グランセル城の地下空間での最深部での戦いはその激しさを増していた。
帰天したフィリップはダンテが対処しているのだが、無数のアンジェロは一夏達が対処しており、圧倒的な数の差が有るので実力では勝っても楽勝とは言えない状況となるのが普通なのだが……


「おぉぉぉ……喰らいやがれ!!」

「むぅぅぅん……楽には死ねんぞ!!」

「オォラァ!イグニス、ブレイク!!」


京、庵、志緒の炎使い三人が無双していた。
京が大蛇薙でアンジェロを薙ぎ払えば、庵が八酒杯でアンジェロの動きを封じた所に、志緒のイグニス・ブレイクが炸裂してアンジェロを鎧袖一触!同じ属性ってのは、普通はバランスが悪いモノなのだが、此の三人に限ってはその限りではないのだろう。


「ヨシュアさん、あの三人とオッサンだけで如何にかなるんじゃないかと思っちまうってのは流石に期待し過ぎか?」

「其れは仕方ないよ一夏。僕も少しだけそう思ったからね。」


一夏だけでなく、ヨシュアもそう思ったのならば其れは間違いなかろうな……実際に、炎組が無双しているだけじゃなく、ダンテは帰天したフィリップと互角以上に遣り合っている訳だからね。
帰天したフィリップの攻撃は正気を失っているとは思えない程に苛烈で緻密なモノだったが、便利屋仲間の間で生きる伝説となっているダンテは焦る事なく冷静に其れを捌いて行く……便利屋&デビルハンター稼業を初めて三十年近い経験と言うのは伊達ではないのだ。


「やるじゃないか爺さん。此れだけ骨のある相手ってのは久しぶりだ。
 だからこそ、悪魔なんて言う掃き溜めのゴミに堕ちちまうのは勿体ないってモンだ。俺が本気で遣り合ってみたいと思ったなんてのは、アンタで三人目だが……出来れば悪魔としてじゃなく人間のアンタと遣り合いたい気分だぜ。
 なぁ爺さん、アンタのその剣の腕は何の為に磨いたモノだ?少なくとも、デュナンのクソみたいな野望を達成させる為のモノじゃなかった筈だ。違うか?」

「…………」

「……アンタ自身も其れは分かってるが、もう自分じゃ如何にも出来ないって感じか。なら安心しな、今俺が助けてやる――悪魔になっちまった奴を助けるなんて事は何時もはしないんだが、アンタに限っては特別だぜ?」


其処まで言うと、ダンテはスパーダをフィリップに向かってブーメランのように旋回させながら投げ付ける……ラウンドトリップと言う剣技の一つであり、剣と他の攻撃との波状攻撃を行う為の技だが、スパーダで其れを使った場合は攻撃範囲が非常に広くなり剣が対象以外も巻き込む効果が大きくなるのが特徴だ。
現に、フィリップの近くに居たアンジェロは巻き添えを喰らって切り刻まれているのだ……フィリップは左腕の盾でガードしているが。しかし、其処にギルガメスと言う近接格闘用の武器を装備したダンテが突撃し、ストレート→ボディブロー→ミドルキック→後回し蹴り→ハイキック→踵落とし→ジャンピングアッパーのコンボを叩き込んでフィリップを吹き飛ばし、スパーダをキャッチするとスティンガーからの連続突き『ミリオンスタブ』を喰らわせてフィリップが纏う鎧を切り刻み、トドメに渾身の兜割りを決めてターンエンド。
この猛攻を受けたフィリップは鎧が砕け、そして帰天も解除されて人の姿に戻る……気を失っているようだが、目が覚めた時には正気を取り戻している事だろう。ダンテもスパーダをリベリオンに戻して、『何とかなったか』と言った表情だ。


「オジ様の方は何とかなったみたいね?なら、私達は残りをお掃除しちゃいましょ。」

「そうしましょうかレン?皆、全力で行くわよ!!」


此れで残るはアンジェロ達だけなのだが、エステルが仲間を鼓舞し、更に全員に加速魔法『ヘイスガ』を掛けて強化した事で戦況は有利になるだろう……なのはと出会ってから魔法を習得したばかりのエステルの魔力をすり減らす高度な魔法だが、その効果は充分で、元々普通よりも遥かに速かったヨシュアの動きは、もうあり得ないレベルのモノになってしまっている位である。
取り敢えず、地下最深部大アリーナでの戦いは、ゴールが見えたと言った感じになったのだった。










黒き星と白き翼 Chapter23
『地下空間の最奥部~Final Round~』










変異した最奥部の空間……『魔天』とも言うべきその空間では、リベールを巡る戦いの最終決戦が行われていた。
戦いには無関係であるナイアルとドロシーは、ガラスの様な透明なシールドに包まれているが、此れは最奥部が『魔天』へと変わった直後になのはが二人を保護する為に張ったモノだ。自分とクローゼが全力で戦えるように、非戦闘員である二人を安全圏に置いたと言う事だろう。戦場に於いて、報道者の安全を確保するのも大事な事なのである。


「オイオイ、俺達は一体何を見せられてるんだ?
 デュナンが人間じゃなくなっちまったのは理解したし、なのははそもそも神族と魔族のハーフだからトンデモねぇ力を持ってるのもマダ分かる。だが、クローディア殿下は普通の人間だった筈だろ!何だって、あんなスゲェ威力のアーツを連発出来んだ!?しかも駆動時間略ゼロで!!」

「なのはちゃん達と一緒に居る間に滅茶苦茶強くなっちゃったんじゃないですかね~~?王族の方々は強い魔力を其の身に秘めているって話ですし~~~。」

「其れを言ったら身も蓋もねぇけどよ!?」


戦いの方は、デュナンが額や胸にあるクリスタル状の部分からビームや巨大な魔力弾を放ったり、両手から細かい槍のような魔力弾を放って攻撃し、対するなのはとクローゼは其れを回避しながら直射砲やアーツを放っていた。
なのはとデュナンの攻撃も強力だが、アウスレーゼの血が覚醒して上級神族に近い魔力を手に入れたクローゼのアーツもまた強力であり、人間が放てるアーツの現在の限界値を遥かに超える威力だった。ナイアルが驚くのも当然と言えば当然だろう。


「ストームプロミネンス!!」


更にクローゼは、複数アーツの同時発動と言うトンデモナイ神技をも使って来た。
複数のアーツを同時に使うと言うのは理論上は可能だが、同時使用数が多ければ多い程駆動時間が長くなるので普通はやらない事し、そもそもやろうとすら思わないのだが、クローゼは略駆動時間ゼロで全てのアーツを使う事が出来るようになっている為、最上級アーツの複数同時使用が可能になっているのだ。
なのはの魔法も、クローゼのアーツも、夫々が必殺の威力を誇っており、並の相手だったら余波を受けただけで派手に吹っ飛ばされてシャレにならないダメージを受けるのは間違いないだろう。

だが、其の攻撃はデュナンに着弾する前に波紋のように搔き消えてしまう……そう、デュナンは其の身を不可視のバリアで包んでいるのだ。
悪趣味な像と合体して巨大化したデュナンだが、巨大化はメリットとデメリットがハッキリしている形態変化だ。
巨大化した事で得られるメリットは単純に攻撃力の増加が先ず挙げられるだろう。巨大化すれば、普段は牽制に使われるジャブやロ―キックも必殺技になるだけではなく拳や足を振った際に生じる風圧ですら武器になるのだから。
しかし攻撃力が爆増した反面、巨大化した事で全体の動きが重くなって技を見切られやすい上に、相手の攻撃を回避し辛いと言う途轍もなく大きなデメリットを有してるのが巨大化だ。相手からしたら、的がデカくなったので当て放題な訳である。

そのデメリットがあるからこそ、デュナンは体術を一切使わずに、そしてその身をバリアで包んで戦っているのだ。自分は安全な場所から攻撃出来ると言うのは、アドバンテージがあるってレベルではないだろう。


「マッタク持って厄介なバリアだが、逆に言えばそのバリアさえなくなってしまえばコイツは丸裸と言う事でもあるか……バリアを破壊する方法ならば幾らでもあるが、此処はシンプルながらも効果があるので行ってみるか。
 クローゼ、私の攻撃を追え。」

「攻撃を?……成程、そう言う事ですか。行きましょう、なのはさん!」


バリアに包まれたデュナンに対し、なのははバリアを破る方法を決めると、デュナンにバレないように暈かしてクローゼに伝えると、クローゼもなのはの考えを理解したらしく、頷いて了承の意を示す。正に以心伝心と言う奴だ。十年前に繋がり、十年の時を経て結ばれた絆は伊達ではないのである。
其処からなのはとクローゼは、デュナンの攻撃を回避しながら魔法とアーツを放って行ったのだが、此れまでとは違ってなのはが攻撃した場所をクローゼが攻撃すると言う一点集中攻撃に切り替えていた。
そう、此れこそがデュナンのバリアを突破する為になのはが選んだ方法だ。
全てのモノがそうであるように、魔力で構成されたバリアもまた同じ場所に何度も衝撃を与えられたらその部分が脆くなって、何時かは壊れてしまうのだ……東方には『雨垂れ岩をも穿つ』と言う言葉があるが、なのはとクローゼは正にそれをやろうとしているのだ。
無論、其れはデュナンにも気付かれる可能性はあるが、なのはは時折誘導弾で別の場所を攻撃して本命を悟られないようにすると言うトリックプレイも織り交ぜているのでデュナンは真の思惑には気付く事が出来ていないようである。


「無駄無駄!お主等の攻撃は余には通じん!諦めて大人しく余の前に平伏するが良い!」

「偉そうに吼えるなよぶくぶく太った醜い野豚が。豚は豚らしくブヒブヒ鳴いていろ。……いや、豚は意外と知能が高く、実は体脂肪率は低いのだったな。貴様を豚と言うのは豚に失礼だったな。豚にお詫びして訂正しておかねばだ。」

「叔父様、その余裕が続くのも此処までです。」


仕上げになのはが三連射の直射砲を、クローゼが時・幻・空の最上級アーツを同時に放って、デュナンを覆っていた不可視のバリアを完全に破壊する……破壊された瞬間にだけ、ガラスが砕け散ったように見えたと言うのは若干謎ではあるが。
だが、此れでデュナンを守るモノは無くなり、なのはとクローゼの攻撃は有効になる訳だ。


「馬鹿な、余の防御壁が破られただと!?……あちこち攻撃している様に見せかけて、実は一箇所を集中攻撃していたと言う事か……小癪な!」

「戦いの素人では気付く事は出来なかったようだな?
 それにしても三連射の直射砲……なたねの得意技を見様見真似でやってみたが、成程これは中々に使えるな?連射するだけに一発一発の威力は低くなるが、総合的な威力は単発の直射砲を上回ると言う事か。
 何にしても、此れで貴様は丸裸だ。覚悟は出来ているなデュナン!」

「今此処で、貴方を倒します叔父様!」


バリアが無くなってしまえば、なのはとクローゼは攻撃し放題だ。
巨大化した相手と言うのは、ある意味で『何処に打っても当たる』的でしかないのだ……勿論、巨大化した事で耐久力も上がっているので、そう簡単に倒す事は出来ないのだが、攻撃が当て放題と言うのは此の上ないアドバンテージとなるだろう。


「ディバイィィィン……バスター!!」

「カラミティテンペスト!!」

「グヌオォォォォ!!」


なのはとクローゼの攻撃を真面に喰らったデュナンの巨体は揺らぎ、決して安くないダメージを負ったみたいだが、其れでもデュナンは態勢を立て直すと、胸のクリスタル状の器官から強烈なビームを放つ!
このビームも、真面に喰らったら一撃で戦闘不能にされるのは間違いなく、それこそ一撃でグランセル城を灰燼に帰す事が出来る破壊力があるだろう。


「其の攻撃は拒否します!アウスレーゼ防御の奥義、聖なるバリア-ミラーフォース!」


そのビームも、クローゼが張ったミラーバリアに跳ね返されてデュナンの胸のクリスタル状の器官を貫く結果に……そしてその効果は絶大だった。
デュナンの額と胸に存在するクリスタル状の器官は、デュナンの魔力を増幅させるモノであると同時に、デュナンの生命力が集まっている弱点でもあったのだ……その弱点を貫かれたデュナンは苦しんだが、その次の瞬間には右腕を大きく振り下ろして無数の隕石を降らせて来た。
なのはもクローゼも、其れを華麗に回避して行くが、その中で回避不能レベルの巨大な隕石が降って来たので、なのははクローゼを抱き抱えるとバリアを張って隕石を防ごうとする。
が、バリアは破られずとも、隕石の圧力には勝てずに其のまま魔天から叩き落される事に。


「ガハ……くぅぅ、流石に効いたな此れは。」

「あの、大丈夫ですかなのはさん?」

「人間だったら死んでいただろうが、魔族と神族のハーフである私には、此の程度の事では致命傷にはならんさ……それよりも、私にとってはお前の無事の方が遥かに重要な事だよ。怪我はないかクローゼ。」

「なのはさんがクッションになってくれたお陰で、この通り無傷です。」


辿り着いた先は、先程までとは打って変わって、マグマが煮立っている火山が複数存在している場所だった。先程までの空間が『魔天』と言うのでれば、今度のステージは差し詰め『魔獄』と言った所か。
そんな場所に、なのはとクローゼに遅れてデュナンは姿を現した。つまりは、最終決戦の第二ラウンドと言う訳である。


「第二ラウンドか……良いだろう、此処に貴様の墓標を建ててやる。自らが用意したマグマに焼かれて死ぬが良い。」

「此処で終わりにさせていただきます、叔父様!」


なのははレイジングハートを、クローゼはレイピアをデュナンに向けて終幕を宣言する……此れは、第二ラウンドではなくファイナルラウンドであると言う事だろう。リベールを巡る戦いも、いよいよクライマックスである様だ。








――――――








なのはとクローゼがデュナンと遣り合ってる頃、一夏達の方も戦局が動いていた。
全てのアンジェロを倒したのだが、その直後に倒したアンジェロが鎧ごとドロドロに溶けだして、そして一つに纏まった何とも形容し難い異形のモンスターへと変貌してしまったのだ。
巨大な身体には無数の触手が生え、身体のあちこちに目が存在していると言う、生理的に受け付けない見た目をしているのだ。


「何でそうなるんだよ……こう言っちゃなんだが触りたくねぇな?」

「混沌其の物と言った所か……触ったら手が腐りそうだ。」

「煮ても焼いても食えそうにねぇが、だからと言ってグダグダ言ったって始まらねぇでしょう?京さん、アインスさん、俺が先陣を切らせて貰いますよ!」


そんな相手に先ずは志緒が突撃!
迫りくる触手を切り払いながら近付き、本体を一閃すると、其のまま連続で斬り付け、ハイジャンプから落下速度と体重をフルに乗せた一撃を叩き込む!と同時に、洸、璃音、明日香、空、祐騎、美月とBLAZEのメンバーが次々と己の最大必殺技を叩き込んで行く。


「取って置きを見せてあげる!はぁぁぁぁ!……まだまだぁ!奥義、太極輪!」

「行くよ!ハァァァァァ……秘技、ファントムレイド!……そのまま眠って良いよ。」

「此れに耐えられるかしら?」


続いて、エステルが棒術具で遠心力たっぷりの一撃を喰らわせた後に棒術具にエネルギーを集中させてから超高速移動して敵の周囲に巨大なエネルギーの渦を発生させてダメージを与え、ヨシュアは分身が見えるほどの超高速移動から目にも映らない超高速の連続斬りを決め、レンは大鎌を一閃して切り裂く。


「行くわよロラン!氷河……」

「風神……」

「「波動拳!!」」

「行きます!はぁぁぁぁぁ……せいや!」

「トルネード!どりゃぁぁぁぁぁ!せい!」


休む間もなく、刀奈とロランが合体波動拳を叩き込み、ヴィシュヌは一足飛びで敵との間合いを詰めると、無数の蹴りを叩き込んでから変則の二段飛び蹴りを喰らわせてフィニッシュし、グリフィンは拳と蹴りの乱打の後に変形式の竜巻旋風脚をブチかます。
此れだけでも充分なダメージだが、此れで終わりではない。


「おぉぉぉぉ……燃え尽きろぉ!!」

「精々苦しみ藻掻くが良い!」


京が最終決戦奥義・十拳を、庵が裏百式・鬼焔を叩き込んで派手に燃やす!特に京は、草薙流の究極奥義の大盤振る舞いだ。……無式ではなく十拳を使ったのは、相手がオロチではなかったからだろう。


「此れでも喰らえ!サンダーボルト!!」


更にアインスが追撃の雷を叩き込む……此れだけの猛攻を喰らってもまだ消滅しない敵のしぶとさには、いっそ感心しても罰は当たらないだろう。帰天した兵士の成れの果てと言うのは、思った以上に頑丈である様だ。


「そのしぶとさは褒めてやるが、往生際が良くないのは褒められたモノじゃないな?そろそろ大人しく眠っときな。せめて良い夢が見れるように、俺が手伝ってやる。」

「もう終わりにしようぜ。」


息を吐く暇もなく、ダンテが連続斬りからのミリオンスタブに繋ぎ、大振りの斬り付けを叩き込み、一夏は鞘当て→鞘打ち→居合いのコンボを決めてから逆手の連続居合いを喰らわせ、最後にゼロ距離での電刃波動拳をブチかましてターンエンド。

だが、此れだけの攻撃を喰らってもまだ敵は戦闘不能にはなっていない……複数の帰天した兵士が融合した事で、生命力が予想以上に爆増しているのだろう。だとしたら何とも面倒な相手なのだが……



――キィィィィン……



突如、その場に魔法陣が現れたと思ったら……


「アシェル!ヴァリアス!アレをフッ飛ばして!!」

『ガァァァァァァァ!!』

『グゴォォォォォォォ!!』



中階層に居た筈のヴィヴィオと、ヴィヴィオを守っていたヴァリアスとアシェルが現れ、ヴィヴィオの命を受けた二体のドラゴンは強烈な火炎弾とブレスを放って、混沌とした敵を粉砕!玉砕!!大喝采!!!
如何にしぶとい敵であっても、上位のドラゴンの必殺攻撃を受けたら一溜りも無かった様だ。


「最後の最後で美味しい所を持って行くとか、やるじゃないかお嬢ちゃん。」

「目が覚めたんだな?……てか、お前転移魔法使えたんだ?」

「私は一通りの魔法は使えるんだ……そう言う風に生み出されたから。」


中階層で目を覚ましたヴィヴィオは、転移魔法で最下層までやって来たのだ……デュナンに、生体兵器として生み出され、兵器としての性能だけを求めた結果、あらゆる魔法を使えるようになったヴィヴィオだが、其れをこんな形で使う事になるとはヴィヴィオ自身も考えていなかっただろう。
だが、其れはなのはとクローゼがヴィヴィオを兵器ではなく、一人の人間として受け入れたからこそ起きた事だろう……目を覚ましたヴィヴィオは、二人の『ママ』が居ない事が不安になり、なのはとクローゼの魔力を探して、そしてこの最下層に転移して来たのだから。


「其れよりも、ママは、ママは何処?」

「慌てるなよ嬢ちゃん。お前さんのママ達は、悪いオジサンを懲らしめてる真最中だ。心配しなくても、お前さんのママ達は滅茶苦茶強いから、きっと直ぐに悪いオジサンを懲らしめて戻って来る筈だ。
 だから、ママ達が戻って来たら最高の笑顔で出迎えてやるんだ。出来るかい?」

「うん!」


少し不安そうなヴィヴィオに、ダンテは『心配するな』と言う感じで接すると、ヴィヴィオは安堵の表情を浮かべる。
直に遣り合ったからこそなのはの実力は分かっているし、取り巻きの悪魔を一掃したクローゼの実力も分かっているので、自分以外の誰かが『なのはとクローゼならば大丈夫だ』と聞ければ其れだけで安心出来るってモノだったのだろう。

その後、一行は最奥部に進もうとしたのだが、最奥部への入り口には強固なバリアが張られて、先に進む者をシャットダウンしていた。
そのバリアは、ダンテがゼロ距離でショットガンを叩き込もうと、志緒がイグニスブレイズを叩き込もうと、京が大蛇薙を、庵が闇剥ぎを叩き込もうとビクともせず、一夏が切り札の零落白夜をブチかましても砕ける事はなかった。恐るべき堅さである。


「コイツは、如何やらなのは嬢ちゃんとクローゼ嬢ちゃんがデュナンをぶち倒すか、あるいはデュナンが二人を倒すまで解除されないみたいだな……って事は、俺達に出来るのは、嬢ちゃん達の勝利を願う事位しかねぇって訳だ。」

「く~~……歯痒いわね其れ!きっとアタシ達がなのは達に加勢すれば、あっと言う間に決着する筈なのに~~!!」

「焦っても仕方ないよエステル。僕達は、あの二人を信じて待とう。」


であるのならば、バリアの向こうで行われているであろう戦いを行っているなのはとクローゼの勝利を願う以外に出来る事はないと言えるだろう……このバリアが解除された時に現れるのが誰であるのか、其れによってリベールの未来は決まると言っても過言ではないだろう……………











 To Be Continued 







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