グランセル城の空中庭園でランチタイムを過ごしたなのは達は暫し空中庭園の芝生に腰を下ろしてマッタリと過ごしていた――ヴィヴィオはなのはに膝枕をして貰っていて、クローゼがその頭を愛おしそうに撫でる。
血縁関係はマッタク無いが、なのはとクローゼとヴィヴィオの間には確かな『家族の絆』が構築されてたのだ。


「王様、ちょっとお邪魔するわよ!!」

「ドラゴンに乗って現れるとは、中々に派手な登場だなエステル?
 そしてエステルだけではなくアインスにヨシュア、京とノーヴェも一緒とな中々に豪華な面子じゃないか……KOFの優勝チームが揃っていると言うのもポイントが高いと言えるな。」

「其れは一体何のポイントなのでしょうか……」


其処にライト・エンド・ドラゴンに乗ったエステル達が現れ、其のまま空中庭園に着地。
グランセル城は一般にも開放されており、空中庭園も普通に見学出来るのだが、だとしても城の正門からではなく空から直接空中庭園にやって来たと言うのは、グランセル城の歴史の中でもエステル達が初めてだろう。


「竜を従えているとは、私が貸したドラゴンを呼ぶ笛は役に立ったようだな?
 光属性の上級ドラゴンとは、此れを呼び出したのはお前だなエステル?」

「え、どうしてわかったの王様?」

「此の面子で光属性のドラゴンを呼び出せるのはお前だけだろう?
 京は炎属性、ノーヴェは風属性、アインスとヨシュアは闇属性のドラゴンを召喚するだろうからな……保有魔力量だけならば私を上回るアインスがドラゴンを呼ぶ笛を使ったら一体ドレほどの闇属性のドラゴンが呼び出されるのか興味はあるが。」

「では実際に使ってみるか。」


――ブオォォォォォォォ!!


『ゴガァァァァァァァァ!!』
ブラック・デーモンズ・ドラゴン:ATK3200



「その結果、こんなドラゴンが来たぞ王よ。」

「どことなく進化前のヴァリアスを思わせる風貌だが……此れは相当に強いな。」


なのはの一言からアインスがドラゴンを呼ぶ笛を吹き、その結果としてなのはのヴァリアスをも上回る闇属性のドラゴンが呼び出され、其れからヨシュアと京とノーヴェもドラゴンを呼ぶ笛を吹いて、ヨシュアは闇属性のダーク・エンド・ドラゴンを、京は炎属性のタイラント・ドラゴンを、ノーヴェは風属性のスピア・ドラゴンを呼び出し、空中庭園は一時ドラゴンの品評会のような状態なったのだった。











黒き星と白き翼 Chapter69
『リベールの防衛力を徹底強化しましょう!』










空中庭園でのドラゴン品評会を終えたなのは達は謁見の間に移動して、エステルとヨシュアが今回の任務の詳細をなのはとクローゼに報告した。尚、ヴィヴィオは眠ったままだったのでミニマム状態のアシェルとヴァリアスに寝室まで運ばせておいた。

エステルとヨシュアからの報告で明らかになったのは、今回の遊撃士協会への依頼はダミーであり、其の裏にあった目的はエステル達を己の同士に加えると言うモノであり、更に其れを考えていた連中はリベールに戦争を仕掛ける心算だったの言うのだから驚きだろう。


「お前達を同士にしてリベールに戦いを仕掛け、そして私とクローゼを捕らえると来たか……ククク……ア~ッハッハッハ!!」


だが、其れを聞いたなのはは盛大に高笑いをして見せた。
だが其れは、決して相手を小馬鹿にしたモノではなく、絶対的な強者であるが故の自信に満ち満ちた高笑いだった。


「なのはさん、笑い事ではないと思いますが?」

「普通ならそうなのだが、此れを聞いて笑わずに居ろだと?ふざけるな、笑わせろ。
 そのプロフェッサーとドクターとやらがデュナンの事とライトロードの事に関わっていたのならばリベールがドレだけの戦力を有しているのかは知っている筈だ――にも関わらず戦いを仕掛けるとか、其れはもう蛮勇ですらない身の程知らずの無謀な挑戦だ。
 神魔である王と、聖女たる王妃を如何にか出来ると思っている時点で、そいつ等の浅はかさが分かると言うモノだ……何よりも、クローゼの中には最強無敵の精霊であるエクゾディアが居る事を忘れるな?
 ドレだけの軍勢だろうとも、クローゼがエクゾディアを解放すれば其れで終いなのだからな……私の嫁は間違いなく最強だ。
 魔力で構成されている私の靴の紐が切れたのは不吉と思ったが、如何やら其れは対処出来る程度の不吉だったらしい。」

「……確かに、私がエクゾディアを召喚すれば大概何とかなりますね。」


なのははこのリベールに絶対的な信頼と信用を置いていた。
リベールの国民は皆が生き生きとしており、遊撃士と軍が連携してセキュリティ面でも充実しており、そして各都市でその都市の特色を生かした発展をしており、其れもまたリベールの特徴だと言えるのだ――だからこそなのはは、リベールに攻め込むのは愚の骨頂だと考えていた。
リベールは五大都市が夫々異なる発展をしているだけでなく、その都市ごとに異なる強大な戦力を備えており、其れが結集した際のリベールの総戦力は、其れこそ大国を一日あれば陥落させる事が可能なのだから――クローゼの中に眠るエクゾディアを召喚すれば、正に敵無しと言えるだろう。


「確かに姫さんがエクゾディア召喚すれば大抵の相手は何とかなるか……カシウスさんは、アレを喰らってもケロッとしてるだろうけどな。」

「父さんだと、否定出来ないのよね其れが……」

「だが、この情報はとても良いモノだったぞエステル……リベールに戦いを仕掛けようとしてる輩が居ると言う事が分かれば、何時戦いを仕掛けられても良いように備える事が出来るからな。
 此度の事は、真に大儀だった。」


だがしかし、リベールに戦いを仕掛けようとしているモノが居ると言うのは重要な情報だっただろう。
其れを聞いたなのはは直ぐにリシャールに連絡を入れて軍の警戒態勢を強化すると同時に、飛空艇での警備も強化するように命じ、更にツァイスの中央工房に連絡を入れてリベールの領空、領海を監視するレーダー装置の開発を依頼しリベールの防衛力を高めて行ったのだった。








――――――








――ツァイス・中央工房


リベールの技術力の全てが集まっている此の場所にて、アルバート・ラッセルは頭を悩ませていた。原因はなのはから依頼されたレーダー装置の開発だ。
リベールの領空及び領海を監視するレーダーシステムの開発そのものは難しくはないのだが、なのはから『如何なるステルス機能をも見破れるシステムを頼む』と、中々の無茶振りをされていたのだ。


「お爺ちゃん、ヤッパリ王様からの依頼って難しいの?」

「いんや、単純に『ステルスを見破れるように』ならば大した事ないんじゃが、『如何なるステルス機能をも見破る』となると途端に難易度が跳ね上がるんじゃティータ。」

「如何して?」

「一口にステルスと言っても種類は豊富でな?
 レーダーに感知されないタイプのステルスはレーダーの電波を受けにくい平面構造の機体に、電波を反射せずに吸収する特殊な塗料が塗ってあるが、目に見えないタイプのステルスは周囲の景色を映像化した特殊なスーツを纏った光学迷彩じゃろ?
 認識阻害魔法を応用したステルスもあれば、プレシア・テスタロッサ女史の『時の庭園』の様な、異なる次元を移動するタイプのステルスも存在しておる上に、最近では目に見えない上にレーダーにも映らない『ミラージュコロイド』なるステルスも存在すると聞く。
 此れ等を個別に無効にする事は出来るんじゃが、全部纏めるとなると此れが中々に難しい。特に科学技術と魔法技術を合わせると言うのはワシも初めての試みじゃからなぁ……果たして戦術オーブメントの技術を転用しても巧く行くか……じゃが、久々に遣り甲斐のある仕事じゃよ!」


だがそれでも、新たな難問にめげずに挑むと言うのは流石は親しみを込めて『ラッセル博士』と呼ばれるだけあり、生粋の科学者であり技術者と言ったところだろう。
其れから中央工房の超高性能導力演算機『カペル』も駆使して最適解を見つけ出そうとするも、矢張りそう簡単には答えは出ない……孫娘であるティータが時折、『若さ故の柔軟な発想』を出してくれるのだが、其れを組み入れてみても中々巧く行かず、気付けば既に日は傾き始めていた。


「ラッセル博士、少し良いだろうか?」

「お邪魔するよ師匠!」

「爺ちゃん、ティータ、差し入れ持って来たよ~~!」


いい加減考えが煮詰まっていた所で現れたのは不動三兄妹。
長男の遊星と長女の遊里は、ラッセル博士から科学的、技術的な手解きを受けており、ティータを除けばラッセル博士から直に教えを受けた数少ない人物で、その技術力と化学力は今やラッセル博士を凌ぐとすら言われている程だ。


「わ~~、エルモ村の温泉饅頭!ありがとうレーシャちゃん!」

「差し入れは有り難いが……遊星、遊里、お前さん達は只差し入れに来た訳じゃないじゃろ?」

「勿論よ師匠。
 実は、中央工房だけじゃなくてアタシ達の修理屋にも連絡が入ったのよ。んで、兄さんと一緒に色々と考えてみたの――そしたら、見つけたのよ!ありとあらゆるステルスを見破る事が出来る方法が!」

「なんじゃと!?そ、其れは一体!?」

「科学技術だけでも、魔法技術だけでも難しかったが、其の間に俺達精霊召喚士が使うカードを入れてやる事で問題は一気に解決したんだ。
 『融合』のカードで夫々のステルスを見破る技術を融合させ、『魔法効果の矢』で夫々の機能をお互いに共有し、『団結の力』でネットワークを強化し、『人造人間サイコ・ショッカー』のカードでセキュリティを強固なものに出来る。」


そんな遊星と遊里は、まさかの『カードを組み込む』と言う方法でなのはからの難題をクリアして見せた。
科学者であり技術者で、精霊召喚士でもある此の二人だからこそ思い付いた方法なのだが、ラッセル博士がカペルでこの方法をシミュレートしたところ、見事になのはが求めていた性能をクリアする事が出来たので、此れはもうこの方法で制作するのは決定だと言えるだろう。


「まさかこんな方法で解決出来るとはのう?流石じゃなお前さん達は!
 じゃが、此れで行けると分かれば善は急げじゃ!工房の能力をフル稼働させるぞい!リベールの領空と領海を網羅するとなれば、最低でも五大都市に一つずつは設置したい所じゃからな!!」

「……此れ、若しかしてエルモ村の温泉饅頭じゃ差し入れ足りなかったパターン?」

「あはは……そうみたい。」


其処からは中央工房が能力をフル稼働させて試作機の開発が行われ、夜通し行われた作業の末に完成した試作機一号機は、見事にあらゆるステルス機能を見破っただけでなく、異次元に消えたレーシャの『銀河眼の光子竜』までも感知して見せたのだった。
そしてこの試作機の完成を持ってして量産体制に入り、完成した防衛レーダーは五大都市の遊撃士協会、各地にある関所、ハーケン門とレイストン要塞に設置されてリベールの防衛能力は格段に上昇したのだった。

同時になのはの命を受けたリシャールも空と海の監視艇のレーダーが異常を察知した際には直ぐに連絡が入る体制を整えており、領空に入って来た同盟国以外の外国艇には即スクランブル、了解に入って来た同盟国以外の外国艇には即巡視艇が向かう手筈になっていた。
そして其の際、警告を無視して領空、領海内を航行し続ける飛空艇や船は撃墜・撃沈する事も許可した――警告を無視するのならば、手加減など必要ないのである。

リシャールから其れを聞いたなのはは、同盟国以外の外国に、『リベールの領海、並びに領空に入った場合、警告に従わずに退去しなかった場合は、此れを撃沈、撃墜する』との旨を伝えていた。
こうして伝えておけば、『此方は通知しておいた』と言う大義名分が手に入り、仮に領空・領海侵犯をした上で警告を無視した相手を撃墜・撃沈しても、『ルールを破った上で警告を無視したのが悪い』と言い張る事が出来るのだから。
僅か九歳で天涯孤独となり、己の理想を叶えるために仲間を集めて生きて来たなのはは中々のしたたかさも身に付けているのだった。








――――――








リベールの防衛力が強化される中、ルーアンの『Devil May Cry』では依頼を終えたダンテとなたねが『アンチョビとペパロニ』のピザを堪能していた。
なたねが受けた依頼は『ジェニス王立学園の旧校舎に現れる悪霊の退治』、ダンテが受けた依頼は『マルガ鉱山に現れる魔物の退治』で、何方も下級の悪魔を蹴散らすだけの簡単なモノだったのだ。


「時に、ネロの奴が遅いな?アイツが受けた依頼は特別難易度が高かったか?」

「いえ、カルデア隧道に現れる悪魔の退治なのでネロならば余裕な筈ですが……確かに遅いですね?」


だが、別の依頼でカルデア隧道に向かっていたネロはまだ事務所に戻っていなかった。
ネロの実力ならば下級悪魔程度であれば苦戦する事は無く、其れこそルーアンから近い場所なのでもう戻って来てもオカシクないのだが……



――きぃ……



此処で事務所の扉が開き、ネロが入って来たのだが――


「なたね、オッサン……悪い、不覚を取っちまった……」


入って来たネロは満身創痍であり、悪魔の右腕が肘から下が完全になくなっていたのだ。
パワーだけならばダンテをも凌駕するネロが此処までやられるとは、余程の相手が居たのだろうが、事務所に入って来たネロは其れだけ言うと力尽きたのか倒れてしまい、意識が完全に飛んでしまっていた。


「ネロ?目を開けて下さいネロ!」

「坊主、お前さんが此処までやられるとは一体相手は何モンだ?……って、其れを考えるのは後回しだな!嬢ちゃん、取り敢えず右腕の切断面を焼き固めろ!此のままじゃ坊主は失血死しちまうからな!」

「了解です。」


意識を失ったネロの右腕の傷口をなたねが魔法で焼き固めて出血を止めると、ダンテはネロとなたねが使っていた車を使ってネロとなたねを乗せてルーアンの病院へとアクセルを吹かすのだった。











 To Be Continued 







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