ラウラの専用機の暴走の末に中止となった学年別タッグトーナメントだったが、そんな中で箒が右腕を失うと言う最悪の事態に陥っていた――尤も生徒会長である楯無は此の展開を予想して居た事と、一夏達現場の人間が最高の動きをしてくれたこその結果であるのだが。
「氷室さん、縫合できそう?」
「此れは厳しいか。
ISブレード……通常の刃物とは違いシールドエネルギーを減少させる為に刀身に不可視のエネルギーを纏わせているモノで切断された事で断面が炭化してしまっている……一般の患者ならば炭化した部分を切り落として生きている組織を繋ぐ強引な処置も出来るのだが、彼女は剣術者であると言う事を考えると左右の腕の長さが異なるのは良くないだろう……此れまで死の淵にある人間を何人も救って来たが、よもや助ける事が出来る筈の少女を助ける事が出来ない日が来るとは思わなかったよ。」
「そう……」
IS学園に突き刺さったニンジン型ロケットから現れたのは束だけでなく、裏社会では其の名は知らないと言われている闇医者の氷室もの姿もあった。
箒の右腕が斬り落とされたとの情報を得た束は速攻でIS学園島に向かったのだが、其の途中で裏社会御用達の闇医者の病院に突撃して、裏社会御用達の氷室を半ば拉致する形でニンジンロケットに押し込んで、そしてその氷室は箒の治療に当たっていた――のだが、絶対防御をも貫通する暴走ラウラの攻撃は凄まじく、そのあまりの威力により斬り飛ばされた箒の右腕は切断面が炭化しており縫合は不可能な状況となっていた。
炭化した部分を切り落とせば縫合は可能ではあるのだが、左右の腕の長さが異なるのでは剣士である箒にはマイナスになると考えて氷室はその方法を選択しなかったのだ。
「だが此処で束さん降臨!
氷室ちゃん、箒ちゃんの肩側の炭化した部分を切り落として生きてる神経とこの装置の電極を繋いでから箒ちゃんの身体にくっつけて!」
「此れは?」
「君が腕をくっつける事が出来たらそれで良かったんだけど、其れがダメだった場合の保険として用意しといたもの。
此れを肩に固定してこの機械義手を箒ちゃんに装着する――束さんの青春時代のバイブルである『鋼の錬金術師』のオートメイルからヒントを得たこの機械義手の性能はぶっ飛んでるからきっと箒ちゃんも満足してくれる筈!」
「因みにスペックを伺っても?」
「普段はリミッターが掛かってるから本来の箒ちゃんの腕と同じくらいの力しか出せないけど、リミッターを解除したら握力はちーちゃんレベル、DMC4のネロ君的な事が出来る、近接ブレードとビームサーベルは基本。それから掌ビーム砲は必須だよね♪」
「過剰戦力乙。」
だが、其処にロケット内で待機していた束が現れ氷室に指示を出すとあっと言う間に箒の右腕には束特製の機械義手が搭載され、箒は新たな腕を手に入れる事になったのだった。
因みにラウラの方は普通に医務室で目を覚まし、見舞に来た千冬から事の顛末を聞き少し落ち込んだのだが、その騒動の最中に箒が腕を切り落とされながらも自分の事を暴走した機体から引き剥がしたと言う事を聞いたラウラは……
「箒……意識がなかったとはいえ申し訳ない事をしてしまった……剣士の命を絶つ事になってしまうとは。」
「そっちの方はなんとかなったからお前が気を揉む事ではないさ……しかし、片腕を失いながらもお前を助ける為に動くとは、如何やらお前は篠ノ之にとって余程特別な存在であるらしい。」
「特別な存在……」
頬を赤らめていた……此れは箒を巡るオランダとドイツのバッチバチの恋のバトルが起こるのは間違いないだろう。
夏と銀河と無限の成層圏 Episode25
『大会後の事後処理、そして~tournament procedures~』
箒の治療が一応とは言え終わった後、楯無は学園島の最深部にある独房へとやって来た――理由は言わずもがな、今回のラウラの暴走事件を引き起こした下手人である亡国機業のスパイ、ダリル・ケイシーことレイン・ミューゼルの尋問の為だ。
そのレインはイスにロープで縛りつけられていた……とは言え肘から下は動かせる状態になっていたが。
「さてと、其れじゃあダリルちゃんもといレインちゃん、何でこんな事をしたのか話してもらいましょうか?素直に話した方が身の為よ?」
「ハッ、そう言われて大人しくオレがゲロると思ってんのかよ?
こちとら亡国機業で一通りの拷問訓練は受けてるんだ……そう簡単に口を割るかよ。」
「まぁ、そうでしょうね。
だけど更識の拷問術は並大抵の拷問訓練程度で耐える事が出来るモノではないわよ……」
強気な態度を見せたレインに対し、楯無はレインの人差し指と中指を握ると、其れを逆に曲げて力任せにブチ折った――だけでなく、手の平をテーブルに叩きつけるとブチ折った指に拳を叩きつけ更なる激痛をレインに与える。
しかもその拳は素手ではなく鋭い棘が付いたメリケンサックを搭載していたのでレインの右手は更に骨が砕けただけでなく、表皮も大きく損傷する事になった……あまりの激痛にレインの額には脂背が浮かぶが、其れでも口を割らないのは流石は亡国機業のスパイと言ったところだろう。
「あらあら、大抵の人間は此処までやれば口を割ってくれるのだけど、此処までやって口を割らないとは亡国機業の拷問訓練は中々に質の高いモノであると評価しなくてはね。
だけど、此れに耐えられるかしら?」
楯無はレインの拷問耐性を評価しつつも冷笑を浮かべると手にしていた扇を一閃し……次の瞬間にはレインの右腕の肘から下が斬り落とされていた。
楯無の扇は仕込武器になっており、扇の両端の骨組みは鉄製の刃になっていたのである――右腕を切り落とされたレインは何とか悲鳴を堪えていたのだが、其処に更なる絶望が襲い掛かった。
「出番よ氷室さん。」
「救える命は所属組織関係なく全力をとして救うが、外道相手には苦しみを与える為にこの力を奮おう――腕は繋いでやるが麻酔はなしだ。」
此処で裏社会では其の名を知らぬ者はいないと言われている闇医者界のゴッドハンド、裏社会のスーパードクター、『この闇医者切り落とされた頭繋いで蘇生させたんだけどマジで』との都市伝説級の噂がある氷室が参戦し、斬り落とされたレインの腕をあっと言う間に繋いでしまった――麻酔なしの縫合なのでレインには尋常ではない苦痛が与えられたのだが。
レインはまたすぐ次の攻撃が来ると思ったのだが、次の楯無の攻撃が来たのは十秒後であり、其の攻撃は背後に回ってからのスリーパーホールドからの力任せのジャーマンスープレックスで追撃として腹にフラッシュエルボーを叩き込んだ。
そして其れで終わる筈もなく、楯無は特注の扇でレインの身体を適当に斬り、しかしその傷は氷室が即座に縫合してしまう事でレインは拷問を受けながらも死ねないと言う最悪の状況になっていた。
何よりもレインの心を抉ったのは、楯無の攻撃は氷室の治療が終わった十秒後であると言う事だった……何時攻撃されるか分からない事も恐怖ではあるのだが確実に十秒後に攻撃が来ると言うのもまた恐怖であるのだ。
反撃する事が出来ない状況では十秒後の攻撃に抗う術はなく、治療後の十秒間は恐怖へのカウントダウンに他ならないのだ。
「喋る!オレが知ってる事は全部喋るからもうやめてくれぇ!!」
身体の様々な部位を斬り、両手の全ての指を斬り落として繋ぎ直したところで遂にレインが音を上げた……更識の拷問術は亡国機業の構成員が受けた拷問訓練による耐性を完全に上回ったのだ。
それからレインは今回の事は『織斑一夏の抹殺が目的』、『抹殺が不可能だった場合は遺伝子情報の会得』、『IS学園の保有戦力の確認』が目的である事を告げた上で、自分は亡国機業の末端構成員に過ぎないから其れ以上の事は知らないと言って来た。
「ふふ、良く言えました……此れは御褒美よ。」
自分が知っている事を全て話たレインの顎を持ち上げた楯無は……レインの唇を奪うと、其処から『禁則事項』、『閲覧により削除』、『炎が、お前を呼んでるぜ』、『なら燃え尽きろ、潔くな。』、『滅びの爆裂疾風弾』な事をしてレインに性的な快楽を与えて落としにかかっていた。
究極レベルの苦痛の後に与えられる快楽は相当なモノであり、其れが生物としての本能に直結する性的快楽となれば其れに抗えと言うのは到底ムリゲーと言うモノであり……
「楯無ぃ……オレ、もうお前なしじゃ生きていけねぇ……」
「ウフフ……其れじゃ、此れからは私の部下として働いてもらうわよレインちゃん。」
「任せとけぇ……悪いなスコール叔母さん……オレは楯無につくぜぇ……うへへへへへへ……。」
「オレが言うのもなんだがやり方がエゲツねぇなオイ……」
レインは見事に落とされて楯無の部下となったのだった。
尚、楯無はレインのスマホからスコールに対して血塗れになったレインの画像を添付したメールを送り付け、そのメールにはただ一言が綴られていた。
『次は貴方達よ。』
「!!……オータムだけじゃなくレインもやられるとはね……だけど、切り札はまだ此方にある……此れが完成した時、貴方はどんな顔をするのしら?
その時を楽しみにしているわ一夏君。」
其れを見たスコールは驚きつつも未だに自分の優位は揺るがないと言った感じだった――そしてそんなスコールが視線を送る先には四機の培養ポッドが存在しており、ポッドの中では何かが蠢いており、其れは少しずつ人の形を成して行くのだった。
――――――
トーナメントの翌日、箒とラウラは普通に登校していた。
箒は腕こそ失ったが身体へのダメージは其処まで大きくなかったので機械義手手術後に程なく回復し、ラウラもVTシステムによる強制的な無理矢理運動による筋肉痛を患っていたのだが、其処はドイツの『強化兵士』と言うべきか、一晩寝たらすっかり完治していたのである。
並の人間ならば廃人まっしぐらだったのだが、此の程度で済んでしまったあたり『ドイツの化学力は世界一ぃ!』なドイツが生み出した強化兵士であると言うべきか、或いはVTの発動時間が然程長くなかったからなのか、あるいはその両方かは分からないが……
「その、すまない事をしたな箒よ……」
「お前の意思ではないのだから気にするなラウラ。
姉さんのおかげで腕もこの通りだからな……人工皮膚で覆う事も出来たのだが、此のメカメカしいデザインも悪くないから人工皮膚で覆わない選択をした訳だからな。
何より、私の右腕一本で大切な友の命を救う事が出来たのだ――だからこの機械義手は私の誇りだ。」
「ほ、箒~~!」
ラウラは箒の右腕を意識がなかったとはいえ斬り落としてしまったことを申し訳なく思っていたのだが、当の箒は右腕一本を犠牲にラウラの命を守れた事を誇りに思っており、束製の機械義手も誇りの証としていた。
そんな箒を見てラウラは箒に抱き着き、箒もラウラの頭を優しく撫でていた……その光景を『何これ尊い』と言ってスマホで撮影していた生徒が居たのはある意味では当然とも言えるだろう。
「横入りは感心しないなゲルマンガール?箒は私が先に目を付けたのだが?」
「貴様かロランツィーネ……箒は私の嫁とする!異論は認めん!!」
「ほうほう、舞台で男役を演じる事が多い私に対して箒を嫁にするとは言ってくれるじゃないか……箒は渡さない、絶対にね。」
「絶対に渡さん!!」
「……此れは、『私を巡って争わないで』と言うべきなのか私は?」
其処にロランが現れてラウラとバチバチの火花を散らしていた……箒を巡る恋のバトルはロランの独走と思われていたところにラウラがエントリーした事で混沌として行くのだった。
其れはさて置き、この日の授業は全て滞りなく進んで放課後になったのだが、この日の放課後にはトンデモナイサプライズが待っていた。
『本日の放課後、第2アリーナにて更識楯無vs更識簪の試合を行う』――IS学園最強と称されている現生徒会長である更識楯無と、その妹であり日本の国家代表候補生である更識簪が戦うと言う情報に学園の生徒達は興奮し、試合会場である第2アリーナは満員御礼の超満員札止めとなっていた。
そして此処に集まった観客達は最大の姉妹喧嘩と無慈悲なまでの実力差を目にする事になったのであった……
To Be Continued 
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