Side:はやて


ロック君とティアナがギースとナンバーズを倒して、スバルとノーヴェも敵の手に落ちたギンガを倒して、正気を取り戻してくれた。此れだけ
でも万々歳やけど、期せずして復活したアインスが見事なまでに無双しとるわな此れ。



「遠き地にて、深き闇に沈め……デアボリックエミッション!


――ズガァァァァン!!


本家本元のデアボリックエミッションは、ガジェットも京さんのクローンも纏めて吹き飛ばしてしまうからなぁ?……スカリエッティは、自分の
戦力強化の為にアインスを蘇らせたんやろうけど、逆に最強の敵を作る事になってまったみたいやね?
正に、下手な謀は、身を亡ぼすやな。

史上最強にして天下無敵のアインスが居る以上、私達が負ける事は絶対にないで?
京さんのクローンの中でも最強の力を持ったKUSANAGIは、庵さんがキッチリ仕留めたし、後から後から湧いて来るガジェットと、京さんのク
ローンは、なのはちゃんが吹き飛ばしてるからなぁ。
残るは、アジトとゆりかごやで!!



「くくくく……はぁ~はっはっはっは!!死ね、死ね、死ねぇ!!偽物は、俺の前から消え失せろぉ!!」

「一撃必殺全力全壊!!ディバインバスタァァァァァァァァァァァァ!!!!!



其れ以前に、此の問題児コンビがやらかしてくれてるけどな。
敵をぶっ倒すのは問題ないけど、ビルとかぶっ壊さんように注意せんかい!!アンタ等が何か壊すと、私が始末書書く羽目になるんや!
少しは上官をいたわって、破壊行為を自重せんか!!



「「其れは無理だ。(無理だよ。)」」



無理以前に、そもそも私の言う事なんて聞く気ないやろアンタ等?……取り敢えず、戦いが終わった後の始末書は確定やな。
でも、戦況は此方に傾いて来てるから、スカリエッティのアジトとゆりかごでの戦いに全てが詰まっていると言っても過言ではないやろな…
…だからこそ、気を引き締めてや京さん、シグナム。フェイトちゃんにレオナちゃんもな。
ヴィータとテリーさんも、ゆりかごの動力の破壊、頼んだで!












リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round41
『J.Sのアジト~Trush head~』











Side:フェイト


やっとスカリエッティのアジトに到着した訳なんだけど……此れって本当にアジトなのかな?
門こそ鉄ごしらえの頑丈な物だったけど、その先にあるのはどこぞのテーマパークを思わせる西洋のお城チックな建物に、観覧者……極
めつけは入り口に設置されたLEDライトの証明設備だよ。

『スカリエッティのアジト』って、幾ら何でも私達を舐め過ぎじゃないかな?――其れとも、私とレオナなら簡単に勝てると思ったのかな?



「その可能性は否定できないけれど、そう思ってくれたのならば好都合。
 敵戦力を正確に把握する事の出来ない相手であるのなら、其処にはいくらでも付け入る隙が存在しているもの。」

「なら、現役の軍人さんとして、如何攻め込むのがベターだと思う?」

「あんな見た目でも、恐らく監視の目は多数存在している筈だから、私達の事は既にバレていると見るべき。
 なら下手に潜り込むよりも正面突破が吉――寧ろ潜入した場合、挟み撃ちにされる可能性もある。」

「やっぱりそれが一番だよね?……ふふ、割と同じ事を考えてたみたいだ。
 でも、その方法で行くとなると、正面突破の一撃は……」

「出来るだけ派手な方が良いって、大佐は言っていた。……だからと言って、テロリストの本拠地の鉄製扉を6連装マイクロミサイルポッド
 で吹き飛ばすのはやり過ぎだと思う。」



……其れは、明らかにオーバーデストロイじゃないかなぁ?
あ~~~……でも、なのはだったら正面突破の派手な一撃でハイペリオンスマッシャーとか使って、扉所か建物其の物吹き飛ばしかねな
いか……じゃなくて、取り敢えずソコソコ派手に行くのが良いって話だね。

なら、此れで良いかな?プラズマスマッシャー!!


――バチィ!

――……シュゥゥゥン



!!……扉に当たる瞬間にプラズマスマッシャーが消えた?
……成程、扉には高密度のAMFが展開されているんだね?魔法頼りの管理局員じゃ、入り込むのにも一苦労する訳か……魔法頼みの局
員ならね。

レオナ、お願いできる?



「了解。」


――ピンピンピンピン!

――ポイポイポイポイ!

――ドッガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!……ガラン



レオナが腰回りに装備してるハンドグレネード4個を纏めて投擲し、その爆発で見事に扉はスクラップに。AMFは、魔法に対して可成りの抑
止力になるけれど、物理的な攻撃には全く無力だからね。
最も、本来なら質量兵器のハンドグレネードは管理局的には御法度なんだけど、其れはあくまでも平時に限っての事。今回の様な大規模
な、其れも紛争と言えるレベルでの戦いになった場合に相手が質量兵器を使って来たのならその限りじゃない。
相手は此方を殺せる武器を持っていて、此方の攻撃を無効に出来る盾があるのに、此方は相手に効き辛い武器しかないんじゃ戦いにな
らないモノね。

兎に角これで道は開けたから先に進もう――恐らく中には、罠が仕掛けられてると思うから慎重にね。



「了解。任務遂行します。」



さてと、吹き飛ばした扉から中に入ってみると、人を馬鹿にしたような外装と打って変わって、中は結構近代的と言うか、如何にも悪の科学
者が良そうな研究所の雰囲気だね?
一切の装飾のない金属製の壁に、直打ちのコンクリートに樹脂製の床材を貼っただけの床……全体的に無機質な感じがするよ。
今のところ、怪しいモノは見て取れないけれど……



「怪しいかどうかは兎も角、悪趣味な出迎えは現れたみたい。」

「……此れは、確かに悪趣味だね。」

入り口から少し進んで到着したロビーのような場所に現れたのは、私とレオナ――もっと正確に言うのなら、私とレオナの姿を模したガジェ
ット。
単なる偶然か、それとも私達が此処に来る事を予想していたのか、どっちにしてもスカリエッティの性格が途轍もなく悪辣なのは、間違いな
い事実だね。

ふぅ……悪いけど、レオナは私の方の相手をお願いしても良いかな?
幾ら偽物とは言え、自分を攻撃するって言うのは良い気分じゃないよ――勿論、仲間を攻撃するのだって嫌だけど、自分自身をなんて、悪
い夢だとしか思えないから。



「問題ない。私も自分と戦うのは嫌……だから、私の方は貴女に任せる。」

「うん、任された……其れじゃあ、行こうか!!」

「偽物では、私達には勝てない……」



其の通り!バルディッシュ、非殺傷設定を解除!
そしてフォームを、ハーケンからザンバーに変更!


『Yes sir.』


趣味の悪い演出だけど、スカリエッティとの前哨戦としては悪くないかも知れないね?スカリエッティが作ったであろう、悪趣味な偽物を相
手に準備運動って言うのも、有りだと思うから。

まぁ、果たして準備運動になるかどうかは、少々疑問が残る相手ではあるけれどね。








――――――








No Side


ロビーで始まったフェイト&レオナと、その2人を模したガジェットは、フェイトとレオナから先に仕掛ける形で始まった。
フェイトはガジェットレオナにザンバーで斬りかかり、レオナはガジェットフェイトにグラウンドセイバーで斬り込む。その動きは、余りにも素早
く、素人の目には映らず、玄人目にも一瞬で距離を縮めた様にしか見えず、達人レベルであっても一足飛びで距離を詰めた様にしか見え
ないだろう。
現実に、本気を出したフェイトとレオナのMAXスピードに付いて行く事が出来るのは、京とシグナム、そしてなのはと庵位だ。(テリーとロック
とヴィータは、目で追えてもちょっとだけ付いて行けない。)

故に、ガジェット如きが反応できる筈もなく、ガジェットレオナは左の肩内から袈裟懸けに、ガジェットフェイトは右脇腹から略真一文字に両
断され、両断された身体が床に落ちて冷たい音を立てる。


一瞬で勝負あり――と、この場に第3者が居たら思っただろう。
否、フェイトとレオナも一撃で片付いたと思っていた。――だが……



――ドロリ……グニュ……ギュルリ……ニュロリ……



斬り落とされた部分が、突然溶解して動き始め、其れが残った身体と融合し、何と斬り落とした部分を再生して来たのだ。
そしてフェイトもレオナも、此れには見覚えがあった。――但し、現実にではなく『映画』と言うフィクションの世界での事であるが。


「此れは……形状記憶液体合金!!」

「正に、リアルターミネーターね……」

「……レオナの世界にもあの映画が?」

「……その辺は、余り違いが無いのかも知れない。」


期せずして、別々の地球の同じ映画が存在している事を知ったが、兎に角このガジェットは『未来からやって来た殺人サイボーグが未来の
英雄を殺しに来る映画』の2作目に出てきた強敵と全く同じなのだ。
軟化と硬化が自在であり、単純な金属であるならばなんにでも姿を変える事が可能な上に、他人に成りすます事の出来る、限りなく不死
に近い形状記憶液体合金製のガジェット、其れがガジェットフェイトとガジェットレオナの正体だった。

其れを踏まえると、此処に来たのがフェイトとレオナだったから、このガジェットはフェイトとレオナの容姿になったのだろう。早い話が、誰が
此処を訪れても、自分と戦う運命であったと言う訳だ。
それも、限りなく不死に近い存在である者と。

何よりも驚くべきは、スカリエッティの悪魔の頭脳だ。
実現不可能だからこそフィクションとして成り立っていた物を、実際にこうして現実に作り出してしまったのだから――精神体であるオロチを
クローニングするのは伊達ではないのだ。

普通に考えれば可成りの難敵となるのは間違いない――が、フェイトもレオナも焦りは全くない。


何故か?


「でも、そう言う事なら攻略法はあるね?」

「一番の弱点は超高温と超低温で、此処にはそのどちらもないけれど、アレが金属であるのならば絶対的な弱点が存在しているから。」


2人には既に攻略法が見えていたからだ。
件の映画に於いて、この手の相手には鉄をも溶かす超高温と、万物を一瞬で凍結させる絶対零度が効果的である事が示されているのだ
が、そんな物は此処にはない。
だが、相手が金属であり、更に液体金属であるからこそ出来る、金属に対して絶対の勝利方がある事を2人は知っているのだ。


「ならば、狙うべきはあそこ。」


言うが早いか、レオナはイヤリング型爆弾をロビーの一角に投擲すると同時に、腰回りに装備していたグレネードを分解して、中身の火薬
をロビーにまき散らす。

そうなると何が起きるか?


答えは簡単だ。イヤリング爆弾の爆発が、グレネードの火薬に引火して、更なる大爆発を起こす。
相当に頑丈に作られているのか、ロビー其の物はびくともしないが、代わりにロビーはあっと言う間に火の海に!!――尤もこの程度では
液体金属ガジェットは平気だろうが、フェイトとレオナの狙いは別に有った。


――ブシュゥゥゥゥゥゥ!!


ロビーで火災が発生した事でスプリンクラーが作動し、炎を消す為に大量の水が撒き散らされたのだ。
そして、其れこそがフェイトとレオナの狙いだ。


プラズマランサー!!

ボルテックランチャー!



充分に濡れた所で、フェイトはプラズマランサーを、レオナはボルテックランチャーを発動。
プラズマランサーは言わずとも雷属性の射撃魔法であり、ボルテックランチャーは、其れ其の物に雷属性は無いが、真空のエネルギー球で
あるために、空気中との圧力差が生まれて火花放電を起こしている球体だ。
何方も電気を帯びた攻撃――其れが、水で濡れたフロアで放たれたらどうなるか?


――バチィ!!!


答えは簡単。
あっと言う間に、此のロビー全体が巨大な電気椅子に早変わりだ。
勿論フェイトとレオナもスプリンクラーの水を浴びているから濡れているが、電気と言う物はより導電性のある物に流れると言う性質を持っ
ている。
分かり易く言うのなら、濡れた人間よりも、よく濡れた液体金属の方が電気が通りやすいのだ。
其れはつまり、ガジェットフェイトとガジェットレオナに全ての電流が流れるのと同じ事。


――バリィ!!!



「「!!!??」」


一瞬、凄まじい火花放電が起きたかと思った直後、ガジェットフェイトとガジェットレオナの身体が青白くスパークし、その後崩れてドロドロの
金属へと姿を変えた。
数百アンペア数万ボルトの電流を流された液体金属の身体が一瞬でショートし、液体金属で作られていた回路やら何やらを一瞬でお釈迦
にしたのである。


「偽物は、所詮偽物だね?」

「偽物は本物には勝てない……クローン京が、本物の京に勝てないのと同じ。」


機械に対しての一撃必殺である、高電流を流すと言う方法で、己の姿を模したガジェットを屠りさったフェイトとレオナだが、しかしその顔に
安堵は無い。

当然だ――此れはあくまで、前哨戦にもならない小手試し。
そんな物に快勝した所で、勝った気になるのは大間違いだ――小手調べの後には、本番が。倒すべき黒幕である、ジェイル・スカリエッテ
ィが待ち構えているのだから。








――――――








Side:レオナ


不愉快極まりない相手だったけれど、弱点があからさまだったから、苦戦はしなかったわ……矢張り金属製品には、過度の水濡れと高電
流は厳禁だったみたい。



「準備運動にもならなかったね……でも、此れで終わりじゃないよね?」

「終わりである筈はないわ。」



――ガシャン!!



其れを示すように、ロビーの扉が全て閉じられて、更にフロアが上昇しているから……在り来たりなシチュエーションだけれど、このフロア
が上昇しきった先に何が待っているかは容易に想像できるわ。

待っているのは、この施設の主にして、私達のターゲットである筈だから。



「ようこそ、フェイト・T・ハラオウン君、レオナ・ハイデルン君……君達の来場を心より歓迎しよう。」



そして、其の予想は大当たり。
フロアの上昇が止まった場所で待っていたのは、白衣に身を纏いオーバーとも言えるリアクションで私とフェイトを迎え入れた、討つべき黒
幕である、ジェイル・スカリエッティ。



「だが、此処がお前達の終焉の地となる……今のうちに祈っておけ。」

「ドクターの敵、排除する。」



それと、短い青い髪で長身の女性と、ピンクのロングヘア―の少女……このアジトの守護を司る戦闘機人――可成り高い戦闘能力を有し
ているのは間違いない。

だけれど、其れを認めた上で、敢えて言わせて貰うわ……

「彼方達では勝てない……」

「ほう?大きく出たね?」



貴方達の力は確かに強い――其れこそ、戦闘能力だけならば六課にも引けを取らない筈。
けれど、彼方達は其れだけ。強い力を持っているけど、それに見合う心がない――どんなに強い力であっても、其処に心が伴わなければ
所詮は上辺だけの力に過ぎない。

そんな薄っぺらな力では、私とフェイトに勝つ事は出来ない。――其れを、此れから証明する。



「ふ、出来るモノならばやってみたまえ――君達2人が其れを出来るとは思わないがね。」

「その油断が命取り。『慢心は己に負けた証』だって、教官が言っていた……」

「その理屈で行くと、スカリエッティは既に負けてる訳だね?……なら、その敗北を現実のものとしてあげないとね。」



勿論その心算……貴方の悪事は此処で途切れるわジェイル・スカリエッティ。――この世界の為にも、貴方は此処で終わるべきだわ。
その引導を、私とフェイトが渡すわ……











 To Be Continued…