ロゴスの盟主であるロード・ジブリールはプラントとオーブの連合軍によって討たれ、プラントとオーブの間に改めて同盟条約が締結され、連合との間にも『和平条約』が締結され、此度の戦争は一先ずの終わりを迎えたのだが、ジブリールを討ってからのスピード条約締結にはラクスとデュランダルの政治的な力があったのは否めない事だった――ラクスとデュランダルがターミナルに所属する連合の兵士に条約の件を話し、其れを連合内に広め、更にロゴスとの戦いの結果を提示する事で『プラントと敵対するのは得策ではない』と思わせたのだ。

だが、世界は未だ真の意味で平和にはなっていない……盟主であるジブリールが討たれ、ロゴスの主要メンバーも捕らえられたとは言え、幹部以下のメンバーの中には辛くも生き延びた者が存在しており、同志を集めてロゴスとブルーコスモスの再建を画策しているのだから。


「さてと、レクイエムならばオーブもプラントもどちらも狙う事が出来るが、初手で其れをやるのは面白くないな?
 そうだな……イチカとキラにとっては因縁の地とも言えるアラスカを先ずは壊滅させるか……その上で電波ジャックを行って私達の存在を世界に知らしめてからイチカとキラの身柄の引き渡しを要求する、と言うのは如何かなレイ?無論、奴等の身柄を差し出したとてレクイエムは撃つがな。」

「悪くない。
 世界と天秤にかけられて生贄にされた者の絶望と、生贄を差し出したにもかかわらず討たれる絶望の両方を与える事が出来るからな。」


そして其れ以上に最悪だったのが、ジブリールが残した負の遺産である『レクイエムの二号機』がマドカ率いるアベンジャーズの手に渡ってしまった事だろう。
レクイエム二号機はコロニーを利用した中継地点ともどもミラージュコロイドステルス迷彩で秘匿されており、プラントもオーブも其の存在には気付いていないのも現状では良くない事と言える。


「だが、其れをやる前にまずはラクス・クラインの抹殺だ。
 奴を殺せばプラントとオーブの連合軍にとっては精神的に大きな支柱を失う事になるからな……ギルバート・デュランダルとカガリ・ユラ・アスハの二人にはないカリスマ性がラクス・クラインにはある。」

「最大の支柱を失えば士気にも影響し、特にキラ・ヤマトには大打撃となる……なる筈なのだが、ラクス・クラインを喪ったら喪ったで奴は怒りに身を任せて俺達の事を攻撃してきそうな気がするんだが、俺の気のせいだろうか?」

「怒りに呑まれたのならば楽な相手だが、怒りを飼い慣らしているとなると厄介だ……だが、怒りで失意を完全に覆い隠す事は出来ん。
 最高なのはキラ・ヤマトの目の前でラクス・クラインを惨たらしく殺してやる事だ……そして其れを行うための駒は既に手に入れてあるからな。」


更にラクスの影武者であるミーアもマドカ達の手に落ち、ラクスを誘き出すための餌にされようとしていた。
マドカがミーアに殺さない為の条件として付き付けたのが、『ラクスへ自分の救出を願う手紙を書く事』だった――そして其の手紙を何時も持っている赤いハロに持たせてラクスに届ける事もだ。
命が掛かっている以上、ミーアに此れを拒否すると言う選択肢はなくミーアは言われた通りにしたのだが……


「(これが今の私に出来る精一杯……気付いてラクス様、イチカ、カタナ、アスラン……!!)」


ミーアはせめてもの抵抗として、其の手紙にマドカ達に気付かれないように暗号を紛れ込ましていた。
其れは普通に見たら絶対に分からないのだが、ミーアが憧れているラクス、交流が深かったイチカとカタナ、洞察力に優れるアスランならばきっと気付いてくれる筈だとミーアは信じ、そして其の手紙はマドカ達にマドカ達に疑われる事も無く、ミーアの赤ハロに持たせてラクスに届ける事になったのだった。









機動戦士ガンダムSEED INFINITY PHASE94
『影武者を救出せよ~Die zwei Lacus~』









ロゴスとの戦いは、ロゴスの盟主であるロード・ジブリールをプラントとオーブの連合軍で討った事により一先ず閉幕となったのだが、デュランダルもカガリも此れで此度の戦争が終わるとは思っていなかった。
その最大の理由がマドカが率いるテロリスト集団『アベンジャーズ』だ。
此れまでも幾度となく戦場に現れては戦場を掻き乱して姿を消す――ロゴスを月に逃がす事になったのも、先のオーブでの戦闘でアベンジャーズが介入して来た事が原因の一旦とも言えるのだ。
アベンジャーズが介入してこなければ、ジブリールが乗っていたシャトルは簡単に落とす事が出来ていたのだから。

とは言え、現在のアベンジャーズの動向を知る術はないので、ザフト軍の兵士には特別休暇が与えられ、オーブの軍団にも一時の休暇が与えられていた。


「議長、イチカです。」

「同じくカタナです。」

「来たか……ではイチカ君、君らしく扉を開けて入室したまえ。壊してしまった場合は此方で修理費を持つから遠慮しなくていい。」

「俺らしく、ね……そんじゃ議長公認なんで――身長×体重×握力=破壊力!!ギャラクティカファントム!男の一発だ、オラァ!!!」



――ドッカーン!!



そんな中でプラントの議長室を訪れていたイチカとカタナだったが、議長室の扉はデュランダルの公認を得てイチカが殴り壊していた……渾身の拳が炸裂した瞬間に爆発が起きたのは気のせいだろう。


「ドアが粉々に砕けるだけでも凄まじいと思うのだが、よもや爆発するとは一体どんな手品を使ったのかね君は?」

「格ゲーの必殺技に突っ込みは不要ですよ議長。
 其れで如何したんです?俺とカタナを呼び出すなんて……もしかしてマドカ関連ですか?」

「うむ、流石に鋭いな?君達二人には知らせておいた方が良いと思ってね。」

「私達だけと言うのは余程の事ですわね……」

「此れまでにも彼女が率いる一団とは何度か戦闘を行っている訳だが、先のオーブ戦での記録映像を見て少し気になった事があるのだよ。
 マドカ君の機体はテスタメントな訳だが、そのテスタメントに君達の機体に搭載されているシェルユニットが搭載されていたのを確認してね……それが気になったのだよ。」

「まぁ、確かに何処から手に入れたのか気になりますよね……」

「いや、私が気にしているのは入手先ではなく、何故君達以外の人間がシェルユニットが搭載されたモビルスーツを操縦出来ているのか、と言う事だ。」

「「え?」」


呼び出されたイチカとカタナがデュランダルから聞かされたのは予想だにしていない事だった。


「俺達以外には操縦出来ないんですかあの機体って?」

「出来なくはないが……君達以外の人間が操縦した場合、パーメットスコア3を超えた時点でほぼ間違いなく絶命する――少なくとも私はタバネ博士からそう聞かされているよ。」

「な、何で私とイチカ以外の人は死ぬのでしょうか?」

「シェルユニット搭載型モビルスーツはパーメットスコアを上げる事でパイロットとモビルスーツの相互データ送受信の精度が上がり、その影響でより円滑かつ精密なモビルスーツの操縦が可能になるのだが、パーメットスコアを上げると機体側からパイロットに送られるデータ量も膨大なモノとなり、パーメットスコア3に達した時点で其れは凡そ通常の人間の脳で処理出来る量を超えてしまうのだよ。
 データストーム汚染と呼ばれるモノらしくてね……君達以外だとデータストームによって脳に多大なダメージを受け、良くて植物状態、最悪の場合は死に至るらしいのだ。
 君達は奇跡的にデータストームに対しての完全耐性を有しているから全く問題ないのだがね……そうでなければ、私とてあの機体を君達に送りはしない。」

「俺とカタナにはそんな耐性があったんですか……因みにデータストームに対する完全耐性を持ってる人間って何人に一人なんですかね?」

「地球人類とプラントの人類全てを合わせた上で一人いるかどうからしい……そんな人間が二人も存在しているのだから最早これは奇跡以外のナニモノでもあるまい。」

「確かに奇跡ですわねぇ……」


キャリバーンフリーダムとエアリアルジャスティスは実はイチカとカタナ以外の人間には『乗ったら死ぬモビルスーツ』であり、イチカとカタナが此の機体を操縦出来るのはデータストームに対する完全耐性を有していたからだった。
イチカは『オリムラ計画』で生み出された『最強のコーディネーター』なので、あらゆる毒性に対する耐性があるのは分かるが、カタナは通常のコーディネーターなのでデータストーム耐性を有していたのは正に奇跡と言えるだろう。


「確かに奇跡かもですけど、マドカもまた俺と同じくオリムラ計画で生み出された存在ですから、完全耐性ではなくとも普通の人間よりは高いデータストーム耐性を持ってるんじゃないですかね?
 だから機体を操縦出来てる……その可能性はありませんか?」

「私も其の可能性を考えなかった訳ではないが、だがしかし完全耐性がない限りは必ずデータストームの影響を受けて身体に何らかの問題が発生する筈なのでね……あまりにもリスクが高すぎるのではないかと思うのだよ。」

「アイツは、マドカはリスクなんてモノは考えてませんよ。
 マドカは俺を殺す事が出来ればそれで良い……俺を殺す事だけを考えてるから其れが出来れば明日は必要ないって考えてる――俺を殺したところでテメェが死んじまったら何の意味もないって事に気付いてないんですよアイツは。」

「未来を見ない人間の類か……なりふり構わずな相手は厄介だが……今はまだ様子を見るべきだろうね。
 そして、こちらの方が重要なのだが……ミーアが攫われた。犯人は恐らくは彼女達だろう……警護の事を考えて私の別荘に移って貰っていたのだが、よもや護衛に当たっていたシークレットサービスが全員殺害されるとは思っていなかったよ。」

「ミーアが……!!
 ……あ、でもタバネさんが特に何も言って来ないって事は少なくともミーアは生きてて、ミーアが攫われた事自体は其処まで問題じゃなくてタバネさんが介入しなくてもなんとか出来るって事……なのか?」

「普通ならその考えは危険なのだけれど、タバネさんの場合だと全面的に信じた方が安全なのよねぇ……」

「……確かに言われてみればイチカ君の言う通りかも知れないな……」


更にデュランダルは『ミーアがマドカ達に攫われた』と、表沙汰になればプラントが大混乱に陥りかねない事を言って来たのだが、その件に関してはタバネから一切何の連絡も無かった事からイチカは其れほど焦ってはいなかった。
タバネから何の連絡もないと言うのは急務を要する事ではなく、最終的には如何にかなる事であるのは前世からの記憶で分かっていたからだ。


「情報統制を行ったのでプラントの市民がミーアの誘拐を知る事は今の所ないが、これが表沙汰になったらプラントは大混乱に陥るからね……もしもミーアか彼女達からの接触があった場合は私に連絡を入れなくて良いから君達の判断で動いてくれたまえ……そして願わくば、ミーアを生きて連れ戻して欲しい。
 彼女をラクスに仕立て上げた張本人として、彼女をラクスと同じライブステージに上げてやらねばせめてもの申し訳も立たないからね。」

「ダブルラクスのライブとか会場は満員御礼待ったなしっすな。」


ミーアの事はイチカ達に一任しつつ、デュランダルは改めてイチカとカタナに休暇を言い渡し、イチカとカタナは久しぶりのデートに繰り出すのだった。








――――――








同じ頃、アークエンジェルでもクルーに休暇が言い渡され、キラはラクスとフレイと、アスランはメイリンと近くのプラントに出掛ける事となった――アスランはあまり乗り気ではなかったのだがキラ達に押し切られた形だった。


『それじゃあ行ってきますマリューさん。』

「行ってらっしゃい。気を付けて。」


キラはマリューに挨拶をすると、キラ達を乗せた小型艇は、プラント一の巨大ショッピングモールが存在しているスペースコロニー『プラントイオンモール』に向かうのだった。


「いやぁ、若いってのは良いねぇ?アンタは出掛けなくて良いのか?」

「艦長が船を離れる訳には行かないでしょ?」

「確かにな……其れじゃ、船の中をエスコートだ。……そうだ、お風呂入らない?」

「……やっぱり、別人なんじゃない?」

「え、そう?」


キラ達が出発した後、ネオがマリューの元に現れてこんな事を言って来た。
ムゥも言いそうな事ではあるが、ムゥと比べるとネオは若干性格が軽い感じを受けたのでマリューも思わず『別人なんじゃないか?』言ってしまったが、ファントムペインの隊長だった頃と比べると性格がムゥ寄りになっているのも確かであり、同時に其れはネオが身に着けていた仮面に何らかの精神操作的な装置が埋め込まれていた可能性も示唆していた――その仮面はもうないので真実は闇の中だが。

一方でキラ達はプラントイオンモールにてイチカ達と合流していた。アスランがイチカに連絡を入れ、此の場所で落ち合う事にしていたのだ。
其の場に集まったのはキラとカタナ、シンとルナマリアとステラ、キラとラクスとフレイ、アスランとメイリン……ザフトとアークエンジェルのエース級パイロットにトップクラスのオペレーター、ターミナルの暫定総裁が一堂に会している光景は中々に凄いモノがある。
シンとルナマリアはラクスとの邂逅に少し緊張していたが。


「キラ、此れエスカッシャンのデータ。
 ドラグーンは大気圏内だと使えないからマードックのおやっさんに此のデータ渡して改造して貰え……新型フリーダムのドラグーンが大気圏内で使えるようになったらマジ無敵だろうし。」

「うん、此のデータは有効に使わせて貰うよイチカ。」


合流した一行は、プラントのショッピングモールでウィンドウショッピングをしながらモール内の映画館で映画を見たり、ゲームセンターでエアホッケーやプリクラを撮ったりして束の間の休日を楽しむ事になった。
ガンコンを使ったシューティングゲーム『デッド・オア・アライブ2CEエディション』では、キラとアスランがともにノーミスのパーフェクトを達成し、格闘ゲームの『KOF2002UMCEエディション』ではイチカが対人戦で100連勝を達成していた事を明記しておく。

昼食はモール内のイートインで夫々好きな物を注文する事になったのだが……


「俺は……ピリ辛もつ煮丼を特盛。
 其れが飯で、おかずはカニクリームコロッケとナポリタンとサバの味噌煮と回鍋肉。それから味噌汁の代わりに味噌ラーメン。」

「私は……カツカレーを大盛り。
 其れがご飯で、おかずはメンチカツとロールキャベツと味の南蛮漬けと麻婆豆腐。飲み物は牛乳でパックで宜しく♪」

「……相変わらず凄いよなイチカさんとカタナさん……」

「アレで太らないってんだからある意味詐欺だわ……」


イチカとカタナのオーダーは若干バグっていた。
かく言うシンも『チャーシュー麺特盛+ライス大盛り+餃子』のセットなのでイチカ達並であるのだが。

そしてランチ後は再びウィンドウショッピングとなり、イチカは骨董屋で一振りの刀を購入していた――其れは通常の刀とは刃と峰が逆になった所謂『逆刃刀』なのだが、イチカは其れに惹かれ購入に至ったのだ。

骨董屋を後にした一行はブティックにやって来た。
此のメンツでブティックとなれば女性陣によるプチファッションショーが行われるのは当然の事であり、カタナ、ラクス、フレイ、メイリンは次々と店内の服を試着しており、イチカとシン、キラとアスランも思った事をストレートに口にしていた。

そして其れとは別に……


「えっと、似合ってるかな?ステラ、こんな服を着るのは初めてだから……」

「キラァァァ!なんだ此の可愛い生き物はぁ!!」

「此処で僕に振るの?」


カタナとラクスとフレイとメイリンとルナマリアが全力でコーディネートしたステラは中々にぶっ飛んだ美しさを披露してくれた――ホットパンツにニーソックスの鉄板の組み合わせに、上半身は黒のタンクトップに赤いジージャンの組み合わせと言うちょっと不良的なコーディネートは逆に天然ほわわんなステラにはジャストマッチしていたのだ。


『ハロ、ハロ!ナイスチュー、ミーチュー!』

『ハロ……?』



此れからもっとウィンドウショッピングをと思っていた一行の前に現れたのは真っ赤なハロ――突如現れた赤ハロにラクスのピンクハロは不思議そうな様子を見せていた。
其れはミーアが公の場に出る際に持って来たモノであり、『ラクスとハロはセット』のイメージが定着していたのでデュランダルが用意したモノでもあった。
そしてそんな赤ハロの口にはなにやら封筒が……


「ミーアのハロが手紙を持って来た……思ったよりも早かったな向こうからの動きが。」

「間違いなく書かされたモノでしょうね……」


イチカはその封筒を手に取って中の手紙を取り出すと、其処にはただ一言『助けて。このままだと殺される』とだけ記されていた……シンプルな文面であるモノの、攫われた人間が己の救出を求める手紙を外部に、其れもラクス達をピンポイントで狙って送るのは不可能であり、其れ等を考えると此の手紙が罠である事は容易に想像出来た。


「罠、ですよね……?」

「普通に考えればな。
 だが、如何やら巧い事やってくれたみたいだぜ……手紙自体には何の仕掛けもないが、一見何の変哲もない少し厚手の此の封筒、コイツを解体して内側の部分をペンで擦ってやると――ビンゴだ。」


封筒を解体して内側をペンで擦ると、『場所は無人になったコロニー『アイギス』の廃劇場。マドカ達は来ない。兵隊は狙撃手を含めて二十人』との文面が浮かび上がった。
ミーアは封筒が厚手である事を利用し、堅い下敷きを使った上で封筒の裏に一枚紙を置いてメッセージを書き、封筒の内側を鉛筆やペンで擦った際に現れる隠しメッセージを残していたのだ。


「あの、イチカさん、ミーアって誰なんですか?」

「議長が用意したラクスの影武者。
 前にザフトの基地で慰問ライブをやったのもミーアだ……ご本人公認の影武者だけどな――そんで、無論助けに行く訳だが、アンタは如何するラクス?」

「無論、私も行きますわ。」

「はぁ、矢張りな……普通なら止めるところだが、そう言っても聞かないだろう君は……アークエンジェルに連絡を入れる、救出に向かうのは其れからだ。」


救出に行くのは当然だが、其処にはラクスも同行する事になった。
マドカ達の目的はラクスの抹殺なので本来ならばラクスが同行するのは悪手なのだが、其れはあくまでもラクスが単身で向かった場合の話であり、此れだけの面子が揃っているのならば話は別だ。
加えてラクス以外の全員が万が一に備えて銃を携帯しているのでいざ戦闘となっても問題なしだ……イチカはモビルスーツの射撃は正確だが生身での射撃は狙った的の隣の的に当たるレベルでへっぽこなので投擲用のダガーナイフを持ってきているが。


「あのラクス様って影武者だったんですか!全然分からなかったです……見分けるポイントとかあるんですか?」

「簡単よルナマリアちゃん。髪飾りが星型でおっぱい大きい方がミーアよ♪」

「分かり易い説明、ありがとうございましたカタナさん!!」

「此れからミーアの救出に向かうってのに緊張感がないな……」

「緊張しすぎて本来のパフォーマンスが発揮出来ないよりは遥かに良いだろアスラン……其れよりもキラ、お前生身の人間に銃向けられるか?」

「大丈夫だよイチカ。
 僕が戦場で不殺戦法を使ってるのは恨んでもいない人を殺したくないからだから……僕の愛する人を殺そうと画策してる相手を不殺で済ますほど僕は出来た人間じゃないよ。」

「……初めて見たぞ『人を殺せる笑顔』ってモノを。」


キラが『主人公がしちゃいけない笑顔』を披露した後にアスランがアークエンジェルに連絡を入れ、一行は指定の場所に向かうのだった。








――――――








指定場所の現在無人のコロニーは廃墟と化していたが、現在でもプラント内壁の光学映像と酸素供給システムは健在であり、コロニー内は宇宙服なしで行動する事が可能となっていた。
そしてミーアが居る廃劇場も、少し直せば使えるレベルで残されていた。


「来てくれたんですねラクス様……」

「私は貴女を見捨てる事はいたしません……私がいない間のプラントを、デュランダル議長と共に守って下さった恩を、私はまだ1㎜も返していませんから。」


その廃劇場の中央で待っていたミーアにラクスは近付いて行った。
だが、其れはアベンジャーズにとって好機であり、廃劇場の陰に隠れていた狙撃手はラクスに狙いを定めトリガーを引こうとしたのだが――


「生憎と、お前達の存在ももうバレてんだよ……ミーアの命懸けの隠れメッセージでな!」


其の射線上にイチカが割って入り、ダガーナイフを同じ軌道で二本投擲した。
一本目のダガーナイフがライフルの弾を弾き、二本目のダガーナイフはライフルの銃口に突き刺さった事で次弾を発射しようとしていたライフルは暴発し、狙撃手は暴発の爆風で頭が半分吹き飛んで南無阿弥陀仏だ。

そして其れを皮切りに銃撃戦となり、イチカ達はミーアとラクスを廃劇場の物陰に避難させると、狙撃手に対して応戦を開始。
数の上ではアベンジャーズの兵隊の方が上だが、質ではイチカ達の方が勝っており、銃撃戦においては射程で劣るハンドガンを使いながら狙撃手を的確に撃ち抜いて戦闘不能にして行った。


「おいオッサン……いい年してマドカの言う事に惑わされてんじゃねぇ此の弩阿呆が!!」


更にイチカが廃劇場の屋外階段やら何やらを駆使して狙撃手の裏をとって買ったばかりの逆刃刀で延髄をぶっ叩いて意識を刈り取って戦闘不能にして行ったのだった。
そんな中、アスランからの連絡を受けたアークエンジェルから発進したアカツキが現場に到着した。
此の局面でモビルスーツが介入して来たとなればモビルスーツを持って来ていないアベンジャーズのラクス暗殺部隊には成す術はないだろう。


「遅いですムゥさん!」

「アークエンジェルの美人艦長を口説いてたんだから仕方ねぇだろ!むしろ口説いてる最中に連絡してくる方が悪い!!」

「清々しいまでの暴論だな。」


到着したアカツキはラクスとミーアの安全を確保すべく、アカツキの掌に二人を乗せてコックピットに運ぼうとしたのだが、其処を狙ってイチカに倒されたはずの狙撃手がライフルのトリガーを引こうとしていた。
逆刃刀の攻撃だった故に死には至らなかったのだが、ギリギリのところで意識を取り戻してラクスに銃口を向けたのだ。


「な~んで生きてんのお前?殺り方が温かったか……其れじゃあ改めて死んどけごるあぁ!オベリスク・ゴッドハンドクラッシャー!!」

「ぺぎゃっぱぁ!?」


だが其の狙撃手もイチカによってトドメを刺されて物言わぬ屍と化したのだった。
結果としてミーアは無事に救出されラクスも無傷だったのだが、ミーアが無事に救出された事がアベンジャーズにとっては最悪の結果でしかなく、逆に言えばミーアの救出が成功した事で、アベンジャーズは形振り構わない状況となったと言えるだろう。


「来るなら相手になってやるぜマドカ……だが、仮に俺を殺す事が出来たとして、お前は白紙の未来に何を描くんだマドカ――未来を描く事が出来ない奴じゃ俺に勝つ事は出来ないぜ、絶対にな。」


最終決戦の時はもうすぐそこまで迫っているのだった。













 To Be Continued