学年別タッグトーナメントの事実上の決勝戦となった一夏&鈴ペアとラウラ&箒ペアの試合は互いに決定打を与える事が出来ない、文字通りの『一進一退』の攻防となっていたのだが、其の最中に亡国機業からIS学園に送り込まれたスパイであるダリル・ケイシーがラウラの専用機に仕込んだ『VTシステム』を起動し、そして其の場から離脱しようとしたのだが――


「オイオイ、何処に行くつもりだ亡国のスパイさんよぉ?」

「一夏君の試合に余計な横槍を刺した……其の時点でテメェはヤキ入れ上等だ……男だろうが女だろうが、外道には容赦しねぇのが天羽組だ――一夏君に手を出した時点でお前は詰んでたんだ。」


其処にオータムと天羽組の中堅にして精神的なハブ要因である小峠華太が待ち構えていた――一夏を通してオータムと天羽組は知り合っており互いに連絡が出来る状態となっており、オータムが天羽組に連絡を入れ、小峠が出向いて来たのだ。


「な、なんで……!!」

「旦那のバックに誰が居ると思ってんだテメェは?
 旦那のバックに居るのは世紀の大天災様だ……だったら、天羽組さんにテメェの情報が渡っていたとしても不思議じゃねぇだろ?……まぁ、テメェにはゲロって貰いたい事があるから殺しはしねぇから其処は安心しろ。」

「とは言っても死なない程度に痛めつけるけどよ……精々覚悟してろよ。」


直後ダリルの顔面にオータムの拳が突き刺さり、後頭部には小峠のケンカキックが炸裂し、此のアウトローサンドイッチを喰らったダリルは鼻血を噴出して失神してしまった。


「気絶しちまったか……コイツがやった何やらを解除する事は出来るのか?」

「ちょい待ちコイツのスマホ調べてみるわ。
 ……最悪な事に出来ねぇな……こりゃ、旦那達がアレをぶっ倒さない限りは解除できねぇ……俺達は旦那達を信じるしかねぇ――だが、そいつは猿轡して学園島の地下に運び込むぞ。
 最終判断は会長さんが下すだろうからよ。」

「更識のお嬢さんが最終判断とは、もしかしたらコイツは俺達に殺されてた方が幸福だったかもしれねぇな。」

「かもな。
 (さぁてとお前さんの姪っ子も捕縛したぜスコール……つってもお前はこの位じゃ止まらないんだろうけどよ……だが、お前の――もっと言うなら亡国機業の目的は一体何なんだ?組織に所属してた時からだったが、実働部隊の最強戦力って言われてた俺にもそれが見えて来ねぇのが不気味だぜ。)」


そして気絶したダリルは学園島の地下に運び込まれて行ったのだった。









夏と銀河と無限の成層圏 Episode24
『戦乙女の贋作を倒せ~Valkyrie shot down~』










時は少し遡り、ダリルがVTシステムを起動した次の瞬間に異変は起きていた。


「ぐあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「「「ラウラ!?」」」


ラウラの専用機が突如火花放電を起こすと、続いて機体がドロドロに溶けてラウラを包み込み、巨大な繭のような形になったかと思えば、その繭に亀裂が入り、繭が砕け散りアリーナには漆黒のISが降り立っていた。


「そして黒いガンダムが降臨しましたとさ。」

「でもってパーフェクトストライカーを搭載したストライクノワールとか……オタク全開すぎでしょ流石に!!」

「ラウラの部隊の副官が極度のオタクだった上に円夏もアレだからなぁ……つっても、如何やらアイツは俺が狙いらしい……ガッチリとロックオンされてみたいだからな――何が如何なってこうなっちまったのかは分からねぇけどよ。
 とは言っても異常事態である事は間違いねぇし、やるしかねぇだろ?何よりもラウラをあの中から引き摺り出さねぇとだからな。」

「まぁ、そうなるわよね。」


そしてその機体は一夏をロックオンしており、一夏も蒼龍皇からロックオンされている事を知らされていた。
この異常事態に対して、通常ならば教師部隊を投入するところなのだが、ダリルがVTシステムを強制発動したと同時にアリーナに通じる扉は全て閉じられてしまい、更にアリーナとの通信もジャミングされてしまった事で千冬は一夏と連絡を取る事も出来ず、一夏も千冬に連絡出来なかったので現場の独断でラウラに対処する事になったのである。
管制室ではモニターが砂嵐状態にあり現場の状況はマッタク分からなくなってしまった状況に千冬が歯噛みしていたが、一夏達の事を信じて任せたと言ったところだろう――その一方で放送席にいた楯無は冷静にスマホで証拠となる動画を撮影していたのだが。


「そんで、アンタが狙われてるってんなら普通はアンタの事をアタシと箒で守りながら戦うってのがセオリーなんだろうけど、アンタはそんな安全策は取らないでしょ一夏?」

「ったりめーだ。
 後手に回るのは好きじゃねぇからな……俺の方から斬り込むから鈴は適当に龍砲で援護してくれ。でもって箒は……お前が『此処だ』と思ったタイミングでアレの動きを止めてくれると助かる。」

「見えない弾丸での援護か……OK、任されたわ!」

「タイミングは私に任せるのか……だが其れが逆に信頼されていると思う事が出来るのも事実――なれば、最善のタイミングでラウラの動きを止めてみせようではないか!」


VTシステムの発動により暴走状態となったラウラだったが其れに対するのは一夏と鈴と箒……IS学園に於いて一年生最強トリオとの呼び声も高い『幼馴染トリオ』であり、一夏は鈴と箒に夫々の役目を伝えるとイグニッションブーストでラウラに接近し神速の居合いを一閃!


「っと、此れは流石に躱せるよな……今の居合いは本気の20%の力で放ったからな。」


ラウラはその居合いをダッキングで躱したのだが、其の直後にカウンターとなる鞘でのかちあげを顎に喰らい、続いて一夏のハイキックからの踵落としのコンボが決まり、更に其処から裏拳→回し蹴り→右ストレートのコンボが炸裂!
全てが側頭部に突き刺さったこのコンボは普通ならばKO確定なのだが、VTシステムに飲み込まれたラウラはそんな事は関係ないとばかりに背中の対艦刀を抜くとそれを力任せに振り下ろして来た。


「おぉっと、その大振りはNGよ!」


だがその振り下ろしに鈴が龍砲を合わせて強制的に跳ね上げると、その隙に箒が近接ブレードの一撃を叩き込む――とは言え、量産機の一撃では大したダメージにはならなかったのだが、其れでもその意識は箒に向く事になり、其れが更なる隙を生み出す事になった。


「本来のラウラだったらこんな事にはならなかったろうな。」


其の隙に一夏は鞘当て→鞘打ち→抜刀切り上げジャンプ→袈裟斬り→逆袈裟斬り→回転上昇斬り→兜割りのコンボを叩き込み、暴走ラウラをアリーナの床に強制的に叩きつけた後に閻魔刀モードの登龍剣を納刀する。
普通ならば此れでKO確定なのだが、暴走ラウラは其処から更に変異して……


「オイオイ、今度は千冬姉の真似事か?」

「まぁ、最強が誰かと問われたら千冬さんが世界基準で筆頭よね。」


黒い暮桜へと変異し、其の直後の動きは此れまでとは異なっていた――武装は近接用のブレード一本なのだが、圧倒的な機動力で相手の懐に斬り込むと言う現役時代の千冬の戦闘スタイルをコピーして来ただけでなく、数値上は其れを上回るレベルの攻撃を繰り出して来たのだ。
尤も日本人特有の経験の蓄積によって鍛えられた力は機械の精度も機体の性能差も超えてしまうので数値上で上回ったからと言って本当に現役時代の千冬を超えたのかと言われたら其れは疑問だが。

だが其れでも其の実力は非常に高く……


「箒、逃げろ!!!」

「な!コイツ!!」


一夏を殺すためにはまずは周囲から排除すべきと判断したのだろう――暴走ラウラはこの中では最も実力で劣る箒にイグニッションブーストで接近すると近接ブレードを一閃し……その一撃は絶対防御を貫通して箒の右腕の肩から下を斬り飛ばしてしまったのだ。


「う、うわぁぁぁぁぁ!!!」

「箒!
 この野郎、ラウラを操ってよくも箒を!!」


機体の『生体保護機能』が発動した事で、箒の腕の切断面は即座に止血が行われ、箒が失血死する事はないのだが、剣の道を邁進している箒にとって利き腕を失うと言うのは死ぬよりも辛いことであると言えるだろう。
だからこそ一夏の怒りは凄まじく、イグニッションブーストで暴走ラウラに接近すると、目にもとまらぬ連続攻撃を行い、その装甲を少しずつだが確実に削り取って行くと同時に、鈴も龍砲を放って暴走ラウラが一夏にだけに意識が向かないように牽制を行い見事に一夏を支援していた。


「今よ一夏!!」

「おうよ!超力変身、剣王蒼龍皇!!」


此処で一夏は超力変身を使って剣王蒼龍皇に変身すると身の丈以上となった攻撃力だけはぶっちぎっているであろう『剣王登龍剣』での袈裟斬り→払い斬り→逆袈裟二連斬→牙突零式のコンボを放って暴走ラウラを吹き飛ばす。
そしてこのコンボで遂に暴走ラウラの装甲が大きく破損し、中にいるラウラが露出した。


「ラウラを返してもらうぞ……!!」

「「箒!?」」


其処に手を突っ込んでラウラを掴んだのは一夏でも鈴でもなく箒だった――普通ならば右腕を切り落とされた痛みで気絶している所なのだが、ISの生体保護機能によって過剰な痛みによりショック死を防ぐ機能が発動した事で箒は意識を保っていたのだ。


「弟子が、師を死なせる事が出来るかぁ!!」


ISのパワーアシストもあるだろうが、箒は火事場の馬鹿力をも超えた『火事場のクソ力』とも言える根性パワーを発揮して左腕一本でラウラを機体から強引にひっぺかすと――


「これで終わらせる!消魔鳳凰斬!!」


其処に一夏が登龍剣以上の超必殺技である『消魔鳳凰斬』をブチかましてターンエンド……核であるラウラを強制的に引き剥がされた上で機体本体に多大なダメージを受けたシュバルツェア・レーゲンは機能を停止し、ひび割れた待機状態へと戻ったのだった。


「ポニーテールのお嬢ちゃんは右腕を切り落とされたが、あの位ならば縫合して繋ぐ事は出来るだろう――更識のお嬢さんからの連絡があったから完全な異常事態であったのは間違いない訳だが、その中でも誰一人死者を出さずに此の事態を収束させた一夏君は見事と言うべきだな。」

「いい仕事をしたぜ一夏。矢部は、お前が弟分である事を誇りに思う。」

「お前は俺以上のスーパーマンかもな一夏。」


試合を観戦していた天羽組の面々は一人の死者も出さなかった一夏の立ち回りを評価していた――箒の腕が斬り飛ばされた事に関しては少しばかり反応が薄いが、任侠集団故に戦闘で身体の一部を切り落とされる事は然程珍しい事ではなく、綺麗に切られているのならば腕を失う事は無いと考えていたのだろう。
そしてレーゲンが沈黙した事で管制室との通信も回復していた。


『通信が回復したか!織斑、何があった!?』

「詳しい事は後だ千冬姉!
 すぐに医療チームをこっちに回してくれ!箒が右腕を切り落とされた!」

『なんだと!?
 分かった、すぐに向かわせる!篠ノ之の傷の止血を行っておけ!』


「もうやってる!」


其処で一夏が詳細を伝えるよりも先に箒が腕を斬り落とされた事を伝え、千冬はそれを聞き、すぐに医療チームの手配をした。
その箒はラウラを引き摺り出した直後に限界が来たのか意識を手放していた。
レーゲンと打鉄が戦闘不能になった事で試合終了と判断されたのか、アリーナと客席を隔てているエネルギーシールドも解除され、其の瞬間に客席にいたヴィシュヌと円夏、乱やティナと言った一年生の専用機持ちがアリーナに降り立って重傷を負った箒に応急処置を行い、ラウラにも大きな怪我が無いかを確認していた――此れだけを見ても今年の一年生は大収穫だっと言えるだろう。

此の事態を受けて学年別タッグトーナメントの一年生の部は此れにて終了となった――とは言っても、この試合が事実上の決勝戦だったので、優勝は暫定ながら一夏&鈴ペアとなったのだが、一夏と鈴は優勝を辞退した……こんな状況での暫定優勝は受け入れないと言ったところだろう。


「よもやこんな事になるとは……学園の医療設備では篠ノ之の腕を繋ぐ事は出来んぞ……!!」

「それならご心配なく織斑先生。篠ノ之博士に今しがた連絡を入れましたわ。」

「束に?……ちょっと待て更識姉、何故お前が束の連絡先を知っている?」

「一夏君に教えてもらいました。
 因みに一度だけ直接電話した事がありますけど、妹について一時間ほど熱く語り合いましたわ♪」

「……一夏か。
 更識、次に束と妹について語る事があったら私も呼べ。私も妹である円夏に関しては語る事が其れなりにあるのでな。」

「ふふ、了解ですわ織斑先生♪」


一方で管制室では千冬と楯無がこんな会話を行っていた。
それから数秒後にIS学園のグラウンドにはニンジン型のロケットが突き刺さるのであった。







 To Be Continued