極大の対消滅攻撃を喰らったキメラは其れでも完全に消滅する事はなく、僅かに残った欠片が海に沈み、其れを追うように世界中に現れていた絶対天敵が当該海域に現れて次々と海に飛び込んで行った。
「絶対天敵が此処まで集まって来てるとはなんとも尋常ではないと思うのだけれど、此れは此の場にやって来た絶対天敵を殲滅すべきかな夏月?」
「いや、其れは必要ねぇよロラン。
恐らくだが此処には世界中に現れた全ての絶対天敵が集って来てる筈だ、DQNヒルデと融合する為にな……なら其れを各個撃破するよりも、一個体のキメラになったところをぶち殺してやる方が面倒な事も無いってモンだ……最後の悪足掻きを真正面からぶっ潰すってんも良いと思うしな。」
「成程、其れは確かに一理あるね。」
此の場に集まった戦力をもってすれば世界中から集まって来た絶対天敵の大群を退ける事は可能だが、流石に数が数なので負けなくとも相当に体力を消耗してしまうのは間違いないだろう。
加えて既に可成りの数の絶対天敵が海に飛び込んでいるので海中で再生を始めたキメラと融合しているのは間違いないので、態々絶対天敵の大群と戦って体力を消耗するよりも、全ての絶対天敵と融合したキメラとの戦いに全力を注ぎ込む方が遥かに効率的であり有益なのだ。
全ての絶対天敵と、その親玉であるキメラが融合したのであれば、其れを倒せば地球人類と絶対天敵との戦いに終止符が打たれる事になるのだから。
「果てさてどんな化け物が現れるか、其れは束さんにも分からないけど、此の最終決戦の様子は世界中に配信しないとね♪
其れから、白騎士の生みの親として不良娘に最後の一発をかましてやらないとだから……軍艦シリーズの真骨頂を此処で見せるとしようかなぁ?軍艦は只のネタ艦船じゃないのさ!」
此の最終決戦の開幕を前に、束は世界中のメディアをハッキングして軍艦のカメラやドローンのカメラで撮影した映像をリアルタイムでテレビやスマートフォンの画面に映し出すようにし、更にこれまでに開発した『軍艦』も遠隔操作で最終決戦の場に出撃させていた――流石に遠隔での複数操作で軍艦の最高スピードを出すのは難しかったので全て集結するには少しばかり時間が掛かるのだが。
「絶対天敵の大群が消えた……と言う事は世界中に現れた絶対天敵の全てが海中に飛び込んだと言う事だが――あの膨大な数の絶対天敵が融合したとなれば、一体どれほど巨大な存在が現れるのか想像も出来んぞ?」
「直立型であれば最低でもゴジラ・アースと同じくらいはあると思うわよ箒。
直立型でない場合でも全長は最低でも500mは下らないんじゃないかしら?……本来なら自重で存在する事すら出来ない大きさなのだけど、地球の常識が通用しない宇宙生物なら其の限りではないと思うしね。」
「セシリア……確かにそうだね。
だけど、人知を超えた存在なんて言うのは絶対天敵との戦いで何度も目にしてるから今更驚く事じゃないよ……其れに相手が何であろうとも、此の世界に仇成す存在であるのなら倒すだけさ。」
そうしている内に絶対天敵の大群は其の全てが海中に飛び込んで姿を消していた。
同時に海中ではキメラが再生しながら全ての絶対天敵と融合して急激な強化進化を行っており、其の姿を大きく変えていた……其れは、セシリアが予想した通りの巨体であった。
「「……!」」
其の巨体の中央に存在している『織斑千冬』は融合進化が完了した事を感じ取ると其の目を一瞬光らせ、そして海上へと浮上して行ったのだった。
夏の月が進む世界 Episode86
『絶対天敵との最終決戦~The is the final battle~』
世界中に現れていた絶対天敵が全て現れて海中に飛び込み、其の大群が居なくなった事で、絶対天敵の全個体が海中に飛び込んで再生中のキメラと融合した事が確定し、其の融合が完了した事を示すように極大の水柱が海から発生した。
其の水柱は直径100mはあり、勢い良く吹き上がった海水は成層圏まで達するのではないかと言う位の高さだった。
「……来るぞ、最後の敵がな。」
其の巨大な水柱が収まると、続いて海中から巨大な存在が其の姿を現した。
現れたのは全長500mは下らない巨大な蜘蛛なのだが、蜘蛛の八本の脚とは別にカマキリの大鎌が二本存在しており、頭部にはヘラクレスオオカブトの角が生えて口元には軍隊蟻の強固なアゴが存在している。
更に其の背にはトンボの四枚羽根が生え、腹の先端にはオオスズメバチの毒針が存在していた。
此れだけでも複数の虫を融合させた醜悪な見た目のキメラなのだが、蜘蛛をベースとした本体の背には巨大な十字架が現れて其処から十本の人間の腕が生えており、其の前には髪も肌もグレーになった『織斑千冬』の上半身が鎮座し、蜘蛛の頭に存在する特徴的な八つの目は其の全てが『織斑千冬』の顔となっていたのだった。
「「ククク……アハハハハ……最強の対消滅攻撃デ私を倒しタ心算だったノだロウが、私は今またこうしテ進化し、真の神トなった!
人とはかけ離れタ姿となっテしマったガ、神トはそもそモにして人とは異ナる存在なノだカラ、此方の姿の方ガより『神』と言エるのかモしれナいな!」」
ギリギリ知性は残っているようだが、発せられる言葉はエコーが掛かったかのような二重音声となり、其れはさながら音割れしたスピーカーの音声の如きだった――僅かに残ったキメラの欠片が無理な高速再生を行い、其処に無数の絶対天敵が融合した事で、力は大きく増した代わりに知性は略失われてしまっているようでもあった。
ほぼ失われた知性の代わりに残ったのは夏月に対しての憎悪が増幅した、己以外の生命全てに向けられた憎悪と、其の憎悪によって極限まで活性化した戦闘本能であり、此の合体キメラ(以降キメラXと表記)は極めて危険な存在であると言えるだろう。
「だから、誰もお前みたいな神の存在は求めてねぇってんだよ。
其処のところをちゃんと自覚しとけ邪神未満……いや、リリカルなのはに出て来るナハトヴァールの暴走体に擬えて、『クズトヴァール』とでも呼んでやった方が良いか?」
「夏月、其れは中々のナイスネーミング……と言うか、あの状態で人語を話せる事に驚いた――あの手の化け物は大抵の場合は唸るか吠えるかしか出来ないって相場が決まってるから。」
「最後の相手があのような醜悪な存在と言うのは些か不満がないとも言い切れないのだが、分かり易い醜悪な存在の方が見ている側としては『悪』と認識しやすいのかも知れないね?
そう考えれば敵ながらに中々空気を読んだと言えるのかも知れないな……巨大な化け物を倒して大団円と言うのは王道の展開だからね!」
だがしかし、夏月組も秋五組も亡国機業組も此れだけの存在が現れる事は予想していたので、其の醜悪な見た目に少し顔を歪めはしたモノの、戦意を喪失する事はなく、キメラXとの最終決戦に闘気を一気に高めていた。
怪獣型をも遥かに凌駕する其の巨躯は相当に頑丈であるのは考えるまでもない事だが、巨大であればあるほど被弾面積が増える事にもなるのでダメージを与えるのは難しくないだろう。
「其の巨体じゃ動くのも難しいんじゃないかしら?寧ろ、永遠にその動きを止めておきなさいな!」
「動くなデカブツ!!其処に這いつくばっていろ!!」
そしてまず最初に動いたのは楯無とラウラだ。
楯無は『沈む大地』で、ラウラは『AIC』でキメラXを拘束しようとする――ラウラのAICは相手が一体であればほぼ完全に動きを止める事が可能であり、楯無の沈む大地は高出力ナノマシンによって空間に敵を沈めるようにして拘束する超広範囲指定型空間拘束結界でAIC以上の拘束力を有しているだけでなく、其の特性によって相手が重ければ重いほど拘束力が高くなるのでキメラXに対しては最大の効果を発揮するだろう。
「「此の程度ノ事デぇぇぇぇ!!」」
しかしキメラXは其の拘束を力任せに破ると、頭部の三本角にエネルギーを集中させて高威力のビームを放とうとする。
「そうはさせないわ……其のエネルギーは自分で喰らいなさい!」
「相手が複数の場合、チャージ時間が長い攻撃は悪手なんだよねぇ……会長さんは破られる事を前提でラウラと拘束攻撃をしたんだよ――化け物風情じゃそんな事も分からないだろうけどね。」
其の集中したエネルギーに対してセシリアがBT兵装の十字砲を、シャルロットが二丁アサルトライフルでの超連射を叩き込んでビームが放たれる前にエネルギーを飽和状態にして爆発させてキメラXの三本角を破壊する。
尤もそれは直ぐに再生し、今度はコーカサスオオカブトの角が生えたのだが、其れとは別に十字架から生えた人間の腕の掌にもエネルギーが集まっており、其処からビームが放たれたが、其れはナツキがフルバーストで相殺して見せた。
更に其の直後に静寐と神楽、箒と清香が夫々の得物で十字架に生えた腕を全て斬り落とす――其の腕も即座に再生したのだが、再生した腕は人間の腕ではなく、タコやイカの触手であった……超速の再生能力は健在であっても、完全再生よりも強化再生が優先された結果としてこの様な再生となったのだろう。
「タコの脚とイカの脚……酒の肴としては最高だな!スコール、こんがりと焼いてくれや!」
「焼く前に醤油を塗っておきたいところだけど、其れは望めないわね……だけど、取り敢えず燃えなさい!」
其の再生されたタコとイカの触手はスコールが持ち前の炎で香ばしく焼き上げ、オータムが其れを斬り落とす――だけでなく、蜘蛛の身体に鎮座した織斑千冬だった存在をヴィシュヌとグリフィンが左右から挟み込んでいた。
「行きます……はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!……フッ、せい!!」
「ファイヤー!
うりゃ!せい!はい!だりゃ!!お~りゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!破壊力~~~~~~~~~~!!」
ヴィシュヌはバック転の踵蹴り上げからムエタイの打撃の乱打でキメラXをタコ殴りにしてから変則的な二段飛び蹴りを叩き込み、グリフィンは肘打ち→裏拳×2のコンボから右手の片手連続パンチとダイヤモンド・ナックルでの乱打に繋ぎ、其処からボディアッパー→カチ上げエルボースマッシュ→ジャンピングアッパーのコンボフィニッシュブローを叩き込む。
「「グオォォォォォォォォぉ……ダが、この程度デは私は死なンゾォ!」」
「そうかも知れないけど、貴女は存在其の物が此の世にとって厄災でしかないから大人しく滅びて……夏月も言ってたけど誰も貴女の存在を望んではいないのだから。」
「簪って、普段は大人しいオタクだけど、有事の場合は割と毒舌な殲滅者になるよね……其れが簪の魅力なのかもしれないけどね。」
ヴィシュヌとグリフィンにフルボッコにされた織斑千冬の身体も即座に再生して、石像の様だったグレーの身体から、『エネルギー攻撃は反射する』と思わせるシルバーメタリックになったのだが、今度は其処に簪とナギからのグレネード弾が炸裂した。
簪とナギはグレネードランチャーの火炎弾と氷結弾を使った小規模の対消滅攻撃も出来るのだが、今回使ったのは火炎弾でも氷結弾でもなく、絶対天敵に対しての有効性が認められた『対B・O・Wガス弾』と『テトロドトキシンニードル弾』だった。
対B・O・Wガス弾は着弾と同時に特殊なガスが発生して其のガスを吸った相手を弱体化するモノであり、サバイバルホラーゲームの金字塔である『バイオハザード』に登場した特殊弾薬であり、本来はネタ弾薬の域なのだが、此れが束も予想していなかった『絶対天敵に対して有効』である事が以前に戦闘で証明されていたので、其れはキメラXに対しても充分なダメージを与えるだろう。
其れに加えてナギのグレネードランチャーから放たれたのは着弾と同時に無数の細かい針が対象に突き刺さる『ニードル弾』だったのだが、其のニードルには現在の地球上で最強の毒であるフグ毒の『テトロドトキシン』が塗られていた。
尤も天然のフグ毒を手に入れるのは容易ではないので、此のテトロドトキシンは束がフグ毒を解析して作り出した人工物なのだが、束が開発したという時点で相当な毒物であり、ニードル弾に仕込まていたポイズンニードルは、人間だったら一本でも刺さったら即死レベルの毒性を備えていたのだ。
「「此レは、毒カ……小賢しイ事を……此の程度ノ小技が効くカぁぁぁァァァァァ!!」
キメラXは全身に突き刺さったポイズンニードルを内部から筋肉を隆起させる事で弾き飛ばし、体内に入り込んだ毒を再生能力を利用して急速に解毒して行くが、其れでも完全に解毒する事は出来ず動きが鈍ってしまった。
だがしかし、動きが鈍くなろうともキメラXのタフネスと攻撃力は健在であり、蜘蛛の頭部に生えたコーカサスオオカブトの角からビームを放ち、腹部の先端からは巨大なスズメバチの毒針をミサイルのように発射して夏月達を攻撃し、蜘蛛の頭部の八つの目の代わりに現れた織斑千冬の顔の目と口からも怪光線が発射される。
もしも同じ攻撃が都市部で放たれたら間違いなく其処は壊滅してしまう攻撃なのだが、戦闘場所が海上である事が夏月達に有利に働いていた。
海上は当然陸地よりも大気中の水分が多くなる訳だが、大気中の水分が多いと言う事は楯無の蒼空のナノマシンによる水蒸気精製能力も大幅に向上すると言う事でもあり、キメラXの周囲には濃密な、しかし不可視の水蒸気が存在しており、其れがビーム系の攻撃の威力を減衰させ、毒針ミサイルの推進力を低下させていたのだ。
其れにより夏月達はキメラXの攻撃を回避、或いは防御してダメージを最小限に止める事が出来ていた。
無論ダメージを軽減するだけでなく――
「本日、当戦闘海域の湿度は100%ですので、急な水蒸気爆発には十分にご注意くださ~~い♪はい、ドカン!!」
楯無がクリアパッションを発動してキメラXの巨躯にダメージを叩き込む。
水蒸気爆発は、爆発が発生するまでは精々『少し蒸し暑くなったか?』程度の事しか認識出来ないので初見で見切る事は不可能であり、二度目以降も今度は僅かな湿度の上昇でも必要以上に水蒸気爆発が来るのではないかと警戒してしまい、其の結果として攻め手を鈍らせる効果もあるのだ。
キメラXに対しては攻め手を鈍らせる効果は薄いかも知れないが、二度目があるかもしれないと思わせる事が出来ただけでも充分だ……何時来るかも分からない攻撃ほど恐ろしいモノはないのだから。
「クリアパッションも決め手にならないとは呆れた頑丈さだけど、此れには耐えられるかしら?」
「今度の攻撃はクリアパッションよりも更に強力かも知れないモノね?」
「使用者がノーダメージの自爆特攻ってある意味凄まじいレベルの反則技じゃないかと思うのよねぇ……戦場に於いては反則技なんてないのだけれど。」
更に此処で楯無はナノマシンで自身の分身を大量に作り出した。
其の数は先の怪獣型との戦闘で作り出した分身の五倍以上と言う凄まじい数であり、キメラXの周囲は文字通り無数の楯無の分身で埋め尽くされている状態となったのだった。
「盛大にぶちかますわよ……アルティメット・ゴースト・カミカゼアタ~ック!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「更識楯無、逝きま~~す!!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」(カギカッコ省略)
「お~~、思いっきり逝ってこ~い!」
「だから『いく』の字がオカシイと思うのだが……まぁ、此れ以上は何も言うべきではないのだろうね。突っ込みは時に無粋なモノになるみたいだ。」
其処からの『爆弾人形』である分身の突撃が行われキメラXに更なる追加ダメージを叩き込む。
迎撃しようにも分身の楯無は触れた瞬間に爆発するので物理攻撃で迎撃する事は不可能な上、エネルギー攻撃で迎撃しても今度は誘爆による連鎖爆発と言う爆発ダメージが発生するので、近距離で此の分身の突撃を発動されたらダメージを軽減する術はない。
加えて次から次へと自爆特攻が行われる事で、キメラXの再生能力を上回るダメージを与える事も可能となっており、全ての分身の特攻が終わった時にはキメラXの身体は半壊状態となっていた。
「その状態で凍り付くと良いっすよ!」
其れでもキメラXは再生を開始したのだが、再生し切る前にフォルテがキメラXの全身を凍結させて再生を阻止した。
驚異的な再生能力を持っているキメラXだが、其れはあくまでも身体の自由が利く状態である場合であり、身体全体が凍り付いてしまっては細胞活動も停止してしまうので再生する事は出来ないのである。
「デカさだけなら立派なモンだが、こんな醜悪な氷像は札幌の雪祭の会場でも展示する事は出来ねぇから、此処でブチ砕く以外の選択肢はねぇよな?」
「そうだね……此処で粉々に砕くだけだよ!」
巨大な氷像となったキメラXの前には夏月と秋五が滞空し、夏月は居合の構えを、秋五は正眼の構えを取る――そして次の瞬間、夏月の神速の居合と秋五の両手持ちの袈裟斬りが炸裂して凍り付いたキメラXを粉々に砕いてしまった。
普通ならば此れでゲームセットなのだが、粉々に砕かれただけではキメラXは死なず、砕かれた欠片が即座に集結して再生し、更なる異形の存在として海中から現れた――蜘蛛がベースなのは変わらないが、蜘蛛の八本脚はタコやイカの触手に変わり、蜘蛛の八つの目は其の場所から蛇が生えており、織斑千冬だったモノには全身に亀裂が入り、其処から不気味な赤黒い光が漏れ出しており、顔も目からは黒目が消失し、口は大きく裂け、其の口内に生えているのは人の歯ではなくサメのようなギザギザの牙であり、人間の面影は殆ど残っていなかった。
「オリジナルであるお前が人でなくなり、スペアだった私が人として生きていると言うのは皮肉が効きまくっていて笑えるなぁ織斑千冬?
いや、本物の織斑千冬の魂は羅雪の中だから、貴様は織斑千冬のガワの成れの果てと言うべきか……まぁ、貴様のようなクズにはお似合いの姿だ!」
「「ガァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」」
此の再生によって完全に知性を失ったキメラXに対し、今度はマドカがビームガトリング『レーザーブラスター』を放ってダメージを与え、追撃に自爆機能付きのシールドビット『エネルギー・アンブレラ』をぶつけて爆破ダメージを与える。
勿論その傷もすぐに再生するのだが、キメラXも生物である以上は細胞分裂の限界が存在するので、如何に瞬時の再生が出来るとは言っても其れは無限ではなく有限であり、何れは再生する事が出来なくなるので、再生されてもダメージを与え続けるのは無駄ではない。
「え……それ本当にやるの夏月?」
「オウよ、たった一言で10倍界王拳状態になるんだからやるしかねぇだろ此処は……」
「まぁ、確かに合理的ではあると思うけど……仕方ないか――流石だねマドカ姉さん、見事な攻撃だよ!」
「マド姉、ナイスな攻撃だ……流石は俺達のお姉ちゃんだな!」
「ふおぉぉぉぉぉぉぉ!!弟の前では、お姉ちゃんは無敵で最強の存在となる!今の私は、鬼も阿修羅も、神をも超える存在だぁ!!」
「……スコール、ブラコンのパワーを物理的に取り出してエネルギーに変換する事が出来たら地球のエネルギー事情は一気に解決するとオレは思うんだがお前は如何思うよ?」
「其の可能性は否定出来ないわね……ブラコンパワー恐るべし。」
其処で夏月と秋五の一言でブーストしたマドカはクリスタルブレードでキメラXを滅多切りにする。
当然キメラXもマドカを振り払おうとするが、今度は其処にカウンターでラウラのプラズマ手刀が突き刺さり、更にラウラは突き刺したプラズマ手刀の出力を限界まで高めて爆発させプラズマ手刀を突き刺した部位を吹き飛ばして見せた。
『はいは~い!此処で束さんも参加させて貰うよ!!』
加えて此処で遂に束が参戦して来た。
其処に現れたのは全ての『軍艦』が変形合体して誕生した超巨大ロボット『最終決戦機動軍艦戦士マスターネギトロ』だった――其の大きさは全高50mはあり、更に其の巨躯と同じ位に巨大なビームキャノンを抱えている。
「姉さん……まさか此処で参戦してくるとは思いませんでした……」
『わっはっは、白騎士は私が生み出した最初のISだから私の娘みたいなモンなんだけど、その娘が道を外れて手の付けられない不良娘になっちゃったってんなら親として最低限の責任を取らないとだからね。
だからこうしてやって来た……喰らえよ不良娘!此れが束さんの全力全壊……スターライト・ブレイカァァァァァァァ!!』
「姉さん、其れは色々とアウトです!!」
そして其のビームキャノンから放たれた極大のビームはキメラXを貫いたのだが、其れでもキメラXはまだ死なず更なる再生でより醜悪な姿となっていた。
其の姿は混沌とも言うべきモノであり、最早生物として良いのかも迷うモノだった……細胞分裂の限界が来るまではまだ猶予がありそうなので、キメラXを倒すには最強最大の攻撃で消滅させるのが最善と言えるだろう。
だが其の最強の攻撃の準備は既に整っていた。
楯無とダリル、フォルテとスコールが四人で最強クラスの対消滅攻撃の準備を行い、箒が絢爛武闘・静でのエネルギー支援を行って最も出力が低いフォルテの出力を底上げすると同時に秋五にもエネルギーを送って晩秋に巨大なエネルギーブレードを形成して行く。
更に其れをコメット姉妹が『ソング・オブ・ウラヌス』で底上げすると同時に、キメラXの身体を鈴と乱が『龍の結界』の鎖で拘束して動きを封じ、更に鎖にプラズマ電撃を流してダメージを与える。
『此れで終わらせるぞ夏月……無上極夜の効果を全開にして心月に込める。
飽和エネルギーの斬撃で奴を葬れ――そして織斑千冬の存在をこの世から永遠に葬り去れ!!』
「任せとけ羅雪……クズトヴァールには此処で退場して貰うぜ、永遠にな!」
そして其れだけなく、羅雪の心月には全開にした『無上極夜』の力が込められて準備完了だ。
「行くよ……此れが終幕の引鉄の一太刀!篠ノ之流奥義の壱、消魔鳳凰斬ーーーー!!」
先ずは秋五が箒からのエネルギー供給によって数十mのエネルギーブレードを得た晩秋でキメラXを袈裟切りに斬り裂く。
「お前が神を気取るなら、俺達は神を超える存在って事になるよな?……なら其の身で味わえ、神をも超える力をな。」
続いて夏月が羅雪のワン・オフ・アビリティである『空烈断』をイグニッションブーストと同時に発動して『姿の見えない空間斬撃』を放ち、更に無上極夜によって飽和状態となったエネルギーが斬撃と同時に爆発してキメラXの身体を粉砕する。
「此れで終いだ……ぶちかませ楯無、ダリル、義母さん、フォルテ!!」
「此れで終わりよDQNヒルデ改めクズトヴァール!此れが私達の全力全壊にして一撃必殺の絶対滅殺!!」
「コイツで逝っちまいな……地獄までエスコートしてやるぜ!!」
「白騎士事件の清算をさせてもらうわ……地獄行きでは生温いわ――一万年続く苦しみを一万回繰り返す冥獄界に落ちると良いわ……!」
「此れでアディオスっすよ!!」
「「「「アルティメット・メドローア!!」」」」
そしてトドメは楯無、ダリル、スコール、フォルテによる極大の対消滅攻撃だ。
箒によってフォルテの出力も底上げされていたので此の最強の対消滅攻撃が放つ事が出来たのだが、只でさえ強力な対消滅攻撃はコメット姉妹の『歌』によって更に強化されており、結果として星すら消滅させるほどの対消滅攻撃が放たれ、其れを喰らったキメラXは細胞の一欠けらも残す事なく完全に消滅したのだった。
「俺の、俺達の勝ちだ!!」
「問答無用の大勝利ね!」
其れにより、地球人類と絶対天敵との戦いには終止符が打たれ、結果は地球人類の勝利となり、最終決戦に参加していた夏月組と秋五組、亡国機業組と束は『勝利のポーズ』を決めて、束が世界中に此の映像を配信する為に配置したドローンで撮影を行って勝利の記録として保存された。
こうして地球規模での大決戦は集結し、夏月達もIS学園に戻って行ったのだが、其の戦闘区域には束が中継の為に放ったのとは異なる、ステルス機能を有したドローンが此の戦闘の一部始終を撮影していた事には、束ですら気付いていないのだった――
To Be Continued 
|