プレシアの時の庭園からミストヴァルトに転移したなのは達は、デュナンの配下である警備員を片付けてミストヴァルトに放置すると、街道を進んでブライト家へと向かって行った――ミストヴァルトに放置された警備員も、地上型の魔獣では手の届かない木の枝に吊るしておいたので魔獣に襲われて死ぬ事はあるまい。運が良ければ他の警備員に見付けて貰えるかも知れないからね。まぁ、羽虫型や鳥型の魔獣も多数居るので絶対とは言えないが……其れ等に襲われたその時は己の不運を呪えって所だろう。


「眼前の敵を焼き尽くせヴァリアス!ダーク・メガ・フレア!」

「私達に仇なす者に裁きを与えなさいアシェル!滅びのバーストストリィィィム!!」


その道中には、魔獣も出現するのだが、その魔獣はヴァリアスの黒き火炎弾と、アシェルのブレス攻撃で粉砕!玉砕!!大喝采!!肩乗りサイズであっても、闇属性と光属性の最上級のドラゴンの力は計り知れないようだ。
ミニマム状態で此れだけの力があると言うのならば、フルサイズでは如何程の力を持っているのか、考えると恐ろしい物があるな。


「愚かな……恥と知れ!我こそ、拳を極めし者!」

「大層な図体してこの程度かよ?テメェなんぞに、俺の喧嘩相手は務まらねぇ!出直して来やがれ三下が!」


そして稼津斗とシェンも、そして鬼の子供達と璃音も魔獣を相手に大ハッスルしていた。――特に、一夏と刀奈が魔獣をハンマースローで投げてぶつかり合わせ、其処に一夏のシャイニングウィザードと刀奈の鋭い飛び蹴りが炸裂したサンドイッチ攻撃は強烈無比だと言う他ないだろう。尤も、一夏と一夏の嫁ズのツープラトンはドレも強烈無比だけどね……一夏が水面蹴りで浮かせた所にグリフィンがアッパーと叩き込んで更に浮かせ、トドメに一夏が遠心力たっぷりの蹴りを叩きむとか普通に一撃KOレベルだからな。


「魔獣も大した事ないな?それともカヅさんに鍛えられた俺達が強いのか?」

「一夏、其れは多分両方よ♪」

「まぁ、ロレント周辺の魔獣は確かにあんまり強くないかも。BLAZEに居た時に何度か退治した事あるけど、最終的には志緒先輩が出張るとビビって逃げるようになっちゃったからね。」

「その先輩とやらは、何者なのでしょう……」


と、こんな感じで中々にバイオレンスな道中だったのだが、一行はある分岐点にやって来ていた。分岐点の看板には、『直進:ロレント市』、『左:ブライト家』と記されて居るのだ。となれば、なのは達が向かうべきは左の分岐路なのだが……


「璃音、お前はロレントに向かえ。ロレントに戻って、仲間に顔を見せて安心させてやれ。此方に用があるのは私だからな、お前は仲間の元に行くと良い。」

「なのはさん……ありがとう!」


此処でなのはの粋な計らい。
璃音はロレントにある自警団『BLAZE』のメンバーであったのだが、何者かに誘拐されて行方知れずになって居たと言うのがロレントでの認識であり、BLAZEのメンバーも璃音の身を案じている筈だ。ならば、先ずは己の無事を知らせてやるべきだとなのはは考えたのだろう。
こう言った決断を瞬時に出来るのもまた、組織のリーダーには必要な能力だと言えるな。

璃音を見送ったなのは達は、分岐点を左に入ってブライト家に。
天然の木のトンネルが続く道を歩くこと五分……突如として視界が開け、目の前には門がある家が姿を現した。


「此処が、ブライト家か……中々立派な家に住んでいるみたいだな?」

「カシウスさんはS級の遊撃士で、エステルさんもA級の遊撃士ですので、親子で可成り稼いでいるみたいです――只、カシウスさんが割とお酒を飲む方なので、其方が結構馬鹿にならないかも知れませんが。」

「カシウス・ブライトは飲兵衛か?ならば、手土産として酒の一本でも持って来るべきだったかも知れんな。」


そんな事を話しながら一行は門をくぐり、なのははブライト家のドアを軽く叩いたのだった。











黒き星と白き翼 Chapter13
『最強の仲間と、愚者の動向……!』










なのはがドアを叩いてから十秒ほど経って扉が開かれ、中から現れたのは長い栗毛の髪と黒い瞳が特徴的な女性だった。


「お待たせして……何か御用でしょうか?」

「突然すまない。私は高町なのはと言う者だが、カシウス・ブライト殿はいらっしゃるだろうか?」

「夫ならば居ますが……あら?……少し、お待ち頂けるかしら?」


その女性、レナ・ブライトは何の連絡も無しに突然現れたなのはの事を訝し気に見るが、なのはの隣にいる人物――クローゼに気付くと、『少しだけ待って』と言うと、家の奥に。
そして、待つ事数分後……


「いやはや、お待たせしたようでスマナイな?高町なのは殿。そして、御無事であられたようで何よりです、クローディア皇女殿下。」

「……ふむ、中々の先制パンチだ。」

「矢張り貴方にはバレてしまいますか、カシウスさん。レナさんも、私の正体には気付いた様でしたが……」


現れたカシウスは、イキナリ結構大きめの先制パンチを繰り出してくれた。
人と言うのは、髪の長さを変えただけでも別人になってしまう場合があり、今のクローゼは以前と違い髪の長さだけでなく前髪のスタイルも変えているのだが、カシウスには一発でクローゼがクローディアだと分かってしまったらしい。S級遊撃士ともなると、此れ位の観察眼は持っていて当然なのかもしれないが。……いや、其れよりも先に気付いた先程の女性――レナも、相当な観察眼の持ち主と言うべきだろう。


「殿下の事は幼少期より知っておりますからなぁ?髪型を変えた位では分かると言うモノです。
 そして、高町なのは殿……不破士郎殿と高町桃子殿の御息女でしたかな?士郎殿から聞いていた、双子の娘の長女の名がなのはだったかと……ふむ、桃子殿の面影がある。」

「父とは姓が異なるのに、私が不破士郎の娘だと見抜くとはな……母とも面識があったようだから、『高町』の名も知っていたのだろうが、貴方と同じ情報を持っていても、私が不破士郎と高町桃子の娘だと言う事を初見で見抜く事が出来る者が果たしてドレだけ居るか。
 父から貴方の事は聞いていたが、実際に会ってみて、父が貴方の事を高く評価していた理由が分かった気がする……成程、貴方ほどのキレ者は魔界や天界でも中々お目に掛かる事は出来ないからな。
 アポなしでスマンな?クローゼから飲兵衛だと聞いたのだが、其れは此処に来てからの事だったので手ぶらだ……そうと知って居たら、酒の一本でも持参したのだがな。
 其れと、堅苦しいのは無しで行こう。魔族と神族の両方の血を引いている私だが、魔族の血が濃く出ているのか堅苦しいのは苦手なのでな……年上の貴方には、本来ならば敬語を使うべきなのだろうが、悪いが此のままで行かせて貰うよ。」

「ふむ、士郎殿もそのような事を言っていたな……なら、俺も畏まらずに地で行かせて貰うとしよう。
 中々の人数の様だから、テラスの方で話をするとしようか?あそこならば、全員が座る事が出来るからな。」


カシウスの観察眼の鋭さに驚いたなのはだが、其れを表には出さずに冷静に対処すれば、カシウスも其れに答えるかのような対応をして、取り敢えずテラスでの会談と言う流れに。
そう言う流れになったのだが……


「行くぜ!喰らえ!ボディがお留守だぜ!うおりゃぁぁ!おら!受けろ、此のブロウ!遊びは終わりだ、俺からは逃げられねぇんだよ!」

「フ!ハッ!せいや!!」

「ヨシュア、何が起こってるのか分かる?」

「京さんが、毒咬みから荒咬みに繋いで、其処から琴月の肘打ちを入れてから轢鉄の一段目に繋いで百八拾弐式を叩き込んで、更に天叢雲を使ったんだけど、アインスさんは、その全てをブロッキングしたみたいだね。」


テラス前の庭先では、京とアインスが割と人外のバトルを行っていて、エステルとヨシュアがそのバトルに関しての感想を述べていた……京もアインスも割とガチになっているのだが、其れでも母屋には一切の影響が出ていないので、白熱しながらも考えてはいるようだ――庭の芝は見事に灰になっているけどね。
まぁ、雑草も燃やされてしまったので、芝を張り直せば元通りなのでそれ程問題ではないだろう。


「強いな彼等は……草薙京の事は知っているが、他の三人は貴方の子供か?」

「いや、銀髪の娘とツインテールの娘――アインスとエステルは俺の子供だが、エステルと話していた青年は俺の子じゃない。
 エステルと話をしていたのはヨシュア・アストレイ……京はアインスと、ヨシュアはエステルと交際関係にある奴だ。アインスもエステルも中々に気が強いから嫁の貰い手はないんじゃないかと思っていたが、如何やらそれは杞憂だったみたいだ。
 其れより、京の事は知っていたのか?」

「クローゼから聞いている。其れと、此方には彼のコピーが三人ほど居るのでね……一人は、クローゼが『別人』と言う程に性格が違うみたいだが。」

「性格だけじゃなくて、声も全然違いますけどね。」

「何だかトンデモナイ事を聞いちゃった気がするなぁ俺は。京と同じのが更に三人も……庵の奴が発狂しそうだな。」


軽い雑談をしながらテラスのガーデンテーブルのベンチに腰を下ろすと、タイミングを見計らったのかのようにレナが現れて、焼きたてのチョコチップスコーンが入ったバスケットを置き、各人にコーヒーを配って行く。
スコーンが割と甘めのモノだったので、コーヒーはエスプレッソだったのだが、なのはの前に置かれたのはエスプレッソではなく、キャラメルカフェオレだった。


「私だけ、特別扱いか?」

「士郎殿から、『長女の方はキャラメルミルクが好きだ』と聞いていたのだが……お気に召さなかったかな?」

「いや、キャラメルミルクのカフェオレは大好きだから問題ない……その心遣いに感謝するよ、カシウス殿――して、私の事は知っているみたいだから、ともすれば十年前の事も知っているのだろう貴方は?」

「……ライトロードによる襲撃で、二つの村が崩壊した……そして、その内の一つの村には、魔王として名を馳せた不破士郎殿がいたが、士郎殿はライトロードによって討たれ、長女も共に討たれた、そしてまだ幼かった息女二人は生死不明になっている。
 だが、生死不明の筈の息女の一人は、こうして生きて俺の目の前に居ると言う訳か。」

「そう言う事だ。」


カシウスの心遣いに感謝しつつ、なのははキャラメルカフェオレを一気に飲み干すと、マグカップをガーデンテーブルに叩きつけ、ガーデンテーブルに罅を入れる……マグカップが割れずに、ガーデンテーブルに罅を入れるとは、マグカップの強度を魔力で補っていたのだろう。


「カシウス・ブライトよ、この世は余りにも理不尽と不条理に満ちていると感じた事はないか?
 人間の世界だけで見ても、真面目に生きて来た者が、小手先だけ器用で碌に能力のない者が巧く立ち回った事で馬鹿を見る事は少なくない――そして、其れ以上に種の違いによる差別と偏見の強さには目を覆いたくなる物がある。
 だが、権力者の多くは、そう言った問題にはノータッチで、現状を何としようと言う姿勢は見受けられん……だから、私はそんな世界に楔を打ち込みたい!父と母が理想としていた『種の垣根など関係なく誰もが平和に暮らせる世界』を実現したいと思っている。
 そして、その足掛かりとなるのがこのリベールだが……其れを実現する為には貴方の力は必要不可欠だカシウス殿。是非ともあなたの力を貸してほしい!!」


でもって、なのはは己の思いをカシウスに真正面からダイレクトアタックをぶちかました!全力全開で、全力全壊でブチかました!
魔族と神族の血を引くなのはだが、魔族の血のを色濃く受け継いでいるからなのかは分からないが、嘘を吐く事が出来ない故に、その言葉には真実しかないって訳なのである。嘘を付けない魔族の方が人間や神族よりも信頼出来るのかもしれないな。


「……成程、悪魔達の力が増していたのは、お前さんが動く事による大きなうねりを感じ取っての事だったと言う訳か……俺とダンテの危惧は杞憂で、寧ろ良い方向に向かって居たって事か。
 分かった。そう言う事なら力を貸そう。俺自身、今のリベールをなんとかしないといけないと思っていたからな……アリシア前女王陛下が急逝した後、今のデュナン王がクーデターを起こし、殿下を幽閉してからと言うモノ、デュナンに胡麻を擦るのが巧い奴だけが良い思いをし、逆に苦言を呈する者は即排除されると言うのが現状だからな。
 アリシア前女王が心血を注いで構築した、周辺諸国との信頼関係も、そろそろ危なくなって来ているからな……リベールを立て直すのは正に今なのかも知れん。」


カシウスもカシウスで、今のリベールを何とかしなければいけないと思っていたらしく、なのはの申し出をアッサリと受け入れてくれた。なのはが、己の本心をブチかましたと言うのも大きいだろうが、カシウス自身、リベールを何とかするには個人の力では限界があると考えていたのもあるだろう。
自分の娘達と京とヨシュア、力を貸してくれそうな遊撃士、BLAZE、そして軍人だった頃の部下であるリシャール……優秀な人材は揃っていたが、国を相手にするには戦力が不足していたし、デュナンを国王の座から引き摺り下ろしたとしても、其れまで幽閉されていたクローゼを行き成り新たな女王にと言うのは幾ら何でも乱暴であると思い、行動に移す事が出来ていなかったのだ。
だが今は、こうして新たな戦力が現れた上に、クローゼは自由の身となりなのは達と一緒に居る――クローゼが、いわば『革命軍』の旗印になってくれれば、彼女が新たな女王になったとしても何ら不自然ではないので、カシウスとしてもなのはと協力するのは利がある訳だ。尤も、カシウスの場合は、損得勘定抜きで物事を決めるだろうが。


「ふぅん、なんか面白そうな話をしてんじゃん?その話、俺も一枚嚙ませろよ?あの豚親父をぶっ倒すんだって?……俺の炎で焼き豚にしてやるぜ。不味そうだけど。」

「止めておけ京、あんなのを食べたら腹を壊す。其れに、デュナンを豚親父と言うのは豚の方に失礼だ。」

「アインスの言う通り、比較するのが豚に失礼極まりないわよ。ペット用に作られたマイクロ豚とかめっちゃ可愛いし♪其れに豚って意外と頭良いんだから!」

「ネコサイズの豚とか驚きだよね……其れは其れとして、その話、僕達にも聞かせて貰えますか?」


更に、京とアインス、エステルとヨシュアも話に乗って来た……彼等もまた、今のリベールを如何にかしないとならないと思っていたのだろう――京が言ってる事が若干物騒だが、デュナンは国民に其れだけの思いを抱かせるだけの愚王だと言う事の証と言えるだろう。よく今の今まで民の反乱が起きなかったモノである。


「貴様の家に行ったら、此処に行ったとの事だったので来てみれば……中々に興味深い話をしているな?その話、俺も一枚噛ませろ。拒否権はない。」

「八神……お前、何で此処に!」

「貴様の家に行ったら留守だったのでな、何処に行ったかを聞けば此処に居るとの事だったので態々出向いてやったのだ。
 本来ならばこの場で貴様を殺してやる心算だったが気が変わった……貴様よりも先に、あの愚かな王を殺さねばなるまい……大した力もないクセに、権力に胡坐を掻いて好き勝手しているのは俺が最も嫌う暴力そのものなのでな。」


序に、呼んでも居ないのに京のライバルである八神庵が現われて、話に乗って来た……可成りヤバめの雰囲気のある庵だが、取り敢えず戦力が増えるに越した事はないので特に問題はないだろう。
そして、其処からレンが参加を表明し、なのはは死神の血を引く者が居る事に驚いていたが、エステルが『アタシが妹にしたの』と言い、レンが『エステルが、死神の掟に縛られる必要はないって教えてくれたの』と言うのを聞いて納得していた……死神の血を引く少女をも己の妹にしてしまうとか、ブライト家の血統に不可能は無いのかも知れないな。
何れにしても、カシウスとの協力関係は締結出来たのだった。


因みに、その後なのはがプレシアに、京のクローン三体を転送して貰い、京が驚き、庵が暴走した事を追記しておく――暴走庵は、京が荒咬み→九傷→七瀬のコンボを叩き込んで吹っ飛ばしたところに、カシウスが棒術でホームランして正気に戻したけどな。
普通だったら、気絶もののコンボを喰らっても、暴走が治まった直後に動いてた庵も可成り頑丈なのだろうね。

其れは其れとして、カシウスは軍人時代の部下であったリシャールに連絡を入れて、なのはと話をさせて協力を取り付けて『革命軍』の戦力を固めて行く……この判断力と行動力は流石と言う他はないだろうな。
反乱の準備は、なのはとカシウスが出会った事で急速に進んで行くのであった。








――――――








なのは達がカシウスと会談してた頃、璃音はロレントに到着していた。
誘拐され、なのはに買われ、そしてこうしてロレントに戻って来た……ロレントを離れて一カ月程ではあるが、璃音は何年も帰って来てない感覚を覚えていた。其れだけロレント暮らしが長かったと言う事なのだろう。


「え?……アンタ、若しかして璃音?」

「へ?……あ、シェラザードさん!」


そんな璃音に声を掛けて来たのは、ロレントに居る三人のA級遊撃士の一人であるシェラザード・ハーヴェイ。姉御肌な女性で、ロレントの自警団『BLAZE』とも仲が良く、璃音が居なくなった事を心配していた人でもある。


「アンタ、無事だったのね!?良く戻って来てくれたわ……でも、良く戻ってこれたわね?」

「ただいま、シェラザードさん……その辺は、此れから話すよ。……洸君達は?」

「ギルドに居ると思うわ。」


シェラザードは璃音を抱きしめ、璃音もシェラザードに身を預ける……美女と美少女が抱擁する様は実に絵になるな。――そして、再会の抱擁を終えた璃音とシェラザードはロレントのギルドに向かい、其処で璃音はBLAZEのメンバーと再会だ。


「心配かけてごめんね皆!久我山璃音、只今戻ったよ!!」

「璃音……無事だったんだな!マジで心配したぜ……お帰り、璃音。」

「ただいま、洸君。」


でもって、恋人関係だった璃音と洸が再会の抱擁を交わしたのは当然と言えるだろう……愛する人と短くない期間離れ離れになっていた訳だからね。――まぁ、流れでキスしようとした所で、BLAZEのリーダーである高幡志緒が『甘い時間は、二人だけの時にしろや』と言った事で、キスはお預けだったけな。

其れから璃音は、自分が誘拐されてからの事を全て話し、その話を聞いたBLAZEのメンバーとシェラザードは、リベリオンに協力する事を決めた――ロレントだけでもデュナンに不満を持つ者は多いと言う事なのだが、果たしてリベール全体で見れば反デュナン派はドレだけ居るのか分かったモノではないだろうな。


「あのクソッタレを漸くぶっ倒す事が出来る訳か……俺の炎が滾ってるぜ!」



――バガァァアン!!!



「あの、気持ちが昂ってるのは分かるんすけど、机壊さないで下さい志緒先輩。」

「机が粉々に……一体ドレだけのパワーが?」

「パワーだけなら、レオンハルトさん以上かもね志緒先輩は。」


そんでもって志緒は拳で、机を粉砕していた……木の部分だけでなく、補強の為に入れられている金属パーツもひん曲げるとか、志緒のパワーはトンデモナイモノがあるのは間違いなさそうだ――まぁ、其れもなのはにとっては頼もしい戦力になるのだけどね。

其れから数時間後、なのは達がロレントのギルドを訪れ、そしてカシウスの口添えもあってギルドとBLAZEとも協力関係となり、反逆者達の戦力は一気に増大したのだった。








――――――








「なんだと、其れは真か!?」

「はい。……ロレント方面を警護していた警備兵が中々戻らないので、探しに行ったら、其の警備兵はミストヴァルト内で木に吊るされ、魔獣に襲われて瀕死の状態だった様です。
 其処に向かった兵が言うには、息を引き取る直前に、『クローディア殿下を攫った黒衣の魔導師が……』と言っていたそうです。」


そのころ、グランセル城ではデュナンが驚愕の報告を受けていた。
なのは達がぶちのめした警備兵は、仲間に発見されるまでギリギリ生きていて、己が事切れる前に、助けに来た兵になのはの事を伝え、そしてその情報がデュナンの耳に入ったのだ。


「して、そ奴の行方は?」

「王都に向かう為の関所では其れらしい女性は見なかったとの事なので、恐らくロレントに向かったのではないかと……」

「そうか……クローディアは確認できたのか?」

「いえ、クローディア殿下が居たかどうかまでは……一瞬の出来事だったようですので分からなかったようです。」

「……ならば、ハーケン門のモルガンに連絡を入れろ!ロレントにクローディアを連れ去った輩とクローディアが居ると言うのであれば、其れを潰さない理由は何処にもない!
 此の国の王はお前ではなく余なのだクローディア……だが、お前が生きている限り、余は真の王にはなれぬ――余が真の王となる為にも、お前には死んでもらうしかないようだクローディアよ。
 恨むのならば、余ではなく、王族の一族として生まれてしまった事を恨むのだな……ロレント諸共、消し去ってくれようぞ!!」


其れを聞いたデュナンは、大凡国王とは思えない事を言ってくれた――なのはとクローゼを始末する為に軍を動かし、更にはロレントを焦土と化しても問題ないとまで言って言ってくれたのだ……庵が聞いたら、秒で八稚女をかましていただろう。
今のデュナンは、権力の力に魅了され、そして憑りつかれてしまった憐れな存在なのだ……そして、そうなってしまった者を救う術は存在しない――権力の虜になってしまったからこそ、ロレントを滅ぼしかねない命令を下す事が出来たのだ……だが、そうであるのならばり、デュナンとなのはの激突は、もう避けられないだろう。
だって、和平交渉をせずに、デュナンは武力行使を選択した訳だからね……













 To Be Continued 







補足説明