Side:テリー
Shit……ドンだけ堅いんだ、ゆりかごのエンジンてのは!!俺とヴィータが、ドンだけ殴ってもびくともしねぇ……決戦兵器の名は、伊達じゃ
ないって所か……だが、其れは嬉しくない事だぜ。
コイツを如何にかしないと、ゆりかごは止められねぇからな。
「確かにそうだが、コイツは相当だぜテリー?……策はあるのかよ?」
「あると思うか?……ぶっ壊れるまで殴って、ぶっ壊す、其れだけだろ?」
「はっ……そいつは何ともアレだが……面倒な事が無くて分かり易いぜ!!一撃でダメなら、何度も攻撃してぶっ壊すだけだからな!!」
そう言う事だぜヴィータ。
……時に、ゆりかごのエンジンを停止させるなら、こっちにはフェイトを配置した方が良かったんじゃないか?いくらゆりかごのエンジンとは
言っても、精密機械である事は変わらないから、高圧電流流せば瞬殺だったんじゃねえか?
「其れははやてに聞かないと分からねぇけど、はやて的に、フェイトが追ってた犯罪者を、フェイト自身に逮捕させてぇのかも知れねぇな。
だが、其れは其れとして!!!」
「今は、コイツをぶっ壊さないとだな!!」
確かに相当堅いが、だからと言って無敵って訳でもないから、此れを攻略する術はある筈だからな。――取り敢えず、此のデカブツの心臓
を止めてやらないとな!
Get down!
リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round42
『Exclusive Dichotomy』
Side:フェイト
目の前に現れた白衣の男……コイツが、今回の事件の黒幕であるジェイル・スカイエッティ……直接的な戦闘力はそれ程高くなくとも、恐
るべき頭脳を持った稀代の犯罪者……なら、コイツは絶対に逮捕しないと!!
「その意気ごみは良いけれど、熱くなり過ぎたら負けるわ。」
「レオナ……大丈夫、其れは分かってるから。」
「そう……分かって居ればいい。戦場で冷静さを欠いたら、其れは死に直結するから。」
冷静さを欠いたら、確かにそうだよね。
それにしても、スカリエッティの他には、戦闘機人が2人だけって……護衛にしては、余りにも少なすぎないかなぁ?
さっきのガジェットとの戦いで、此処にはAMFが張られてない事は確認済みだし、出撃前にリミッターだって外してあるから、戦闘機人2人く
らいじゃ、私とレオナを止める事は出来ないよ。
「ジェイル・スカリエッティ、数々のテロ行為および、ロストロギアの不法所持等の罪で貴方を逮捕します!」
「やってみたまえ。我が娘達を倒し、私に辿り着けると言うのならばね。」
「お前達の相手は私達だ。」
「…………敵を排除する。」
まぁ、分かり切ってた事だけど、大人しく投降する筈がないよね……って言うか、此れで捕まってくれる位なら六課に配属される前に、執務
官として逮捕出来てただろうから。
だけど、抵抗するって言うなら、逆に面倒がないとも言えるかな?
犯人逮捕の邪魔をするって言うなら戦闘を行う理由としては充分だし、逮捕って言う『公務』に抵抗されたらこれまた戦闘理由としては充分
だから、戦って倒した上でお縄にすればいいだけだからね。……若干、思考がなのはに影響されてる気がするけどね。
「ぶっ飛ばされて逮捕されるか、逮捕されてからぶっ飛ばされるか……」
「逮捕したらぶっ飛ばさなくても良いんじゃないかな?」
「悪い事をした事へのお仕置き。」
「成程。」
まぁ、負ける事は無いと思うけど、だからと言って慢心は言語道断だから、初っ端から全力で行くよレオナ!!市街地戦を制して、ゆりかご
を攻略したとしても、スカリエッティを取り逃がしたら、また同じ事が起きるかもしれないからね。
フルドライブにはまだ早いけど、フルドライブを使わない状態の全力で行かせて貰う――道を開けて貰うよ戦闘機人!
――――――
No Side
――推奨BGM:『Tranquilizer』(KOF'2002UM八神チーム)
フェイトがトーレと、レオナがセッテと戦う構図になったこの戦いだが、戦いの主導権を先に手にしたのはフェイトとレオナだった。
フェイトがハーケンフォームのバルディッシュでトーレに斬りかかり、レオナは低く弧を描くような高速跳躍からのXキャリバーでセッテを強襲
し、先手を取って行ったのだ。
戦いと言う物は、必ずしも先手を取れば良いと言う物ではない。敢えて先手を取らせてのカウンターと言う戦法もあるからだ。
だがしかし、フェイトもレオナも本気のスピードは、大凡後の先のカウンターが狙えるスピードではなく、先手を取られてしまうと、防戦一方
で対応が後手後手になり、そのまま押し切られてしまうだろう。
「ナンバーズ3、トーレ……先の襲撃次元の時の記録なんかから、ナンバーズでは最も高い戦闘力を持っていると考えたけど、リミッターを
外した私には大した相手じゃなかったかな?」
「く……何と言うスピードだ……!私が、防ぐので精一杯とは……!」
実際に、戦闘能力ではナンバーズの中で最も高いトーレですら、フェイトの高速連続斬撃に対し、直撃を喰らわない様にガードするので手
一杯であり、反撃すらままならない状況だ。
――フッ
「な、消えただと!?」
「後ろがガラ空きだよ。」
その攻防の最中、突如フェイトが目の前から消えたかと思ったら、次の瞬間、トーレは背後から強烈な衝撃を受け、壁まで吹き飛ばされて
激突し、壁の一部が損壊する。
フェイトが驚異的なスピードを持ってしてトーレの後を取り、無防備な背中に、雷を纏った強烈な蹴りを喰らわせたのである。
戦闘不能とはならないだろうが、大ダメージを受けたのは確実だろう。
「ば、馬鹿な……事前のデータよりも遥かに戦闘能力が高いとは……例えリミッターがなくとも、私ならば互角に戦える筈だと言うのに…」
「何時のデータを参考にしてるのかは知らないけれど、日常的になのはと模擬戦してると嫌でも強くなるんだよ。
六課のランクリミッターの事考えて、ランクアップ試験は受けてないけど、今の私なら、多分SS-位の力はあるんじゃないかな?――フル
ドライブ状態なら、SS+位は行くと思うよ?」
「SSだと!?其れは、六課の総司令だけではなかったのか!?」
「あくまで書類上は、だよ。
ランクリミッターを外したはやては通常でSS、フルパワーならSS+は確実だし、本来の融合騎であるアインスとユニゾンすれば、其の力は
間違いなくEXランク(測定不能)になるし、なのはに至っては言うに及ばず。
10年来の親友に言う事じゃないと思うけど、なのはは存在その物が、歩く大量破壊兵器だから。」
「まさか……」
瓦礫の中から現れたトーレは略無傷と言う頑丈っぷりだったが、其れよりもフェイトから齎された情報の方がダメージが大きかった様だ。
トーレは実力的にはオーバーSの魔導師と同格であるが、今のフェイトはオーバーS所の力ではないと言う上に、はやてやなのはは、更に
その上を行くと言うのだから。
「貴女達が勝つ可能性は限りなく低い……と言うか、この間の襲撃が最初で最後の勝利だよ。
六課の隊長陣は全員ランクリミッターを外してこの戦いに臨んでるし、ギンガの奪還に燃えるスバルとノーヴェ、ヴィヴィオの奪還を誓って
るシグナムと京さんは、更に力を増してるからね。
……それでも、まだやる?」
「当然だ……!我等戦闘機人と違い、お前達魔導師の力は有限……何れ魔力は枯渇して戦えなくなるのだからな。」
「なら、叩き伏せるしかないね。」
其れでも戦うと言うトーレに対し、フェイトは冷徹なまでに言い放つ――其れこそ10年前に、なのはと初めて会った時よりも冷たくだ。
この瞬間に、フェイトは敵に対する一切の情けを捨てた状態に、命名するのならば『雷光の死神』とも言うべき精神状態になったのである。
同時に、バルディッシュをクレッセントフォームに換装し、金色の刃を持ったデスサイズを構える。
バリアジャケットの色も相まって、大鎌を構えるその姿は正に死神――美しき雷光の死神が、無限の欲望と、その欲望の副産物を狩る為
に、この地に降臨したのだった。
――――――
――推奨BGM:『Antimony ~Mutually Exclusive Dichotomy~』(KOF'2002UMクローン京チーム)
一方のレオナも、義父であるハイデルンから叩き込まれた『ハイデルン流暗殺術』を駆使し、セッテの事を攻め立てていた。
高速で振るわれる手刀攻撃に加えて、真空球体であるボルテックランチャーでの圧力と、イヤリング爆弾やグレネード、更にはコンバットナ
イフを使った多彩な攻撃に、セッテは完全に振り回されていた。
セッテもまた、Sランク相当の力を持ち、ブーメランブレードを使っての空間制圧が出来る強者であるが、レオナの多彩で速い攻めのせいで
ブーメランブレードを投擲する機会がなく、本来の戦いが出来ていないのだ。
「力は其の物は大した物だけれど、実戦経験が貴女は少ない。
言うなれば戦い方を知っている素人の様な物……基本は出来ているけれど、其れだけ。貴女の戦い方には応用力がない。」
「………うるさい。」
同時にこの戦いは、戦闘経験の差が如実に表れた戦いであるとも言えるだろう。
レオナは幼い頃にハイデルンに保護された後に、自らの意思で軍人を志したその時からハイデルン流暗殺術を叩き込まれ、16歳で既に
戦場に立ち、18歳でKOFに初出場し、オロチ一族やネスツと言った強敵との戦いを繰り返して来た猛者だ。
逆にセッテは、高い実力は持っている物の、ナンバーズの中では後発組であり、戦闘経験は決して多くない。
一応ナンバーズ内での模擬戦なんかは経験しているが、レオナの様な『生きるか死ぬかの戦い』と言う物は未経験であり、それ故に教科
書通りの戦いしか出来ないのだ。攻撃にしても防御にしても。
「……下が狙い……」
「その反応速度は悪くないけれど、本命は此方。」
「……!」
だから、レオナの簡単なフェイントにあっさりと引っ掛かってしまう。
今も、フェイトが前傾姿勢を取った事でグランドセイバーを警戒し、下段のガードを取ったが、その動きに合わせる様にレオナは上体を起こ
し、がら空きの頭部に渾身のムーンスラッシャーを叩き込む。
幾多の戦場を駆けてきたレオナにとって、ロールアウトされたばかりの戦闘機人を倒す事は、赤子の手を捻るよりも容易いと言っても過言
ではないだろう。
何よりもレオナは、共に戦う仲間の事は信頼し、仲間の事は護らんとするが、敵に対しては何処までも冷徹になる事が出来る故に、セッテ
への攻撃の手は決して緩まない。
「……これ程の力が……」
「最初に言った筈、貴女では勝てないと。」
カチあげ式のアッパーカットから連続で肘を叩き込むと、ストライクアーチ→エックスキャリバーに繋ぎ、着地と同時にグラウンドセイバーか
らのグライディングバスターを叩き込み……
「Kill!!」
グライディングバスターで蹴り上げたセッテに、自分も飛び上がって居た事を利用して、必殺のVスラッシャーを叩き込む……だけでなく、更
に、ハイデルンインフェルノで地面に叩きつける徹底ぶり。
敵には一切容赦しないレオナの攻撃を受けたセッテは、ボディスーツが所々裂け、ヘッドギアも損傷し満身創痍の状態になってしまった。
辛うじて戦闘は可能だろうが、こんな状態で戦闘を行うのは自殺行為……尤も、人としての感情を殆ど持たない戦闘機人ならば、その身
が壊れる事も厭わずにスカリエッティを守ろうとするだろうが。
だが、そんな物はレオナにとっては如何でも良い事だ。
「まだやると言うの?……なら、徹底的に潰すだけ。」
レオナは、己の任務を『スカリエッティの逮捕。其れが出来ない場合は戦闘不能にせよ』と言う事だと認識している故、その任務達成の障
害となる物を排除する事に一切の戸惑いは無い。
レオナもまた、戦場に於いては、冷徹な戦闘マシーンとなる事が出来る者であったのだ。
そして、本気を出したハイデルン流暗殺術は必殺の暗殺術と化す――セッテにとっては、何とも有り難くない相手だろうレオナは。
其れでもセッテは、己の役目を果たすべく、再びレオナとの交戦を開始したのだった。
――――――
Side:レオナ
「此の程度で私達を止めようなんて、ちょっと烏滸がましくないかな?さっきのガジェットと言い、少し私達を過小評価してるよね?」
「其れは間違いないけれど、そのお陰で楽に勝てた。
能力そのものは高めだったけれど、実戦経験皆無の相手では、私達に勝つ事は出来ない。」
何よりも、私は子供の頃から戦って来たし、其れは貴女もでしょうフェイト?……実戦で叩き上げられた力は、ただインストールされただけ
の力に負けはしない。
真の強さの根幹をなすのは、弛まぬ修練と、数えきれないほどの実戦経験だから。
――ドシャァァァァァァァァァァァ!!
「あ……ぐあ………」
「…………」
そして、その結果が此の2体の戦闘機人。
はやてが殺すなって言うから生かしておいたけど、虫の息である事は間違いないし、これで貴方の護衛は居なくなったわ……ジェイル・ス
カリエッティ、貴方にもう勝ち目はない。
市街地に現れたガジェットなど、なのはとはやてが本気を出せば一網打尽だし、仮に撃ち漏らしがあっても、其れは八神庵が倒すだろうか
ら問題ないし、ゆりかごには京とシグナムとテリーとヴィータが突入した……なら、ゆりかごが落ちるのは時間の問題。
もう貴方に勝ちは無い。
頼みの綱の戦闘機人もすでに戦闘不能……これ以上の抵抗は無意味。
「ふむ、確かに普通ならば可成り追い込まれた状況だろう。
予想外に強くなっていた相手によって護衛は倒され、そして残るはお世辞にも強いとは言えない私だけだ……だが、だからと言って私の
事を逮捕出来ると思っているのならば大間違いだよ。」
あくまでも敵対すると言うのね……ならば全力で事に当たらせて――って、アレは!!
「君達の力を貰うよトーレ、セッテ……」
「んな、此れは……トーレとセッテを、スカリエッティが吸収してる!?」
如何やらその様だけれど、多分それだけでは終わらない……他者をエネルギーとして吸収するとは、完全に人を止めてるわね、ジェイル・
スカリエッティと言うのは。
「フハハハハハ!!此れは如何だ!此れこそが最強の存在だ。
私は私自身を戦闘機人として改造していたのだよ!
……其の力の一つが仲間の魂を吸収する事で己の力を高めると言う物!私は今此処に最強の力を手に入れたのだ!」
そして、トーレとセッテと言う2体の戦闘機人からのエネルギーを吸収したスカリエッティの上半身は肥大化してシャツが破れ、下半身も膝
から下の布が破れさり、その姿は正にモンスターと言っても過言じゃない。
スカリエッティ……矢張り貴方は此処で倒す。
ミッドチルダの平和の為にも、私は貴方を討つ……持てる力の全てを持ってしてね。
To Be Continued… 
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