――童美野中央病院
童美野町で最も大きいこの病院。
その1室から何やら話し声が聴こえる。
病室の表札は
『迦神霧恵』と『十六夜アキ』…
『Fight The Future』〜後編〜
「デュエルのダメージが現実に…そいつはサイコ・デュエリストなのか?」
「分からない…」
病室内のベッドには霧恵とアキ。
怪我そのモノはアキの方が軽い。
其れでも、左足の捻挫と右肩の脱臼と全身打撲。
霧恵の方は左腕と肋骨の骨折、全身打撲に頭の裂傷と正に重傷。
尤も医者に言わせればD・ホイールの破損状況からしてこのぐらいで済んだのは奇跡だとか。
で、2人の入院を知った遊哉と遊星は物凄い勢いで病院へとやってきたと言う訳だ。(この時の2人のD・ホイールは確実に法定速度違反である。)
「何にせよ碌な奴じゃない事だけは確かだな。一体狙いは何なんだ?」
「未来を変えるとか何とか言ってた…どう言う事か分からないけど。」
「未来を変える…」
と、そこへ…
「「「霧恵〜!アキ〜〜!!」」」
氷雨、美咲、響の3人娘到着。
この3人もまた2人の入院を聞きすっ飛んできたのだ。
「2人とも大丈夫!?」
「霧恵、腕折れてるじゃない!」
「アキは脱臼!?」
3人とも此処が病院であると言う事は完全に忘れている。
「…女3人寄れば姦しい…か?」
「『姦しい』じゃなくて『喧しい』だろこの場合。…時にお三方俺達が居ること忘れてないか?」
「「「あ。」」」
「…やはり目に入ってなかったか。」
思わず溜息の遊哉と遊星。
「ゴメンゴメン…あんまりにも慌ててたから、つい。」
「まったく…此処は病院だぜ?五月蝿くしちゃ駄目だろうが。」
「うん…でも気になったから。」
「アキも迦神も重傷だが一命は取り留めた、もう安心だろ?」
「美咲が言ってるのは別件。ちょっと此れ見てくれる?家にあった5年前の『週間デュエリスト』なんだけど…」
氷雨から渡された古い1冊の雑誌の印が付けられたページをめくる遊哉と遊星。
そして2人は驚愕する事になる、そのページに記された『ありえない光景』に。
「「此れは!!」」
「何?」
「如何したの?」
2人の反応が気になる霧恵とアキは自分達にもそのページを見せる用に言う。
そして彼女たちもまた驚愕する事になる。
何故なら其処に移っていたのは…
「アリオス!?」
「ブラック・ローズ・ドラゴン!?」
そう、パラドックスによって奪われた2人のエース・モンスター。
加えてその2体と一緒にパラドックスまで写っているのだ如何考えても5年前にはありえない光景。
「(この仮面がパラドックス…しかしどう言うこった?シンクロモンスターの登場は4年前…5年前のこの時期にこの2体が存在するのはありえない…)」
其処まで考えて遊哉の思考はある1つの可能性にたどり着く。
と、同時に…
「ちょっと!何あれ!!」
響の叫びに全員が窓の外へと視線を向ける。
「「「「「「!!!!」」」」」」
その光景に全員が我が目を疑う。
突然光が消えうせた世界。
まるで粒子のように消えていく建物。
其れはさながらこの世の終わり…
「ち…此処も不味い!」
言うが早いか遊哉は霧恵を担ぎ上げる。
同時に遊星はアキを。
「外に出るぞ!車椅子持ってきてくれ!!(クソッタレ!そう言う事か!!)」
遊哉の言葉に全員が外に出る。
其処には既に非難した他の入院患者も見受けられる。
「ねぇ一体何が起こってるの?」
「パラドックスの狙いは…此れだったんだ…」
「どう言う事だ?」
「霧恵、パラドックスは『未来を変える』そう言ったんだよな?」
車椅子に座りながら霧恵は頷き肯定する。
「未来を変える…其れは言うなれば『過去』を変えることだ。パラドックスってのはきっと時空を超えることが出来るんだ!
その力で過去に渡って、自分の望む未来になるように歴史を改竄したんだ!その影響でこの時代が壊れようとしてる。」
「まさか一連の盗難事件は!」
「あぁ、パラドックスの仕業だ。自由に時空を超えられるなら進入の形跡が無いのは道理だ。」
「このままだとこの世界は…!」
その先は言わなくても分かる。
待っているのは崩壊だ。
「マスター!」
「エアトス!?」
「『トワイライトゾーン・ドラゴン』のカードがあれば時を越えられます!こうなった以上過去に渡ってパラドックスを倒す以外に手がありません。」
「トワイライトのカード?有るには有るが…」
「あのドラゴンは異次元を生きる竜です。その力を使えば可能なはずです。」
遊哉は覚悟を決める。
その表情で悟ったのだろう、遊星もまた時を越えることを決意する。
「…分かった。力を貸してくれ『異次元竜−トワイライトゾーン・ドラゴン』よ!!」
「キョォォォォ!」
最早、異空間となっているこの世界では簡単に精霊の力を実体化できる。
アグニも実体化しスターダストへ命を下す。
「星屑の竜よ、主の力を貸せい!時を越える衝撃から主たちを守れぇ!!」
「ショォォォォ!!」
「行くぜ…時を越えろぉぉぉぉぉ!!」
スターダストの『ヴィクティム・サンクチュアリ』に守られながら遊哉と遊星はその場から消えた。
――――――
「此れで未来は変る!出でよ『聖霊魔導師−アリオス』『ブラック・ローズ・ドラゴン』!!」
5年前の世界では、パラドックスが今正に歴史の改変を行うところだった。
其れはあの雑誌にも載っていた光景。
だが、今度はそうは行かない。
「させるかぁぁぁぁ!!」
時を越えた遊哉と遊星がその場に現れたのだ。
タイミングとしては正に危機一髪。
「緋渡遊哉、不動遊星…オノレ、時を越えてきたか!」
忌々しげに呟くパラドックス。
自身の計画が邪魔されたのだから当たり前だが。
「お前がパラドックスか!」
「目的は何だ!何故こんな事をする!?」
その問いにパラドックスは答えない。
答えないばかりか、自身のD・ホイールを変形させ宙に浮かびデュエル・ディスクを展開する。
『語る言葉は無い、デュエリストならカードで語れ。』
そう言わんばかりに。
「上等だコノヤロウ…!」
『やってやる』と言うように遊哉もデュエル・ディスクを展開し、
「貴様が盗んだカードを返してもらう!」
遊星も静かな怒りを湛えデュエル・ディスクを展開する。
其れを見たパラドックスは仮面を外し満足そうに嗤う。
「そうだ、其れで良い。さぁ来るが良い歴戦のデュエリスト達よ!お前達を倒す事によって私の計画は完遂するのだ!」
「はっ!誰がお前の思い通りになんてさせるかよ!」
「俺達の未来を貴様の思い通りになどさせない!!」
「「「デュエル!!」」」
遊哉&遊星:LP4000
パラドックス:LP4000
「私の先攻。フィールド魔法『矛盾せし罪の世界−シン・パラドックスワールド』を発動!」
発動したフィールド魔法が周囲を包み込む。
其れはあまりにも異様な空間。
黒と紫を基調とした迷彩色の結界。
「此れは…」
「Sinモンスターは強力だが通常は3つのデメリットを備えている。」
「3つのデメリット…?」
「そうだ、1つはフィールド魔法が無ければ自壊してしまう効果。
2つ目はフィールドに1体しか存在できない効果。
3つ目は他のモンスターの攻撃を封じてしまう効果。」
「そんなデメリットが…」
「しかし、そのトリプルデメリットはシン・パラドックスワールドによって無効となる!がそれだけではない!」
「…どう言う事だ!?」
「迦神霧恵と十六夜アキから聞いているだろう。私とのデュエルはダメージが現実のものになると!
シン・パラドックスワールドはデュエリストの肉体に与える苦痛を増幅させる効果がある。」
告げられた事実。
このフィールド内でも無いのにアレだけの重傷を負った霧恵とアキ。
それから察するにこれから遊哉と遊星に襲い掛かる衝撃は想像もつかない。
「精々恐怖するが良い。私はエクストラデッキより『聖霊魔導師−アリオス』を墓地へ送り手札の『Sin聖霊魔導師−アリオス』を特殊召喚!」
「…………」
Sin聖霊魔導師−アリオス:ATK3000
Sinモンスターの優位性はその速攻性に有る。
いきなり攻撃力3000はプレッシャーを掛ける意味でも悪くない一手。
「霧恵の魔導師か…無口になっちまって…」
「この程度で驚いてもらっては困る。エクストラデッキより『ブラック・ローズ・ドラゴン』を墓地へ送り現れろ『Sinブラック・ローズ・ドラゴン』!!」
「ショォォォォォ…!!」
Sinブラック・ローズ・ドラゴン:ATK2400
霧恵とアキから奪ったカードを迷い無くSin化させるパラドックス。
その行為に遊哉と遊星の怒りは益々燃え盛る。
2人とも其れを隠す気などは無いのだが。
「Sinアリオスの効果を発動する。このカード以外のSinモンスターが存在する場合そのモンスターより低いレベルの
Sinモンスターを可能な限りデッキから召喚条件を無視して特殊召喚できる!」
「何だと!?」
「来い『Sinエメラルド・ドラゴン』!」
「ギョォォォ!」
Sinエメラルド・ドラゴン:ATK2400
「『Sinサイバー・ドラゴン』!」
「キョェェェェ!!」
Sinサイバー・ドラゴン:ATK2100
「『Sinサイコ・ショッカー』!!」
「$кжгЯЮ!」
Sinサイコ・ショッカー:ATK2400
いきなりレベル5以上の上級モンスターが5体…流石に只者ではない。
「更に魔法カード『甘美なる大罪』を発動。私のフィールド上のSinモンスターの数だけ私のライフを倍加させる。
私のフィールドのSinモンスターは5体。よって私のライフは5倍となる!!」
パラドックス:LP4000→20000
「ライフポイント20000…」
「カードを1枚伏せてターンを終了する。」
大きく開いたライフアドバンテージ。
尤もそれで怯む2人ではないが。
「遊星、先に行くぜ!」
「あぁ、任せる!」
こちらは遊哉から攻める事に決まった。
「俺のターン!相手フィールド上にのみモンスターが存在する場合手札の『シルバー・ドラグーン』を特殊召喚できる!」
「グルル…」
シルバー・ドラグーン:ATK2000
「俺の墓地にモンスターが存在しないときこのカードを特殊召喚できる!来い『ガーディアン・エアトス』!」
「パラドックス…彼方の所業を許す訳には行きません。」
ガーディアン・エアトス:ATK2500
速攻召喚なら遊哉とて負けていない。
元々上級モンスターの速攻召喚に特化した超攻撃型デッキなのだ。
「霧恵のエースを返して貰うぜ!魔法カード『異次元同調・壱式』を発動!
デッキからチューナーとチューナー以外のモンスターをゲームから除外し、相手の墓地のシンクロモンスター1体をシンクロ召喚する!」
「何だと…!?」
「俺はデッキからレベル6のマテリアル・ドラゴンとレベル4のゴールド・ドラグーンをゲームから除外してチューニング!
洗練されし魔術師の力が此処に集う、邪悪な意思を砕け!シンクロ召喚、現れろ『聖霊魔導師−アリオス』!!」
「…礼を言う。」
聖霊魔導師−アリオス:ATK3000
「…霧恵は無事か?」
「一応…重傷だけどな。」
「そうか…パラドックス、許さんぞ…!」
アリオスもまた先に召喚されていたエアトスと同様に怒りをパラドックスへと向ける。
霧恵を傷つけられ、自身を利用され相当に怒っているのだ、彼女も。
「ふ、お得意の速攻召喚か。だが貴様のモンスターでは私のモンスターは全て倒せんぞ?」
「んなこたぁ分かってるぜ。其処でこのカードだ。魔法カード『逆鱗』!
俺のフィールド上のレベル5以上のドラゴン1体をリリースし相手モンスターを全て破壊する!!」
――バガァァァァン!!
一撃で消滅する5体のSinモンスター達。
上級モンスターの速攻召喚を得意とする遊哉ならではの戦術と言える。
「成程…だがこの瞬間罠発動『罪の演算機』!
全てのプレイヤーはこのターン破壊されたSinモンスターの数だけデッキからカードをドローする。
破壊されたSinモンスターは5体よって各プレイヤーは5枚ドローする。(ふ…来たか。)」
「(わざわざ俺の手札まで増強だと?)逆鱗を発動したターンは攻撃できない。カードを3枚伏せてターンエンドだ。」
「私のターン!魔法カード『罪の増殖』を発動。ライフを1000ポイント払い手札のSinモンスターを2体まで召喚条件を無視して特殊召喚する!」
パラドックス:LP20000→19000
「現れろ『Sin炎龍皇−アグニ』『Sinスターダスト・ドラゴン』!!」
「「何だと!!」」
「グオォォォォ!」
Sin炎龍皇−アグニ:ATK2900
「キョォォォォ!」
Sinスターダスト・ドラゴン:ATK2500
現れた2人のエースモンスター。
しっかりとSin化している辺り、元より2人のカードも奪う予定だったのだろう。
「俺達のカードまで…」
「何処までもふざけた奴だぜ!」
どんな理由が有るにせよパラドックスの行いは完全に『悪』。
2人の瞳の怒りの炎が更に燃え盛る。
「Sin化したアグニは手札のSinモンスターを墓地へ送る事でその攻撃力を吸収する。
手札の『SinF・G・D』を墓地へ送りSinアグニの攻撃力を5000ポイント上昇させる!」
「ウガァァァァァ!」
Sin炎龍皇−アグニ:ATK2900→7900
「はっはっは、此れでお終いだ!Sin炎龍皇−アグニでエアトスを攻撃!『インペリアル・ストライク・バスター』!」
「甘いぜ伏せカードオープン。『攻撃の無力化』!バトルを終了させる!」
Sinモンスターの特性上上級モンスターの出現は容易に想像できる。
其れを見越しての行動は流石だろう。
「小賢しい…ターンエンドだ。」
「俺のターン!」
「…初期手札11枚か、セレブだな遊星。」
そう、先刻の『罪の演算機』の効果により遊星の手札はこのドローカードをあわせて11枚。
相当に幅広い戦術が可能となる。
「手札より『異次元同調・壱式』を発動!お前の墓地のブラック・ローズ・ドラゴンをシンクロ召喚する!」
「貴様もか、不動遊星!」
「デッキからレベル4のジャンク・ブレーダーとレベル3のドリル・シンクロンをゲームから除外しチューニング!
集いし絆の輝きが、更なる希望を映し出す。光差す道となれ、シンクロ召喚!吹き荒べ『ブラック・ローズ・ドラゴン』!」
「ショォォォォォ!」
ブラック・ローズ・ドラゴン:ATK2400
遊星もまたアキのエースカードの奪還に成功する。
魂のエースカードは決して欲望の為に使われるべきでは無い。
「俺は手札を1枚捨て魔法カード『カードフリッパー』を発動。相手モンスターの表示形式を全て入れ替える!」
「うぬ…」
Sin炎龍皇−アグニ:攻撃→守備 ATK2900→DEF2100
Sinスターダスト・ドラゴン:攻撃→守備 ATK2500→DEF2000
「チューナーモンスター『デブリ・ドラゴン』を召喚。」
「シュゥゥゥ!」
デブリ・ドラゴン:ATK1000
「デブリ・ドラゴンの召喚に成功した事により墓地の攻撃力500以下のモンスターを特殊召喚できる。
俺はカードフリッパーのコストで墓地に送った『シールド・ウィング』を特殊召喚する!」
「…!」
シールド・ウィング:ATK0
流石に手札が11枚もあると戦術も大胆だ。
更なるシンクロへの布石が出来た。
「魔法カード『二重召喚』を発動。このターン、もう1度通常召喚を行える!来い『スピード・ウォリアー』!」
「ヘァ!!」
スピード・ウォリアー:ATK900
「レベル2のスピード・ウォリアーとシールド・ウィングにレベル4のデブリ・ドラゴンをチューニング。
集いし願いが新たに輝く星となる。光差す道となれ、シンクロ召喚!飛翔せよ『スターダスト・ドラゴン』!」
「キョォォォォォ!」
スターダスト・ドラゴン:ATK2500
連続シンクロによる速攻召喚。
其れにより現れた遊星のエース。
この2体ならば表示形式を変更したSinモンスターを倒せる。
「バトルだ!邪悪な偽者を打ち砕け、ブラック・ローズ・ドラゴン、Sinスターダストに攻撃!『ブラック・ローズ・フレア』!」
「ショァァァァァ!!」
――ゴォォォォォ!
「スターダスト・ドラゴンでSinアグニに攻撃!響け『シューティング・ソニック』!」
「キョェェェェェ!」
――ガシャァァァァン!!
一気に葬られた2体のSinモンスター。
以下に強力と言えどモンスターのステータスだけではデュエルは決まらない。
「カードを2枚伏せてターンエンド。」
しっかりと守りの1手を打っておく事も忘れない。
「オノレ…私のターン!エクストラデッキより『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』を墓地へ送り『Sinブラック・デーモンズ・ドラゴン』を特殊召喚!!」
「ガルル…」
Sinブラック・デーモンズ・ドラゴン:ATK3200
「バトルだ!Sinブラック・デーモンズ・ドラゴンでアリオスを攻撃!『メテオ・フレア』!」
効果を無効にする能力を持つアリオスを狙うのは悪くない。
だが其れはあまりにも短調な戦術。
「その攻撃は通さない!伏せカードオープン、罠カード『くず鉄のかかし』!相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」
遊星お得意のジャンク・トラップが発動する。
しかも使用後再びセットされるこのカードは非常に強力。
「何処までも小賢しい…!カードを3枚伏せてターンエンド。」
自分の計画通りに事が進まない所為だろう、パラドックスは相当にいらだっている。
「俺のターン。ライフを500ポイント払い『異次元竜の帰還』を発動。ゲームから除外されているドラゴン1対を特殊召喚する!
異次元から舞い戻れ『ゴールド・ドラグーン』!」
「グルル!」
ゴールド・ドラグーン:ATK1700
遊哉&遊星:LP4000→3500
「更に『ヴォルケイノ・ドラゴン』を召喚!」
「ガァァァァァ!」
ヴォルケイノ・ドラゴン:ATK1900
レベル合計8。
今度は遊哉のエースの出番。
「レベル4ヴォルケイノ・ドラゴンに、レベル4ゴールド・ドラグーンをチューニング!
燃え盛る紅蓮の双眸、そして灼熱の牙よ、全てを焼き払い此処に降臨せよ!シンクロ召喚!烈火の化神、『炎龍皇−アグニ』!!」
「覚悟せい、この愚物が!」
炎龍皇−アグニ:ATK2900
威風堂々。
現れし炎の龍皇。
その威厳は凄まじい。
「ゴールド・ドラグーンの効果。ゴールド・ドラグーンを素材としたドラゴン族のシンクロモンスターは召喚後3ターンの間攻撃力が1000ポイントアップする!」
炎龍皇−アグニ:ATK2900→3900
「装備魔法『流星の翼』をエアトスに装備!此れによりエアトスは戦闘破壊されなくなるが、『流星の翼』を墓地に送ってエアトスの効果発動!
エアトスは自身に装備された装備カード1枚を墓地へ送る事で相手の墓地のモンスターを3体まで除外し、
エンドフェイズまで除外したモンスター1体につき攻撃力を500ポイントアップさせる。
俺は貴様の墓地の『ブラック・デーモンズ・ドラゴン』『SinF・G・D』『Sinサイコ・ショッカー』の3体を除外する『聖剣のソウル』!」
「その力…封じます!」
ガーディアン・エアトス:ATK2500→4000
「バトル!炎龍皇−アグニでSinブラック・デーモンズ・ドラゴンに攻撃!『インペリアル・ストライク・バスター』!」
「滅せよ!」
「く、トラップ発動『暴かれぬ罪』!この効果によりSinモンスターはこのターン1度だけ戦闘では破壊されない!」
「だが、ダメージは受けてもらう!」
――ゴォォォ!
「うぬ…!」
パラドックス:LP19000→18300
「畳み掛ける!エアトスで、Sinブラック・デーモンズに攻撃!『フォビドゥン・ゴスペル』!」
「無に還りなさい。」
――シュパァァァ!
「ぐぉぉぉぉ!」
パラドックス:LP18300→17500
「もう一丁!アリオスで直接攻撃!『エレメント・ストリーム』!!」
「よくも利用してくれたな!」
――ズガァァァ!
「ぬぁぁぁぁぁぁ!」
パラドックス:LP17500→14500
「く…流石に強烈だ。だがトラップ発動『痛みの代価』!私が受けた戦闘ダメージ1000ポイントに付き1枚カードをドローする。
受けたダメージは3000…よって3枚ドローする。」
「カードを1枚伏せてターンエンドだ。」
ガーディアン・エアトス:ATK4000→2500
「私のターン。先程の礼をさせて貰おう。私はデッキより『真炎皇ウリア』『降雷皇ハモン』『幻魔皇ラビエル』の3体を墓地へ送り、
出でよ『Sin真炎皇ウリア』!」
「キシャァァァ」
Sin真炎皇ウリア:ATK4000
「『Sin降雷皇ハモン』!」
「グルルル…!」
Sin降雷皇ハモン:ATK4000
「『Sin幻魔皇ラビエル』!」
「ガァァァァァ…!」
Sin幻魔皇ラビエル:ATK4000
「三幻魔…!」
「一気に攻撃力4000が3体…」
「驚いたか!先ずはウリアの効果を発動!1ターンに1度相手の魔法・罠1枚を破壊できる!
不動遊星、貴様の『くず鉄のかかし』は破壊させてもらう!『トラップ・ディストラクション』!」
――バリィィン!
破壊効果に対しては絶対の力を持つスターダストもチェーン不能の効果では使いようが無い。
「此れで邪魔なカードは無くなった!やれSin幻魔皇ラビエルよ、アグニを破壊しろ!『天界蹂躙拳』!」
「…かかったな?」
「何!?」
不敵な笑みを浮かべる遊哉。
やはり数手先を読んでいる。
「遊星のくず鉄のかかしに気を取られたな!罠発動『閃光のバリア−シャイニング・フォース』!
相手モンスターの攻撃宣言時、相手に3体以上のモンスターが存在する場合相手の攻撃表示モンスター全てを破壊する!」
「ぐ、緋渡遊哉…貴様ぁぁぁぁ!!」
通常のデュエルでさえ読み合いは深いモノだ。
其れが1対2の変則デュエルとなれば尚の事。
常に2人分の戦術を頭に入れて戦うことが必要となる。
「遊星のくず鉄のかかしを真っ先に破壊してくるであろう事は読んでいたぜ。」
「その上でシャイニング・フォースを仕掛けておくとは、流石だな緋渡。」
そして2人の方はパートナーの戦術を知っておく必要が有る。
遊哉と遊星は正に息ぴったりと言ったところ。
「何処までも邪魔をしてくれる…ターンエンドだ。」
「俺のターン!(奴の場には2ターン前に伏せたカードが1枚だけ…俺の攻撃を誘っているのか?だが!)
此処は攻める!スターダスト、パラドックスに直接攻撃!響け『シューティング・ソニック』!」
モンスターが居ないこの状況。
攻撃が通ればライフを大幅に削る事ができる。
「其れを待っていた!カウンター罠『偽りの浄罪』!私の手札を全て捨てる事でこのターン発生する私へのあらゆるダメージを0にし、
次の私のターン、ドローフェイズにカードをドローする代わりにデッキからSinモンスター1体を手札に加える事ができる!」
「(狙いは此れか…)カードを1枚伏せてターンエンド。」
「私のターン!『偽りの浄罪』の効果でSinモンスター1体を手札に加える。」
効果によって手札に加えられたSinモンスター。
其れを2人は知る事ができない。
「…何が来ると思う遊星?」
「分からない。だが自分の手札を全て消費してまでサーチしたカードだ。」
「切り札…か?」
「多分な。」
「見せてやろう究極のSinモンスターを!エクストラデッキより『混沌幻魔アーミタイル』をゲームから除外し、現れろ『Sin混沌幻魔アーミタイル』!!」
「ウガァァァァ!!!」
Sin混沌幻魔アーミタイル:ATK0
「三幻魔の…」
「融合体だと…?」
本来ならばフィールドの三幻魔を除外する事で特殊召喚される最上級・レベル12のモンスター。
其れをいともたやすく召喚するSinの速攻性はやはり凄まじい。
「Sinアーミタイルは特殊召喚に成功したとき自分の墓地のSinモンスターを全て除外する事で
除外したSinモンスター1体に付き攻撃力が5000ポイントアップする私の墓地のSinモンスターは10体…
その力、全て吸収しろ!『虚無幻影羅生悶』!」
「ウゴァァァァァァァ!!!!」
Sin混沌幻魔アーミタイル:ATK0→50000
「攻撃力50000!?」
「チートにも程があるだろ、オイ!」
「此れで終幕だ!Sinアーミタイルは1度の攻撃で相手モンスター全てを葬り去る!
ラストバトル!Sin混沌幻魔アーミタイルで攻撃!『全土滅殺天征波』!!」
――ゴバァァァァ!
光が辺りを包み込んだ…
――――――
――5年後の世界
「…遊星達は大丈夫かしら。」
尚も崩壊が止まらない世界にアキが不安げに呟く。
相変わらず空は灰色に濁り、周囲の建物は粒子となって消えていく。
「大丈夫よ。遊哉と遊星が一緒になれば誰も敵わないわ。」
車椅子に座りながら霧恵が答える。
怪我の状態からすれば喋るのだってつらいはずだ。
「だから、ね?2人を信じよう?」
「えぇ…そうね…」
「(遊哉、遊星…お願い、世界を…未来を守って…)」
――――――
「跡形も無く吹き飛んだか…」
朦々と立ち上る粉塵。
合計30万近いダメージが増幅されて現実のモノになるなど想像もしたくない。
「?何故デュエルディスクが強制停止しない…デュエルは終了したはず…!こ、此れは!!」
徐々に晴れていく粉塵。
そして鮮明になっていく景色。
「はぁ、はぁ…流石に痛ぇ…!」
「洒落にならないな…」
遊哉&遊星:LP1
其処にはライフポイント1で生存している遊哉と遊星が。
当然パラドックスは驚きを隠せない。
「貴様等、何故生きている!Sinアーミタイルの攻撃でライフは尽きたはずだ!」
「罠カード『ライフ・セイバーZEROT』を発動したんだよ。この効果で俺達のライフはこのターン必ず1ポイント残る。」
「だが、其れでも何故貴様等のモンスターは存在している!そのカードではモンスターは守れないはずだ!!」
「フィールドを良く見るんだな…緋渡の罠と同時に俺はこのカードを発動していたのさ。」
「そのカードは!」
遊星のフィールドで発動している罠カード、其れは…
「罠カード『ヴィクティム・サンクチュアリ』!俺のフィールドにスターダストが存在する場合に発動できる。
このカードは発動ターンのみ俺達のモンスターを戦闘及び効果での破壊から守る!」
2枚のカードによってぎりぎり生き残った。
だが状況は圧倒的に不利。
「無駄なあがきする。貴様等のライフは僅かに1ポイント。そして私のフィールドには攻撃力50000のSinアーミタイル!
もっと言うならばこのモンスターは相手モンスターの効果を受けない。アリオスの効果は通じないぞ!」
「だろうな…でもな、負けられないんでな。やっぱ如何有っても認めらんねぇ…」
「なに…?」
「俺は…人の命を踏み台にする未来なんざ認めねぇ!そして其れを平気で行おうとする貴様を認めないぜパラドックス!
何が未来を変えるだ!貴様のしてる事は自分の立てた仮説、そいつの正しさを証明する為に無意味な破壊を繰り返してるだけだ!」
「なにぃ!!貴様、私の大いなる計画を愚弄する気か!」
「緋渡の言う通りだ!さっきも言ったが貴様の誇大妄想で俺達の未来を好きになどさせない!!」
遊哉が吼える。
遊星も吼える。
絶対的逆境などこの2人には関係ない。
「未来は今生きている人間の作る物だ!俺のターン!!」
恐らくはこれが最終ターン。
故にこの引きに全てがかかっている!
「(来たぜ!)俺は魔法カード『龍皇団結絶対力』を発動!このターン『龍皇』は他のモンスターの攻撃力分自身の攻撃力を上昇させる!」
「エアトス、アリオス、星屑の龍、黒薔薇の竜よ、お主等の力使わせて貰うぞ!!」
炎龍皇−アグニ:ATK3900→14300
「更に手札の『スピリットブースター』の効果発動!このカードを墓地に送る事でフィールド上のドラゴン1体の攻撃力を2000ポイントアップさせる!」
「ウオォォォ!」
炎龍皇−アグニ:ATK14300→16300
「未だだ!『フェルグラントドラゴン』を墓地へ送ってアグニの効果発動!
手札のドラゴン1体を墓地へ送りその攻撃力分自身の攻撃力をアップさせる!」
「ヌァァァァァ…!」
炎龍皇−アグニ:ATK16300→19100
「魔法カード『解龍の儀式』!フィールドのドラゴン1体の攻撃力を倍にする!」
「ハァァァァァ!」
炎龍皇−アグニ:ATK19100→38200
「攻撃力38200…だがSinアーミタイルには遠く及ばん!所詮は無駄な足掻きだ!」
「確かにこのままなら敵わない…だが、未だ遊星のカードが残っている!」
「此れが俺達の希望だ!伏せカードオープン!罠カード『スターダスト・オーバー・ドライブ』!
俺のフィールドにスターダスト・ドラゴンが存在するときフィールド上のモンスター1体の攻撃力を3倍にする!」
「見事だ、不動遊星!!」
炎龍皇−アグニ:ATK38200→114600
「馬鹿な!攻撃力114600だとぉ!!!」
「跡形も無く消し飛ぶのは貴様の方だパラドックス!炎龍皇−アグニでSin混沌幻魔アーミタイルを攻撃!」
「我等の一撃で消し飛ぶが良い、救い難き愚者よ!!」
「「『インペリアル・オーバードライブ・バスター』!!」」
――ドガァァァァァァァァァァァ!!!!
「うおわぁぁぁぁ!馬鹿な…私の計画は間違っていたとでも言うのかぁぁぁぁ!!」
パラドックス:LP14500→0
圧倒的な力によって発生する時空震。
其れは遊哉達が帰還すべき事を伝える。
「まったく…少しは休ませろって。もう1度頼むぜ『異次元竜−トワイライト・ゾーン・ドラゴン』!」
「キョエェェェ!」
「スターダスト、『ヴィクティム・サンクチュアリ』を頼む!」
「クァァァァァ!!」
この時代に来たときと同様に2人は再び消えた。
――――――
「世界が…元に戻っていく…!」
霧恵達のいる世界では暗雲が晴れ、粒子となって消えていった建物が元に戻っていた。
其れは過去の世界で遊哉と遊星がパラドックスを倒した事を意味する。
「遊星達が勝ったのね!?」
「多分間違いない。(遊哉、遊星…アンタ達やっぱり凄いよ…)」
そして、時空の扉も開く。
「よっと…!」
「無事に帰ってこれたみたいだな。」
「何とかなりましたか…」
「2人ともご苦労だったな。」
精霊と共に帰還した遊哉と遊星。
其れに気付いた仲間たちが駆け寄ってくる。
勿論霧恵は車椅子を押してもらっているが。
「遊哉。」
「遊星!」
「おかえりー!」
「勝ったんだね!?」
「さっすが〜!」
平穏を取り戻した自分達の世界を見て遊哉と遊星も一安心。
「戻ってきたばっかりだってのに…ホントに休む暇も無いぜ。」
「だが、悪くないだろ?」
「当たり前だ。この世界こそが俺達の生きる未来なんだからな。」
「そうだな。」
「さて、折角だし帰還の歓迎を受けるとしますか。」
「そうしよう。」
2人もまた仲間たちの元へと歩を進めていった。
FIN
後書き座談会
遊哉「幾らなんでもやりすぎだろ…特に後編。」
吉良「何処が?」
遊星「先ずはパラドックスのライフだな。」
霧恵「あたしの怪我とか。」
アキ「パラドックスの切り札とか。」
遊哉「何よりラストの猛ラッシュはありえない!何だ攻撃力11万オーバーって!普通にありえねぇ!」
吉良「あぁ…まぁ確かにね。兎に角派手にしたかったのよ後編は。」
霧恵「あたしの重傷は?」
吉良「気にするな。大体生命活動を停止した人間が蘇生する世界だぜ?あのくらい大丈夫だろ。」
遊哉「コノヤロウは…」
遊星「しかし今回のキリリクは間違いなく最長じゃないのか?」
吉良「だね。何にせよデュエルを2つ入れたからね。如何しても長くなる。だから前・後編に分けたんだ。」
アキ「でも驚くべきはkouさんよ?」
霧恵「ほんとよね〜。これ執筆中に又キリ番踏んでったし。」
吉良「マジで驚きだ。彼にはキリ番サーチ能力があると認定するね。」
遊哉「何にせよ54000番完成だ。」
遊星「楽しんでもらえたなら、幸いだな。」
吉良「特に変なオチをつける必要もあるまい。54000番報告、」
全員「「「「「ありがとうございました」」」」」
座談会終了
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