学年別タッグトーナメントの一年生の部の一回戦が全て終了し、解説の楯無が最終戦である一夏&鈴ペアvs簪&本音の試合の考察を行っていたが……
『一夏君と鈴ちゃんのタッグは見事だったわね……開始直後に簪ちゃんと本音を分断して各個撃破の状態に持って行ったのだから。
其れとは逆に簪ちゃんと本音のタッグはマッタクもってなっていないわ。
本音は簪ちゃんとの連携を考えていたのでしょうけど、簪ちゃんは自分に一夏君が向かって来た事で馬鹿正直に其れに対応してしまったわ――そして其れが最大の間違いだったわね。
打鉄は近接戦闘型であり、近距離でこそ其の真価を発揮出来るのだから、その発展形である打鉄・弐式も基本は近接戦が強いのは間違いないのだけれど、簪ちゃんの近距離先頭の腕前は一年生の中でも中堅の下クラスなのだから近接戦闘に関しては一年生どころが学園全体で見てもトップクラスな一夏君に勝てる訳がない。
加えて簪ちゃんはマルチロックオンシステムを信頼しすぎていたわ……マイクロミサイルの圧倒的な弾幕は強力でしょうけど、其れは相手の意表をついて放つからこそ生きるモノであり、普通に放っても今回のように冷静に対処されてしまうのよ。
漸く専用機が完成したからドレだけ出来るのかと思ったのだけれど、正直期待外れも良い所だったわ。』
『妹相手に容赦ないっすねたっちゃんや……』
『妹だからこそ、よ。
私はIS学園の生徒会長よ?生徒の実力を正確に把握するのも仕事なのよ。』
『な、成程……』
そこで楯無は簪に対して『酷評』と言っても差し支えない評価を簪&本音タッグに下していた。
本音は其れを適当に聞き流していたが、簪は完敗した上での姉からの酷評に拳を握り締めて其れを震わせ、アリーナの放送室に居るであろう楯無に対して負の感情が乗りに乗った視線をぶつけたのだが、楯無は其れを簡単に払うと敢えて挑発的な視線を簪に送っていた。
いうならば其れは『私と戦う?私に勝てれば代表候補生に残留できるかもしれないわよ?』と言うモノであったので、簪に其れを受けないという選択肢は存在してなかった。
其れこそが真の地獄への招待状であると言う事に簪は全く気付いていなかった――
夏と銀河と無限の成層圏 Episode22
『激闘上等全力全壊~Over Drive Limited~』
タッグトーナメントの一年生の部は順調に進み、ヴィシュヌ&円夏ペア、乱&ティナペア、ラウラ&箒ペア、一夏&鈴ペアは問題なく勝ち進んでいたのだが、特に注目されていたのはラウラ&箒ペアと一夏&鈴のペアだ。
箒&ラウラは一回戦をラウラ一人で突破して箒の実力を隠したのだが、二回戦以降は箒もキッチリと試合に参戦していた。
しかし箒は自ら攻め込む事はせず、基本的には防御に徹して相手の攻撃を徹底的に防ぎ、弾き、躱して相手の隙を誘い、その隙にカウンターを叩き込むという戦い方をしていた。
逆にラウラは先手必勝とばかりに試合開始から猛攻を仕掛け、AICの存在を匂わせる事で相手の集中力を鈍らせており、そして此の戦い方が箒と戦っている相手を焦らせる事にも繋がっていた。
ラウラの猛攻を見て『早く箒を倒さないと』との気持ちが強くなって攻撃が大振りになって箒がカウンターを決めやすくなっていたのである――と同時に此の戦い方は『箒は自分からは攻めてこないカウンター型である』との印象を植え付ける事になっていた。
そして一夏&鈴は『コイツ等敵に回したらヤバすぎる』と思わせる戦いを展開していた。
初手から全力で攻め込んで相手を完封したかと思えば、相手の手札を全て切らせた上で其れを叩き潰す、相手を煽りまくって冷静さを奪った上で圧倒する等、兎に角戦い方に一貫性が無かった。
そして此れこそが中学時代に一夏と鈴が『最凶』と言われていた由縁でもある――女尊男卑教師、迷惑ヤンキー集団、陰湿嫌がらせ陰キャ等々、一夏と鈴が中学時代に成敗して来たDQNは多岐にわたっており、一夏と鈴は相手によって対応を変えてきたのでどんな相手に対しても最も的確な一手を打つ事が出来るようになっていたのである。
そんなこんなでトーナメントは進んで準々決勝。
前半戦ではヴィシュヌと円夏のペアが危なげなく勝利して準決勝にコマを進め、乱とティナのペアも静寐&清香ペアの予想外の粘りに手こずったモノの最後は経験の差をもって勝利を手にして準決勝にコマを進めていた。
そして後半戦の準々決勝第一試合は箒&ラウラペアとロラン&櫛音ペアだ。
「ラウラ、この試合、ローランディフィルネィの相手は私に任せてもらえないか?」
「む、お前がそんな事を言うとは珍しいな?
こう言ってはなんだが今はまだIS操縦者としての実力に限ればローランディフィルネィの方が上だ……それだけを考えれば普通なら首を縦に振る事は出来ないのだが、お前がそう言うというのは何かあるのだろう?」
「アイツとは所謂『勝者の言う事を聞く』的な約束をしていてな……タッグ戦なのだから最終的に試合に勝てばいいのだろうが、実際に戦わずに決着すると言うのは違う気がしたのでな。」
「成程な……ならばお前の思うようにやれ!
IS操縦者としての実力は奴の方が上でも其れ以外の部分ではお前が上回る部分もあるからな……総じて戦えば互角に戦う事が出来るだろう――黒髪は私が抑えてやる。」
「スマナイな、恩に着る。」
此処で箒はロランの相手は自分がするとラウラに言って来た。
一般生徒である箒と専用機持ちでありオランダの国家代表候補生であるロランでは、如何に箒がラウラに鍛えられたと言っても大きな差があるのだが其れ以外の部分も総じて戦えば互角に戦う事が出来ると考えたラウラは其れを了承したのだった。
そして試合が始まり、試合開始と同時にラウラが櫛音に突撃してプラズマ手刀を振り下ろし、櫛音はなんとかそれを打鉄の近接ブレード『葵』でガードするがラウラは続けざまに横蹴りを放って櫛音を蹴り飛ばす。
「貴女がロランの相手をすると思ってたんだけど……?」
「私もその心算だったのだが、相棒が奴と戦う必要があるというのならば其れを優先してやらねばなるまい?
とは言え、お前は専用機を持っていないだけでIS操縦者としての実力は代表候補生と比べても遜色ないレベルなので私の相手としても申し分ないと判断した……初っ端から本気で行かせて貰うぞ!!」
「上等!!」
先ずはラウラと櫛音が戦闘を開始し、それと同時に箒とロランも戦闘を開始。
ロランは此れまでの箒の試合傾向からカウンター主体の防御型と考えて、遠距離攻撃で牽制しながら細かい攻撃を繰り出してカウンターの隙を与えない心算だったのだが……
「!!」
「私がカウンター型だと何時から勘違いしていた?」
此れまでの試合とは異なり、箒は打鉄のブースターを全開にしてロランに肉薄し、葵での横薙ぎを繰り出して来た。
意表を突かれたロランだったが、流石はオランダの代表候補生と言ったところか、ロランは箒の横薙ぎをハルバートの柄でガードする。
「此れは……君がこれまでカウンター主体で戦っていたのはまさか……!!」
「私がカウンター型である事を此れから戦う相手に印象付ける為だ。
近接のカウンター型を相手にする場合、相手が取る行動は遠距離でチマチマ削るか、カウンターの暇がないくらいの近接のラッシュで圧倒するかの二者一択だ――だからこそ私が攻勢に出た時には対応が後手に回る!」
「これまでの試合も仕込だった訳か……!!」
横薙ぎをガードされた箒だったが、其処から鞘を逆手に握っての鞘打ちを繰り出し、更に鞘打ちを繰り出した勢いのまま身体を回転させて鋭い後ろ回し蹴りを繰り出す。
その後ろ回し蹴りはロランの腹部に突き刺さり、オーランディブルームのシールドエネルギーを減らす結果となった。
「ぐふ……今のは中々に効いたよ箒……大和撫子はおしとやかなモノだと思っていたのだが、中々に苛烈な面も持ち合わせているのだね?」
「大和撫子とは守られるだけの女性にあらず。
真の大和撫子とは淑やかさと気品を併せ持ちつつも、場合によっては自ら戦場に赴いて戦う姫武者だ!!」
IS操縦者としての実力ならばロランの方が上だが、箒には其の実力差を補えるだけの『武人』としての経験値があるのだ。
箒は剣道の選手としてだけではなく、剣士としての鍛錬も積み、更に剣術だけでなく柔道に空手に合気道、果ては相撲と日本の無手の格闘術も修めているので『戦う者』としての経験値に於いてはロランを上回っている――故にロランと互角に遣り合えているのである。
「あの~、ラウラさん。私は一体何時までこうしていればいいのでしょうか?」
「箒とローランディフィルネィの戦いが終盤になるまではそうしていろ。
箒が押し切るのならば箒が勝った後でお前のシールドエネルギーを0にしてやるし、箒が負けそうな場合はお前をブチ倒した上で私が割って入ってローランディフィルネィのシールドエネルギーを0にするだけだ。」
「どっちに転んでも私はKOされるわけね。」
一方でラウラと櫛音の戦いは、絶賛ラウラが櫛音をAICで拘束して身動きを封じ、箒とロランの試合を観戦する状況となっていた――逆に言えば櫛音はラウラがAICを使用するだけの実力を持っていたという事になる訳だが。
因みにラウラは此の展開を予想していたらしく、箒とロランの一騎打ちを観戦しながら拡張領域からソーセージとノンアルのビールを取り出して其れを食する余裕すら見せていた。
一方で箒とロランの戦いは箒の武人としての経験と、ロランのIS操縦者としての経験が拮抗した事で一進一退となっていたのだが、ISバトルに於いてはIS操縦者としての経験が少しだけ勝ったらしく、徐々にロランの方がシールドエネルギーの残量ではロランの方が有利になって行った。
だが、箒の目は諦めてはおらず、ロランが放ったハルバートでの斬り下ろしを身体をひねって躱すと、その腕を取ってカウンターの逆一本背負いで投げ飛ばす!
とは言えロランも投げられても空中で姿勢制御を行ってなんとかノーダメージで片膝立ちで着地したが……
「これが日本が世界に誇る天才プロレスラーが編み出した必殺技だ!!」
「!!」
ロランの片膝を踏み台にして箒がシャイニングウィザードを一閃!
シャイニングウィザードはダウン状態から立ち上がろうとした相手の膝を踏み台にして放たれる膝蹴りなのだが、ダウン復帰しようとしていたところに放たれるので意表を突かれて回避不可能、防御困難な一撃となっているのだ。
そして箒の膝は見事にロランのコメカミに突き刺さりオーランディブルームのシールドエネルギーを大きく減らす事になった。
「大和撫子は戦う姫騎士でもあるか……其れを実感させて貰ったよ箒!
そして、改めて君に惚れた!私の伴侶たる相手は君以外に存在しないと確信した!」
「お前ほどの実力者にそう思わせたというのであれば少し自信を持っても良いかもしれん……だが、勝つのは私達だ!!」
箒とロランの剣戟は更に激しくなり、最早小細工が入り込む余地は無くなっている。
近接戦闘能力は箒が、IS操縦者としてはロランの方が上なので総じて戦えば互角なのだが、此処でロランは箒から視線を逸らして横に視線を向けて来たのだ。
箒もロランが突如として視線を逸らした事につられて同じ方向に視線を向けてしまったのだが、これがロランの狙いだった。
「隙アリだ!!」
「しまった!!」
一瞬視線を外した箒に対してロランはハルバートでの横薙ぎを繰り出し、その横薙ぎは箒の横っ腹にクリーンヒットし、更に箒の身体はアリーナのフェンスまで吹き飛ばされ、アリーナのフェンスにぶつかった事で箒の機体のシールドエネルギーは大きく減少し、ともすればもう一撃喰らえば行動不能と言う状態になっていた――視線を外す事でフェイントを仕掛ける高等テクニックをロランは使って来たのだ。
そして、これを好機と見たロランは箒を倒すべくハルバートを振りかぶって箒に突撃したのだが……敗北寸前の筈の箒の口元には笑みが浮かんでいた。
「よそ見厳禁だ。」
箒がそう呟いた次の瞬間――
「クロネコヤマトの宅急便~~ってな!!」
「どうも、やられる瞬間すらキングクリムゾンされた哀れなネームドモブです。」
「なんだってぇ!」
ラウラがAICで拘束した上でプラズマ手刀で滅多切りにしてシールドエネルギーが残り1になった櫛音をワイヤーブレードでぐるぐる巻きにした末に回して回してぶん回してからロランに投擲!
此の完全に予想外の攻撃に、ロランは櫛音ミサイルを真面に受ける事になってシールドエネルギーを大きく減らす事になり、この衝突で櫛音のシールドエネルギーはゼロになったのだが更に――
「これで終わりだ……ハイデルンエンドォ!!」
プラズマ手刀をオーランディブルームに突き刺すと、突き刺した手刀の先でプラズマを炸裂させて大爆発を起こしてオーランディブルームに対して大ダメージを与える。
此の一撃でオーランディブルームのシールドエネルギーもエンプティとなり試合終了だ。
「負けてしまったか……此れで箒とのデートはなしか。」
「試合で見るならそうだが、私とお前の戦いも加味すると引き分けだ……お前の最後の攻撃を喰らってフェンスに激突して、私の機体のシールドエネルギーはあと一発どんな攻撃を喰らっても尽きてしまう状態だったのだからな。
シングルマッチならば私は負けていた……タッグ戦だからこそ勝つ事が出来た――だから私とお前の勝負は引き分けだ。
試合に勝って勝負に負けたと言う奴だよ……此れで勝ったと言える性分ではないのでな。」
「勝負ごとに関してはある意味では私よりもシビアなんだな君は……嗚呼、ますます素敵過ぎるよ箒!
勝負に於ける妥協のなさ、凛とした態度……君と言う存在の全てが私の心を鷲掴みにしてしまったよ――しかし、そうなると約束はどうなるのだろう?」
「引き分けだから私はお前と一回デート、お前は私に洋食を教えるで良いだろう?」
「了解だ……必ず君を落として見せようじゃないか。」
「私を落とす以前に姉さんがお前を認めるかどうかの方が問題だがな――一つ行動を誤れば冗談抜きにお前は死ぬ。物理的にか社会的にかは別にしても確実にな。」
「……精々束博士の気分を害さないように気を付けるとしよう。」
試合に勝ったが勝負には負けていたと言う事で箒は自分とロランの勝負は引き分けとして、双方が示した条件をどちらも行うと言う事でロランを納得させていた。
そんな箒の姿にロランは更に惚れてしまったようだが。
「ん~~……ロ~ちゃんは本気で箒ちゃんの事を好きになってるみたいだね?
本当に幸せになりたいのなら好きになった人と結ばれるよりも自分を好きになってくれた人と結ばれろっていう位だから箒ちゃんのお相手としてはローちゃんはある意味で最高なのかな?
百合は束さんも大好物だからね~~♪」
そして此の光景を超小型ドローンカメラで見ていた束は何やら怪しい事を呟いていた――取り敢えずロランが束に気に入られた事は間違いないだろう。
――――――
そして学年別タッグトーナメント一年生の部準々決勝の最終試合は『一夏&鈴ペアvs夜竹&癒子ペア』の試合だ。
夜竹さゆかと谷本癒子は、鷹月静寐と相川清香に次ぐ一般生徒タッグでは実力ナンバー2のタッグであり、此れまでの試合も泥臭くとも全て真っ向勝負で相手とぶつかってその上でギリギリで上回っており、そして此処まで勝ち上がってきた時点で其の実力は疑いようもない。
癒子が打鉄を使っての近接戦闘を、さゆかがラファールリヴァイブを使っての射撃で援護を行うオーソドックスな前衛後衛である事もここまで勝ち上がってきた要因とも言えるだろう。
「織斑君、凰さん、胸をお借りします!」
「胸を借りるねぇ……そんな事言わずに、ぶっ倒す気で来いよ。
胸を借りるなんて気持ちじゃ俺と鈴に一撃を当てる事も出来ねぇぞ?……下克上上等くらいの勢いで来いやオラ!!」
「戦闘力最強タッグは一夏とヴィシュヌかもしれないけど、最恐最悪のタッグはアタシと一夏よ。
倒す気で来ないと試合にすらならないわよマジで。」
「成程……では、全力全力で行かせて貰います!」
試合が始まると近接型の癒子が突っ込み、遠距離型のさゆかがラファールのライフルを発射したのだが……
「普通の相手なら完璧なコンビネーションなんだが……」
「アタシ達相手に前衛後衛のオーソドックススタイルは逆に悪手よ!」
一夏も鈴も其れを難なく躱すと後衛役のさゆかには目もくれず癒子に突撃して近接戦闘での二対一の状況を作り出して見せた。
前衛と後衛を分けて夫々の役割を熟すスタイルはオーソドックスながらもタッグでのスタンダートと言えるスタイルでもあるのだが、その布陣が生きるのはあくまでも『相手が後衛を潰しに来た』時に限る。
後衛を潰しに来たその時は、其の相手を射撃で牽制しつつ、時折近接戦闘を行っている味方の援護を適当に行っていれば何時の間にか相手の近接型がシールドエネルギエンプティとなるのだが、試合開始直後に後衛を完全無視して近接タイプに二人で突撃となると其の限りではない。
「えぇ!ちょっと、此れは無理ぃぃぃ!!」
一夏の登龍剣での攻撃と鈴の双天月牙による二刀流の攻撃の波状攻撃は国家代表クラスでも捌き切る事は難しいので一般生徒である癒子が対応し切れる筈もなく、癒子の打鉄のシールドエネルギーはガリガリと削られて行く。
此のピンチにさゆかは何もしないのかと思うのかもしれないが、さゆかは何もしないのではなく、何も出来ない状態になっていた――というのも、鈴は癒子を近接戦闘で攻め立てながらもさゆかに向けてノールックの龍砲を連射していたのだ。
『視線で撃つ場所がバレている』と言う事をクラス代表戦で一夏と戦った際に知った鈴は目で見る事をやめて、目で見ない事で細かいロックオンを捨てる代わりに相手を見ずに相手が居る方向に龍砲を手当たり次第にぶっ放す事を思い付いていた。
実弾やビーム系の武装ならば凡そ褒められた戦術ではないのだが、龍砲は大気を取り込んで圧縮して撃ちだす超強力な空気砲であり機体エネルギーの消費はゼロなのでこんな攻撃が出来ている訳だ。
加えて龍砲の空気弾は不可視なため、手当たり次第にぶっ放されたとしても着弾するまでは何処に放たれたのかが分からないと言うのも厄介であり、其れがさゆかの動きを制限していた――弾丸が見えないが故に動かなくても当たる可能性があるだけでなく、動いた先に飛んでくる可能性もあるので下手に動く事が出来なくなってしまったのだ……直撃しなくとも何発か掠った事も大きいだろう。
このまま行けばジリ貧は間違いないのだが、此処でさゆかは前衛後衛のオーソドックススタイルを捨てて一夏と鈴に向かって行った――射撃での援護が出来ないのならばせめて近接戦闘での癒子の負担を減らそうと考えたのだろう。
「かかったな?」
「ま、アンタ達ならもっと頑張れば代表候補生トライアルを突破出来るとは思うけどね。」
突っ込んできたさゆかに対して鈴がカウンターとなるアッパー掌底を繰り出して上空に吹っ飛ばすと、一夏も癒子を蹴り上げる。
其処から鈴がさゆかをキン肉バスター、一夏は癒子をキン肉ドライバーの態勢に取る――
「「マッスルドッキング!!」」
「「ぴぎゃぁぁぁぁ!!!」」
そして炸裂した最強至高のツープラトンが炸裂して癒子の打鉄とさゆかのラファールリヴァイブのシールドエネルギーをゼロにして試合終了!
たった一発でラファールリヴァイブのシールドエネルギーをほぼ満タンからゼロにしてしまうマッスルドッキングの破壊力は推して知るべしであり、生身で喰らったら間違いなく異界行き間違いないだろう。
「負けちゃったかぁ……悔しいなぁ……!」
「行けると思ったんだけどなぁ……」
「ま、中々悪くなかったぜ?
だからさ、強くなってまた挑んで来いよ……何時でも俺達は相手になるからよ。」
「追ってくる相手が居ないとアタシ達も張り合いがないからね……でも、アンタ達との試合が今回のトーナメントでは今の所一番楽しめたわ!」
「アハハ……代表候補生を楽しませる事が出来たんならまずまずかな私達も……」
「ですが、このままでは終わりませんよ谷本さん……今よりももっと強くなって絶対にリベンジしましょう!!」
「モチのロンだよ!!」
「其の意気や良し、かな?」
「ま、そんなところね。」
完敗した癒子&さゆかペアだったが、必ず強くなって再戦する事を心に決め、一夏と鈴と試合後の握手をし、癒子とさゆかの健闘を称え一夏は癒子の、鈴はさゆかの右腕を高々と掲げ、観客席からは大きな拍手と声援が巻き起こるのだった。
そして学年別タッグトーナメントは此れにて四強が出揃い、箒を除いた全員が国家代表候補生以上という凄まじい状況になっていたのだった。
――――――
「次の準決勝ではドイツがあのエロガキと遣り合うか……好都合だ。
適当なタイミングでアレを発動すればそれで良い……全てが巧く行けばあのエロガキを殺す事が出来るし、そうならなくてもドイツの奴は廃人ルートまっしぐらだからな。」
アリーナの外では、一人の生徒がスマートフォンを操作しながらなにやら怪しげな事を呟いていた……彼女の言う事が全て本当であるのならば一夏&鈴ペアとラウラ&箒ペアの試合で何かしでかす事は間違いないだろう。
「しっかしなんだって叔母さんはあのエロガキを目の敵にしてんのかねぇ?
オータムの姉御を引き抜かれたからか?……だとしたら理由がガキ過ぎて笑えないんだが、流石にねぇよな……織斑一夏を手元に置いて世界への切り札にしようってのかな?現時点では何も分からねぇけどよ。」
その生徒は其の場から闇に溶け込むように消えた……其れだけで普通の生徒とは言えないだろう。
「……尻尾は掴んだぜダリル・ケイシー?
いや、レイン・ミューゼルって言うべきか?……俺からしたらどっちでもいいけどよ――だが、其れを発動しちまったらその時はお前のエンディングだって事を知っておくんだな。
旦那の敵となりうる存在に対しては俺は容赦しねぇ……俺は旦那によって真の意味で生きる目的と生きる意味を与えられたわけだからな!」
そんなダリルを、物陰からオータムはタバコを吹かしながら見送った――今はまだ自分が動く時ではないと判断したのだ。
そうして亡国機業の横槍の危険性をはらみつつ、学年別トーナメント一年生の部は準決勝の試合が始まるのであった……
To Be Continued 
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