Side:京


俺のクローンと、戦闘機人を蹴散らして、遂に辿り着いたな目的地に……この先には、間違いなくヴィヴィオと、考えたくもねぇがルガール
の野郎が居る筈だ。

俺等の目的は、ヴィヴィオの奪還だが、其れを邪魔する奴がいるなら、焼き尽くしてやるだけだ……行くぜ、シグナム、アギト!!



「ふ、派手に燃やして行くとしようじゃないか京!」

「アタシ等の炎は、簡単に消す事は出来ないぞ!!」

「だよな?」

俺達の炎は、簡単に消す事は出来ねぇ……否、目的を達成するまで、燃え上がる事は止めねぇ紅蓮の炎だ――ヴィヴィオの奪還と、ゆり
かごの陥落の妨げになる物は、全て焼き尽くしてやるぜ!!

この扉の先に何が待ってるかは知らねぇが。何が待って居ようとも、草薙の炎で全て祓ってやる!!
ゆりかごだか何だか知らねぇが、急ごしらえで復活させた古代兵器と、草薙流とじゃ、歴史が違うって事を思い知らせてやるぜ?……ジェ
イル・スカリエッティ、テメェの野望とやらも此処で終わりにしてやる!!












リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round45
『聖王の間で待ちし者~XXX~』











そんでもって、突入した部屋だが、内部は此れまで通って来た通路以上にSF的だな?……ぶっちゃけ、SF映画とかに出て来る怪し気な
研究施設そのままじゃないか。
何となく、ネスツの基地の内部に似てなくもないが……常軌を逸した研究施設と、世界を滅ぼす力を持った最終兵器ってのは、案外内部
は、似通ってるものなのかもな?
どっちも、世界にとってはマイナスの物でしかないからよ。

まぁ、そんな事は如何でも良いぜ……此の部屋の最大の問題は、部屋の中央に配置された玉座みたいな所に、ヴィヴィオが座ってる、と
言うか座らされてる事だ。

「ヴィヴィオが聖王とやらの複製だとしたら、玉座に座ってんのは拙いんじゃねぇか?
 ゆりかごってのは、聖王が玉座に座す事で、攻撃能力が起動するんだろシグナム?」

「その通りだが、まだゆりかごの武装が起動した様子はない……玉座の間に、外敵が侵入した事で、其れの排除を優先する為に起動して
 いないのではないか?」

「その可能性は、充分にあっかもな。」



聖王が安全に玉座に座す事が出来ない状態では、ゆりかごは攻撃はしねぇって事みてぇだが、逆に言うなら、玉座の間に入り込んだ奴を
排除するための機構があるって事だよな?
そいつが起動すると面倒だ。さっさとヴィヴィオを玉座から引っぺがして脱出するとしようぜ。



「パパ……ママ?」

「気が付いたかヴィヴィオ?」

「待ってな、今助けてやるからよ。」

「……ダメ!逃げて!!」



いや、逃げろって言われても、はいそうですかと行ける訳がねぇだろ?俺達の目的は、ゆりかごの撃破とお前の奪還なんだからな。
だから、一緒に帰ろうぜヴィヴィオ?スバル達も、お前が戻って来るのを待ってるんだからさ。



「そうじゃないの……違うの……私は――!!」

『うふふふ……如何やら、賊が迷い込んだみたいですわねぇ聖王様?
 ならば賊は倒さなくてはなりませんわ……ゆりかごを護り、ゆりかごによる滅びをまき散らす為には……そうでしょう、聖王様?』



――バチィ!!


「あ……あ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!」



……山崎以上の腐れ外道の声が聞こえたが、その直後に玉座がスパークしてヴィヴィオを包み込みやがった!――このスパークは、紅
丸の雷光拳以上じゃねぇか!!
ヴィヴィオは無事なのか!?


――シュゥゥゥン……



スパークが治まったが……此れは、何て冗談だよ?



「敵は……倒す……!」



スパークが治まったら、玉座にはシグナムと同じ位の背格好の女が居た。
普通なら『誰だ?』って思う所だろうが……あの特徴的なハニーブロンドの髪と、ルビーと翡翠のオッドアイは見間違い様もねぇ――コイツ
は、ヴィヴィオだ!
声だけ聞こえて来た腐れ外道が何かしやがったな此れは!!



「うぅむ、すぉれどぅえ、まぁ違いないずぅぉ、くぅさなぎ京!」

「ルガール……!!」

死にぞこないがノコノコと現れやがって。……そんなに俺に燃やされたいのか?――そう言う事なら、その望みを叶えてやる事は、吝かじ
ゃないぜ?
そもそもテメェは、KOF’94で俺にボコされて、更にKOF’95ではオロチの力を身に付けても俺に勝てなかったんだ……今回も、燃やされ
て終わりだぜルガール。
自爆の準備は出来てるか?



「おぬぉるぇ、相くわらず、むぅかつく小僧めぐぁ!
 どぅあがしくぁしぃ、今回は、すうぉ簡単に行くとは思えんぞ?……オロチの力だけでぬぁく、殺意の波動をむぉわぁが力とした私は、嘗て
 貴様が倒した私よりむぉ、はぁるかに強くなっているのだからぬぁ!!」

「へっ……ハッタリかましてんじゃねぇぞルガール。」

オロチの力と殺意の波動をテメェの力としただって?……馬鹿も休み休み言えってんだ。
歴史を紐解いても、オロチの力を理性を保った状態で使えるのはレオナだけだ――八神は、完全に理性飛んじまってるからな、暴走状態
では。
でもって、殺意の波動は、『生きる伝説』と称されるリュウですら、未だに克服できずに苦労してるんだぜ?其れだけの力を、テメェ如きが
使いこなせる筈がねぇだろルガール。



「ふっふっふっ……確かぬぃ、私1人の力どぅえはぁ、使いこなす事はでぇきなかっただろう。
 どぅぁがしかすぃ、ジュェイル・スカルィエッティの力ぬぃよって、復活した事によるぃ、彼の物の助力をえとぅえ、オロチと殺意の波動と言う
 強大な力を、こぬぉ身にやぁどしたのどぅあ!!」

「所詮は、スカリエッティ頼みだったって事かよ。」

ギースから烈風拳、クラウザーからカイザーウェイブをパクって、オロチの力を掠め取り、そんで今度はマッドサイエンティストに復活させて
貰った上でオロチの力と殺意の波動かよ?
ハッ、結局の所、テメェの力で得た物なんざ殆どねぇじゃねぇかルガール。まぁ、技に関しては模倣から始まって自己流にアレンジされるモ
ノもあるから良いとして、オロチの力も殺意の波動も、碌に修業もしねぇで後からくっつけた付け焼刃の力だろ?
そんな、上っ面だけの力で俺達に勝てると思ってんのか?
そもそも、テメェが死んでる間に、俺は更に強くなってるんだぜ?具体的に言うなら、今の俺は95の時の俺の倍は強いからな多分。



「すぉれ位強くなって居て貰わなくては興醒めどぅあ!
 私に、2度もの屈辱を与えとぅあ時よりむぉ、強くぬぁったきぃさまうぉ叩き潰してこそ意味があぁるのだからぬぁ!!!」

「……如何あっても退かねぇって訳か……」

「言って退く位ならば、最初から現れんだろうからな?……それにしても、何と言うか聞いていて疲れる喋り方だなコイツは……」

「オロチの力に呑み込まれて消滅する前は、声も喋り方も違ったんだがな……何で若本になっちまったのやらだぜ……」

ま、何にしてもこうなっちまった以上はしょうがねぇ。
ルガールの野郎はぶっ倒すしかねぇだろうし、大人になって、完全に俺達を『敵』と認識してるヴィヴィオとの戦いも避ける事は出来ねぇだ
ろうしな?――尤も、ヴィヴィオに関しては、あぁ言う状態になっちまった奴は、倒せば元に戻るって相場が決まってるけどよ。



「ならば、ヴィヴィオは私とアギトで相手をしよう。
 お前は、性懲りもなく復活して来た大馬鹿者を、二度と復活できない様に地獄の底に叩き落してやれ。」

「ま、そうなるか……だが、あの状態のヴィヴィオは結構強そうだぜ?大丈夫かよ?」

「アイツ、かな~り強いだろうが、正統ベルカの騎士と融合騎のコンビなら負けねぇって!いざとなりゃユニゾンする手もあるしな!
 お前の方こそ負けんなよ京!!」



言ってくれるじゃねぇかアギト?そんだけ大口叩けるなら心配無用だな……って、俺に対してシグナムとアギトも同じ事思ってるだろうな。
……そう言う訳だから、始めようぜルガール?オロチの力も殺意の波動も、そしてテメェ自身も草薙の炎で灰にしてやるぜ!!



「いいだるぉ!が、少しむわぁてぇ。
 このまま戦うと言うのむぉ、少々味気ぬぁい……そこでどぅあぁ、くおぉぉんな趣向は如何だ?」


――ガシャン!(突如出現した巨大モニター)

――ダカダダダダーンダダダダダン!ダーラダタラダーラダッダダーダッダダッダ(BGM:Order/KOF’97プレイヤー&オーダーセレクト)



なんだこの音楽は!?
それにあの巨大モニタには、俺とシグナムとアギトが映ってて、VSの文字を挟んだ反対側にヴィヴィオとルガールの姿が?其れに、ヴィヴ
ィオの下には1、ルガールの下には2って数字が……コイツは一体?



「わぁたしとぉ、きぃさまが戦うのどぅぁ、此処はKOFるあぁしく、チームバトルと行こうではぬぁいか!
 ルールはKOF同様、先に相手チームを全滅させた方のかちどぅあぐぁ、勝者が連続して戦う必要はぬぁく、勝った時点でパートナーとの
 交代が可能とぬぁり、インターバルを得る事がどぅえきると言う事でどぅうぉだぁ?」



変則のKOF方式だと?
何だルガール、シグナムが速攻でヴィヴィオを倒して、俺に合流されるのがそんなに怖いのか?そりゃそうだよな。俺1人にだって勝てね
ぇってのに、其処に六課4強の一角であるシグナムが加わっちまったら勝てる筈がねぇもんな。
更には、アギトまで居るんだから勝てる確率は殆ど0だからな……ま、そう言う事なら可哀想だから、その条件を飲んでやるよ。

「……だがよルガール、アギトがシグナムの付属品扱いってのは、少し失礼じゃねぇか?」

「世の中ぬぃは、2人居るのに1キャラとして扱われる存在もあるのどぅあ。」



……否定出来ねぇのが悲しいな。
シグナムとアギトは2人で1人扱いみたいだから、数の上では互角って訳か……向こうのオーダーは、ヴィヴィオが先に出てくるみたいだ
から、第1ラウンドは任せて良いかシグナム、アギト。



「ふ、任せておけ京。必ずヴィヴィオを元に戻して、取り戻して見せるぞ。」

「サクッと勝って来るから、お前はルガールをぶっ倒す事だけ考えとけよ!!」



頼もしいなマジで。
こっちのオーダーも決まったぜルガール!始めようぜ……聖王の玉座での最終決戦ってやつをな!!








――――――








Side:シグナム


ヴィヴィオを奪還し、ゆりかごを停止させるのが務めとは分かって居たが、まさか奪還対象であるヴィヴィオと戦う事になるとはな……尤も
敵の手で操られているであろうヴィヴィオは、倒さねば正気に戻らぬのだろうから仕方ない事だが。

「烈火の将シグナム……いざ、参る!」

「敵は倒さなきゃ……倒さなきゃダメなんだ……うぅぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



とは言え、己が娘とした子から、これ程の殺気と闘気をぶつけられるというのは、流石に少々堪えるモノが有るな……子供の反抗期とでも
思えば、少しは気が楽になるのかも知れないが、生憎と其処まで器用ではないからな私は。
ならば騎士として、ヴィヴィオの母として、全力で向かい合って戦い、そして倒して正気に戻すしかあるまい!


――剛!


だから、最初から全力で行かせて貰うぞヴィヴィオ!必ず、お前を取り戻して見せる――烈火の将の名に誓ってな!!








――――――








No Side


――推奨BGM:シグナムのテーマ(なのポGODシグナム戦)


聖王の間での最終決戦の第1ラウンドは、烈火の将vs聖王の、古代ベルカ対決。
シグナムは歴戦の騎士であり、その実力は疑いようもなく、アギトもまた正統ベルカの融合騎であるので並の魔導師とは比べ物にならな
い実力を秘めている。
此の2人が力を合わせたら、大抵の敵を制圧する事が出来るだろう。(なのはが敵の場合は、ノーカンである。)

だが、大人の姿となったヴィヴィオも凄まじい力を溢れさせており、今の状態の魔力ランクならばなのはをも超えているだろう。


「ふ!はぁ!!燃えろ!!」

「コイツはおまけだ!」


しかし、如何に強い力を持っているとは言え、シグナムとヴィヴィオの間には、覆しようのない経験の差と言う物があるが故に、シグナムは
いとも簡単にヴィヴィオをあしらっていた。
単純な戦闘力で言うのならば、今のヴィヴィオはシグナムを上回っていると言えるが、戦闘経験が皆無であるせいで、其の力を生かし切
れておらず、シグナムにあしらわれる形となっていたのだ。

今も、攻撃をレヴァンティンで捌かれた所に、京から教わったシグナムの琴月 陽が炸裂したのだから。
草薙流の奥義である裏式の技を除いた中では、最も破壊力のある琴月 陽を真面に喰らったら、只では済まないだろうが……


「……無傷か、呆れた頑丈さだな。」

「……殺す……!」


ヴィヴィオは無傷!
大人化と同時に再現された、古代ベルカの聖王が纏ったとされる『聖王の鎧』がヴィヴィオには搭載されており、大概の攻撃をシャットアウ
トしてしまうのだ。
故に、今のヴィヴィオは半無敵状態と言ってもいいだろう。


「ヴィヴィオを止めるには、聖王の鎧を貫く力が必要となるか……アギト!!」

「合点!!行くぜ、ユニゾン!!」

「イン!!」



しかし、琴月 陽でも大したダメージにならなかったのを見たシグナムは、即座にヴィヴィオが聖王の鎧を纏っている事を看破し、其れを貫
くには、より強い力が必要になると判断し、アギトとユニゾン!


――バキィィィィン!!


凄まじい力が弾けたと思った瞬間には、シグナムの姿が変わっていた。
髪は薄紅色に変化し、瞳の色はアメジスト色になり、騎士服の上着は無くなり色が紫へと変化し、その背には炎の翼が左右2枚ずつ4枚
現れている。


「融合完了……此処からの私は、可成り強いぞ?」


その姿は、正に『烈火の剣聖』と言うべき姿。
敵の策略によりヴィヴィオは聖王と化してしまったが、其れを奪還すべく、シグナムもアギトと融合して、己の力を120%引き出した状態で
最強モードのヴィヴィオに立ち向かう。

烈火の将vs聖王と言う、戦乱期のベルカでも実現しなかった戦いが、現代のミッドチルダの空で開始されたのだった――最強と最強の戦
いが。












 To Be Continued…