・ランナー:ATK300

 「更にトラップカード『緊急同調』!このカードはバトルフェイズ中にモンスターをシンクロ召喚する!」

 「バトル中にシンクロ召喚だと!?」

 「レベル1のロード・ランナーにレベル1のエフェクト・ヴェーラーをチューニング!
  集いし絆が、新たな速度の地平へ導く…光差す道となれ!シンクロ召喚、希望の力シンクロ・チューナー『フォーミュラ・シンクロン』!」
 フォーミュラ・シンクロン:DEF1500

 「フォーミュラ・シンクロンのシンクロ召喚に成功した時俺はデッキからカードを1枚ドロー出来る!」

 「シンクロモンスターのチューナ…(遊星、君は何をするつもりなんだ?)」

 おおよそ見たことが無い戦術に、始めて見るモンスター。
 流石の遊戯も遊星の一手が読めない。

 「遊戯さん、俺はパラドックスとの後仲間達と共に多くのデュエルを経験しました。」

 「?」

 「そして此れが、それらを通じて俺が辿り着いた境地!」

 瞬間遊星から赤い光が溢れ出す。

 「クリア・マインド!レベル8シンクロモンスター、スターダスト・ドラゴンにレベル2シンクロ・チューナー、フォーミュラ・シンクロンをチューニング!」

 その光はどんどん強くなっていく。

 「集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く…光指す道となれ!」

 そして光は会場全体を包み込む。

 「く…この光は?遊星!?」

 「アクセル・シンクロォォォ!!」

 遊星の叫びと共に光が弾ける。

 「招来せよ『シューティング・スター・ドラゴン』!」

 白い身体に巨大な硬質の翼。
 疾風を纏い、流星の如きスピードで舞い上がるドラゴンに全てが釘付けになる。



 「フォォォォォォ!」
 シューティング・スター・ドラゴン:ATK3300




 「シューティング・スター・ドラゴン…まさか俺のターンで此処までのモンスターを呼ぶとは…
  だが、攻撃力はオベリスクの方が上だぜ!『ゴッドハンド・クラッシャー』!」

 「シューティング・スターの効果!このカードは相手ターンに1度ゲームから除外できる。
  そしてこの効果を使ったターン相手モンスター1体の攻撃を無効にする。」

 「ふ、ミスしたな遊星、此れで君のフィールドはがら空きだぜ!」

 「トラップ発動『ゼロ・フォース』!俺のモンスターがフィールドを離れた時、
  そのモンスターの攻撃力以上の攻撃力を持つ相手モンスター全ての攻撃力をエンドフェイズ終了まで0にする!」

 「なに!?」
 オベリスクの巨神兵:ATK4000→0
 オシリスの天空竜:ATK4000→0
 ラーの翼神竜:ATK4000→0



 「神の攻撃力が0に…だが未だブラック・マジシャン師弟の攻撃が残っているぜ!2体でダイレクトアタック!」

 「そうはさせない、トラップ発動『シンクロスター・バリア』!墓地のシンクロモンスター1体をゲームから除外し、
  除外したモンスターより低いレベルのモンスターから受けるダメージを0にする。俺は墓地のスターダストを除外!」


 スターダスト・ドラゴンはレベル8。
 レベル7のブラック・マジシャンとレベル6のブラック・マジシャン・ガールの攻撃はかき消される。
 そして観客も、驚愕を隠せない。


 「ゆ、遊戯の神とブラック・マジシャン師弟の攻撃を…受けきりやがった…!」


 遊戯の強さを誰よりも知る城之内はより驚きが強い。
 そして又遊戯自身も。


 「(あの時とはまるで違う…遊星、此れが君の強さか。)」

 「このターンのエンドフェイズ、除外したシューティング・スターが舞い戻る!」
 シューティング・スター・ドラゴン:ATK3300


 「だが同時に神の攻撃力が復活する。」
 オベリスクの巨神兵:ATK0→4000
 オシリスの天空竜:ATK0→4000
 ラーの翼神竜:ATK0→4000



 「ターンエンド。」

 「俺のターン。魔法カード『シルバー・コントレイル』。俺の場の風属性モンスター1体の攻撃力をエンドフェイズまで1000ポイントアップさせる!」
 「フゥゥゥゥ…!」
 シューティング・スター・ドラゴン:ATK3300→4300



 「神の攻撃力を超えただと!?」

 「遊戯さん、此れが俺の最後の攻撃です!シューティング・スター・ドラゴンの効果発動!
  デッキの上からカードを5枚めくりその中のチューナーの数だけこのターン攻撃する事ができる!」

 「連続攻撃だと!」

 「これからの5枚が俺と貴方の命運を分ける。先ず1枚目…チューナーモンスター『ドリル・シンクロン』!」



 ――ヴィン…



 シューティング・スターにパワーが集まる。

 「2枚目…チューナーモンスター『クイック・スパナイト』!」



 ――ヴゥン…



 「3枚目…チューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』!」



 ――ヴィィィィン…



 「4枚目…チューナーモンスター『ライティ・ドライバー』!」



 ――ギュイィィィン…



 「5枚目…チューナーモンスター『ハイパー・シンクロン』!」

 「5枚全てがチューナ…5連続攻撃!」

 「此れが俺の全力『スターダスト・ミラージュ』!」



 ――バシュゥゥゥン!



 シューティング・スターから4体の分身が現れる。
 本体と併せて合計5体。
 其れが遊戯のモンスターに一斉攻撃を開始する!


 ――バァン!


 ――バリィィン!


 ――ドガァァン!


 ――ドゴォォォ!


 ――ズガシャァァァァン!




 全てのモンスターを攻撃し、再び1体に戻り舞い上がる流星の巨龍。
 激闘…決着!


 「うわぁぁぁぁぁ!」
 遊戯:LP3600→0



 『Winnner・不動遊星!』



 一瞬静まり返り…



 「「「「「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」」」」」」」」」」



 次の瞬間には大歓声。
 武藤遊戯のまさかの敗退。
 だがそれ以上に手に汗握るデュエルを展開した2人に惜しみない歓声が送られる。


 「遊星見事だったぜ。」

 「遊戯さん。」

 「楽しかった…ありがとう。」

 「俺のほうこそ…ありがとうございました。」

 2人は握手を交わす。


 「?」


 だがその瞬間、遊星の意識が急に遠くなる。
 其れはまるであの時…事故にあった瞬間のように…

 いまだ収まらぬ歓声を聞きながら、遊星の意識はブラックアウトした…








 ――――――








 「………?」

 意識が戻ると其処は見慣れない天井。

 「(此処は…病院?)」

 視線を移すと、右腕には点滴と包帯がされていてアキがその手を握っている。
 その手は自身の額に当てているが恐らくは眠ってしまっているのだろう

 「(取り合えず酸素マスクはいらないな…)」

 呼吸は出来る。
 ならば此れは必要ないので自由が利く左手で外す。
 そして少し痛みが走るが、左手でアキの髪をなでる。

 「…?」

 髪をなでられたことでアキが目を覚ます。
 そして目の前の光景に思わず声を漏らしてしまう。

 「遊…星…?」

 「あぁ。」

 「気が…付いたの…?」

 「あぁ、すまない…心配を掛けてしまったな。」

 「遊星!!良かった…本当に!」

 不安だったためだろう、思わずアキは遊星に抱きつく。

 「本当に心配したんだから…」

 「すまない…そしてありがとうアキ…」

 「み、皆を呼んでくるわ。心配してたのは私だけじゃないんだから!」

 それだけ言うとアキは皆を呼びに言ってしまう。
 或いは抱きついてしまった事への照れ隠しなのかもしれない。

 1人になった遊星は少し考える。

 「(俺は入院していたのか…ならばアレは夢だったのか?)」

 だが其処で気付く。
 さっきまでは何も無かった右手に何かがあるのが。

 「此れは、カード?」

 そのカードを確認する。

 「こ、このカードは!」

 手にしていたのは『時を司る神クロノス』と『原初神カオス』。
 自分が激闘を演じたデュエリスト、城之内と遊戯の強力モンスター。

 「(夢じゃないのか?)…遊戯さん、城之内さん、いつか又戦いましょう。」

 最早深くは考えない。
 この2枚を2人との再開するための鍵と考えたようだ。







 さて、その後は大変だった。


 病室にやってきたクロウとジャックには目覚めた事を喜びつつ色々と言われ、双子に至っては泣き出してしまうのだから。
 おまけに其れから数日、アキには確りと病室に入り浸れてしまった。


 目が覚めた遊星が退院できたのは検査などを含めそれから更に3日後だった。









 FIN






 後書き座談会



 遊戯「此れは又ずいぶんやったね。」

 闇遊戯「明らかなチートモンスターに3体の神…確かに。」

 遊星「それ以前にスタンディングでどうやってアクセルシンクロしたのか知りたい。」

 吉良「それらについては全てノーコメントだ。」

 遊星「だろうな。」

 遊戯「でもカオスの効果投稿されたのと違うよね?」

 吉良「だね。でもね『全てのデメリットが無くなる』となるとどうやっても倒せないのよ。
     破壊無効、除外無効、効果無効も効かないんじゃどうしようもないでしょ?だから効果を無効にする効果だけは受けるようにした。」

 遊星「で、セイヴァー・スターか。」

 吉良「攻守不明のモンスターにとって効果を無効にされる=死を意味するからね。」

 闇遊戯「しかし俺の戦術が鬼畜なんだが…」

 吉良「アンタは『ずっと俺のターン』て前科があるからね。」

 闇遊戯「ぐ…」

 遊星「ところで今回の設定は…」

 吉良「アニメ基準だ。だから遊星の時代にはジャックやクロウ双子が居る。」

 遊戯「このサイトの連載には…」

 吉良「出演予定など無い!!」

 遊星「ジャック、クロウ、龍亜、龍可…俺はお前達の分まで頑張るぜ…」

 吉良「ともあれ此れでようやく70000だ此れからも頑張るぜ!!」




 座談会終了












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