遊星の痣が輝き、はやての本が光を放つ。
其の直後に現れた4人の人物――女性2人、少女1人…犬、もとい獣人1人。
驚愕するには充分である。
此の時、誰か1人でも八神宅の庭に居たならば気付いただろう。
遊星のD・ホイールがまるで痣に呼応するようにして鈍い光を放っていたことに…
遊戯王×リリカルなのは 絆の決闘者と夜天の主 クロス3
『新たな力と・・・』
「…どちらが我等の主だ?」
桃色の髪の女性が問う。
如何やら彼女が現れたメンバーに於けるリーダー格らしい。
「主と言うのが本の持ち主ならばはやて…此の車椅子の女の子と言うことなんだが…」
歯切れが悪い遊星。
其れも其のはず
「お前達の登場に驚いて気を失ってしまったんだが…」
「きゅ〜〜〜〜…」
そう、はやては行き成りの事に驚いて気絶してしまったのだ、車椅子の上で完全に目を回している。
「な、無事なのか!?」
「只の失神だ。10分もあれば目を覚ます。」
「そ、そうか。」
「詳しい話は、はやてが目を覚ました後にしようか。」
「そうするとしよう。」
異世界の英雄と、忠義を重んじる騎士の女性によって此の場の採決はなされた(なんのこっちゃ…)
して待つこと10分。
「…って何でやねん!!」
突っ込みと共にはやて覚醒。
「夢でも見てたのか?」
目が覚めたのはまぁ良いのだが、取り敢えず何が有ったのかを聞いてみる遊星。
「あんな?ヒトデからホタテ、ホタテから蟹、蟹から海老に『主人公』って書いたバトンが渡されとったんや。」
「?」
「「「「???」」」」
一切謎。
遊星は勿論、現れた4人にも何のことやら…
「で、如何言う事や、この状況?」
遊星と4人に問う。
漸く本題だ。
「我等は…」
リーダーと思われる女性が説明を始めた。
…………………………
………………………
……………………
…………………
………………
……………
…………
「成程な〜これってそんなけったいなモンやったん。」
手にした本――闇の書を手に呟く。
説明によればだ、
・その本は『闇の書』と呼ばれる物である。
・自分達4人は『闇の書』の『騎士』であり闇の書の完成が大きな目的である。
・闇の書の完成には魔術師の『リンカー・コア』と呼ばれるものを蒐集する必要がある。
・はやては闇の書の主で有り、同時に騎士4人の主でも有る。
・更に言うと、闇の書を完成させればその力ではやての足も治るかも。
簡単に言えばこんなとこである。
「お分かり頂けましたか、主はやて?」
「ま、大体な。要はアレやな皆今日から私の家族って事やろ?」
「「「「は?」」」」
「家族か、其れも良いかもしれないな。」
良くわかってない騎士達とは別に遊星は笑顔ではやての提案に賛同する。
「私の騎士…それも良いねんけどなんや、私はそんな大層な人間や無いからな、主従ってより家族の方がええて。」
「そ、其れが主の望みならば…」
リーダー格の女性――シグナムは困惑しながらもそう答える。
いや、シグナムだけではない、他のメンバーもはやての予想外の対応に戸惑っている。
其れは無理も無い。
彼女達の記憶では今までの闇の書の主となった者は、例外なく騎士達を『只の道具』としてしか見ていなかったのだから。
「せやけど1つだけ約束してや?」
「なんでしょう?」
「闇の書は完成させたらアカン。其れ完成させるんには魔導師から『リンカー・コア』奪わなアカンのやろ?
やったら駄目や。目的のために必要だからて誰かを傷つけるのは絶対にしたら駄目や…
いくら私の足が治る可能性が有ると言っても、誰かを傷つけんと治らんのやったらこのままの方がええ。
此れは闇の書の主としての命令であり八神はやてからのお願いや…ええな?」
大凡9歳とは思えない強い光を宿した瞳。
其処には決意と覚悟が見て取れる…闇の書の主となる決意と覚悟が。
「ふ、我等にとって主の命令は絶対。そして願いとあれば、其れに従わぬは義に反すると言うもの。
了解しました。我等ヴォルケンリッターは主はやての命に従い、闇の書完成を目せず、又魔導師を襲撃しないことを此処に誓います!」
「「「誓います。」」」
シグナムに続き、他の3人――ヴィータ、シャマル、ザフィーラも其れにならう。
「かたっくるしいなぁ…ま、その辺も徐々に慣らしていこか。」
「ところでよぉ…」
一応の説明が終わった所でヴィータが問い掛ける。
「そいつは一体なんなんだ?あたし達が現れても全く驚いてなかったぜ?」
そうなのだ、遊星は驚くことも無く冷静に対処していたのだ。
「なんや遊星自己紹介しとらんかったん?」
「はやてが目覚めてから色々説明をしようと思ってたからな…すっかり失念してた。」
「遊星も人間なんやなちょっと安心したで。」
「?」
「ん、こっちの話や。…コホン、あらためて、この人は不動遊星。異世界からやってきた英雄や。」
「はやて!?」
「「「「異世界の英雄!?」」」」
あっさりと遊星の正体をばらすはやてに吃驚。
「隠すこともないやん。てかこれから寝食ともにするんやで?隠し事はなしや。」
「だが…いや、そうだな。」
反論をしようとするもののはやての一言に納得し反論を止める。
「だが英雄なんて止めてくれ、俺は自分のすべき事をしただけだ。それも俺1人じゃ出来なかった。
信じあえる仲間との絆があったからこそ俺はあのデュエルに勝つことが出来た。俺1人だったらきっと負けていた。
それ以上にきっと父さんからの叱咤が無ければ俺は諦めてしまっていた。
父さんからの叱咤、そして仲間との絆と託された力…其れがあったから俺は勝つことが出来たんだと思う。」
静かに、しかしその奥にある熱い想いは誰もが感じ取っていた。
そしてそれに誰よりも反応したのは…
「ふ、その驕らない態度…不動と言ったか?お前は騎士だな…そして英雄と言うに相応しい。
だが、だからこそ私としては少々残念でも有る。」
「残念?」
「あぁ、お前の世界の闘いは武器を用いた戦ではないのだろう?」
「違うな。俺達の世界ではデュエルモンスターズ…このカードを使ったデュエル、ゲームが全てだった。」
そう言って自分のデッキを(ケースに入った状態だが)見せる。
「矢張りか…お前が我等のようにデバイス…私の場合は剣だが、其れを使えれば手合わせをしてみたかったのだがな…」
世界が異なれば闘いの様式も異なる。
遊星は喧嘩レベルなら可なり腕が立つが武道の経験などは無い。
デュエルなら超一流の腕前だがこの世界では其れは余り役には立たない。
そう思っていた…再び痣が輝くまでは!
「!何だ?痣が…?」
「かがやいとる?しかもさっき以上や!」
闇の書の起動時以上に輝くドラゴンヘッドの痣。
そして…
「此れは…?」
光が治まると同時に遊星の手にはドラゴンヘッドの痣を模したペンダントが…
「デバイスのようだな…ふむ、起動してみたら如何だ?」
「デバイス?」
――此れが?其れに何故今俺に?
遊星の疑問は尤も。
如何にも闇の書の起動と関係が有る気がしてならない。
だが、今は其れを考えても仕方ない。
「起動…如何すれば良いんだ?」
取り合えずデバイスの起動方法を聞いてみる。
知らなきゃ動かしようは無いからね。
「あたし達は『セットアップ』って言って起動させてるぜ?」
「成程…それじゃあ、『セットアップ』!」
ヴィータの言を受けて言ってみるが…
――シーン…
反応なし。
「起動しないな。」
「他に起動するワードが必要なんちゃう?…そやな、遊星の世界で良く使われてるゲームの前の言葉はどやろ?」
「!成程…それなら行けるかもしれないな。」
「「「「?」」」」
気を取り直し、自身が尤も親しんだ起動の言葉を紡ぐ。
「デュエル!!」
瞬間ペンダントが光り遊星を包み込む。
起動は成功。
「此れは…」
其処にはライダージャケット(WRGPで着てたアレ)に身を包んだ遊星と真紅のD・ホイールが。
「此れは、D・ホイールがデバイスになったと言うのか?」
「みたいやね…てかそのライダースーツもええなぁ…」
そしてこの展開に…
「ふ、ふふふふふ、良いぞ不動、実にタイミングが良い…私と戦え不動遊星!」
「「え?」」
突然にシグナムの要望に遊星とはやて共に吃驚。
「折角デバイスが手に入ったのだその性能を確かめない手は無いだろう?だから試運転の意味で私と戦え。」
若干興奮気味です。
ヴォルケンリッターの将はバトルマニアだったようだ。
「ちょ待ちやいかんなんでも…「良いだろう。」遊星!?」
「すまないはやて。だが俺自身デバイスとなったD・ホイールの性能を試してみたいんだ。」
何時もの落ち着いた大人の表情とは違う。
まるで新しいものを目にした子供のような表情。
「はぁしゃーない…せやけど今日はアカン!」
「如何してだ?」
「何故です主はやて!」
「時間考えや!今からドンパチ始めたらご近所に迷惑やろ!!
エキシヴィジョンマッチは明日の午前中!迷惑かからんように市の郊外で、ええな!?」
「分った。」
「従いましょう。」
あっさり承諾。
確かにはやての言うようにもう夜もふけている、今日はもう休むのが良いだろう。
「うふふ、そうね。私達も目覚めたばかりで本調子ではないもの。」
「つか何か眠いぜあたしは…」
「久しぶりの外界だからな…無理も無い。」
他の3人も納得。
なので本日は此処でお開き。
尚寝る場所の事で一悶着あったことを追記しておく。(この日は全員で雑魚寝に落ち着いた)
――――――
時間は少し遡り闇の書起動時の『時の箱庭』
「…どうやら闇の書が起動したみたいね。」
「「お母さん?」」
「プレシア?」
「これからきっと忙しくなるわ。フェイト、なのはちゃんに闇の書が起動した事を伝えておいて。」
「うん、分った。」
――同刻・八神宅近く
「アリア…起動したね。」
「だね…戻るよロッテ。報告しなきゃ。」
「うん。」
闇の書の起動を確認した何者かがいた。
いや、恐らく誰も気にはとめていなかっただろう。
傍目に其れは2匹の猫が八神宅付近から足早に去っていっただけに過ぎなかったのだから…
To Be Continued… 