No Side


格闘技の祭典『THE KING OF FIGHTERS』――格闘ファンが熱狂する此の大会に、今大会は過去最強と言えるチームがエントリーしていた。
そのチームとは、『炎の貴公子』草薙京、『伝説の餓狼』テリー・ボガード、そして新鋭のルーキーであるロック・ハワードの3人のチームだ。

今大会、京もテリーも、元々は此れまでのチームメイトと組んで出場する予定だったのだが、テリーがロックを連れてふらりと日本を訪れた事で
其れが一変した。
偶然出会ったが京が、ロックに興味を示して、テリーに『なんだったら、今度の大会、この3人出てみないか?』と提案し、テリーも其れを受け入
れて、このチームが誕生したのだ。(因みに京はチームメイトの紅丸と大門に、テリーはアンディとジョー東に断りの連絡を入れた上で、京は真
吾を、テリーはケビン・ライアンを自分の代理として宛がっている。)

そして、このチームは『急ごしらえ』『未知数のルーキーが不安材料』と言った、メディアの下馬評を悉く覆しながら大会を勝ち進み、準決勝で
リョウ・サカザキ率いる極限流チームを激闘の末に撃破して決勝戦に!(京のライバルである庵率いる八神チームは、準々決勝で『ダウンした
相手への攻撃』をした事で反則負けを喰らった。)

そしてその決勝戦。大会主催者であるアンドルフが、京達の前に立ち塞がったが……


「バカでかい図体と、糞力だけは大したモンだが、それだけでKOFチャンピオンを名乗るなんざ烏滸がましいにも程があるぜテメェ?」

「まさか……こんな筈が……!!」


如何に巨体と怪力を誇るアンドルフと言えども、地球意思にすら対抗する力を持つ京の前ではその力は塵芥に等しかった。
否、京だけでなく、この程度ではテリーの足元にも及ばないし、下手をしたらルーキーであるロックにすら手玉に取られるだろう……所詮アンド
ルフは己の巨体と怪力を過信した一流半でしかなかったのだ。


「遊びは終わりだ!俺からは逃げられぇんだよ!決めるぜ!!

「ぐおわぁぁぁぁぁぁ!!」


そのアンドルフに対して、京は伍百弐拾四式・神塵を発動し、草薙の炎でアンドルフを焼き尽くす!――誰が見ても、勝敗は明らかだった。


「此れで、本当に強いのは誰か分かっただろ?チャンピオンベルトは要らねぇが、チャンピオンは俺だ!マッタク…アンタじゃ燃えねぇな。」


そして、今此処に、新たなKOFのチャンピオンチームが誕生したのだった。













リリカルなのは×THE KING OF FIGHTERS~紅蓮の炎~ Round1
『猛き炎の伝承者、異世界に渡る』











だがしかし、KOFはハプニングが起こる事でも有名であり、それはどうやら今大会でも確りと受け継がれているらしく、決勝戦後に突如として
空が暗転し、会場が崩れ始め、途轍もなく重苦しい空気が、会場全体を包み込み始めたのだ。


「此れは……親父の言ってた『何か』ってのは、この事みてぇだな……」

「オロチとまでは行かないが、トンでもない力を感じるのは間違いないぜ……如何する京?」

「野暮なこと聞くなよテリー……相手が誰であろうとも、立ち塞がる奴は焼き尽くし、降りかかる火の粉は払うだけの事だ。此れから何が起きる
 かは知らねぇが、俺の前に立ち塞がるなら、この炎で灰にするぜ。」

「まぁ、アンタならそう言うだろうな。……なら、やれる所までやってやるさ!」


ルガールの野望に、オロチの思惑、そしてネスツの計画と、此れまでのKOFには、必ずと言っていい程の『何か』が絡んで来ただけに、普通に
考えれば何かが起きたのは間違いない。
付け加えるなら其れは、人知を超えた事態であるのだが、しかし、京とテリーは経験から冷静そのものであり、ロックも大して驚いていない。


そして――



「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

「現れやがったな、くそ野郎が……いや、野郎かどうかも分からねぇが、兎に角ぶっ倒す以外の選択肢が存在しない奴が出て来やがったぜ。
 だがな、テメェは出て来た事を後悔する事に成るぜ?俺と、テリーと、ロック……この最強チームが、テメェ如きに後れを取る筈がねぇ!!」


人の形をしているが、明らかに人ではない存在『バース』が一行の前に姿を現すが、京は全く恐れる気配はない。
目の前の存在は確かに強いのだろうが、だからと言って『オロチ』よりも上かと問われれば其れは絶対に否!オロチどころか、精々ネスツの
上級幹部である『ゼロ(オリジナル)』とタメ張れるレベルだろう。

そしてテリーも同様に眼前の相手に恐れる事はない。
バースの力は確かに強いが、己の宿敵であった『ギース・ハワード』の力と比べれば大した事はない……純粋な力だけならばバースが上回っ
て居るが、其の力の奥底には信念を感じる事は出来ない。
ギースは確かに悪人だったが、信念は持っていた。だから強かった――その信念が無いのならば、ドレだけ強い力を持っていても脅威足り得
ないのだ。
付け加えておくと、ロックもまた、テリーと共に世界中を回って来たから『本物』を知っている故に、バースに恐れをなす事はないのだ。


「テメェが何処の誰かは知らねぇが……やるんなら相手になってやるよ――行くぜ!」

「Come on!Get serious!(来いよ!本気でやろうぜ!)」

「限界まで…飛ばすぜ!!」


三者夫々気合を入れて、バースとの戦闘を開始!
その先頭を飾ったのは、京だ。


「大人しく眠ってな……此処はアンタの生きる世界じゃねぇからな――ボディが、お留守だぜ!!


挨拶代わりとばかりに、荒咬み→九傷→七瀬の連携を叩き込み、バースの身体を大きく吹き飛ばす!此れが大会だったら、追撃は出来ない
が、此れは大会ルールが適用されないストリートファイト。それ故に、ルールなど有ってない物だ。
だからこそ出来る連携もあるのだ。


「フッ!ハッ!!チャージング!――LiveWire……Go Barn!!

レイジング……ストォォォォォォム!!!


吹き飛んだバースに、テリーがパワーチャージ→パワーゲイザーのコンボを繰り出し、ロックもレイジングストームで追撃してダメージを叩き込
んでいく!!
無論バースとて、一方的にやられる訳ではなく、気で作り出した手を使って攻撃をしてくるのだが……



覇王翔哮拳!!

雷光拳!!




その腕は、此れまで戦って来たライバル達が迎撃して京達への攻撃をシャットダウン!
戦いの場においては全力でやり合っても、試合が終わってリングを下りれば、同じ道を志す仲間故に、こう言う場面では何よりも頼りになる存
在であるのだ!



「今回は勝ちを譲ったが、次はこうは行かないぞテリー・ボガード?次の大会では、我ら極限流が勝つ!だから、その程度に負けるなよ!!」

「その程度、お前の相手じゃないだろ京?……さっさと倒して決めてこいよ、『アンタじゃ燃えねぇな』ってな!!
 其れと、京と組んでる新人君、君も見所があるぜ?……君の全力も、一緒に叩き込んでやれ!!」



そして、其れはバースと戦っている京達にとっては、何にも勝る起爆剤だ。
紅丸は京にとって、リョウはテリーにとっての純粋なライバル関係にある格闘家だけに、その相手からの激励を受けたとなれば燃えて然りだ。
加えて言うのならば、明確なライバルが居ないロックも、京のライバルである紅丸から、頑張れと言われたのならばやるしかないだろう。



「ったく……誰にモノ言ってんだ紅丸?お前に言われるまでもねぇ……コイツで決めてやる――行くぜ、テリー!ロック!!」

「なら、先ずは俺から行かせて貰うぜ京?覇ぁぁぁぁぁ……デッドリーレェェェェェェイブ!!


其れに応える形で、先ずはロックが己の最強奥義である『デッドリーレイブ・ネオ』を繰り出し、鋭い蹴りと拳を合計9発叩き込み、最後に両手
から気を放って吹っ飛ばす。


「やるじゃないかロック?なら、俺も負けてられないな!Are you OK?Buster Wolf!!


続いてテリーがバスターウルフを叩き込み、着実にダメージを上乗せしていく。
この辺の連携の見事さは、流石にテリーとロックは伊達に一緒に世界を周って居ないと言う所だろう。


「魅せてくれるぜ……だったら、フィニッシュは派手に行かないとな!
 オォォォォォォォォ……遊びは終わりだ!コイツで燃え尽きろぉ!!


そして、此の連携のトリを飾るのは勿論京。
ロックとテリーの連携で吹き飛んだバースを七拾五式・改で拾うように蹴り上げると、其処から裏百弐拾壱式・天叢雲を発動し、巨大な火柱で
バースを弩派手に燃やす!

裏式の中でも、大蛇薙と同等の破壊力を持つ天叢雲を真面に喰らっては、如何に人外の存在であるバースとは言えども只では済まない。
いや、京とテリーとロックの此の連携を真面に喰らったら、並の格闘家ならば再起不能になってもオカシクない……そんな連携を真面に喰らっ
たバースもまた、もう戦う事は出来ないだろう。


「……あばよ。」

「Ha-ha!Stand up!」

「紅丸に言われたから言う訳じゃねぇが、アンタじゃ燃えねぇな。」


見事な完全勝利!パーフェクト勝利だ。
だが、勝っても只では済まないのがKOFであるという事を忘れてはいけない――倒したバースの身体が、突如として煌々と輝き始めたのだ。
其れも只光っているのではなく、誰がどう見ても『ヤバイ』感じの光り方なのである。


「コイツは、まさかとは思うが……」

「KOFのラスボスの伝統、自爆……ポイよなぁ?」

「マジかよ……てか、自爆が伝統ってどういう事だテリー!!」


そう、其れはKOFの歴代黒幕が伝統としてきた自爆の前兆に他ならない。
此度のKOFはバースが黒幕ではないのだが、如何に黒幕ではないとは言えども、此れまでもゲーニッツやオロチと言った存在もまた、自害や
自己封印と言う形での幕切れをして来たため、バースが自爆を選んでも何ら不思議はないのである。

今から逃げても完全な安全圏にまで逃げるのは恐らく無理だろう。
良くて直撃を免れる程度だろうが――


――ヒィィィィィィィィィィン……


バースが爆発する刹那、突如として強烈な光が発生し、京とテリーとロックの3人を包み込む。



「な、なんだこの光は!?何がどうなってんだこりゃあ!?」

「コイツは一体……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「(この感覚は……)まさか、コイツは次元震……!」


――バシュウン!


3人を包み込んだ光は、其のまま集束して消滅し、光が消えるのとほぼ同じタイミングでバースが爆発し、KOFⅩⅣは幕を下ろしたのだった。








――――――








Side:京


ったく、二度ある事は三度あると言うが、まさか『また』次元震とやらに巻き込まれるとはな……アレに巻き込まれた以上、此処は俺達が居た
のとは別世界なんだろうが――取り敢えず、大丈夫かテリー?ロック?



「何とかな……だが京、此処は何処なんだ?」

「KOFの会場じゃないみたいだが……」

「此処は……多分、俺達が居たのとは別の世界――異世界だろうな。
 さっきの光、アレは次元震って言う物で、それに巻き込まれた人間は、全く別の世界に飛ばされるって事が時々あるらしいんだ……俺も、ガ
 キの頃に、ソイツに巻き込まれて、そんで戻って来た事があったからな。」

「異世界……俄かには信じがたいが……お前が経験してるってんなら、ある意味で説得力はあるな。」

「オロチにネスツ……テリーから聞いた話だが、アンタ色々とトンデモない体験してるみたいだからな?異世界渡航した事があるって言われて
 も、ある意味で納得しちまうかな。」



……まぁ、人知を超えた彼是と結構やり合って来たから、異世界渡航位してても不思議じゃねぇってのは認めるぜ?
でもって、もっと言うならこの空気には覚えがある……俺の記憶と勘が正しければ、此処は恐らくガキの頃にやって来たミッドチルダって街の
郊外って所だろうな――多分だけど。

何にしても、此処で待ちぼうけしてる訳にもいかねぇし、先ずは街に行ってみようぜ?
もしも此処がミッドチルダなら、市街に行けば俺の知り合いもいるから、その伝で此れからの身の振り方を考える事も出来るだろうからな。

そう言う訳で街に行こうぜ――って、なんか見えるぞ?なんだありゃ?



『『『ギガァァァァァァァァァァ!!!』』』

「く……!!」



アレは……ロボットか!?……デザインが微妙だ、大きさは兎も角、見た目はせめてガン○ム位にしろよ!円形の本体にコードの触手っての
は、幾ら何でも趣味が悪いぜ。

だが、其れよりも重要なのは、そんなポンコツ臭漂う鉄くずが、鉢巻き占めた青髪の(多分)女の子を襲おうとしてる事だ。
青髪の奴は迎え撃つ心算みたいだが、アレだけの巨大ロボット3体に1人で挑むなんざ、多勢に無勢を通り越して、只の無謀な戦い以外の何
モノでもねぇからな……連戦になるが、もう一本行くぜ!!



「Hoo!待ってました!正直さっきのじゃ、食い足りなかったからな!」

「ヤレヤレ、ハングリーなのは結構だが、食い過ぎてデブらないでくれよテリー?」

「All right!」



……まるで本当の親子みたいだなコイツ等。ったく、家族ってのは血の繋がりじゃなくて絆の繋がりだとはよく言ったもんだぜ。
かくいう俺も、親父とお袋以外の家族がミッドチルダに居る訳なんだが……まぁ、其れは其れとして、先ずはテメェをスクラップにしてやるぜ!




――推奨BGM『ESAKA?』



敵も3体、こっちも3体ってんなら、他2体はテリーとロックに任せとけば問題ねぇ。
テリーの実力は折り紙付きだし、ロックの奴は、あのギースの血を継いで居ながらテリーに格闘の手ほどきをされたってんだから、最低でも紅
丸並の力を有してるのは間違い無いから、恐らく大丈夫だ。

だから、テメェは俺にぶっ壊されとけ!ボディが、丸見えだぜ!!



――ドガァ!バキィ!!ドゴォォォン!!



おぉっと、此れしきでくたばってくれるなよ?追撃はマダマダだ!喰らえ、弐百拾弐式・琴月 陽……うおりゃぁぁぁぁ、燃えろぉぉぉぉぉ!


――バガァァァン!!


そして、コイツで終いだ!!

受けろ……このブロウ!そして、此れで決まりだぁ!!


――ドッゴォォォォォォォォォォン!!!



見た目だけはソコソコ強そうだったが、この程度じゃてんで話にならねぇな?KOFの予選でぶっ倒してきた連中の方が未だ強かった位だぜ。
精々出直してきな……って、此れはテメェ等の製作者に言ってやることだったな。

んで、大丈夫かお前?



「た、助かったぁ……って、アレ?」

「……お前は…!!」

さっきは後ろ姿だったから分からなかったが、コイツは……いや、間違い様もねぇ。――お前、若しかして『スバル』なのか!?



「そんな…まさか――京……お兄ちゃんなの?」

「俺をそう呼ぶって事は……お前は、スバルなんだな――まさか、また出会う事が出来るとは思っていなかったぜ?縁ってのは不思議だな。」

スバルが居たって事は、此処はミッドチルダで確定だな。
まさか、もう一度ここに来る事に成るとは思ってなかったが、来ちまった以上はしょうがねぇ……期せずして、ミッドにもう一度来る事になっちま
ったが、此れは此れで悪くないかもしれねぇな?

嘗ての妹分と再会できた訳だし、俺達がこっちに来たのにはきっと意味があるだろうからな――正直言って、この先何が待ってるか分からな
いが、精々燃えさせてくれよ!












To Be Continued…