――京達がゆりかごに突入したのと同刻


Side:スバル


京兄達がゆりかごに突入して、アタシ達も覚悟を決めたつもりだったんだけど、実際にこうして対峙すると、やっぱり少しだけキツイモノがあ
るかな?

ギン姉を奪還するって言う事は、敵の手に落ちたギン姉と戦って、そして勝たなきゃダメだって分かってるんだけど、この戦いはシューティ
ングアーツのスパーリングとは違う、ガチの物だから、其れが少し怖い。
敵の手に落ちたギン姉は、改造されて、ギン姉の記憶やら何やらは奪われた戦闘マシーンと化してるだろうからね……

だけど、落ち込んでる事なんて出来ない!



「………」



目の前には、ナンバーズのナンバー13に改造されたギン姉が居るんだからね。
まず間違いなく強化されてるだろうから、アタシとノーヴェのコンビでも簡単に勝つ事は出来ないと思う――ともすれば、苦戦する事は間違
いないと思うよ。



「だけど、退く気は更々ねぇだろスバル?アタシもそうだけどな!!」

「勿論、退く気なんて無いよノーヴェ!!」

此処で退いたら、ギン姉を取り戻す事は出来なくなる!
だから、例え分が悪い戦いであってもアタシもノーヴェも絶対に退かない!!――お前を倒して、ギン姉をアタシ達の元に取り戻す!!
何よりも、京兄と約束したんだ、絶対にギン姉を取り戻すって!!だから、絶対に勝って見せるよ!!












リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round39
『強大なる姉妹のガチンコ勝負!』











Side:ノーヴェ


そんな訳で戦闘が始まった訳だが――ちぃ……ナンバーズのナンバー13となったギンガは、思った以上に厄介だな?
元々の格闘センスは其のままに、感覚的なモノが恐ろしい程に強化されてやがるから、アタシとスバルの波状攻撃に対しても、その都度
的確な対処をして、正確なカウンターを返してくるわけだからな。

もっとも其れだけなら、フリーになった1人がカウンターにカウンターをブチかましてやれば良いだけなんだが、ナンバー13は、カウンターに
すら超反応するから、トンデモねぇ以外に言いようがねぇ。
普通の人間だったら身体をオカシクしそうな無茶な動きだって難なくこなしてくるしよぉ……てか、幾ら戦闘機人つっても、内部フレームは
人間の骨格をベースにしてるんだから、関節が逆に曲がる様な動きは出来ない筈なのに――スカリエッティの野郎、ギンガの首から下が
無くなったのを良い事に、内部フレームを独自の物に作り替えやがったな!!



「………!!」

「うわぁ!?」

「うおっと、あぶねぇ!!」

「な、な、な……何今の!
ねぇ、ノーヴェ今の何!?伸びて来たよ!?ギン姉のパンチが伸びて来たよ!?
 もっと分かり易く言うなら腕が伸びて来たよ!!こう、みょい~~~~~~~んって!!」

「んなもん見りゃ分かるって!!」

明らかに伸びてたからな?ギンガの拳のリーチは、ストレートで大体80cmほどだが、今のストレートは倍以上のリーチが有ったぞ!?



――ガキン!



ん?ギンガの腕が元に戻ってなんかの接続音がしたぞ?
って、まさか!あの異常なリーチは、拳打の瞬間に肩と肘と手首の関節を外して一時的にリーチを伸ばしてるのか!?
人の皮膚の伸縮率は個人差があるが、身体をクローン培養する段階で皮膚に遺伝子的な改造を施しておいてやれば、良く伸びる皮膚に
してやる事位は出来るだろうからな。



「マジで?……でも、そうなると可成りヤバくないかな此れ?
 ギン姉の格闘の腕は元々アタシ達よりも上だったし、我流で草薙流の技も幾つか会得してた……其れだけでも相当にアタシ等は、ハン
 デを背負ってるのに、その上リーチまで長くなったんじゃ、幾ら何でもキツク無い?」

「あぁ、ぶっちゃけキツイが……其れは、格闘戦に限定すればの話だろ?」

「……へ?」



確かに格闘戦に限定すれば、アタシ等がギンガに勝つのは難しい。てか、今のギンガに勝つのは多分無理だ。
元々アタシ等より強かった上に、今のギンガはナンバー13として強化改造されてアタシ等に対しても一切の手加減がねぇし、関節が逆に
曲がったり、腕が伸びたりする訳だから、格闘戦じゃ如何足掻いても勝てねぇよ。

だけど、クロスレンジの格闘以外なら如何だ?



「クロスレンジの格闘以外……?――そうか!!」



気付いたか?
ギンガは確かに強いが、その実力は格闘戦において、つまり相手との距離が近いからこそ発揮されるモンだ。つまり、格闘の間合いから
離れちまえばどうって事ないんだ。
幸いにして、アタシのデバイスであるガンナックルは射撃が出来るし、スバルには間合いの離れた相手を攻撃出来るリボルバーシュートが
有るだろ?

何よりも、アタシ達には見様見真似とは言え、なのはさんの最強砲撃であるディバインバスターが有る。格闘戦をしないで、距離を取って
戦えば、勝つ事は可能な筈だろ?



「それは、確かにそうだね――其れに、確かに強いけど、今のギン姉、もといナンバー13の攻撃はギン姉の攻撃より強烈だけど、ギン姉
 の攻撃と違って重みがない。
 真面に喰らったら只じゃ済まないだろうけど、只強いだけの攻撃じゃ、アタシ等を倒す事は出来ないしね!!」

「そう言うこった!」

加えて、決戦直前に、兄貴から幾つか草薙流の技も、型だけとは言え教えて貰ったから、そいつも駆使すれば行ける筈だ。
待ってろギンガ、今助けてやるから。――ナカジマ家の長女が居なくなっちまうなんてのは洒落にならないし、何よりも親父と母さん、そし
て兄貴が悲しむからな。

ギンガを助ける為に、お前をぶっ倒してやる、ナンバー13!!








――――――








No Side


――推奨BGM:W.W.Ⅲ(By KOF'99 Ikari Team)



クロスレンジでの格闘戦で、ナンバー13と化したギンガに、格闘で挑むのは下策と判断したスバルとノーヴェは、ギンガのリーチの外から
攻撃するミドルレンジを主体とした攻撃方法に切り替えて、戦いを展開していった。


「おらぁぁぁぁ!!反撃なんざさせねぇぞ!!!」

「喰らえ、リボルバーシュート!!」

「……!!」


ノーヴェが連射の利くガンナックルで、魔力弾をさながらアサルトライフルの如く連射してギンガの動きを止め、其処にスバルが威力充分
のリボルバーシュートを叩き込んで、ダメージを与えて行く。
スバルもノーヴェも、決して相手との間合いを離しての戦いは得意ではないが、かと言ってできない訳ではない――だが皮肉にも、京に追
い付こうと、只管に格闘を磨いていたギンガは、距離が離れた相手と戦う術を持って居なかったのだ。
それが(スバル達には)幸運であり、スバルとノーヴェはペースを握る事が出来ていた。


「とは言え、あんまり効いてねぇな?」

「ギン姉は、元々頑丈だったけど、ナンバー13になった事で更に頑丈になったのかも……」


しかし、この攻撃はギンガにとって有効ではあっても決定打にはならなかった――如何にミドルレンジ以上からの攻撃の手段が有るとは
言え、その練度は砲撃魔導師と比べたら月と鼈であり、決定打にならないのも仕方ない事だろう。

加えて厄介な事に、ギンガの動きが少しずつではあるがスバルとノーヴェのミドルレンジ攻撃に対応し始めている。
此のまま続ければ、何れ完全にミドルレンジ攻撃に対応され、射撃を躱した上で一気に間合いを詰めて格闘戦に持ち込まれる可能性は、
可成り高いだろう。

だが、其れでも勝機は格闘戦以外にしか無いと考えているのか、ノーヴェはガンナックルから更に高速で魔力弾を撃ち出す――最早アサ
ルトライフルをも上回る連射で、其れも両手からだ。

1発1発の威力は低いが、其れが息つく暇がない程に発射されては、ギンガとてその全てを避ける事は出来ない……と言うよりも、避ける
事は不可能な弾幕が張られているために防御に徹するしかない。
そして、防御に徹すると言う事は足が止まると言う事でもあり……


「おぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

「!!」


其処をスバルが、出撃前に京から教えて貰った外式・奈落落しで強襲!
ノーヴェは、格闘戦以外に勝機は無いと思って連射していたのではなく、スバルが確実にギンガに攻撃出来るように、自分に意識を集中
させ、同時にその足を止めるのが目的だったのだ。

そして強襲を喰らわせたスバルは、その手を止める事なく、着地と同時に水面蹴りでギンガの足を払い、体勢を崩した所にボディブロー→
アッパー→ハイキック→後ろ回し蹴りのコンボを叩き込んで吹き飛ばすが、即座に間合いを詰めて至近距離を維持する。

此れが、スバルとノーヴェの本当の狙いだった。
確かに今のギンガには、2人が格闘戦で挑んでも勝ち目は薄いだろう――が、役割分担をしたらどうだろうか?
ノーヴェがガンナックルの射撃でギンガの動きを制限し、その上でスバルが超近距離戦を挑めば勝利は見えて来る。今のギンガは、可成
リ厄介な身体をしているが、超近距離の格闘戦なら、逆に曲がる関節も、伸びる腕もメリットにはならない。
真正面からガンガン打って来る相手に対して、逆方向に曲がる関節は意味がないし、超近距離では打撃のリーチが伸びるのもメリットに
はならない。
特に伸びるリーチは、超近距離戦では全く意味がない所か、間合いを離す心算で出したのを避けられると、腕を戻すまでの僅かな時間に
やけどじゃ済まない痛手を被る可能性があるのだ。

故に、ギンガは防戦一方と言う状況になってしまったのだ。
スバルの超近距離戦と、ノーヴェの執拗な魔力弾攻撃の両方に対処しなくてはならないのだから。


「――!!」


だが、何方も格闘、或いはどちらも射撃ならば対応も出来ただろうが、両方一緒に来られては堪ったモノではない。
射撃を魔力シールドで防ぎながら、自身は格闘戦を行うと言うのは可成り難しいモノであり、其れこそなのはであっても苦慮するレベルの
技術なのだ。

其れを、如何に改造されているとは言えギンガが完璧に出来る筈もなく、徐々に、しかし確実にノーヴェの魔力弾と、スバルの打撃がヒット
し始める。


「……!!」

「このまま押し切る!!」

「目を覚ましやがれギンガ!!」


攻撃は更に激しくなり、遂にスバルのアッパーがギンガのガードをこじ開け、其れと同時に背中にノーヴェの魔力弾が降り注ぎ、決定的な
隙が生まれる。

そして、その隙を逃すスバルとノーヴェではない。


「チャンス!!此れで決めるよノーヴェ!!」

「言われるまでもねぇ!!」

「!!」


――ギュイィィィィィィィン……!!!



スバルの前には空色の、ノーヴェの前には檸檬色の魔力の塊が出来上がっている。
大きさはサッカーボール程度の魔力球だが、その密度は並の魔力弾の密度とは比べ物にならない程に高い――此れを直接叩き付ける
だけでも十分な攻撃になるレベルだ。

だが、この魔力球は直接叩き付けるモノに非ず!


「此れがアタシ達の……」

「全力全壊!!」


「「ディバイィィン……バスタァァァ!」」


――ドガバァァァァァァァァァァァァァァン!!


その魔力球を、スバルは殴り、ノーヴェは蹴りつけて、其処から強烈な魔力砲を、エース・オブ・エース高町なのはの代名詞とも言える『デ
ィバインバスター』を放つ!

必殺の威力を誇る砲撃は、無防備なギンガに向かい、ギンガも何とか防御しようとするが、ディバインバスターの前に並のシールド等は紙
程度の防御力しか有さない。

ギンガが張った魔力シールドは無慈悲にも砕かれ、蒼と黄の砲撃がギンガを襲う。


――ドォォォォォォォォォォォン!!


そして、着弾と同時に大爆発!!!
スバルとノーヴェのコンビネーションが、ナンバー13となったギンガを見事に討ったのだった――少なくとも、そう思わせるだけの一撃が炸
裂したのだった。








――――――








Side:スバル


はぁ、はぁ……全力のディバインバスター、此れは流石に決まったよねノーヴェ?特にアタシのは略ゼロ距離で決まった訳だからさ。
此れで、倒しきれてなかったらちょっとへこむよ。



「流石に今のは効いたんじゃねぇか?
 なのはさんの本家には大分劣るとは言え、アタシ等のディバインバスターだって生半可な威力じゃねぇんだ……幾らナンバー13に改造
 されたとは言え、倒せたんじゃねぇか?」

「だよね……」

なら、後はギン姉を回収して、スカリエッティに植え付けられた何らかのプログラムをマリーさんに撤去して貰えばOKだね。――だから、ま
ずはギン姉を………



――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!



「「!!!」」


回収しようと思った所で感じた此のプレッシャーは……まさか、ギン姉が!?だけど、ギン姉は倒したはず……其れなのに如何して……!



「コイツは、如何やらとんでもない事になったみてぇだな……!!」

「ギン姉……!!」

アタシとノーヴェのディバインバスターを喰らっても、ギン姉は倒されていなかった。
それどころか、此れまでとは比べ物にならない位の魔力を纏って宙に浮いてる……其れだけでも驚きなのに、今のギン姉からは、オロチ
に取り込まれた時のティアと同じ感じを受けるよ。

ギン姉、一体如何しちゃったの!!



「蛹を破り、蝶は舞う。」


――キュゴォォォォォォォォ……ドォォォォォォォォォォン!!



って、ギン姉が膝を折って構えたかと思った瞬間にギン姉から魔力の柱が吹き上がり、そしてその中からギン姉が姿を現した。
だけど、其れはアタシ達が知ってるギン姉じゃななかった。

深い青色だった髪は白くなって、眼は白目になって、ボディスーツには円形の歪な文様が現れてる……何よりも、この嫌な感じは、ティア
ナの時に感じたものと同じ……オロチの気配だよ。

如何やらスカリエッティは、只改造するだけでは飽き足らず、人類にとって禁忌とも言えるオロチの力に手を出したって所か……よりもよっ
て、ギン姉を実験台にするとは良い度胸だよスカリエッティ!!

だけど負けない!!
オロチの力だろうとなんだろうと、アタシ達は絶対に負けないよ――ギン姉の奪還て言う、最重要任務を受けているからね!!
その任務を達成するためにも、ギン姉を倒して解放する!!



「だな……なら、此処からが。」

「ファイナルラウンドだよノーヴェ!!!」

「よっしゃ、上等だ!!」



今のギン姉の力は相当なものだけど、絶対に勝てないレベルじゃないから、後はアタシ達の頑張り次第だね。
オロチの力も吹き飛ばして、必ずギン姉を取り戻してやる――待っててねギン姉!今、助けるから!!












 To Be Continued…