港から上陸した主力部隊は、多数の悪魔と交戦しながらも、其れを全て退けてグランセルの市街地に突入し、リシャール率いる情報部の方も正面入り口を制圧して市街地に突入したのだが……


「鎧を纏った騎士……王国軍の精鋭が出て来たのか?」

「いや、ありゃ悪魔だぜ坊主……あの鎧の中には、無数の悪魔の魂が詰め込まれてやがる。――ムンドゥスの野郎も大概なクソッタレだったが、デュナンも負けず劣らずのクソッタレみたいだな?」


其処で一行を待ち構えていたのは、純白の鎧に身を包んで盾と槍を装備した兵士と、薄い金色の鎧に身を包んで剣を装備した兵士だった。
外見だけを見れば、王国軍の精鋭に見えるが、悪魔専門のハンターであるダンテが言うには、此れもまた悪魔であるとの事。しかも、鎧の中に複数の悪魔の魂を詰め込んだ存在だと言うのだから、トンデモナイ事この上ない。
其の力は上級悪魔にも匹敵するだろうが、だからと言ってこの面子が苦戦するかと言われたら其れは否だろう。
稼津斗、カシウス、ダンテと言った絶対強者は言うに及ばず、反抗軍のメンバーは全員の戦闘力が極めて高いので、余裕で新たに現れた悪魔をも屠って居るのが現実だ――デュナンが作った悪魔は決して弱い存在ではないのだが、しかし反抗軍の戦力は其れを遥かに上回っていたと、そう言う事なのだろう。


「にしても数が多いな……一体何処にこんだけの悪魔を飼ってたんだよデュナンの奴は?如何考えたって城に入り切る量じゃねぇだろ此れは……!」

「何処かから呼び出しているとでも言うのか?」


だがしかし、如何せん数が多過ぎる。京が言ったように、現れる悪魔の数が、城の許容量を遥かに超えているのだ……仮に、グランアリーナに収容しているにしても収まり切る数ではないのだ。
如何に実力的に負ける事はない相手でも、倒しても倒しても現れると言うのは厄介な事この上なく、最悪の場合は反抗軍の方が先に疲弊してしまうだろう。


『皆、聞こえる?悪魔達が何処から現れるのか分かったよ。』


しかし、此処でレイストン要塞でバックアップに回っている簪から、反抗軍全員に広域通信が入り、『悪魔の出現場所が分かった』と伝えて来た――レイストン要塞に残った簪は、自身の携帯端末で王都中にある防犯カメラをハッキングしてその映像から、何処が攻め入り易いか等の情報を分析していたのだ。


「簪、其れは何処だ?」

『街中に、黒くて大きな石板みたいな建物があると思うんだけど、如何やら悪魔は其れをゲートにして、別の場所から王都にやって来てるみたい。
 ゲートの数は全部で三つ。東街区、西街区、北街区に夫々一つずつだね。』


「成程、何処かで見た事があると思ったら地獄門だったか……あんなモンまで作っちまうとは、こりゃ最悪の場合、デュナン自身が悪魔の力を身に付けちまってるかも知れねぇな?」

「悪魔の力って、マジかよ……つか、そんな事して平気なのか?」

「巧く制御出来ればな……制御出来なかったら、悪魔に魂喰われてそんで終いだ。……まぁ、今のデュナンは人の姿を保ってんだから制御は出来てんだろうけどな。」


簪が言った建物は直ぐに見つかり、其れをよく見ると、確かに其処から悪魔が現われていた……戦いに集中していて気付かなかったと言う事なのだろうが、灯台下暗しとは正にこの事であろう。
だが、悪魔が何処から現れているのか分かってしまえば話は早い。其れを破壊してしまえば、少なくとも王都に現れる悪魔は、建物――地獄門を破壊するまでに現れた数を上限にする事が出来るのだから。


「そんじゃ、地獄門を破壊する為のチーム結成だが……鬼の兄ちゃん、此の坊主達を少し借りて良いか?ちょいとばかり、コイツ等と一緒に遊びたくなっちまった。」

「一夏達が其れで良いと言うのならば俺は何も言わん……が、少なくともお前の足手纏いにだけはならん位には鍛えてあると自負している。」

「アンタが何を考えてるかは分からないけど、俺達で良いってんならご一緒させて貰うぜオッサン?皆も其れで良いか?」

「「「「勿論!」」」」

「私とマドカは此処に残るよ一夏。地獄門は、お前達に任せる。」

「私達は露払い……頼んだぞ、兄さん。義姉さん達もな。」

「おうよ、任されたぜ夏姫姉、マドカ!」

「其れじゃあ、行くわよ皆!」


結果、地獄門破壊のチームが結成され、西街区は稼津斗とレオナとサイファーとリシャールとアガットが、東街区は京とブライト三姉妹とヨシュアと庵が、北街区はダンテと一夏と一夏の嫁ズが担当する事になり、残りのメンバーは引き続き王都に現れ続ける悪魔との戦いを続ける事になったのだった。










黒き星と白き翼 Chapter19
『Destroy the hell gate!Break it down!』









・王都グランセル:西街区


西街区の地獄門は、北街区に続く通路付近に設置されており、稼津斗達一行は群がる悪魔を蹴散らしながら地獄門へと辿り着いた……彼等を無視して飛んで行った悪魔も居るが、其れ等は西街区で戦闘中の反抗軍のメンバーが倒してしまうだろうから問題はない。


「近くで見ると凄まじい大きさだ……これを破壊するのは、些か骨が折れそうだが……」

「地獄門なんて大層な名前だが、所詮は人の作ったモノだろう?ならば壊せないなどと言う事はあり得んだろうよ……尤も、そう簡単に壊させてはくれんようだがな?」

「まぁ、こんだけ大相なモンだから、門番の一匹くらいは居るだろうよ。」

「……来る。」

「……」



『シャァァァァァァァァァァァァ……!』



そんな彼等の前に、地獄門から巨大な何かが飛び出して来た。
長大な身体の其れは、一見すれば巨大な蛇、或は龍の様だが、上空から彼等の前に降り立つと、頭部の部分がまるで花のように開き、その中から女性の上半身のような姿が現れる――現れたのは、高い知性を持ち人語を解して操る、『エキドナ』と言う上級悪魔だった。


『強い闘気を感じたが、何だ人間か……とは言え、少しばかり遊ぶには丁度良いかも知れぬな?』


稼津斗達を見たエキドナは、イキナリ見下したような発言をするが、此れが魔族と悪魔の決定的な差であると言えるだろう。
魔族も悪魔も、人間よりも高い力を持って居る者の方が圧倒的に多いのだが、魔族が人間の力を認め、同等の存在であると考えている者が多いのに対し、悪魔は基本的に人間を見下し、自分達によって蹂躙される存在だと考えている者が圧倒的に多いのだ。まぁ、悪魔の中にも『力』を示せば人間の事を認めて、己の力を貸す者も居たりするのだが、少なくともエキドナはそう言った悪魔ではないのだろう。


「大きな力を感じたが、出て来たのは下賤な蛇女か……俺と死合うにはまるで値しない相手だったか。
 其れに、俺達を只の人間と思うとは、物事の本質を見抜く事も出来ないと見た――リシャールとアガットは確かに普通の人間ではあるが、其の実力は悪魔などとは比べ物にならんレベルだ。
 そしてサイファーは魔族と神族の血を引いており、レオナもまた闇の眷属の血を引いている……そして、俺もまた人間ではなく『鬼』だ。
 そんな事も分からぬとは、お前の実力は高が知れていると言うモノ……命が惜しければ門の向こうに帰れ。俺の滅殺の拳によって、魂までも滅されたいと言うのであれば別だが。」


そんなエキドナに、稼津斗もまた挑発的に返すが、プライドの高いエキドナにとってこの発言は到底許せるモノではない。言外に、『お前は弱い』と言われたのと同じなのだから。


『人間風情が……先ずは貴様から葬ってやろう!』


激高したエキドナは、再び龍の姿となり、大口を開けて稼津斗に襲い掛かり、その身を丸吞みにしてしまったのだが、其れを見たリシャール達に慌てた様子はない。
この程度でやられる稼津斗ではないと分かっているからだ。その証拠に――


「俺を喰らおうとするとは中々の美食家の様だが、俺を喰うには貴様では器が小さすぎると知れ!」


喰われた筈の稼津斗が強引にエキドナの口を開き、蹴り飛ばして出て来たのだ。流石は『鬼』と恐れられ、遂には封印されるに至っただけの事はあると言えるだろう。
そして着地すると、殺意の波動を発動し、『鬼』へとその姿を変える――と同時に、リシャール達も闘気を全開にしてエキドナと対峙する。レオナに至っては、己の中に眠るオロチの力を覚醒させ、髪と目の色が赤く変化しているほどだ。


「我こそ拳を極めし者。ウヌが無力さ、その身をもって知るが良い……!」

「……貴女では勝てない。」

「随分と舐めた口を利いてくれたが、私達を甘く見た事をお前は直ぐに後悔する事になるぞ。」

「人間を舐めるとどうなるか、いっちょ教えてやろうじゃねぇか、大佐さんよ!」

「アガット君……だが、其れもまた一興。今宵は君の提案に乗らせて貰おう!」


そして放った豪波動拳を合図に戦闘開始!
先ずはエキドナが長大な身体を縦に伸ばして、地上からの攻撃が届かない位置から女性の上半身が攻撃を仕掛けたが、その攻撃はレオナが繰り出したボルテックランチャーに相殺され、更に稼津斗が縦に伸びた身体に回転上昇する旋風脚、『滅殺豪螺旋』を叩き込んで上半身まで到達すると、間髪入れずに無数の気弾を空中から発射する『天魔豪斬空』を放ってエキドナにダメージを与える。
これによって、『高所からの一方的な攻撃は出来ない』と判断したエキドナは伸ばした身体を地面に埋め、上半身部分のみが地面から出る様な格好になると、地面に埋めた身体から触手を伸ばして、地下からの攻撃を行う。
何処から襲って来るから分からない地下からの攻撃と言うのは、脅威となるモノだが……


「何処から攻撃が来るか分からねぇってんなら、まとめて全部ぶっ潰しちまえば問題ねぇ!」

「同時に、攻撃をしに現れた現れた所に的確にカウンターを叩き込む事が出来れば脅威にはなり得ん。」

「生憎と、死角からの攻撃なんぞ、これまで掃いて捨てるほど見て来たんでな……今更、こんな幼稚な攻撃なんぞは屁とも感じん。」


アガットは触手が現れる前に地面ごと抉って触手を刈り取り、リシャールは触手が現れた瞬間に其れを神速の居合いで刈り取り、サイファーは触手の攻撃を受けた上で其れを狩ると言う、不死身の肉体があればこその戦い方で触手を切り裂いていく……身体は直ぐに再生しても、服が穴だらけになるのは大問題だと思うが。


「滅殺……ぬぅぅぅん!!」


更に稼津斗が、気を込めた拳を地面に叩きつけて衝撃波を発生させる『金剛國裂斬』を使ってエキドナを無理矢理地面から引っこ抜くと、其処にレオナがVの字型に相手を斬りつける『Vスラッシャー』を叩き込んで爆発させ、大ダメージを与える。
そして、其れでは終わらず――


「そろそろ終いにしようぜ!せい!でやぁ!おぉぉりゃぁあ!!行くぜ!ドラゴォォォォン……フォール!!」

「散り逝くは叢雲…咲き乱れるは桜花… 今宵、散華する武士が為、せめてもの手向けをさせてもらおう!はぁぁっ…!せいや!秘技、桜花斬月!

「見下した相手に良い様にやられるってのはどんな気分だ?逝っちまいなクソババア……クレイジーダンス!」


アガット、リシャール、サイファーも己の必殺技をエキドナに叩き込みダメージを与えて行く……特にアガットの一撃は、只でさえ思い重剣の一撃に、落下速度とアガットと重剣の重量がプラスされた攻撃だったので、相当に効いた事だろう。


『馬鹿な……何故、何故私が人間如きにぃ!!』

「この期に及んで、人間如きと見下す貴様の性根が敗北の原因よ……最早此れ以上戦う価値はない故、此処で散れ。ウヌを黄泉に送る技……瞬獄殺!!


蹂躙する筈だった相手に、逆に一方的に攻められている事に納得出来ないエキドナに対して、稼津斗はその原因が何であったのかを告げると、トドメとなるであろう瞬獄殺を発動!
音もなく、残像が残るほどの超高速でエキドナに近付くと、その身を掴んだ瞬間に激しい閃光が起きると同時に、無数の打撃音が聞こえ、そして光が治まると稼津斗の足元にはエキドナが倒れ伏し、稼津斗の背には『天』の文字が現れていた。
此れこそが殺意の波動の究極奥義である『瞬獄殺』――肉体は滅び、魂だけの存在となったモノまでもを殺し、この技で相手を葬るほどにその威力を増す呪われた奥義であり、その威力は相手が『悪』であるほどに高くなる。悪魔であるエキドナを葬るには、確かに相応しい技だと言えるだろう。


「瞬きの間に地獄を見る、故に瞬獄。……悪鬼ほど地獄を見るとは、憐れよ。」


此れで残すは地獄門なのだが、その地獄門はレオナがリボルスパークを喰らわせて爆発させると、アガットとリシャールとサイファーが、その破片を夫々の得物で器用に積み上げ、最後は稼津斗が飛び上がってからの渾身の手刀、『禊』で粉砕してターンエンド!
西街区の地獄門は、見事に破壊されたのだった。








――――――








・王都グランセル:東街区『グランアリーナ』


東街区の地獄門はグランアリーナ内にあり、京達はアリーナ内部の競技場に来ていたのだが――


「何が待ってるかと思ったら馬鹿デカいカエルかよ?微妙にやる気が出ねぇな。」

「やる気が出ないと言うか……出来れば触りたくないな?」

「ブ、ブサイク……」

「う~ん、手の平サイズだったらキモカワだったかも知れないけれど、其処まで大きいとダメね。」

「ふん、下らん……」

「あの、もう少し緊張感を持った方が良いと思うんだけど……」

『ボケが!誰がカエルじゃい!』

「「お前。」」

「いや、アンタ以外に居ないでしょ?」

「そうねぇ、貴方しか居ないわね?」

「貴様、自分が何者であるかも自覚出来ていないのか……雑魚め。」

「……まぁ、見た目だけなら確かにカエルかもしれないけど。」


其処に現れたのは、カエルのような見た目の巨大な悪魔『バエル』。
エキドナ同様に人語を解して操るが、知能の方はお世辞にも高いとは言えないだろう……京達に『カエル』と言われた程度で激高してるとか、知能が高くないだけでなく、沸点も高くないらしい。


『貴様等、ワシを舐めてると痛い目に……っ!?』


激高したバエルは、一行に詰め寄ろうとしたのだが、庵の鋭い眼光を見た途端、何故か身体が動かなくなってしまった……いや、動かなくなってしまったどころか、詰め寄ろうとしていて筈なのに、僅かに後ろに退いたのである。
此れには京達も、『何があったのか?』と言う表情だ――自分達を襲う気満々だった相手が、何かに怯んで後退したとなれば、確かに不思議ではあるだろう。


「……まさか貴様、俺が怖いのか?」

『……!!』


庵がそう言いながら一歩前に出ると、バエルも一歩下がる……バエルが庵の事を恐れているのは間違い無いようである。


「あ~~……成程、そう言う事か。」

「何か分かったのか京?」

「要するに、あの化け物はマジでカエルだったって話だ。
 八神の野郎はオロチの血を引いてるだろ?オロチってのは、蛇な訳で、そんでもって蛇はカエルの天敵だからな……あのカエル野郎は、八神の背後に天敵の蛇、其れも頭が八つもある蛇を感じ取ってビビっちまったって訳さ。」

「正に『蛇に睨まれたカエル』っていう訳だね。」


バエルは庵其の物を恐れている訳でなく、庵がその身に宿しているオロチの力に恐れ戦いたようである……京の言うように、蛇はカエルの天敵なので、此れは恐れるなと言う方が無理であろう。
しかもこの恐怖は、理性で如何こう出来るモノではない、生存本能にダイレクトに訴えかけて来るモノなのでそう簡単に乗り越えられるものではない。


「俺が怖いのか?」

『……!』

「俺が怖いのか?」

『――!!』

「俺が……怖いのか?

『グガァァァァァアッァアァァァァ!!!』


庵に詰め寄られたバエルは、遂にアリーナの壁まで追い詰められて、これ以上後退する事が出来なくなり――恐怖を振り払う為に、生きるために半狂乱の状態で庵に飛び掛かる!


「ふん!!」

『ゲゴォ!?』


だが庵は、バエルに対して蹴り上げからの踵落とし、『外式・轟斧 陰゛死神"』をカウンターで叩き込むと、百弐拾七式・葵花を二段目まで喰らわせてから、百式・鬼焼きへと繋ぎ、外式・百合折りで蹴り飛ばす!


「恐怖が限界を超えて八神に襲い掛かったみたいだが、ビビってる状態じゃ八神には勝てねぇよ……とは言え、アイツにだけやらせるのも悪いから、俺達もやるとしようじゃないか?
 アイツにだけ美味しい所持ってかれるってのも癪だしな。」

「本音はそっちか。」


更に此処で京達も参戦し、京がR.E.D.KiCKでバエルをダウンさせると、其処に庵が参百拾壱式・爪櫛を叩き込んで宙に浮かせ、浮いた所に京が裏壱百八式・大蛇薙をブチかまして大ダメージを与える。
そして攻撃の手は緩まず、ヨシュアが圧倒的なスピードにモノを言わせた、『一発の威力は低いが手数によって其れを補う』連続攻撃を行い、エステルはその逆とも言える『手数は少なくても一発が重い』攻撃でバエルにダメージを与えて行く。『男女の役割が普通逆じゃね?』と思うだろうが、エステルとヨシュアの場合は此れで良いのである。

加えて此処に、アインスの多種多様で強烈な魔法攻撃と、レンの大鎌による攻撃が追加されるのだからバエルとしても溜まったモノではないだろう……バエルの最大の過ちは、庵に恐れをなして地獄門に逃げ帰るのではなく、庵に襲い掛かってしまった事だろう。
生きる為に脅威を排除しようとした行為が、逆に己の首を絞める結果になったのだから。


「「遊びは終わりだ!」」


そして、此処で京が伍百弐拾四式・神塵を、庵が禁千弐百壱拾壱式・八稚女を叩き込んでバエルを派手に燃やす!正にカエルの丸焼きと言った感じだ……其れを食べる者が居るかどうかは分からないが。
此れだけでも充分に大ダメージなのだが……


「そろそろ終わりにしましょうか?」


レンが大鎌を両手に装備すると、踊るようにしてバエルに斬撃を叩き込んで行く。


「ポイッとな。」


そして大鎌を上空に放り投げると、大鎌は更に分裂して六つになり――


「イッツ、ネメシスパーティ!」


レンが指を鳴らすと同時に、六つの大鎌が振り子運動を開始してバエルの身体を切り刻んで行く……カエルの挽肉なんてモノは、どんな肉屋でも引き取ってくれないだろうが、大鎌はバエルを切り刻んでレッドオーブへと変えてしまったのだ。
一番年下のレンが、一番凶悪な技を使ったという衝撃的な光景が展開された訳でもあったが……まぁ、レンは元死神だから攻撃方法がエグくなるのは仕方あるまい。


「アインス……お前の妹の攻撃エゲツネェな?」

「まぁ、レンは元々死神故に、手加減とかそう言う事は苦手なのかも知れん。」

「レーン!良くやったわ!お疲れ様!」

「戦闘終了。さぁ、市街地の方を手伝おうか。」

「ククク、ハハハハ……ハァ~ッハッハッハッハッハッハ!!」


こうして門番であった筈のバエルは庵にビビって何も出来ずに打っ倒され、東街区の地獄門は、最終的には京の百八拾弐式によって粉砕されるのであった……此れで、残る地獄門は北街区だけとなったのだった。








――――――








・グランセル城:城内


反抗軍が王都での戦いを行っている中、なのはとクローゼはグランセル城の中に押し入って、デュナンを探していたのだが……


「デュナンどころか、兵士が一人もいないとは……デュナンは、城外に逃げたとでも言うのか?」

「いえ、その可能性は低いと思います。
 流石に叔父様も、正面から逃げ出せば見つかると言う事は分かっている筈なので、城の外に出るとしたら、地下水路を使う筈ですが、地下水路に通じる扉はカギが掛けられたままでしたので、城の外に出たとは考え辛いですね?少なくとも、まだ城内の何処かに居ると思いますが……」


城内にはデュナンどころか、兵士の姿すらなかったのだ。
此れだけ見ると、既にデュナンは城外に退避したと思えるのだが、クローゼが『秘密の地下水路は使われた形跡がない』と言うので、デュナンが城外に脱出した可能性と言うのは低い。寧ろ、クローゼの言うように未だ城内に居ると考えて然るべきだろう。


「だが、だとしたらデュナンは何処に?」

「……若しかしたら、叔父様は地下に逃げたのかも知れません。グランセル城の宝物庫には、奥に大きな扉があって、その扉の先にはグランセル城の地下に行く事の出来るエレベーターが設置されているんです。」

「地下にか……ならば、そっちに行ってみるのが正解かもしれんな?クローゼ、宝物庫に案内してくれ。」

「勿論です、なのはさん。」


此処でクローゼが、デュナンは地下に逃げたのかも知れないと言う事を示唆して、其れを聞いたなのはは地下に行く事を速攻で決めて、クローゼに宝物庫に案内してくれと頼み、クローゼも其れを快諾して二人は宝物庫に。
そして、宝物庫に辿り着くと、一番奥の扉を開けて、地下に通じるエレベータホールに到達したのだった。


「……エレベーターがつい最近使われた形跡がありますね――此れは、略間違いなく、叔父様はこの先に居ます。」

「では、鉄槌を下してやろうとしようか?黒き魔導師と、白き聖女による愚者への鉄槌と言うモノな……此れ以上逃げる事の出来ない地下に潜った事を後悔すると良いさデュナン!」

「はい、行きましょうなのはさん。……叔父様、もうこれ以上は逃げられませんよ……!」


なのはとクローゼは堅く手を握り合うと、エレベーターに乗り、グランセル城の地下へと降りて行くのだった……









 To Be Continued 







補足説明