クラス代表決定戦当日、初戦は秋五vsセシリアの試合なのだが試合開始十分前になっても秋五の専用機は未だ学園に搬入されていなかった――開発中に何かしらのトラブルが発生したのか、はたまた搬入業者が陸路で渋滞に巻き込まれたのかは分からないが、試合開始十分前になっても専用機が届いてないと言うのは大問題としか言えないだろう。


「織斑君、来ましたよ貴方の専用機が!」

「待っていましたよ山田先生!」


だが、試合開始五分前になって秋五の専用機が学園に搬入され、直ぐに最適化が開始されたのだが、其れでも試合開始には間に合わないのは火を見るよりも明らかだ――最適化の後の一次移行には三十分ほどの時間を要するのだから。


「こりゃ試合には間に合わねぇよな……山田先生、試合順を変えて先ずは俺とロランの試合を先にやる事にしませんか?ロランには事情を話して、二十分の試合時間を略フルに使って試合をするようにしますから。」

「何を勝手な事を言っている一夜。試合順は既に決まっている。織斑には一次移行までは初期設定のままでオルコットと試合をさせる。」


其れを考えた夏月は試合順の変更を申し出たのだが、千冬は其れを認めないと言って来た……恐らくは第一試合を秋五のデビュー戦にする事で、秋五を注目の的にしようとしたのだろう。――そして、同時に秋五の有能さを示して、秋五を育てたのは自分だと言う愉悦に浸りたかったのかも知れない。


「其れ、本気で言ってんですか織斑先生?
 初期設定のままISを動かして、ましてISバトルと行うってのがドレだけ危険なモノか、曲りなりともISバトルで頂点を極めた織斑先生が分からない筈ないですよね?
 一次移行してない初期設定のままだと絶対防御を始めとした操縦者保護機能の大半が機能しないだけじゃなく、機体の反応速度も鈍くて操縦者の思ったように動かせないんですよ?
 そんな状態で試合をして織斑が大怪我を……其れも脊髄損傷みたいなその後の生活に大きく支障の出る怪我をしたら如何する心算なんです?織斑は、もう貴女の弟ってだけじゃなくて、現状では世界に二人しかいない男性IS操縦者なんです。其れが半身不随にでもなったら、其れはもう貴女だけの責任じゃなく、IS学園其の物に責任追及の手が及ぶのは分かるでしょう?
 其れだけのリスクを冒してもまだ初期設定の機体で織斑に試合をさせる心算ですか?……織斑の今後の人生を潰しても構わないってんなら俺は此れ以上何も言いませんが?」

「織斑先生、私も一夜君の意見に賛成です。織斑君の安全を考えれば彼の言う通りにすべきだと思います。」

「そうね。
 先ずは夏月君とロランちゃんが試合をして、その後で夏月君とオルコットちゃん、後は織斑君とオルコットちゃん、織斑君とロランちゃん、ロランちゃんとオルコットちゃん、最後に夏月君と織斑君が戦うようにすれば全員が公平に二連戦を経験する事にもなるので、其れが良いのではないでしょうか?」


だがその千冬の意見も、夏月、山田先生、楯無が正論三連コンボで反撃し、千冬を黙らせる。
真っ当な正論だっただけでなく、夏月に『弟の人生を潰す覚悟はあるのか?』と言われたのが効いたようだ。……其れ以前に、秋五が夏月の言ったような大怪我をしたら自分の責任だけでは済まないと言う事に気付いて居ないと言うのは致命的だが、或は『秋五ならば初期設定でも十分戦える』と、根拠のない自信があったのかも知れない。
何れにしても真正面から正論を叩き付けられては千冬としてももう何も言えないので、秋五の機体が一次移行するまで待つ事に。


「それじゃあ、私は放送室に行って試合順が変更になった事をアリーナに伝えておきますね?山田先生はロランちゃんとオルコットちゃんに伝えて頂けますか?」

「分かりました更識さん。」


こうして一年一組のクラス代表決定戦は、急遽試合順が変更され、本来第二試合だった夏月対ロランの試合が第一試合として行われる事になったのだった。










夏の月が進む世界  Episode10
『開幕!クラス代表決定戦!~夏月の刃~』










試合が行われるアリーナは一年一組の生徒だけでなく他のクラスの生徒や上級生までもが観戦に訪れて超満員札止めの満員御礼状態となっていた。
世界に二人しか居ない男性IS操縦者が試合をすると言うのが話題になっただけでなく、オランダの国家代表も試合に参加すると言うのも話題になっていた――と言うのも、ロランは現在『史上最年少で国家代表になったIS操縦者』だからだろう。
楯無も十五歳になったその時に日本の国家代表になり当時の最年少記録を更新したのだが、ロランは『十四歳と三カ月』でオランダの国家代表に就任し、楯無の最年少記録を大幅に更新していたのである。
『天才』楯無の記録を更新したロランが試合をすると言うのであれば其れは注目されて然りだろう。


「スコール叔母さんが養子にしたガキの試合が最初になったか……叔母さんは可成り評価してたが、さて実際の所はどんなモンだろうな?
 お前は如何思うよグリフィン?」

「期待外れって事はないと思うよダリル。だって、私達が全く勝てないタテナシが直々に鍛えたって話だし……若しかしたら、私達よりも強かったりするかもよ?」

「ほう?ソイツはますます楽しみだぜ!」

「一夜夏月さん、織斑秋五さん……男性でありながらISを起動した稀有な存在――特に一夜さんは三年前にISを動かしてその間訓練もしていたとの事ですので、其の実力が如何程か見させて頂きます。」

「ファニール、先ずは夏月お兄ちゃんの試合からだって!ワクワクして来たね!」

「あ~~、確かにそうね……てか、あの二人の事をお兄ちゃんって呼ぶの辞めなさいよオニール?変な誤解を生みそうだし、最悪の場合はあの二人がロリコンの変態疑惑を持たれかねないわよ?」

「お兄ちゃんはお兄ちゃんなのに?」

「ダメだこりゃ。問題の根本を理解してねぇわ此の子。」

「カナダで大人気の双子のアイドルの片割れは夏月と秋五に兄を見ていた……此れだけでも週刊誌にリークしたら情報料で一儲け出来そうな気がするわマジで。」


観客席でも此れからの試合には期待が高まっており、今か今かと試合開始を待っている状態である。
そして、第一試合を始めるアナウンスがアリーナに響いたのだが、試合を行う夏月もロランも夫々のピットからカタパルトで出撃せずにアリーナの入り口からISスーツを纏った状態で現れた。
束製の機体を持っている夏月と更識姉妹、ロランと鈴と乱だが、ISスーツも束お手製の特別仕様となっており、水着のようなデザインの一般的なISスーツとは異なっており、トップスは袖なしのノースリーブ、ボトムズは足首までのロングスパッツで脛までのミドルブーツと肘下までのロングオープンフィンガーグローブと言うデザインになっているのだ。
男性用と女性用の違いは、男性用はタンクトップの様に襟口が大きく開いているのに対し、女性用はハイネックとなっている点だろう……此れは女性用もタンクトップタイプにすると胸元がオープン過ぎて流石にヤバいと束が判断したからだ。
微乳の鈴、貧乳の乱、並乳の簪ならばまぁ破壊力は精々カース・オブ・ドラゴン程度なのだが、バストサイズが87cmのDである楯無とロランの場合はオープン胸元の破壊力が青眼の白龍レベルになってしまい、襟口から見える谷間もヤバいと言う事でハイネックにしたと言う背景があったりするのである。


「マッタク、試合開始五分前に搬入されるとは、織斑君の専用機を開発していた企業は一体如何なっているんだろうね?学園への搬入が遅延するのであれば其の旨を学園に通達して来るのが当然の事だと思うのだけれど……」

「大方、男性用のISを作るって事で色々やり過ぎた結果搬入期限ギリギリになっちまったって所だろうな……逆に言えば、其処まで作り込まれた織斑の専用機は束さんが作ったのに匹敵する性能になってるのかも知れないぜ。匹敵するだけで越える事はないだろうけど。」

「成程、確かにその可能性は否定出来ないな。
 だが、彼の専用機の搬入が遅れたおかげで、私はIS学園でのデビュー戦を初戦で、そして他でもない君との試合で迎える事が出来たのだから織斑君の専用機を造っていた企業には感謝すべきかも知れないな?
 こうして君と戦える幸運に、私は神に感謝してもし切れないと同時に、乙女座の私は矢張り運命を感じずにはいられないよ夏月。」

「そうかい……なら、最高の試合をしようぜロラン?但し、二十分の試合時間のうち、最初の十分間はウォーミングアップになっちまうのが残念だけどな。」

「織斑君の機体が一次移行するまでの時間を稼がなければならないから其れは仕方ないさ……だが、最初の十分が経過した後は私も本気で行かせて貰う。だから君も本気を出してくれよ夏月?」

「言われなくてもその心算だぜ。……そんじゃ、始めるか!来い、黒雷!」

「あぁ、始めようか!出番だよ銀雷!」


ISスーツ姿でアリーナに現れた夏月とロランは少しばかり言葉を交わすと、互いに専用機を呼び出して其れを其の身に纏う――夏月もロランも、やろうと思えば無言で機体を展開出来るのだが敢えて専用機の名をコールして呼び出したのは、『コールして呼び出した方が盛り上がる』と考えたからだった。
ISバトルにはエンターテイメントの側面もあるので、観客を楽しませる為の演出と言うモノもISバトル競技者には求められると言う訳だ。

が、専用機を展開した夏月とロランと見て更識姉妹と乱以外の生徒は驚く事になった……何故ならば、夏月とロランの専用機はカラーリングと搭載武装に違いはあっても基本的なデザインは全く同じ、『機械仕掛けの龍人』と言うべきモノだったのだから驚くなと言うのが無理だろう。


「(世界初の男性IS操縦者の専用機と、オランダの国家代表、そして日本の国家代表である更識姉の機体が同タイプ……如何考えても偶然ではないが、まさとは思うが束が一枚噛んでいるのか?
  一夜は更識家で暮らしていたと束は言っていたし……此れは、全試合終了後に一夜とローランディフィルネィ、そして更識姉の機体を没収して調べる必要があるかも知れんな。)」


そして千冬は千冬でマッタク持って身勝手な事を考えていたが、一介の教師が生徒の専用機を没収する事は出来ない――と言うのも、専用機とは言うなればその国の技術の結晶の現時点での集大成である訳で、其れは出来るだけ他国には漏らしたくないモノなのだ。
故に、IS学園の規定でも余程の事がない限りは専用機持ちから専用機を没収する事は出来ないのだ……そんな基本的な事も頭からサッパリ抜けてしまっている千冬はIS学園の教師としては致命的な欠陥を抱えていると言っても過言ではないだろう。

それはさておき、夫々専用機を纏った夏月とロランは、先ずは互いに睨み合いになる『気組み』の状態となったのだが、先に仕掛けたのは夏月からだった。
黒雷のメイン武装である日本刀型の近接戦闘ブレード『龍牙』を抜刀すると同時にイグニッションブーストでロランに肉薄して超速の逆袈裟切りを放ったが、其の攻撃をロランは銀雷のメイン武装であるビームハルバート『轟龍』の柄で受け反撃の斬り下ろしを放つ!
当たれば一撃必殺の斬り下ろしだが、ハルバートの攻撃は予備動作が大きいので夏月は其れを難なく躱して今度は最速の居合いで切り込む!――其の攻撃もギリギリではあるがロランはガードしたのだが。


「居合いは侍の最速の剣だと言う事は知っていたけれど、君の居合いは恐らく歴史の英霊の誰よりも速いんじゃないかな?『居合いが来る』と予想して防御しなければならないと言うのは、可成りの運ゲーを迫られていると言っても過言ではないと思うよ。」

「その予想を見事に当てちまうお前も大概だと思うけどなロラン?」

「まさか、君が本気で放った居合いには対処出来る自信は無いよ。
 此れまでの攻撃は、事前に何処に攻撃が来るかが分かる『テレフォンパンチ』とも言うべきモノだったから対処出来たに過ぎないさ……だが、今暫くは互いの攻撃はテレフォンパンチ状態になってしまうのだろうね。」

「仕方ないだろ、ウォーミングアップなんだからよ。」


一般生徒からしたらハイレベルな試合に見えるだろうが、試合開始から十分間はウォーミングアップなので夏月もロランも、まだ本来の実力の半分程度しか出していないのが現実だ。
二人の機体には複数の武器が搭載されているにも拘らず夏月は龍牙、ロランは轟龍のみを使っている事からもマダマダ実力を隠している事は相応の実力を持っている者には丸分かりだろう。
其れでも手数で勝る夏月と、一撃の重さで勝るロランの試合は中々に見応えのあるモノとなっており、一般生徒からは拍手や歓声が上っている――夏月の乱撃術をロランが轟龍をバトンの様に回して弾き、ロランの轟龍による叩き潰すかのような斧部分での攻撃を夏月は龍牙で受け流すと言う見事な攻防なのだ。
そしてそんな攻防を続けている内に、遂に十分が経過しウォーミングアップの時間は終了を迎えた。


「良い感じに体が温まって来たね夏月――試合開始から十分が経った。さぁ、本番の開幕と行こうじゃないか!」

「やっとか……リミッターを解除するぜ!お前は如何だ?」

「勿論、私もリミッター解除さ!」


そうして試合時間が十分を過ぎた瞬間に夏月もロランも動きが変わった――此れまでは互いに決定打を欠く試合だったのだが、其れは此処まではウォーミングアップに過ぎなかったからであり、此処からが本番なのである。

夏月がイグニッションブーストからの居合いを放てば、ロランは其れを見事に捌いたが、捌いた直後に鞘での逆手居合いが放たれて、其れは防御出来ないと判断したロランは自ら飛ぶ事で被ダメージを減少し、シールドエネルギーの消費も最小限に止める。
夏月は自ら飛んで距離を開けたロランを追って接近しようとするが、ロランは腰部に搭載されているビームライフル『火龍』を手にすると其れを夏月に向けて放ち、夏月の接近を許さない。


「ちぃ、掠ったか!
 近接戦闘だけじゃなくて射撃の腕前も可成りなモノってか?射撃の精度なら簪より上じゃねぇか……まぁ、簪の場合は射撃の正確さより砲撃の破壊力とミサイルの弾幕で相手を追い詰めるスタイルにロマンを感じてるみたいだけど。」

「ふふ、射撃も自信があるよ?
 スナイパーの役を演じる為に射撃場に通って本物のライフルで銃を撃つ感覚を養ったし、ISの訓練でも銃は近接戦闘と同じ位に鍛えて来たからね――特化した能力はないが、全てのステータスに隙が無いのが私なんだよ夏月。」

「成程そいつは厄介だ……でもまぁ分からなくはないぜ?
 役者だってバリバリ正統派からトンデモねぇ極悪人、お金持ちの美人令嬢、腹黒悪女、ありとあらゆる役を熟せる演技の幅があった方が演出家や監督も『コイツにだったらどんな役でも任せられる』って思うからな。
 そう言う意味では、俺のステータスはバランスが良いとは言えないだろうな……射撃も出来なくはねぇんだが、こちとら精密射撃なんぞ絶対無理だ!こっちの射撃は精密さ度外視の超連射の弾幕だオラァ!!」


そんなロランに、夏月も腰部に左右一つずつ搭載されているビームアサルトライフル『龍哭』を手にするとマニュアルモードで超絶連射を行うと同時に、右肩に搭載されている電磁レールガン『龍鳴』も連射してロランの射撃に対抗する。
龍哭はビームアサルトライフルと称してはいるが、そのサイズはハンドガンサイズにまでコンパクトになっており、近接戦闘がメインとなる夏月にとって取り回しの良さを重視されているのだが、何故か夏月は龍哭をどれだけマニュアルモードで高速連射出来るかと言う事を考えるようになり、マニュアルモードでの高速連射を鍛えた結果、気合の連射はセミオートモードでの秒間連射性能を上回るモノとなっていたりする。
参考までに、龍哭のセミオートモードでは秒間十二発のビームが放てるのだが、夏月はマニュアルモードで秒間二十発のビームを放てるようになっている。
序に、夏月が此処まで来るのに龍哭は其の異常な連射速度に何度もトリガーが動作不良を起こし、その度に束が『今回は可成り気合入れて焼き直したのに其れでも壊れるとか勘弁してよかっ君』と半ば泣きながら夏月の連射速度に耐えられるようにトリガー周りを改修、強化する羽目になっていたのだが。

圧倒的な弾幕を張って来た夏月に対し、ロランはイグニッションブーストで弾幕から離脱すると拡張領域からビームトマホーク『断龍』を呼び出してブーメランの様に夏月に投げ付け、夏月も拡張領域からビームダガー『龍爪』を呼び出して投擲し、断龍と相殺させる……と同時に夏月とロランはイグニッションブーストで接近し、龍牙と轟龍がかち合い火花を散らす!


「長物との戦いは、楯無さんの槍で慣れてる心算だったんだが……槍にはない『叩き潰す』って攻撃が加わっただけで此処まで勝手が違うとはな?当たれば間違い無く一撃必殺の斧部分での叩き潰し斬る攻撃ってのは厄介だぜ……!」

「其の攻撃を的確に受け流しておいて良く言うよ。
 『剣で槍に挑むには三倍の実力が必要』と言われるが、其れが本当だとすれば君の近接戦闘の実力は最低でも私の三倍はあると言う事になるのだからね……ハルバートを相手にしていると言う事を考えれれば三倍では済まないかも知れないな?」


ハルバートも槍同様に、『斬る』、『打つ』、『突く』の攻撃が出来る武器だが、槍には出来ない『叩き潰す』攻撃が出来る分、極めれば槍以上に強力な武器であり、ロランは其れを見事に使い熟しているのだが、夏月はハルバートに対して刀で互角以上に渡り合っており、近接戦闘に於いては夏月の方がロランよりも実力が上である事は間違いないと言えるだろう。
本気を出した夏月とロランの戦いは一瞬たりとも目を離せない、ともすれば瞬きすら出来ない位の激しい攻防になっており、一般生徒も試合開始からの十分間は何方も本気ではなかった事を理解し、本気の二人がドレだけの実力だったのかに驚いていたのだが、夏月とロランの本気を見て誰よりも驚いていたのはピットのモニターでこの試合を見ていたセシリアだった。
ウォーミングアップの段階では『オランダの国家代表も、男性操縦者もそこそこ出来るようですが大した事ありませんわね』と高を括って居たのだが、本気を出した夏月とロランの攻防を見てからはその考えは吹っ飛んだ。


「先程までの温い攻防は準備運動だったと言うのですか……そして此処からが本気だと……!
 ローランディフィルネィさんの本気は流石はオランダの国家代表と言ったところですが、其れと互角に渡り合っている一夜さんの実力も国家代表に匹敵するレベルだと、そう言う事ですの?
 そ、そんな事は認められませんわ!ローランディフィルネィさんは兎も角、下賤な男が国家代表と同レベルであるだなんて……そんな事があって良い筈がありません事よ!次の試合で、私が男性IS操縦者の事を完全否定して差し上げますわ!」


其れでもまだ夏月に勝つ心算でいるのだから、其処だけを見ると『相手の実力を見極める事が出来ない二流』なのだが、セシリアの表情には其れとは異なる感情が浮かんでいる様だった――まるで、『自分は男よりも有能である事を示さねばならない』と言う、一種の狂気にも似たモノが顔に現れていたのだ。


「男など、所詮は全て女性に媚び諂って生きる弱い存在でしかないのですわ……お母様にイエスマンだったお父様の様に!そんな男がISを動かした等、烏滸がましい事この上ありませんわ。」


セシリアが女尊男卑の思考を持つに至ったには家庭の事情があるみたいだが、だからと言って全ての男性を一括りにして下に見ると言うのは間違いであるとしか言いようがないないだろう。
特に夏月は女尊男卑思考を持っていて、理不尽な理由で男性を貶めようとした女性に対しては容赦なく鉄拳を見舞う、現代社会では絶滅危惧種となっている『相手が女だろうと、下衆は容赦なくブッ飛ばす』漢なのだから……尤も、下衆相手には毎度やり過ぎて更識が裏から手を回す羽目になっていたのだが。
其れは其れとして、アリーナでの激闘は続き、夏月とロランは互いに決定打を与えられないままで気付けば試合時間は残り一分となっていた。


「残り一分か……ロラン、最後はお互い最高の技をぶつけ合わないか?ソイツをぶつけ合って立ってた方がこの試合の勝者ってのは如何だ?」

「いいね、その提案には乗らせて貰うよ夏月……私も君もシールドエネルギーの消費は同じ位だからね……此処は互いに最高の技をぶつけ合おうとしようじゃないか!クライマックスに相応しい一撃をもってしてね!」


此処で夏月が『互いの最高の技をぶつけ合わないか?』とロランに提案し、ロランも其れを了承して、互いに最高の一撃を放つ為の構えを取ったのだが、ピットで試合を観戦していた秋五と、観客席で観戦してた箒は夏月の構えに思わず息を吞んだ。
夏月の構えは居合いの構えだったのだが、其れは一般的な居合いの構えとは異なり、上半身を大きく捻った構えであり、其れは劉韻から剣術を学んでいた一夏が己の最速の剣に更に威力を上乗せするには如何すればいいかを試行錯誤した末に辿り着いた居合いの構えだったからだ。
上半身を大きく捻る事で最速の居合いに遠心力を上乗せする事で威力を高められると一夏は考え、そして其れは夏月になった今でも変わっておらず、夏月は最高の一撃を放つ為の構えだったのだが、秋五と箒にとっては『一夏独特の構えを何故知っている?』と考える事になったのだった――夏月の独特の構えを見ても全く何も感じない千冬は、一夏の事を碌に見ていなかった事が証明されたとも言えるのだが。

そして試合は、残り時間は三十秒を切ったところでロランがイグニッションブーストを発動して夏月に渾身の一撃を振り下ろすが、夏月は其れが自身に突き刺さるよりも速く踏み込んで遠心力も加わった最強の居合いをロランにブチかます!
その居合は見事にロランの胴を捕らえたのだが、夏月は更に追い打ちに鞘での逆手居合いを叩き込んでロランの機体のシールドエネルギーを削る。
この攻防が終わると同時に試合終了のブザーが鳴ったのだが、シールドエネルギーは夏月が残量89%、ロランが残量65%で夏月の判定勝ちと言う結果に――ラストの二連居合いが、ロランの機体のシールドエネルギーを大きく削った結果になった訳である。……ロランの機体のワンオフアビリティを使用すればロランが判定勝ちだったのだが、其れをしなかったのはロランが己の負けを認めていて、シールドエネルギーの回復で勝っても意味はないと判断したからだろう。――ロランは真のISバトル競技者なのである。


「判定とは言え負けてしまったか……だが、悔しさはないよ。君程の実力者と互いに本気を出して戦った結果だからね……充実感こそあれど悔しさはまるでない。
 『悔しいと感じるのは、己の全力を出す事が出来なかったからだ』と言う言葉を聞いた事があるけれど、其れは真理だね――己の全力を出し切る事が出来れば、勝っても負けても充実感を得るモノが出来ると、私は身をもって体験しているのだから。」

「全力を出し切れば悔しさはねぇよ……でも、いい試合だったぜロラン?機会があればまたやろうぜ?」

「其れは私の方からお願いするよ夏月……こう見えても私は負けず嫌いだから、負けっ放しと言うのは好きじゃないからね――今度は私が勝たせて貰うさ。」

「そう来なくっちゃな!」


試合が終わった後は、夏月とロランは互いの健闘を称えて握手を交わし、客席からは大歓声と拍手が巻き起こる……其れほどまでに夏月とロランの試合はハイレベルなモノであったのだ。








―――――――








ピットに戻った夏月は、すぐさまシールドエネルギーの回復を行ったのだが、消費したのは一割程度だったので回復はあっと言う間に終わり、二試合目も直ぐに可能だったのだが、未だに秋五の白式の一次移行は終わっていなかった。
一次移行には約三十分必要なので、夏月とロランがフルタイムを戦ってもまだ時間は足りず、白式が一次移行が完了するには後十分ほど時間が掛かると見て良いだろう。


「山田先生、楯無さん、オルコットとの試合は織斑の機体の一次移行が終わるまで適当に遊んどきますんで、一次移行が完了したらプライベートチャンネルに連絡入れて貰えますか?
 一次移行が終わったら本気出して、オルコットにちょ~~~っと怖い思いして貰いますんで。」

「了解よ夏月君♪」

「一夜君、適当に遊ぶのはダメです。e-スポーツ部の生徒であるなら遊びも真剣に、ですよ?」

「分かりました。真剣に遊んで織斑の機体が一次移行するまで接待プレイしてきます。」


次のセシリア戦に向けて夏月は余裕綽々と言った感じだが其れも当然だろう。
此の日に向けて、ロランと部屋では何度もセシリアの試合の映像を見て徹底的に戦い方その他諸々を分析してセシリアの事を丸裸状態にしていただけでなく、対セシリアのシミュレートを何度も行って勝ち筋を付けていたのだ。
加えてクラス代表決定戦が決まってから今日までの一週間、セシリアがISを使ったトレーニングをしている姿は誰も見ていなかった――射撃場で射撃のトレーニングをする姿は何度か見掛けられたのだが、ISのトレーニングをしていないのであれば精々射撃の精度が少しばかり上っている程度のレベルアップでしかない為、夏月にとっては警戒に値する相手ではないのだ。


「一夜君。」

「ん?なんだ織斑?」


セシリア戦に向けて出撃準備をしていた夏月に声を掛けて来たのは、白式の一次移行完了を待っている秋五だった。


「さっきの試合の最後の居合い、アレは何処で覚えたのかな?」

「あぁ、アレか?覚えたって言うよりも自分で考えたって奴だなアレは。
 俺の居合いはスピードは充分だったんだが些か威力が足りなくてな、如何したモノかと思ってた時に『身体捻って遠心力加えれば良いんじゃね?』と閃いて、実際にやってみたら威力が跳ね上がったって訳だ。
 だが、アレでもまだ完成度は八割……更なる破壊力を生み出すには、天翔龍閃みたいに左足でのもう一歩の踏み込みが必要なんだろうな。」


聞いて来たのは先程の試合の最後で使った居合いに付いてだった。
死んでしまった双子の兄が編み出した居合いの構えと同じ構えを使ったと言うのは矢張り気になる事なのだろう……秋五は一夏への嫌がらせを止める事が出来なかったが一夏の事はちゃんと見ていたのだろう。


「んで、其れが如何かしたか?」

「いや、僕の双子の兄も居合いが得意で同じ構えを編み出していたからさ……ちょっと気になって。」

「双子の兄?って事は織斑先生の弟って事だよな?……あぁ、三年前のモンド・グロッソの時に誘拐されて殺されちまった織斑一夏か……姉の応援に行った先で誘拐された挙げ句に殺されちまうとは不幸だったよなぁ。
 でもそうか、お前の双子の兄貴も居合いが得意で俺と同じ構えを編み出してたのか……テメェの居合いの威力不足って問題にぶち当たった剣士ってのは案外似通った結論に至るのかも知れないな。」

「そう、なのかも知れないね。」


『織斑一夏』の名を出しながらも、『一夏と同じ構え』に至った理由を説明してやると、秋五は一応は納得した様ではあった。


「そんじゃ行くとすっか!織斑、俺とオルコットの戦いをよく見とけよ?次にオルコットと戦うのはお前なんだからよ。」

「え?あぁ、うん。勿論だよ。」

「なら良い。一丁やってやるぜ!一夜夏月、黒雷、行きます!」


話をしながら準備を完了した夏月は、今度は機体を展開してカタパルトに入ってアリーナへと飛翔して行った――その際に、楯無に『合図したらタイム計測頼むぜ?』と言っていたのだが、果たして夏月が何をするのか、其れは試合で明らかになるだろう。








――――――








「あら、逃げずに来ましたのね?その度胸は褒めて差し上げますわ。」

「度胸もへったくれもねぇだろうが。テメェより弱い相手に対して逃げる理由が何処にもねぇだろ……お前の方こそ、俺とロランの試合を見て良く棄権しなかったな?
 俺は少し心配しちまったぜ?ビビッて尻尾巻いて逃げ出しちまうんじゃねぇかと思ってよ。」


アリーナに出ると、早速セシリアが挑発して来たが、夏月は其の挑発に更に倍以上の挑発を返してセシリアを煽る。
更識の仕事では、相手の冷静な思考を奪う為の挑発や煽りも必要になるので、夏月も其れをガッツリと身に付けているのだ……しかもその煽りを鍛えたのは、従者の虚をして『おちょくりマスター』と言われる楯無なのだから、夏月を下手に挑発しても倍以上の煽りがカウンターで飛んで来るので下手な挑発は逆効果なのだ。


「馬鹿にしてますの?」

「馬鹿にしてるだなんてトンデモナイ。舐め腐って見下してるだけだ。
 序に言っとくと、織斑の機体はまだ一次移行が済んでねぇから、一次移行が終わるまではお前みたいな三下相手に時間を稼がなけりゃならないからしんどい事この上ないってモンだぜ。
 自分よりも強い奴相手に時間稼ぎをするよりも、自分よりも弱い奴相手に時間稼ぎする方が難しいぜ……力加減を少し間違っちまったら倒しちまう訳だからな。」

「こ、この!!」


更に夏月はセシリアを煽って煽って煽り倒す。
そして煽られまくったセシリアは顔を真っ赤にして怒り心頭状態……この時点で既に冷静な思考は完全に奪われていると言っても過言ではないだろう。試合開始前からセシリアは夏月の策略に嵌っている訳だ。


『一夜夏月対セシリア・オルコット、試合開始!』


「此れで、お別れですわ!」

「ところがギッチョン、避けちゃうんだよなぁ此れが。」


試合開始と同時に、セシリアは手にしたライフル『スターライトMk.Ⅲ』を放って来たが、夏月は其れを楽々回避する。
確かにセシリアの射撃の精度は高めではあるが、其れでもロランと比べれば精度は低く、更にビームよりも遅い実弾だったので回避するのに難はなかった――そもそも、夏月には視線から何処を狙っているのかが丸分かりであり、回避するのに難はなかったのである。


「そんな、まぐれに決まってますわ!」

「そう思うなら当ててみろよ?サービスとして十秒間この場から動かないでいてやるからよ。」

「この……その余裕が命取りですわ!!此れで大人しく落ちなさい!!」

「は~い、残念でした、次頑張りな!」


初撃を回避された事に驚くセシリアを煽り、敢えて自らを的にするも、夏月は放たれた銃弾を全て龍牙で切り落として無効化する……本気を出せばビームですら斬る事が出来る夏月にとって、実弾を斬る事位は朝飯前だろう。
これに対し、セシリアはブルー・ティアーズの最大の特徴であるBT兵器を射出し、夏月に立体的な攻撃を行うが、夏月は其の攻撃も全て回避して見せた――確かに多方向からの攻撃と言うのは厄介だが、夏月は更識の仕事の中で『銃を持った複数の相手が多方向から銃撃して来た』なんてモノも体験しているので、BT兵器も大した脅威ではなく、攻撃を余裕で回避していく。
其れも只回避するだけではなく、側転にバック中、イグニッションブーストを使っての急降下&急上昇と言うアクロバットな『魅せ』回避をしているのだ。


『一夜君、織斑君の機体の一次移行が終わりました。』

「その言葉を待ってましたよ山田先生……遊びは終わりだオルコット、此処からの俺はか~な~り強いぜ?」


試合開始から五分が経過した所で山田先生からプライベートチャンネルで『秋五の機体の一次移行が完了した』との連絡を受けた夏月は一気に本気モードになって先ずはビームダガーをDIO様の如く四方八方に投げまくってBT兵器を全て破壊する。
そして其のままセシリアに接近するが――


「お生憎様!ブルーティアーズは六基ありましてよ!」

「知っとるわボケェ!」


其れに対してセシリアは初見殺しとも言えるミサイルビットの近距離射出を敢行!
だが夏月は其のミサイルビットをマトリックス宜しく上半身を仰け反らせて回避すると、ミサイルビットの一基に両足を当て、其処からサーフィンの様に波乗りならぬミサイルビット乗りを披露した後に、自分が乗っていたミサイルビットをもう一機のミサイルビットにぶつけて爆発させ、BT兵器は此れにて全基破壊された訳である。
こうなるとセシリアに残された武器はスター・ライトMk.Ⅲと近接戦闘用のコンバットナイフ『インターセプター』だけなのだが、セシリアは近接戦闘が苦手なので、実質的な武器はスター・ライトMk.Ⅲのみと言えるだろう。

BT兵器を全て失ったセシリアは夏月に向けてスター・ライトMk.Ⅲを放つが、教科書通りの射撃では夏月を捕らえる事は出来ない。


「遅いのだ!当たらんのだ!!お前を倒す野田ぁ!!!ってかぁ!!!」

「!!」


その射撃を余裕で回避した夏月はセシリアに接近すると先ずは強烈なシャイニング・ウィザードをブチかまして体勢を崩すと、両手にビームダガー『龍爪』を逆手に持つとビームエッジの出力を調整してアイスピックのような形状に変化させる。


「楯無さぁぁぁん!!」

『準備完了よ夏月君♪』

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄野っ田ぁ!!」


そしてセシリアの足やら腹やら、装甲に覆われていない部分をこれでもかと言う位に滅多刺しにする――装甲に覆われていない場所を攻撃された事で絶対防御が発動しブルー・ティアーズのシールドエネルギーは大きく削られる事に。


『十秒間で百十回……一秒辺り十回だから、お世辞にも良い記録とは言えないわね。』

「んだとぉ!?テメェが刺し難い身体してるのが悪いんじゃボケェ!!」


夏月が出撃時に『合図したらタイム計測を頼む』と言うのは、此の連続刺しが一秒あたりドレだけだったのかの計測だったみたいだが、その結果は夏月にとっては不満しかなかったらしく、理不尽極まりないセリフを吐いてセシリアをアリーナの壁まで蹴り飛ばしてまたもシールドエネルギーを大きく減らす。
だが、此の夏月の攻撃はセシリアには充分な恐怖を植え付けていた。
絶対防御のおかげでシールドエネルギーは減っても身体に影響はなく、また操縦者保護の観点から痛覚もカットされているのだが、其れでも感覚はあるので、痛みは無くとも滅多刺しにされる感覚をセシリアは味わってしまったのだ……痛みがないだけに気絶する事も出来ずに、滅多刺しにされる感覚だけを味わったと言うのは恐怖以外の何物でもなかっただろう。


「こんな野蛮な攻撃で……!」

「野蛮で結構!少なくとも野蛮な方が、高慢ちきな貴族様よりも何百倍もマシだと思うからな俺は!!」


せめて一矢報いようと放たれた攻撃も楽々回避して、夏月はセシリアの顔面に渾身のケンカキックを見舞うと、サマーソルトキックで蹴り上げ、空中でセシリアをキャッチすると其のままスクリューパイルドライバーをブチかましてターンエンド。
シールドエネルギーを削りまくる攻撃を連続で受けたブルー・ティアーズは、最後のスクリューパイルドライバーを喰らった事でシールドエネルギーがゼロになり、機体が強制解除されて其処には目を回して気絶しているセシリアの姿があった……此れはもう、何方が勝者であったかを確認するまでもないだろう。


「アンタじゃ役者不足だぜ。」


其れだけ言うと夏月はピットに戻り、セシリアは救護班に運ばれてアリーナから退場して行った――尤もセシリアは直ぐ目を覚まして、次の試合に向けての準備に取り掛かったのだが。


「一次移行が済んだみたいだな織斑?……今度はお前の初陣だ、精々頑張りな。」

「頑張るだけじゃないよ、僕は勝って来る……白式の一次移行が完了するまでの時間稼ぎだけじゃなく、オルコットさんの戦い方を見せてくれるって言うお膳立てまでして貰ったんだから、此れで負けたら情けない事この上ないよ。
 何よりも、僕を鍛えてくれた会長さんと、訓練に付き合ってくれた箒に合わせる顔がないからね……勝って見せるさ、絶対に!」

「そうかい。なら俺も見させて貰うぜ、天才って奴がこの一週間でドレだけモノになったのかをな。」


出撃前に夏月と秋五は短い遣り取りを交わしたのが、秋五はセシリアには勝つ気満々だった――夏月が試合でセシリアの弱点を丸分かりにしてくれたので、其処までお膳立てをされたら勝つ以外の選択肢はなかったのだろう。


「織斑秋五!白式、行きます!!」


そうして秋五は白式を纏って初陣の舞台に飛んで行った。
クラス代表決定戦は、二試合が終わったところで各自の戦績は……


一夜夏月:二勝0敗
ロランツィーネ・ローランディフィルネィ:0勝一敗
織斑秋五:0勝0敗
セシリア・オルコット:0勝一敗


と言うモノなのだが、ロランの一敗とセシリアの一敗には大きな格差があるのは否めないだろう……ロランがギリギリの攻防の末の一敗であるのに対し、セシリアは序盤に接待プレイをされた末の一敗なのだから。
其れは兎も角、第三試合も客席は大いに盛り上がってた――二人目の男性IS操縦者にして、千冬の弟である秋五の初陣であるのだから盛り上がるのも当然と言えるだろう。
そして、アリーナに入った瞬間に秋五は闘気を爆発させて本気モードに入り、セシリアを完膚なきまでに叩き潰す心算なのだろう――今此処に、『天才』が戦いの場に降臨したのだった。









 To Be Continued