夏月達と新織斑達の戦いは、楯無とダリルの氷と炎の対消滅攻撃を封じようとして楯無とダリルを分断した新織斑達だったのだが、楯無がロランに、ロランが楯無に外見を変えるトリックプレイに見事に引っ掛かり、最強の対消滅攻撃によって少なくない数の量産型が葬られる結果となった。
「く……此れは一体どんなトリックが……!」
「そんな事も分からないとは、呆れてモノが言えないわ。
だけど、私は優しいから説明してあげる……私の蒼龍にはナノマシン精製能力があるのだけれど、それで作られたナノマシンを私とロランちゃんが纏って、夫々の容姿を光学迷彩の応用でナノマシンの表面に再現したのよ♪」
その答えは楯無の専用機である龍騎・蒼龍のナノマシン精製能力にあった。
楯無は自身とロランの周囲にナノマシンを展開して自身にロランの姿を、ロランに自分の姿を投影する事で新織斑達に誤認させていたのだ。
「く……小癪な!!」
「其の小癪な手段を見切る事が出来なかったのだから、貴方達は其の程度なのよ……悔しかったら私に一太刀入れてみなさいな。
まぁ、絶対に無理でしょうけどね。」
更に楯無は新織斑達を持ち前の『おちょくりスキル』をフルに使って煽りまくる。
相手を煽って逆上させて冷静な思考判断を奪うのは戦場に於いては有効な手段であるのだが、楯無の煽り方は次代の楯無となるべく行われた英才教育の中で培われたモノなので、並の煽りとは一線を画しているのだ。
「舐めるなよ、更識楯無!!」
此処で逆上した新織斑の一人、千春が楯無に斬りかかるが、楯無は其れを難なく躱し、槍でのカウンターを叩き込んでシールドエネルギーを大きく減少させた。
更に――
「私の弟達と同じ顔をしていながら下衆な行いをするとは良い度胸だな貴様等……全員ぶち殺してやるから覚悟しておけ!!」
ブラコン世界選手権なるモノが存在すれば間違いなくぶっちぎりでグランプリを獲得するであろうマドカが、夏月と秋五と同じ顔をしていながらも下衆の極みである新織斑達に対してガチギレのマジギレを発動して、増援の量産型を次々と破壊して行ったのだった。
夏の月が進む世界 Episode106
『織斑と織斑と織斑~The Dead or Alive~』
夏月達が新織斑達の本拠地周辺で戦っていた頃、IS学園の戦闘も激化していた――とは言っても、激化してたのは主にオータムの攻撃だった。
オータムの専用機『ア・スラ』には四本のサブアームが搭載されており、オータムの腕と合わせて六本腕状態であり、オータムは六本腕での六刀流が得意なので今回も最初は六刀流で戦っていたのだが、途中からサブアーム二本の装備をビームマシンガンとグレネードランチャーに切り替え、四刀流+銃火器での遠距離攻撃に切り替えて来た。
これにより近距離での手数は僅かに減ったモノの連射性に優れたビームマシンガンのビームばら撒き射撃と、様々な弾丸を使い分けられるグレネードの射撃により攻撃はより苛烈になったのだ。
特に厄介なのはグレネードの特殊弾である『硫酸弾』だ――火炎弾や氷結弾ならばシールドエネルギーでダメージを軽減できるのだが、ISの装甲其の物を溶解させる硫酸弾はシールドエネルギーではガードし切れないのだ。
しかも此の硫酸弾に使われている硫酸は通常の硫酸ではなく、束が改良した『普通なら溶解しない純金が溶ける』レベルの物であり、ISを纏っていたとしても真面に喰らえば人体へのダメージは免れないのだ。
「オラァ、硫酸弾だけに気を取られてっとあぶねぇぞ!!」
「ぐぅ!!」
加えてオータムの両手と二本のサブアームが装備している近距離武器が全て異なるモノだと言うのも厄介な点だった。
オータムの右手にはリーチは短いが取り回しが良い片手剣、左手には変則的な動きが出来るトンファーブレード、サブアームの一本には圧倒的なリーチを持った大太刀、もう一本のサブアームには破壊力抜群の大剣とあらゆる間合いと状況に対応出来る武装構成となっているのである。
「ハッ!この程度で兵器とは笑わせやがるぜ!
テメェ等が兵器なら、夏月は核兵器ってか?そんじょそこらのガキンチョと比べりゃそこそこ出来るみてぇだがオレに言わせりゃ全然温いんだよ!」
「く……何故だ……此れだけの数を相手にして、何故呼吸一つ乱れない!お前達には疲労と言うモノが存在しないのか!」
新織斑達にとって更に脅威だったのが学園防衛部隊のスタミナだった。
数では劣る学園防衛部隊は、圧倒的な数の前には何れスタミナ切れを起こし、其処を突く事が出来ると思っていたのだが、蓋を開けてみれば学園防衛部隊は誰一人としてスタミナ切れを起こしていなかったのだ。
「殺るか殺られるかの戦場で、疲れただなんだのと言ってられるかボゲェ!
それにな、身体が疲れてても脳味噌が其れを疲れたと感じなけりゃどうって事はねぇんだ……でもってオレは根っからの戦闘狂だからスコール達よりも其れがスゲェのよ。
もっと言うとな、戦場で強い奴とギリギリの命の遣り取りをするのが大好きなんだが、それと同じくらいに、勝てると思ってやって来た相手を完膚なきまでにぶっ潰すのも大好きなんだよなオレは!!
だから今のオレはアドレナリン最大放出!脳汁ドバドバ出てるオレに勝てる奴は早々居ねぇぞ!」
「私とオータムとナツキは戦闘が始まる前から精神が肉体を凌駕しているわ……其の時点で、もう貴方達に勝ち目はないのよ。」
学園防衛部隊は全員が精神が肉体を凌駕した状態となっており、脳が疲労を認知していないのであれば幾らでも動く事が出来る状態だったのである。
「此の程度か……雑魚はお前等の方だったな。」
「そんな……馬鹿な……!!」
其の結果、オータムは敵機を次々と撃墜&秋五組が倒した相手にトドメを刺し、スコールは太陽の中心温度に迫る炎で敵機を蒸発させ、ナツキはどこぞの自由の翼の操縦者がドン引きするレベルのマルチロックオンを展開して敵機を殲滅していた。
「お前で最後だ……地獄で閻魔によろしくな!」
そして戦闘開始から凡そ三時間、学園に向かった量産型の新織斑達は最後の一人が六刀流に切り替えたオータムによって見事に六分割された上でスコールの炎で火葬されて見事に全滅した。
「増援は……ねぇか。
どうやら敵さんは残弾切れみたいだ……つまり学園防衛戦はオレ達の勝ちだ!秋五と其の嫁ズも良くやってくれたぜ!……お前等が倒してくれたおかげで随分とトドメ刺すのが楽になったからよ。」
「少しでも役に立てたのなら良かったけど、僕達は兎も角オータムさん達は夏月の方には行かないの?」
「……オレ達が出張る必要はねぇよ。
そりゃ勿論、オレとスコール、ナツキが出張れば鉄板なんだろうが、夏月達ならオレ等が居なくても大丈夫だ……なんてったって、全員が更識の地獄の訓練を経験してるんだからな。」
「……其れを聞いたら大丈夫な気がして来た……僕も会長さんに鍛えられた時には何度も綺麗なお花畑で知らないお爺さんとお話ししたから。」
「アイツ等なら世界を敵に回しても勝てるんじゃねぇかって思ってんだオレは……ったく、アイツが男じゃなかったら間違いなく惚れてるぜオレはよ。」
「夏月が男じゃなかったらって……普通は女性が男性に惚れる、男性が女性に惚れるんだと思うんだけど?」
「オレはガチ百合だ!!
そんなガチ百合のオレが惚れてたかもと思わせた夏月はマジでハンパねぇんだよ!!」
IS学園襲撃部隊が全滅したとなれば、残るは本隊のみなのだが、夏月達が向かった新織斑達の本拠地での戦いに関しては不安はなかった――夏月組の実力は学園最強レベルなだけでなく、日本のプロリーグのチーム戦リーグでも余裕で天下を取れるレベルなのだから当然と言えば当然だろう。
「夏月達は負けないわ、絶対にね。」
そんな中、夏月の義母であるスコールは指先に炎を宿すと其れを茂みに放つ。
高温の炎で茂みはあっと言う間に焼け野原になったのだが、其の焼け野原には丸焦げになった焼死体が三体……其れはISを纏っていない新織斑達であり、その焼死体の傍にはクロスボウハンドガンの残骸があった。
焼死した新織斑達は戦闘が終わってISが解除された時を狙って毒付きのボウガンでスコール達を狙っていたのだが、百戦錬磨のスコールには見事に看破されて毒矢を放つ前に焼き殺されてしまったのであった。
――――――
新織斑達の本拠地である国際IS委員会本部の近海上空では夏月組と新織斑達が真正面からぶつかり合って激しい戦いが繰り広げられていたが、新織斑達の後発増殖組はマッタクもって夏月達の相手ではなかった。
「私の弟と同じ顔でありながら其の本質は救いようのない下衆とはな……貴様ら如きが夏月や秋五と同じ顔をしている事自体が重罪だ!今生きている事を後悔し、生まれて来た事に絶望しろ!」
其の中でもマドカは正に無双状態。
マドカにとって夏月や秋五と同じ顔をした存在が下衆の極みとも言える行為をしている事が許し難く、ほぼ一撃で量産型織斑を撃滅していた――言わずもがな撃滅された織斑達は機体が解除されただけでなく、其の命も尽きた訳だが。
「クソ!なぜだ!なぜ倒せない!
兄さんならばいざ知らず、何故更識楯無達を倒せない!!」
「経験の差だ馬鹿野郎。
其れに加えて楯無達が何度俺と一夜を共にしたと思ってる……俺や秋五とやった相手はな、生物兵器の遺伝子を其の身に取り込む事で超絶強くなるんだぜ?
もっと言うなら、お前等は本当の意味での殺しの経験が殆ど無いだろ?……こちとら更識の仕事では外道をぶっ殺すのが当たり前になってんだ。
命を奪う覚悟、奪った命を背負う覚悟、テメェの命を差し出す覚悟、其れがねぇ奴に、俺達を倒す事は出来ねぇよ!!」
「ほざくな!!」
其れでも第二次織斑計画で誕生した一春、一秋、一冬、千春、千夏、千秋は夏月達を相手に何とか踏み止まってはいたが、量産型は次々と撃滅されて行った。
楯無とダリルのメドローアが強力なのは言うまでもないが、夏月組はファニールの歌で全ステータスに300%のバフが入り、簪のオペレーションで新織斑達の動向がリアルタイムで伝えられてるので即対応出来るので隙が無かった。
歌っているファニールは無防備なのだが、其処は鈴と乱が『龍の結界』でファニールを覆う事でカバーしていた――触れれば龍砲が発射される結界でファニールを覆い、防御結界としたのだ。
「ぐ……このぉ!!」
「そんな生温い斬撃が通用するかよ!
斬撃ってのはなぁ……こうやるんだ!!」
更に此処で夏月が楯無とのトリックプレイを発動。
夏月が啖呵を切ったと同時に楯無がナノマシンを散布し、それで無数の夏月の分身を作り出す――そして其の分身が一斉に新織斑達に突撃する。
「く……一体ドレが本物だ!?」
「分からない……こうなれば手当たり次第に攻撃して撃破するしかない!」
あまりの分身の多さに新織斑達は分身か本体かを見極めるのを早急に諦めて、分身だろうと本体だろうと関係なく攻撃する事にしたのだが、其れは夏月と楯無の思惑通りの事だった。
「一つ言い忘れてたが……」
「其の分身、触れたら自爆するから♪」
「え?」
「はい、ドカン♪」
此の分身は楯無の十八番である『分身爆弾』だったのである。
鈴と乱が作り出した二重の『龍の結界』で動きを制限された上で爆弾分身を大量に放たれては溜まったモノではない――回避しなくては危険な爆弾分身を限られた範囲の中で避けなければならないのだから。
「ダリル、合わせろ!」
「はいよ。バッチリ合わせるぜダーリン♪」
「……お前、そんなキャラだったっけ?」
「ゴメン、自分で言っといてなんだがオレも此れはないと思った。」
更に追撃として夏月の空烈断とダリルの炎を使った連携攻撃が炸裂する。
ダリルが無数の火球を作って放つと、夏月が空烈断で空間を滅茶苦茶に切り裂き、四方八方から降り注ぐ予測不能な火球の豪雨を作り上げる――先の爆弾分身と組み合わさった其れは凶悪な攻撃となるだろう。
「く……こうなれば仕方ない。コードD!」
決まれば正に必殺の連携を前に、一冬が『コードD』と叫ぶと、量産型の新織斑達が一春、一秋、一冬、千春、千夏、千秋を護る様に陣を組み、爆弾分身と火球を全て其の身で受けたのだ。
無論此れだけの攻撃を受けたらタダでは済まず、量産型の新織斑達は戦闘不能になってしまったのだが。
「テメェが生き残るために量産型を肉の盾として使うか……ったく、更識の仕事で外道は可成りの数を見て来たんだが、お前等みたいな外道は早々居なかったぜ。
だが、逆に安心した……此れだけの腐れ外道なら、ぶっ殺しても心は痛まねぇからな!」
「鈴ちゃん、乱ちゃん、ファニールちゃんの防護結界以外の結界を解除して。
量産型を生贄にするって言うのなら制御された空間は意味をなさないわ……量産型を全部出させて、制御されてない場所で全部叩きのめしてやるわ。」
「うわ~お、そう来たかぁ……だけど、アタシとしてもそっちの方が好みなのよね――真正面からブッ飛ばす!真っ向勝負でぶっ倒す!それがアタシの最も得意とする事だからね♪」
「お姉ちゃんの場合、猪突猛進を超えた龍突猛進だからね……龍の突撃は誰にも止められないよ。」
量産型新織斑を生贄にして生き延びると言う外道極まりない行いをした一春達に対して夏月と楯無の怒りが爆発し、楯無は鈴と乱に龍の結界の解除を命じ、鈴と乱も素直に其れに応じて結界を解除する。
同時に新たな量産型の新織斑達が現れ、数は先程よりも遥かに多いのだが其の程度では夏月組は小動もしなかった。
「く……数では此方の方が圧倒的に有利なのに、それなのに何故こうも押し込まれる!」
「個々の能力はソコソコ高いみたいだが、連携がまるでなってねぇからに決まってんだろアホンダラ。
並の相手なら個々の能力の高さにモノを言わせて物量で押し切る事も出来るんだろうが、今お前達が相手にしてるのは誰だと思ってんだ?こっちは全員が更識のエージェント兼亡国機業の実働部隊の隊員なんだぜ?
個々の能力が高いのは当然として連携もバッチリ出来てんだ……負ける筈がねぇだろ俺達が!」
「悪役こそが劇の華とも言われるのだけれど、君達の場合は所詮やられ役の雑魚モブに過ぎなかったようだ……実に美しくない!故に舞台から去りたまえよ!
舞台女優たる、このロランツィーネ・ローランディフィルネィと、絶対主人公たる一夜夏月の前に凡百な演者は必要ない……さっさとやられて舞台下手に消えるんだね。」
「言うだけ無駄よロランちゃん♪
夏月君に似てはいるけど、所詮中身は脳足りん(誤字に非ず)の自己陶酔型暴走勘違いの集団ですもの♪……其の程度じゃ夏月の足元どころか爪先にも及ばないのは火を見るよりも明らかよ♪
私達が勝利する確率は、不動遊星の勝率と同じよ。」
「確か遊戯王のキャラだったかな?其の勝率は?」
「100%♪」
「うむ、確かにタテナシの言う通りだ。」
更に戦いを優位に進めながらも煽って冷静さを欠かせる事も忘れない。
逆上した事で新織斑達のステータスは底上げされたのだが、幾らステータスが強化されたとは言っても其れが当たらなければ意味はない――夏月達が見事な回避術を見せる中、一春は静寐の背後を取る事に成功し、其処から渾身の唐竹割りが炸裂した――
――フッ
其の瞬間に静寐が消え……
「何処を見ているのですか?」
「なに!?」
逆にヴィシュヌが背後からカウンターのムエタイハイキックをブチかまし一春を100mほどブッ飛ばした。
「く……お前は、一体何処から!?」
「さぁ、何処からでしょう?私も良く分からないので、やった張本人である夏月に聞いてみてはいかがでしょう?」
「一夜夏月……貴様何をした!」
「俺のワンオフである『空烈断』を使って空間を斬り飛ばしてヴィシュヌと静寐の位置を入れ替えたんだ。」
「なに!?
いや、だが空間斬撃は兄さんが刀を振るわねば出来ない筈……其れに、此の入れ替わりが起きた時、兄さんは無数の量産型と戦ってた……其れなのにどうして!」
『其れは私が少しばかり干渉したからだ。』
『夏月は刀を振るっていないのに空烈断が発動した』此の事実は新織斑達にとっては予想外の事であったが、此処で現れたのは夏月の専用機である『龍騎・羅雪』のコア人格であるラセツだった。
「お前はまさか、織斑千冬……なのか?」
『元、だがな。今では此の機体のコア人格だ……なぜそうなったかは割愛する。此れから死ぬ者が聞いても意味はないからな。
さて、今のシフトチェンジのカラクリは先ほども言った通り、私がコア人格の世界から干渉して空烈断を使ったからだ――ワンオフは言わば機体の個性のようなモノだからな?
コア人格が覚醒している機体ならばコア人格が其れを使う事など造作もない。
まぁ、さすがに反則過ぎるから試合では使わんが、生憎と戦場に反則と言う言葉はないのでな。』
「なんだとぉ……!!」
ラセツはなんとコア人格の世界から現実世界に干渉して空烈断を発動したのだが、其れは同時に夏月組は何時でも空烈断を利用したシフトチェンジと瞬間移動が行えると言う事になり、そうなれば戦術のバリエーションは正に無限大となるだろう。
圧倒的な実力差がある上に戦術のバリエーションでも劣っているとなれば新織斑達が勝つ可能性は極めて低いと言わざるを得ないだろう――確実に勝つために大量に用意し、今この瞬間も生み出されている量産型を使った物量をも夏月組はモノともしていないのだから。
「なんだ、増援が止まった!?」
「馬鹿な……一体何が起きている!」
更に此処で無限に湧いていた量産型の増援がストップし、新織斑達の戦力は頭打ちの状態に。
「簪と束さん、やってくれたな。
さてと、そろそろ終わりにするぜ……!」
「辞世の句は読めたかしら?……行くわよ!」
ここが勝負どころと見た夏月組は、夫々が最大級の攻撃を新織斑達に叩き込み、其の結果として量産型は全滅し、第二次織斑計画で誕生した六人も戦闘不能寸前の状態になったのだった。
『ハイパーモード、起動。』
「「「「「「ウオォォォォォォォォォォ!!」」」」」」
だが此処で一春、一秋、一冬、千春、千夏、千秋の機体がハイパーモードを発動させ、六人は野獣のような咆哮を上げる――以前、ロラン達を完全KOしたハイパーモードだが、それを見ても夏月組は怯む事がなかった。
「あの時はヤバいと思ったのだけれど、こうして改めて見ると大した事はなさそうだ……だが、あの時の借りを返す絶好の機会ではあるね。」
「此れがハイパーモードか……確かに凄まじいパワーアップをしたみたいだが、逆に言えば此の状態でぶっ倒されたら其処で終わりって事だ。
この間ロラン達が負けたのは所詮は初見殺しに過ぎねぇって事を教えてやるよ……来いよ、機体の能力に頼り切った三流雑魚――でもって、此れが本当の終幕だぜ!」
ハイパーモードの起動は、逆に言えば背水の陣であり、ハイパーモードを突破されたら後がない事を意味している。
だからこそ夏月は終幕を宣言した――夏月組の全員に、二度同じ手は通用しないからだ……此の戦いが終結するには、まだ少し、本当にもう少しだけ時間がかかるのであった。
To Be Continued 
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