恐竜時代以前のコールドスリープから目覚めたパラレルワールドからやって来た束(以降タバネと表記)は、驚異的な回復力を見せ、コールドスリープから目覚めて三日後には日常生活を完璧に行えるようになっていた。
そして完全回復したタバネは織斑達が自身が生まれ育った研究所から持ち出したISを織斑達用に改造を施していた。
パラレルワールドの存在であっても、タバネがISの生みの親である事は変わらず、ISの生みの親だからこそ出来るパイロットの特性に完璧に合わせた強化改造が織斑達の機体に施されていたのである。
「しかしまぁ、偶然とは言えコールドスリープ状態の私を見付けられたのは幸運だったよ君達。
此の機体、君達用に作られてはいたみたいだし決して性能も悪くなかったけど、此れじゃ君達の力は十全に発揮出来ないし、第一世代の織斑に戦いを挑んでも勝負になりゃしなかったね。
チョロンと調べてみたけど、あの龍騎って機体は性能がヤバすぎるってモンさ……競技用リミッター掛けても性能的には第五世代よりも上だからね。」
「高性能だとは思っていたが、其処までなのかあの機体は……」
「改造前の君達の機体が一番最初のガンダムに登場したガンダムだとしたら、龍騎はカナダの双子が使ってる尤も戦闘力が低い支援型でもフリーダムガンダムレベル。
攻撃型に関してはデスティニー、∞ジャスティス、ストライクフリーダム……でもって一番性能が高い羅雪はマイティストライクフリーダムってところさ。」
「其の性能差はえぐすぎるな、勝てるはずがない。」
第二次織斑計画と並行して専用のISも開発されていたのだが、其れは高性能ではあるモノの基本性能で龍騎シリーズには全く届いていなかった。
しかしタバネが改造を施した事で性能が大きく底上げされ、本当の意味で夫々の完全専用機として生まれ変わったのだ。
改造前の機体は高性能なバランス機だったのだが、改造後は一春と千春は近接型、一秋と千夏は射撃型、一冬と千秋は近接寄りのバランス型となっており、夫々の力を十全に発揮出来るようになっていたのだ。
「其れと君達は圧倒的に経験が足りてない。
強化人間だから基本的な身体能力は普通の人間と比べれば相当に高いけどそれだけじゃ経験豊富な相手に勝つ事なんでドダイ無理ってモンだ……だからと言ってコツコツレベルアップするってのも難しいから、作っちゃいました『超強制レベルアップマシン』!
此れを使えばあら不思議、戦闘経験値も肉体能力もあっと言う間に歴戦の戦士と同じレベルになっちゃう優れもの!
分かり易く言えば一分の使用で、百回分の実戦に相当する経験を得る事が出来るってモンだね……尤も、その辺の凡人が此れを使ったら過剰なレベルアップでぶっ壊れっけどね。」
「だが強化人間である俺達なら大丈夫と言う訳か……強化人間だからこそ許された極悪チートなレベルアップ、地道に鍛えて来た奴等が聞いたら盛大にブチキレるだろうが、俺達は兵器だから早急に強くなる事こそが最も大事であるが故に此の強化は理に適っていると言う事か。」
更にタバネは夏月達と織斑達の圧倒的な経験の差を埋める為の装置まで開発しており、此れによって織斑達は其の実力が底上げされ、国家代表やプロを凌駕する力を手にする事になり、更にタバネが作り上げた戦闘シミュレーションで戦闘の感覚も研ぎ澄まして行ったのだった。
「まさか、彼女が此の世界で復活するとはね……私達が出張った方が良いかしら?」
「いや、その必要はないだろう多分な。
奴が復活した事には驚いたが、此の世界の連中ならアタシ達が介入せずとも何とかするだろうからな……アタシ達が介入するのは本当にもうどうしようもなくなった時だけだ。」
「なら、暫くは此の世界の行く末を静観するとしましょうか。」
そして其の遥か上空ではISを部分展開した眼鏡の女性と蒼髪の女性がこんな会話を交わしていた。
因みに眼鏡の女性は亡国機業所属のナツキに、蒼髪の女性は楯無と瓜二つの容姿であり、コールドスリープから目覚めたタバネの事も知っているようだった……其の直後、二人は専用のISを完全展開すると其の場から飛び去ったのだった。
夏の月が進む世界 Episode95
『運命の始まった日~The Open Destiny Dya~』
新年度となり、IS学園にも新入生が入学して新学期が始まり、新一年生は夫々のクラスの『クラス代表』が決まり、『クラス代表対抗戦』に向けて熱気が高まっていた。
二年生と三年生に関しては『競技科』のクラスのみが『クラス代表』を選出する事になっているのだが、競技科に進む生徒はその年によって人数が異なるので二年生と三年生に関してはクラス代表対抗戦が行われない年も存在していたりする。
因みに今年度は競技科に進んだ生徒が多かった事で、二年生で4クラス、三年生で2クラスとなった事で対抗戦が行われる事になっていた。
二年生の競技科は夏月組が一組、秋五組が三組となリ、更に夏月は一組の、秋五は三組のクラス代表に就任していたのでクラス代表対抗戦での直接対決が決定していたのだった。
其のクラス対抗戦とは別に……
『マリア・ユキシマ、シールドエネルギーエンプティ!ウィーナー、一夜夏月!!』
「威勢の良さは認めてやるが、如何せん実力が足りてねぇ。
代表候補生としては上位レベルなのかもしれないが、国家代表にはまだ及ばねぇし、楯無達の足元にも及ばないどころか足元まではまだ100㎞は遠いってモンだぜ。
修行して出直して来な……俺は何時でも相手になってやるからよ。」
「強いとは思っていたけど、まさかアルゼンチンの国家代表候補の私が一方的にやられるとは思わなかった……成程、貴方の強さは本物だな。」
「こう言っちゃなんだが踏んで来た場数が違うんでな、俺と遣り合える奴は此の学園内には俺の嫁ズを除いたら早々居ないと思うぜ?
お前はレベルで言えば大体50~60ってところだが、俺のレベルは……現時点で150万ってところか……で、俺の嫁達は全員がレベル100万越えだ。」
「レベルは100が上限ではないのか?」
「そりゃあくまでもゲームの話だろ?
現実世界に於いてレベルの上限なんぞ存在しねぇってモンだ……『完成』、『極める』って思った瞬間に成長は止まるぜ?未完成で不完全である事を忘れないからこそ人は無限に成長する事が出来る。
お前も上を目指すなら現状に満足しない事だ……『此れで良い』と思ったら敗けるぜ。」
「其の言葉、心に刻み込んでおこう。」
本日は放課後の第三アリーナにて、夏月が新入生にしてアルゼンチンの国家代表候補生である『マリア・ユキシマ』とのISバトルを行っていた。
先の絶対天敵との戦いとプロデビューからの連勝で、夏月のネームバリューは『世界初のIS男性操縦者』の肩書も相まって爆上昇しており、其の結果として夏月にISバトルを申し込んでくる生徒が爆増し、マリアもその一人だったのである。
マリアの専用機『シルバーソル』はビームハルバートをメイン武装とした近接戦闘型で、マリアの操縦技術も非常に高かったのだが、ハルバートをメイン武装にした機体ならばロランの龍騎・銀雷と何度も模擬戦を行っているので如何戦えば良いかが分かっており、ロランと比べたらマリアはレベルがずっと下だったので夏月にとっては勝つのに難はなかった。
態と大振りな攻撃を行って隙を作り、其処に攻撃を誘導した上でカウンターの居合いを叩き込むと言う超上級な戦い方で夏月はマリアを下したのだった。
「お疲れ様、夏月君。
今回のマリアちゃんで此れにて新年度開始から累計50勝を達成したわ♪」
「秋五も其れなりに挑戦されてるけど、俺への挑戦が多過ぎんだろ……俺は今回で累計50戦だが秋五は累計何戦してんだよ?」
「織斑君は累計20戦ね♪」
「半分以下かい!……生徒会副会長ってのが悪く作用してんな。」
夏月は此れにて新年度になってからのISバトルの試合数が累計50戦に達し、勝利数も50勝となり、試合数は秋五の倍以上となっていたのだが、其れには夏月が新年度から新たに生徒会の副会長に就任していた事も大きかった。
生徒会長は前年度と変わらず楯無なのだが、副会長である虚が学園を卒業した事で副会長の座が空位となっていた。
一般の高校ならば副会長選挙が行われるところなのだが、IS学園では生徒会長である楯無の『次の生徒会副会長は夏月君』との鶴の一声で副会長は夏月に決まったのだった……普通は有り得ない事なのだが、楯無はIS学園最強の存在であり、その楯無が直々に副会長に任命した夏月は先の絶対天敵との戦いで大きな功績を残した実力者なので誰も異を唱える事は無かったのだった。
故に夏月は『IS学園のナンバー2』と言うのが対外的な評価であり、『学園最強の生徒会長を倒して生徒会長の座に就く』、『学園最強に挑む』と考えている生徒は、先ずはナンバー2である夏月に挑むようになっていたのだ――ナンバー2を倒さねば学園最強には挑めないと考えるのはある意味道理だろう。
但し生徒会ではナンバー2の副会長だが、夏月の実力的には楯無と同等かそれ以上であるのだが。
「君が負けるとは思わないが、50戦して削られたシールドエネルギーが僅か5%と言うのは驚異的な事ではないかと思うね?
単純に計算して、10戦で1%しか削られていない事になる訳だからね……しかもそれは累計ダメージであり、事実上は全ての試合が略パーフェクト勝利な訳だからね……その強さ、改めて惚れ惚れしてしまうよ。
嗚呼、矢張り君は最高だな夏月……時に、君の試合を見ていたら闘争心が疼いて来たな……流石に今からISバトルとは行かないが、食後にでもデュエルしないかい?」
「闘争心を満たせる遊戯王は素晴らしい……良いぜ、丁度新しいデッキが完成したから、其のデッキの最初の相手になってもらおうか?」
「新しいデッキの初戦の相手を務められるとは光栄だね。」
試合を終えた夏月はシャワーを浴びて汗を流すと、其の後は嫁ズと共に食道で夕食タイムとなった。
「え~っと、俺は……『ピリ辛味噌カルビ丼』の特盛に温玉トッピング。
其れが飯で、おかずに『カレーコロッケ』、『サバの味噌煮』、『タルタルチキン南蛮』、『野菜マシマシ回鍋肉』。あと味噌汁の代わりにラーメン。牛乳はパックで。」
「私は……『カツカレー』の特盛をカツ二倍。
それと、『大判ハラミステーキ』、『厚切り豚肩ロースステーキ』、『鶏モモ肉のソテー』、『骨付きラム肉の香草焼き』、『チキンバスケット』!それから『チャーシュー麺』のチャーシューマシマシ特盛と牛乳は夏月と同じくパックで!」
其の夕食の場では夏月とグリフィンが相変わらずバグっていた。
特にグリフィンはカツカレーのカツ二枚と言うだけでも中々にボリュームがぶっ飛んでいるのだが、更に単品で注文したメニューが見事なまでに『肉々しさ300%』であり普通の女子ならばまず頼まないメニューであった。
「「いただきます!!」」
明らかに普通の人間は過剰な量なのだが、強化人間で燃費が悪い夏月と、成人男性をも遥かに凌ぐ健啖家のグリフィンにとっては運動後に摂取する食事量は此れ位が当然の量なのである。
流石に初めて此れを見た新入生は全員が目を丸くして驚き、更に此の量を完食した挙句に追加注文をした時には己の目を疑ってしまったのは致し方ないと言えるだろう。
「今更かもしれないけど、将来はエンゲル係数高くなりそうだねお姉ちゃん?」
「其れに関しては大丈夫よ簪ちゃん。
確かにエンゲル係数は高くなるだろうけど其れを上回る収入があるから……更識は裏家業は勿論だけど、表の仕事でも手広く順調に事業を拡大しているからね。
近く三企業ほど買収して更識の傘下にする予定だから……更識の力をフル活用した上で、更に束博士に協力して貰えば企業の買収も割と簡単に出来るしね♪」
「驚愕の事実、暗部の長は金融業界の長でもあった……更識は日本の金融業界をも牛耳ってたんだ。」
「裏家業には色々とお金が必要になるからねぇ……更識は時代時代で裏家業とは別に大きな商売を展開してたのよ……とは言っても、私自身は投資とか全然分からないからその辺は束博士に任せてるんだけど♪」
「いや、タバ姐さんに投資丸投げしたら絶対に儲けしか出ないっしょ楯姐さん……タバ姐さんなら幾らでも株価操作出来る訳だし……最少額で買い付けて最大額で売却とか楽勝でしょ?」
「分かった上で任せてるのよ鈴ちゃん♪」
「……うん、タバ姐さんと楯姐さんのコンビは絶対に敵に回しちゃいけないって実感したわアタシ。」
夏月の嫁ズは少しばかり危険な話をしていたのだが、其れは一般人が聞いても何の事かサッパリ分からないので問題は無いだろう。
尚、夏月とグリフィン以外のメンバーの本日の夕食は、楯無が『トンカツ定食+筑前煮』、簪が『ミックスフライ定食』、ロランが『野菜たっぷりタンメン』、ヴィシュヌが『冷やしタヌキうどん+稲荷寿司』、鈴が『酢豚定食』、乱が『炒飯+飲茶セット(海老蒸し餃子、小籠包、春巻き)』、ファニールが『究極のサーモン丼』、ダリルが『ガーリックステーキ丼肉増し』、静寐が『キムチカルビ丼』、神楽が『天ざる』、ナギが『オムハヤシ』だった。
そして食後、寮に戻った夏月とロランは早速デュエルを開始したのだが……
「俺はバスター・ドラゴンの効果で墓地の『バスター・ブレイダー』を特殊召喚し、更に魔法カード『破壊剣士融合』を発動!
俺のフィールド上のバスター・ブレイダーと、バスター・ドラゴンの効果でドラゴン族となったロランの『アテナ』を融合し、現れよ『竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー』!
更にリバースカードオープン!永続罠『輪廻独断』!このカードの効果で互いの墓地のモンスターは俺が選択した種族となる……俺が選択するのはドラゴン族!
此れにより俺とお前の墓地のモンスターはドラゴン族となった訳だが、竜破壊の剣士の攻撃力と守備力は相手のフィールドと墓地のドラゴン族一体に付き1000ポイントアップする。
バスター・ドラゴンと輪廻独断の効果で、お前のフィールドと墓地のモンスターは全てドラゴン族となり、其の数は合計で15枚!よって竜破壊の剣士の攻撃力は15000ポイントアップする!」
竜破壊の剣士-バスター・ブレイダー:ATK2800→17800
「攻撃力、17800……!」
「此の攻撃力、そうそう超えられないぜ!」
夏月が組み上げたデッキは『バスター・ブレイダー』だった。
竜破壊の剣士の融合召喚と、バスター・ドラゴンのシンクロ召喚をメインにしたデッキで、竜破壊の剣士とバスター・ドラゴンを並べる事が出来ればアドバンテージを稼げるデッキなのだが、夏月は其処に墓地のモンスターの種族変更が出来る『輪廻独断』を組み込んでより盤石にしていたのだ。
フィールドと墓地のモンスターをドラゴン族に限定してしまうとドラゴン族専用のカード以外は発動出来なくなってしまうので相手の動きを大きく制限する事が可能なのである。
其れに加えてフィールドと墓地のモンスターをドラゴン族にしてしまえば竜破壊の剣士の攻撃力も爆発的に上昇すると言う極悪な状態となり、竜破壊の剣士には貫通効果もあるので、守備表示のドラゴン族が相手であっても特大のダメージを与える事が出来るのである。
一方のロランは光属性の天使族と闇属性の堕天使にカオスギミックを組み込んだ『カオス天使』であり、『神の居住-ヴァルハラ』の効果で最上級の天使を特殊召喚し、更に『DNA移植手術』で属性を光に変えてオネストカウンターも狙うデッキだったのだが、種族を変えられた上に守備表示にされてしまってはオネストカウンターも狙えなくなってしまっていた。
「竜破壊の剣士-バスター・ブレイダーで、守護天使ジャンヌに攻撃!ドラゴンバスターブレード!!」
「其の高攻撃力が命取りさ……トラップ発動『魔法の筒』!此れで17800ポイントの攻撃力分のダメージが其のまま君に跳ね返る!」
「おぉっと、そう来たか……だが、其れは通さねぇ!
カウンター罠『神の宣告』!このカードの効果で魔法の筒を無効にする!」
夏月:LP5000→2500
「そのカードを伏せていたのか……此れは打つ手無しだね。」
ロラン:LP4000→0
最後の攻防は夏月が制し勝負あり。
しかし、一度で終わらないのがデュエルであり、その後夏月とロランは互いにデッキを変えてデュエルを続け、其れは完全就寝時間を過ぎても部屋の明かりを最小限にした上で行われ、最終的には五十戦をする事になり、最終成績は夏月の27勝23敗と中々の接戦だった。
そしてデュエルが終わった後は、夏月とロランは同じベッドで眠りに就くのだった。
――――――
時は進んでゴールデンウィーク。
日本に於いては一年で最大級の連休は今年も各地の観光地や観光施設には多くの人が訪れて賑わっており、各地の高速道路では最早名物と言っても良い大渋滞が発生していた。
今年のゴールデンウィーク、IS学園は九連休となっていた。
其れだけの大型連休ともなれば当然夏月も秋五も嫁ズとデートとなるのだが、秋五は一人ずつのデートが可能となるのに対し、夏月の嫁ズは十二人も居るので全員と一人ずつのデートは不可能だったので、七人がシングルデートとなり、残る五人はタッグデートかトライデートとなるので、シングルデートの権利を獲得すべく、『e-スポーツ部』内で壮絶な『スマッシュブラザーズ大会』が行われ、其の結果、楯無、簪、ロラン、ヴィシュヌ、グリフィン、静寐、ダリルの七人がシングルデートの権利を勝ち取り、鈴と乱がタッグデート、ファニールとナギと神楽がトライデートとなった。
しかしその後に行われた『デート順』のクジ引きではトライデート組が一番を引き当て、ゴールデンウィークの初日に夏月とデートする権利を手に入れたのだった。
そして其のゴールデンウィークの初日、夏月とファニールとナギと神楽は本土に渡り、関東でも最大級の規模を誇る水族館である『大洗アクアワールド』を訪れてゴールデンウィーク限定のイベントやイルカショーを心行くまで楽しんだ。
特に今年のゴールデンウィーク限定のイルカショーでは、大洗の最大の売りである大人気アニメ『ガールズ&パンツァー』とコラボしており、イルカのドルフィンキックのたびに会場からは『パンツァー・フォー』の大声援が起こっていた。
「ねぇ夏月。」
「如何したファニール?」
「此のヨーロッパオオウナギ、幾らなんでもデカすぎない?」
「……気のせいじゃないか?」
「其れと、何かこっち見てる気がするんだけど……」
「無視しなさい。」
イルカショーを堪能した夏月達は、土産物コーナーに立ち寄り、其処で夏月は記念メダルと其れをはめ込むチェーンネックレスを購入し、メダルにはファニール達のイニシャルと生年月日を刻印していた。
其れを受け取ったファニール達は顔を綻ばせて、早速その世界に一つだけのメダルネックレスを首に掛けたのだった。
「さてと、そろそろランチタイムなんだが、何食べたい?」
「「「「お好み焼き『道』さんでお好み焼き!」」」」
「満場一致だな此れは。」
そうしてアクアワールドを出たころには丁度ランチタイムだったので夏月は『何が食べたい』かを聞いたのだが、返ってきた答えは満場一致で『お好み焼き』であった。
大洗のお好み焼き屋『道』は、地元では其れなりに愛されている店だったのだが、アニメ『ガールズ&パンツァー』が大ヒットすると、店名の『道』の前に『戦車』を追加して、『お好み焼き戦車道』として大繁盛を遂げていたのだった。
「俺は『最強大洗焼き(タコ、イカ、あん肝を混ぜたお好み焼き ※実在してません)』のタコマシで!」
「アタシは無難に豚玉かしらね。」
「私は垂らし焼きを。」
「アタシは『エビ玉』で!」
夫々が注文をして、そして運ばれて来た記事を熱せられた鉄板に落として、鉄板焼きが始まったのだが――
――ドガァァァァァァァァァン!!
其れに合わせるように凄まじい爆発音が鳴り響いた。
「街中で爆音だと?」
「普通じゃ有り得ない事だね……行こう夏月君!」
其れを聞いた夏月達は直ぐに爆発音の発生源へと向かったのだが、爆発音の発生源は大洗のシーサイドステーションであり、ガールズ&パンツァーのキャラクターのイラストを施した建物は大人気だったのだが、其れも無惨に崩れ去ってしまっていたのだった。
夏月達が辿り着いた時には、後の祭り状態だった。
「コイツは……新たな織斑がやったのか?」
「其の可能性は大きいと思うわ……被害は大きいけど、死者がゼロだったのが幸いだと思うけど、デートの邪魔をした事は絶対に許さない……!」
「気合入ってるじゃねぇか……なら、こんなクソッタレな事をしてくれた連中に、一発かましてやろうぜ!!」
そして其れは同時に『新たな織斑』からの『宣戦布告』とも言えるモノであり、同時に束から『新織斑達が動き始めた』とのメールを受け取ったので、此の惨劇を起こした犯人は確定したのだが、夏月は其れを受けながらも自分達の前に立ちはだかるのであれば容赦なく斬る事を決めていたのだった。
「さぁてと……折角の休日を潰してくれたんだ……其の代償を払う覚悟は出来てるんだよなぁ!!」
夏月は羅雪を展開し、ファニール達も専用機を展開して其の場から飛び立ち、束から送られて来た新織斑の機体データを追い、そして追い付いていた。
「逃がさねぇぞ、クソッタレが……!」
「まさか追い付いてくるとはな……だが追い付いてしまったのならば仕方ない……俺達の未来の為に死んでくれ兄さん。」
「誰がテメェ等の為に死ぬかボケナス……俺を殺したいなら、最低でも殺意の波動に目覚めたリュウレベルの奴を連れて来いよ。
ハッキリ言って、テメェじゃ役者不足だぜ……死にたいなら掛かってきな――但し、俺に挑むなら人生にピリオド打つ覚悟を決めてこいだけどな!!!
教えてやるよ、格の違いってモノをな……俺と比べたらドレだけテメェが矮小な存在なのかって事を実感しな!」
「簡単に人の死を口にするべきではないと思いますよ、特に貴方達三下はね……!!」
そして追い付いた敵と相対したのだが、夏月も、そしてファニール達も真剣そのものであり一部の隙も無かった――そして今此処に本格的に新織斑との戦いの火ぶたが切って落とされたのだった。
To Be Continued 
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