遂にKOFのチーム戦も決勝戦の大将戦に。
デュナン時代からの武術大会からの三連覇が掛かっている京と、カルバートからやって来た飽くなき武の探求者であるリュウの戦いはKOFのラストバトルに相応しいと言えるだろう――京もリュウも此処まで無敗なのだから。


「遂に決勝戦か……何方が勝ってもおかしくない試合ではあるのだが、私がリベールの王となって初めての大会故、リベールの民である草薙京に勝って欲しいと思ってしまうのは、王としてあるまじき公平を欠く思いだろうか?」

「其れは、致し方ないと思いますよなのはさん……王と言えども人間ですので、自国民の勝利を願うのは当然の事ではないかと思います。」

「そうか……して覇王よ、お前は此の試合をどう見る?」

「準決勝で使った強化状態があるから草薙京……と言いたい所だが、正直予測が出来ないと言ったところだな。
 真っ向から戦えば恐らくは草薙京が優勢だろうが、もしも彼が過去二回の優勝でうかれて僅かばかりでも慢心しているのだとしたらリュウが圧倒的に勝つだろうな。」

「……僅かばかりの慢心でも、そんなモノがあったら準決勝で暴走した八神庵に喰い殺されてると思います。DSAAルールなので死なないでしょうが。」

「喰い殺すって……若干否定出来ませんね庵さんの場合。」

「奴は肉食獣か……」


貴賓席ではなのは達がこんな事を話していたが、フィールドでは京とリュウが向き合い、試合開始が宣言されていた事もあり何時何方が飛び出してもオカシクナイ状況である。
すると何を思ったのか、京は指先に炎を宿し……



――ボッ!



其れをリュウの顔を掠めるように飛ばす……普通ならば驚いてしまうところだが、リュウは微動だにしない。


「ふん、此の程度じゃ動じないか……本気で行くぜ!」

「受けて立とう……来い!」


そして京もリュウも一気に闘気を爆発させ、互いに一足飛びで距離を詰め京の横殴り気味のフックとリュウのストレート、リュウの足刀蹴りと京のミドルキック、京のアッパーとリュウの鎖骨割り、此れ等の技がかち合い、しかし何方かが押し切る事は無く互角の結果に。


「甘いな?」

「ふ、本気を出せ!」

「……燃やすぜ!」


だがこの攻防はあくまでも小手調べであり、本番は此処からなのだが、其れでも観客を湧かせるには充分なモノであり、グランアリーナは大将戦の序盤からヒート120%の状態となっていた。


「まさか草薙柴舟が出て来るとは予想していなかったね……山崎君は軍と遊撃士に顔を覚えられてしまったから乱入は最早望めないが、さて如何するかドクター?」

「安心してくれたまえプロフェッサー。
 策は二重三重に備えていればこそだ……『彼』の身体が完成したのでね、その身体を試運転して貰おうじゃないか?……精神体として存在している者の身体を作ると言うのは中々に貴重な経験だったね。」

「そうか、彼が……とは言え、決勝戦に水を注すのも悪いから、彼の登場は決勝戦が終わってからにしようか?……肉体がなくとも精神体となって生きる魔人ベガ、其の力、見せて貰うとしよう。」


そして其の裏では、プロフェッサーとドクターによって山崎の乱入以上の悪意が画策されていたのだった。











黒き星と白き翼 Chapter62
『The King Of Fighters Final Much!』










決勝戦・大将戦の戦いは序盤から全力の戦いとなり、先ずは近距離での激しい攻防が展開されていた。
ラッシュ力ならば京の方が上だが、リュウは京の攻撃を的確に捌きながら重い一発を繰り出す……が、京は其の攻撃を躱すとカウンターの肘打ちを繰り出す!完全なカウンターなので、これは対処し切れないモノなのだが……


「昇龍拳!」


リュウは其れに昇龍拳を合わせて京を吹き飛ばし、先にLPにダメージを与える結果になった。


「俺の拳を試すか!」

「ちぃ……!」


其処から再び近距離での格闘戦が展開され、互いの拳がかち合った衝撃で間合いが離れると、京は闇払いを、リュウは波動拳を放ち、そして其れは相殺して再度格闘戦に持ち込まれたのだが、今度は京がリュウの反撃を許さないレベルでの猛烈なラッシュ格闘を仕掛けて来た。
矢継ぎ早に放たれる流れるようなラッシュにリュウは直撃を喰らわないようにガードを固めたのだが、京は蹴り上げで強引にガードを抉じ開けると……


「ボディが、お留守だぜ!」


荒咬み→九傷→七瀬のコンボをブチかましてリュウを吹き飛ばす。昇龍拳で先手は取られたが、此れでイーブンと言ったところだろう。


「火達磨になりたいのか?」

「ふ、掛かって来い!」

「行くぜ……そりゃ、そりゃ、そりゃ!!」

「ふ、竜巻旋風脚!」


追撃として繰り出された朧車は、リュウが的確に捌き、技後の隙に竜巻旋風脚を叩き込む。
だが、其れで怯む京ではなく、空中で受け身を取ると奈落落としを繰り出してリュウをフィールドに叩き付け、追撃に砌穿を食らわそうとするが、リュウは其れを転がって回避すると、一気に気を高め、京もそれに呼応するように気を高める。


「真空……波動拳!」

「おぉぉぉ……喰らいやがれぇ!!」


放たれた大蛇薙と真空波動拳は、巨大な炎と極大の気功波がぶつかり合い、何方も退かずに拮抗した末に臨海に達したエネルギーが爆発して京とリュウの双方のLPを削る結果に。
爆発によって生じた煙によって一時的にフィールドは視界が効かなくなってしまったのだが、視界が回復すると同時に動いたのは京だった。


「うおぉぉぉりゃあ!燃えろぉぉぉぉ!!」


一気に間合いを詰めると、琴月 陽でリュウを派手に燃やす!
だが、リュウも負けてはおらず、空中で受け身を取ると其処から真空竜巻旋風脚を繰り出して京にダメージを与える――正に何方も一歩も退かない決勝戦の大将戦に相応しい戦いが展開されていると言えるだろう。


「このままじゃ削り合いの泥仕合か……なら、切り札を使わせて貰うぜ!」


此処で京が無式の力を己に融合した状態となり、髪が赤みを帯びその背には銀の炎の翼が現れる。


「其の姿、実際に対峙してみるとドレだけの力があるのかが良く分かるが、君のその姿が俺にヒントをくれた。」

「なんだって?」

「俺は、殺意の波動を宿している……そして俺は殺意の波動を制御出来ずにいた。
 一度殺意の波動に目覚めれば、その殺戮衝動に飲まれ、己の闘争本能のままに死の拳を振るっていた……故に、俺は殺意の波動を克服しようとしていたんだが、ドレだけ修行を重ねても殺意の波動を克服する事は出来なかった。
 だが、君がマギア・エレベアを応用した強化状態を披露したのを見て、俺は殺意の波動は克服しなくても良いのだと悟った……克服するよりも、殺意の波動も己の一部だと認めて、其の力を我が物とする事が正解なのだと。
 そして、辿り着いた答えが此れだ!」


だが此処でリュウも土壇場で辿り着いた『答え』を発動し、其の身に稲妻のようなオーラを纏う。
己の中にある殺意の波動を否定せずに受け入れ、そして其れを自らに取り込む事で己の力と化したのだ――一夏とは異なるが、リュウは殺意の波動を己の力として受け入れる事で『電刃錬気』の境地に至ったのである。


「一夏の奴とは違うが、電刃錬気って奴か……上等だ、俺の炎とアンタの雷、どっちが強いか勝負だ!」

「応!!」


炎の京と雷のリュウの戦いは此れまでよりも激しさを増し、銀の炎と金色の雷によって植え直した人工芝が瞬く間に焼け焦げてフィールドは土が晒されたのだが、京もリュウもそんな事はお構いなしに互いの力をぶつけ合う。


「受けろ、此のブロウ!!」

「真・昇龍拳!」


小細工無しの真っ向勝負は観客のヒートを更に高めて行き、アリーナの熱気は留まるところを知らないと言った感じで、観客席を回っている売り子の女の子達は一気に忙しくなった……ビールやドリンク、アイスの注文がひっきりなしに飛んでくるのだから。


「フィールドと観客席の間にある不可視のシールド、不動兄妹に依頼しなかったらとっくに吹っ飛んでいたかも知れんな……このシールドはエクゾディアの一撃すら防ぐのではなかろうか?」

「エクゾディアを防がれたら少し凹みますよ……」

「俺の断空拳を防げるかどうか試してみるか?」

「試さなくて良いです。大人しく観戦していて下さい兄さん。」


不動兄妹が作った観客席とフィールドを隔てている不可視のシールドが無かったらトンデモナイ事になっていただろうが、逆に言えばこのシールドがあるからこそ武闘家達は己の力を120%発揮出来ると言っても良いだろう。
正に手加減不要の全力の戦い。互いに高めた技と力のぶつかり合い。鍛え抜いた己の武を全てもってしての全開バトル……そして、互いに『負けられない。』、『勝ちたい。』と言う思いと意地の正面衝突!
天才型でも研鑽を怠らない京と、あくまでも泥臭くストイックに己を鍛えてきたリュウは全く逆の武闘家人生を歩んで来たが、何方も格闘技に対する真剣さは同じで、真逆の武闘家人生を歩んで来たからこそ、いざ試合となるとこの上なくかみ合うとも言えるだろう。


「へへ、八神との戦い以外は最近退屈な戦いばっかりだったんだが、アンタとは久しぶりに楽しい戦いが出来たぜ……泥臭く鍛えた拳ってのも中々良いモンだ。」

「君こそ、その若さで大したモノだ……伝説にその名を残す草薙の拳、堪能させて貰った。」


だが、試合である以上は何時かは終わりが来るモノであり、強化状態で殴り合っていた京とリュウのLPは互いにオレンジゾーンとなり、大技が一発決まれば其処で終わりと言うところまで来ていた。
互いに持てる技は略出し切った状態なのだが、此処でリュウが腰を落としてスタンスを広めにとって拳を構えた。――そう、二回戦で極限流チームのリョウ・サカザキを下した『風の拳』の構えだ。


「風の拳、だったか?」

「今の俺が放てる最高の一撃必殺。此の拳、受けてくれるか?」

「良いぜ……なら、俺もソイツには応えないとな!」


其れに対し、京は強化状態の力を右の拳に集中させて銀色を帯びた紅蓮の炎を拳に宿すと、腰を落として体を捻って振りかぶるように拳を構える――無式と並ぶ草薙流のもう一つの最終決戦奥義『十拳』の構えだ。
そして互いに拳を構えた状態で闘気を高め、同じタイミングで拳が繰り出された!
互いの右の拳がぶつかり、しかし何方かが押し切る事は無く完全な拮抗状態となって拳の一点による押し合いに!
点をずらして一撃を加えると言う選択肢もあるのだが、京もリュウもそんな考えはなく、この拳の一点による押し合いを制してこそ真の勝利だと考えており、だからこそ真っ向から其の力をぶつけ合う。


「(俺は見たい、この拳の先に何があるのか……だから、俺は勝って見せる!)」

「(コイツはマジで強いな……だが、八神にあぁ言った手前、俺に負けは許されねぇ……だから勝たせて貰うぜ!此処で、一気に力を解放してやる!!)」


互いに己の意地をぶつけ合う力比べは、此処で京が動いた。
右の拳に集中していた力を一気に解き放ち凄まじいまでの炎が拳から吹き上がる!


「!!」

「おぉぉぉぉぉ……燃え尽きろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


其のまま京は一気に拳を振り抜き、同時に凄まじい爆炎が巻き起こり、グランアリーナのフィールドを包み込み、更に空に向かって炎の渦が立ち昇る!……グランアリーナの上空を飛んでいた数羽の鳥が焼き鳥になってしまったが、此れは不可抗力と言えるだろう。

その凄まじい爆炎が治まると、フィールドでは拳を振り抜いた状態で京が立っており、リュウはフェンスまでフッ飛ばされてダウンしLPがゼロになっていた……KOFの決勝戦は此処に決着したのだ。


『けっちゃーく!!The King Of Fighters第一回大会のチーム戦を制したのは、エステル・ブライト、アインス・ブライト、草薙京のロレントチーーーム!!』

「へへ……燃えたろ!」


此れにてエステル、アインス、京の三人はデュナン時代の武術大会から合わせての大会三連覇となり、KOFの初代王者チームとなったのだった。


「……負けてしまったか……」

「アンタが電刃錬気にもっと早く開眼してたらヤバかったかもな……今回は、強化状態の練度で俺の方が上だった、勝敗を分けた要因を上げるとすれば多分それだろうな。つか、其れ以外に思い付かねぇ。」

「なら、更に修行を積んで己を高めるのみ……また俺と戦ってくれ。」

「あぁ、楽しみにしてるぜ!」


身体を起こしたリュウに京が近付き、リュウも起き上がると、互いに拳を合わせた後にガッチリと握手を交わして再戦を約束し、その瞬間に会場からは割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こる。
こうしてKOFの第一回大会は全ての試合が終わり、残るは表彰式と閉会式のみで、其れが終われば王城と王城前の広場を解放した後夜祭が行われるのだが――


「教授とドクタァはなぁかなかの身体をぉ用意してくれたようではぬぁいか……其のちかるぁ、さっそくたぁめさせてもらうとすぃよう!」


此処でグランアリーナの上空から赤い軍服の様な衣装に身を包んだ男が闇色のオーラを纏ってフィールドに降り立った――此の男こそが、プロフェッサーとドクターが山崎以上の乱入者として用意していた魔人、ベガ。
気や魔力とも異なる『サイコパワー』を操り、そのサイコパワーに己の意思を宿し、例え肉体が滅んでもサイコパワーの状態で生き続け、新たな身体に宿る事で更なる力を発揮する不滅の魔人が、最高の試合が終わったグランアリーナのフィールドに降臨したのだった。










 To Be Continued 







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