オーブ本国で展開されているオーブ軍とザフト軍とアヴェンジャーズの戦闘は、ザフト軍に対してジブラルタル基地のデュランダルが『オーブ軍との戦闘を停止しオーブ軍と共にジブリールの身柄を確保せよ』と指令を出し、カガリもオーブ軍に『ザフト軍との戦闘を停止し彼等と協力してジブリールの身柄を確保せよ』と命じた事でザフト軍とオーブ軍の戦闘は停止されると思われたのだが……
「カガリの命令を聞いても攻撃してくるコイツ等は紫ワカメの腰巾着の馬鹿野郎って事だな……カタナ、シン、ロラン、ステラ、俺達に攻撃してくるムラサメはあの馬鹿紫ワカメの腰巾着だから不殺の必要はねぇ。
オーブ軍人としての誇りも自覚もねぇ馬鹿共には此処で御退場願うぜ!」
「そうね、カガリの障害となるモノには此処で消えて貰いましょうか!」
「端役にもならないエキストラ未満は舞台から御退場願おうかな?」
「コイツ等はやっつける相手……敵は、倒す!」
「お前達みたいな奴が居るから、戦争がなくならないんだぁ!!」
セイラン家の息のかかったオーブ軍の軍人達がイチカ達に攻撃を続け、更に其処にアヴェンジャーズの攻撃も加わり、戦局は混沌として来ていた――とは言えセイラン家に属するオーブ軍人はモビルスーツ部隊の中でもそれほど上の実力を持っている者達ではなかったので、イチカ達の敵ではなく、次々と撃墜されて行ったのだが。
その頃オノゴロ島ではアークエンジェルも発進準備を進めていた。
オーブ本国の市街地戦に於いて戦艦の出番はないように思えるが、カガリがオーブの代表首長として返り咲いたタイミングで戦闘に介入する事でアークエンジェルがオーブの旗艦である事を強く印象付ける狙いがあるのだ。
そんな中で――
「此れを貴方に……これで貴方は自由よ。どこにでも好きに行くと良いわ。」
「オイオイ本気か?」
マリューはネオの拘束を解いて、スカイグラスパーを与え、アークエンジェルから離れるように言っていた。
キラ曰く、ネオは記憶を失ったムゥなのだが、ムゥとしての記憶がない以上マリューとネオは真っ赤な他人に過ぎない――のだが、マリューはネオを危険に晒すまいとして、アークエンジェルから去る様に言ったのだ。
「連合に戻るもよし、オーブに亡命するもよし……貴方の好きなようになさい。」
「アンタ……捕虜を無条件で解放するとか甘いとしか思えないが、此処はアンタの判断に甘えさせて貰うぜ。」
ネオはマリューの判断を甘いと言いつつも、捕虜の身から解放されるのならばそれに越した事はないとスカイグラスパーを受け取りアークエンジェルから去って行った……スカイグラスパーを見送るマリューの目には何とも言えない思いが宿って居たが。
そしてネオを送り出した後、アークエンジェルは改めてオーブ本国に向かうのだった。
機動戦士ガンダムSEED INFINITY PHASE90
『自由と正義と~Freiheit und Gerechtigkeit~』
オーブ本国の海域ではザフト軍とオーブ軍、そしてアヴェンジャーズの三つ巴の戦闘が展開されていた。
カガリがオーブの代表首長に返り咲いたのならば三つ巴にはならないのだが、オーブ軍の中にはセイラン家派の人間も少数存在しており、そのセイラン派が抵抗して来た事で三つ巴になっていたのだ。
「態々殺されに戻ってきたか……全軍、あの金色のモビルスーツを狙え!!」
マドカはカガリが死ねばオーブは再び混乱に陥ると睨んでアカツキへの攻撃を命じ、アヴェンジャーズのキメラモビルスーツはアカツキに対してビームライフルを放ったのだが、アカツキは其れを跳ね返して逆にキメラモビルスーツを戦闘不能にする。
ビーム反射装甲『ヤタノカガミ』はビームに対して無類の強さを発揮するのだ。
「ビームを反射するだと?ならば近接戦で!!」
其れを見たマドカはトリケロス改の先端のクローを展開してアカツキに近接戦を仕掛ける。
其れを見たカガリもアカツキの双刃式ビームサーベルを展開するが……
「飛車角取らずに王手ってのは勝負を急ぎ過ぎだぜマドカ?」
「カガリはやらせない!」
其処にキャリバーンフリーダムとアスランが乗ったバルトフェルド専用ムラサメが割って入った。
「カガリ、お前は行け!軍本部に行って正式に指揮権を取り戻して来い!そんでもってあの紫ワカメに一発かましてやれ!」
「イチカ……分かった!」
此処でカガリは戦線を離脱し、オーブ軍本部に直行して行ったのだが、其れを邪魔するかのようにセイラン家派のオーブ軍人が立ち塞がったのだが、欲に塗れた軍人風情はカガリの敵ではなく、カガリもセイラン派の軍人は不必要と考えてオオワシパックに搭載された高エネルギービーム砲と双刃式ビームサーベルで斬り捨てて戦闘不能にする。
其れでもカガリを狙うセイラン家派の軍人は居るのだが……
「此処は俺に任せな!!」
「フラガ中佐!?」
「だから、俺はネオ・ロアノーク!大佐!!ってのは良いとして、何故かアンタ達を見捨てて逃げる事は出来なかった……加勢するぜ!!」
此処でスカイグラスパーを得たネオがまさかの参戦をして来た。
モビルアーマーでモビルスーツに挑むのは本来ムリゲーなのだが、ネオは巧みな操縦でムラサメを翻弄し、そして数機を撃破して見せた――其れは嘗て『エンディミオンの鷹』の二つ名を持っていた『ムゥ・ラ・フラガ』の戦い方そのものだった。
「機体を改造したみたいだが、そのクリスタル状のユニット……シェルユニットだよな?マドカ、お前何処でそいつを手に入れた!」
「そう言われて答えると思っているのか?」
「思ってねぇが……まさかそいつを手に入れた程度で俺に勝てると思ってる訳じゃないだろうな?」
「パーメットスコア5に至ったテスタメントに、貴様のリライド能力は効かん……故に真っ向勝負だ!パーメット5!」
「上等だ……パーメット8!!」
イチカとマドカは互いにパーメットスコアを現状でのマックス発動したのだが、イチカのキャリバーンフリーダムは此れまでのスコア6から更に上昇したスコア8となっており、シェルユニットの発光もブルーからホワイトに変化しており、此れはカタナのエアリアルジャスティスも同様である。
「あは、其の程度で私に勝てると思っているの?甘いわね……落ちなさい!」
エアリアルジャスティスは背部のリフターをパージすると、其れに乗ってサーフィンさながらの動きでアヴェンジャーズの雑兵を次々と落として行く。
更にアスランもバルトフェルド用にカスタムされたムラサメを見事に乗りこなしてアヴェンジャーズの面々と遣り合っていた――どんな機体でも乗りこなす事が出来るアスランだが、可変機であるイージスとセイバーを使いこなしていた事もあり、同じく可変機であるムラサメの性能も120%引き出す事が出来ていた。
「パーソナルカラーの機体……エース機か!ならば落ちろ!」
「ちぃ!!」
そんなアスランに対してレイがレジェンドのバックパックに搭載されたドラグーンをプラットフォームに搭載したまま角度を変えてビーム砲として使用し、そのビームの雨をアスランはギリギリで回避したのだが、其処に追撃のビームを受けて機体の右腕と右足を失った事で撤退を余儀なくされてしまった。
同じ頃、地球へと降下するモノがあった。
一つはモビルスーツが格納されたポッドで、もう一つは二機のモビルスーツだった。
一機はキラが乗るストライクフリーダムで、もう一機は……
「ラクス、フレイ、此処まででいいかな?」
「はい、充分ですわキラ。」
「此処からは私達に任せて。」
フレイとラクスが乗ったジャスティスの後継機と思われるモビルスーツだった。
ギリギリまで護衛を務めたストライクフリーダムは戦場へと繰り出し、フレイとラクスはジャスティスの後継機をオーブ軍の軍港へと向けるのだった。
――――――
オーブの上空では激しい戦闘が行われており、そんな中でシンとロランとステラはオーブ軍基地に降り立ち、オーブ軍の兵士と共にジブリールの身柄を確保しようとしていた。
「何処に居るんですかジブリールは!」
「其れが分かれば苦労はしないぜザフトの坊主!あんの悪趣味な紫リップ何処に行きやがった?……お前の直感を頼るぞコウ!ジブリールはどこだぁ!」
「古の決闘者の直感力を舐めるなぁ!
セイラン家所有のシャトル発着場だ!!」
「よーし!セイラン家のシャトル発着場に全軍突撃じゃあ!!」
「えぇ!?直感とかで決めていいんですか!?」
「コイツの勘は恐ろしいほどに当たるんだよ……其れこそ超能力者じゃないかってレベルでな――俺自身、コイツが言った番号の宝くじ買ったら見事に十万当たってな?そんでもって、二人で高級寿司食って全部使った。」
「つまりは信用出来るって事っすね……イチカさんも『直感ってのは意外と馬鹿に出来ない』って言ってたし、今はその人の直感に従いますよ!」
シン達はオーブ軍の将校達と共にセイラン家所有のシャトル発着場に直行したのだが、其処にはセイラン派のオーブ兵が守りを固めていた。
オーブ軍の軍人の多くはカガリ派なのだが、一部にはセイラン家に付く事で甘い汁を吸う事が出来ると考えた軍人もおり、其れ等がセイラン家の護衛に回っていたのである。
「紫ワカメとデブハゲ眼鏡に従う阿呆はオーブ軍には必要ねぇ!!」
「道を開けろ売国奴が!!」
「コイツ等ぁ!またオーブを焼きたいのか、アンタ達はぁ!」
「欲に塗れた売国奴か……実に美しくない。オーブの未来の為に、此処で散り給え!」
「お前達は敵。敵は倒す……!!」
故にシャトルの発着場前で戦闘が発生し、其の間にジブリールは脱出用のシャトルに乗り込み、その発進を待つのだった――但し、セイラン家の前頭首であるウナトと、セイラン派の首長はシャトルに同乗させず、『君達は此の状況を打開してから宇宙に上がり給え』と言い、ウナトもそれに従うしかなかったが。
その一方で、オーブ上空のモビルスーツ戦ではミネルバとアークエンジェルの合同部隊がセイラン家派のオーブ軍人部隊をほぼ一掃し、アベンジャーズの戦力も撃破していたのだが、そんな中でオーブ軍本部に向かっていたアカツキにデスインパルスが迫っていた。
「ビームが効かないなら!!」
ビームを反射するアカツキに対し、デスインパルスはソードシルエットを要請してエクスカリバーをソードシルエットから抜くと、エクスカリバーの二刀流でアカツキに斬りかかって行く。
アカツキも双刃式ビームサーベルで応戦するも、ビームサーベルとレーザーブレード対艦刀ではビームエッジの出力が圧倒的に異なるので次第にアカツキは押されはじめ、遂には左腕の肘から下を斬り落とされてしまった。
更に追撃としてエクスカリバーがアカツキに迫るが――
――バシュゥゥゥン!!
そのエクスカリバーを高出力のビームが撃ち抜いて破壊した――連結状態だったので破壊されたのは一本だが、其れでも此の局面での武器破壊は無視出来る事ではないだろう。
「カガリ、大丈夫?」
「キラ!」
そして其れを行ったのはストライクフリーダムを駆るキラだった。
ラクスとフレイをオーブ軍港に送り届けた後、最速で戦場に向かい、カガリの窮地を救ったのだった。
「此処は僕に任せて。カガリは本部に!」
「……分かった!任せたぞキラ!」
「任された!!」
――バシュゥゥゥン!!
カガリから此の場を託されたキラはSEEDを発動してデスインパルスに対応する。
「キラ・ヤマト……生きていたのか!!だが、生きていたと言うのであればもう一度殺してやるだけの事だ……死の闇に沈め!!」
「其れはお断りだ!!」
デスインパルスのパイロットのキソはキラが生きていた事に驚いていたが、ならばもう一度殺すだけだと言わんばかりにストライクフリーダムに向かい、キラも其れに対処する。
残った一本のエクスカリバーで斬りかかって来るデスインパルスに対し、ストライクフリーダムもビームサーベルで対抗する――核エンジンを搭載しているストライクフリーダムのビームサーベルはビームエッジの出力がレーザーブレード対艦刀のビームエッジと同等となっているので押し敗ける事はなかった。
更にストライクフリーダムはデスインパルスのエクスカリバーの一撃をまさかの白刃取りすると腰部のレールガンを放つ――PS装甲には効かないレールガンだが機体エネルギーを削る事は出来るので悪くない一手と言えるだろう。
「ビームなら死んでた、そう言いたいのかお前は!!」
だが、此の一撃を『舐められた』と感じたキソはスラスターを全開にして、嘗てフリーダムを貫いたのと同様にエクスカリバーを構えてストライクフリーダムに突進する。
前回はデスインパルスの特性によって敗北したキラだが、キラに対して二匹目のドジョウは存在せず、アッサリとその攻撃を躱すとビームサーベルの二刀流でデスインパルスの頭と四肢を斬り落として戦闘不能にし、更に残った胴体を蹴り飛ばしてターンエンド。
コックピットは無事なのでキソは生きているだろうが、最後の蹴りはPSダウンした状態の所に放ったので、装甲を通り越してコックピットであるコアスプレンダーにもダメージが入ったので、此の戦闘でデスインパルが再出撃する事はないだろう――チェストフライヤーとレッグフライヤーとは異なり、コアスプレンダーは基本的に一機しかなく、破損したら修理しなければ使えないのだから。
こうしてデスインパルスを退けたキラだが、今度は其処にレジェンドが現れた。
「此の機体は……!」
嘗て死闘を繰り広げたプロヴィデンスに酷似した外見のレジェンドに対しキラも警戒する――キラが戦った相手で間違いなく最強だったのはプロヴィデンスだったのだから当然と言えば当然だろう。
レジェンドはビームジャベリンを抜くとストライクフリーダムに向かい、ストライクフリーダムもビームサーベルを抜いてそれに対応し、二度三度切り結んだ後に互いに相手の斬撃をビームシールドでガードし激しくビームがスパークした。
まだ戦闘が終わらないオーブ上空だが、市街地では市民の避難が行われていた――ユウナは此の状況に陥っても市民に避難勧告を行っておらず、ユウナがカガリによって権力の座から引き摺り下ろされた後に市民の避難を行う事が出来ていたのだ。
そんな中、レジェンドの攻撃で撤退を余儀なくされたアスランは、オーブ軍のモビルスーツ格納庫にムラサメを不時着させたのだが、其処でラクスとフレイと再会していた。
「ラクス、其れにフレイも……其のモビルスーツに乗って来たのか?」
「キラのおかげで無事に持ってくる事が出来ましたわ。」
「モビルスーツの操縦まで出来るとか、本気で凄いわよねラクスって。」
そのラクスとフレイが乗っていたモビルスーツ……其れは前大戦の最終期にアスランが登場していたジャスティスを思わせる機体だった。
「此の機体は?」
「キラのストライクフリーダムと並行して開発されていた貴方の機体ですわアスラン。」
「ZGMF-X19Aインフィニットジャスティス……こんな形になっちゃったけど、無事にアンタに渡せてよかったわ。」
「インフィニットジャスティス……無限の正義か
だが、ある意味ではいいタイミングだ……これで俺はまだ戦える!カガリの為に、オーブの為に!ありがとう、ラクス!フレイ!!」
インフィニットジャスティス……キラのストライクフリーダム同様に新型の核エンジンとデュートリオンバッテリーの双方を搭載したハイブリッドエネルギーの機体であり、ジャスティスよりも更に其の機体性能は向上している最新鋭機だ。
先の大戦でのジャスティスのデータに基づいて更にアスラン用に開発されているだけでなく、ラクスとフレイが『もしアスラン専用のモビルスーツを作るとしたらどんな感じにするのが良いか?』とキラに聞いて、その際のキラの意見を最大限反映させており、武装面ではジャスティスから可成り大幅なアップグレード+追加が行われている――特に近接戦闘用の武装に関しては其れが如実だろう。
其処からインフィニットジャスティスの発進準備が行われ、機体はオーブ軍のカタパルトに運び込まれ、アスランも機体に乗り込み準備は完了。
『X19Aインフィニットジャスティス、発進どうぞ。』
「アスラン・ザラ。ジャスティス、出る!!」
カタパルトから射出されたインフィニットジャスティスはVPS装甲を起動し、機体が赤紫色に変わり、関節部は白銀に輝く。
正義を超える無限の正義が、此の戦いを終息させるべく戦場に斬り込んで行ったのだった。
To Be Continued 
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