「えぇい、もういい加減にぃ!!」
「落ちろよ、この野郎!!」
プラントのクーデター軍とファウンデーション軍、コンパスとプラントとオーブの連合軍の全勢力がぶつかり合う戦場では、クーデター軍を相手にザフトの最高戦力である『ジュール隊』の隊長であるイザークと、副隊長であるディアッカが、嘗ての愛機をカスタムした機体で奮闘していた。
『ブリッツデュエル』と『ライトニングバスター』……何方もベースとなった機体の性能を更に向上させたような性能となっており、特にデュエルにはブリッツが搭載していたスレイブニルに似た武装が搭載されていた。
もっと言うならば『ブリッツ』は言うに及ばず、『ライトニング』も雷を意味する単語であり、四年前の大戦の最中に散った友の愛機であった『ブリッツ』の名を機体に冠していたのだった。
「舐めるなぁ!!」
同じ頃、デスティニーで出撃したシンは、長距離射程ビームランチャーでクーデター部隊とファウンデーション部隊の艦船を連続で撃ち抜くと、対艦刀アロンダイトを逆手に持って戦艦を切り裂いて破壊していた。
更にルナマリアもブラストインパルスでフリーダム並みのフルバーストを行い敵モビルスーツを次々と撃破して行った。
加えてイチカのキャリバーンフリーダムと、キラのストライクフリーダムはドラグーンとエスカッシャンによる多角的攻撃で敵部隊を次々と撃破し、フルバーストで敵機を蹴散らしていった。
最早連合軍にはクーデター部隊やファウンデーションの一般兵部隊では相手になっていなかった。
「一個だけでも厄介だってのに、こんなモノを二個も持ってるとかファウンデーションってのはこの世の支配者にでもなった心算なのかねぇ?」
一方でムウのアカツキは発射準備が完了したレクイエムの前に到着していた。
放たれたレクイエムのビームは先ずはオーブを焼き尽くすだろう……そして放たれたレクイエムのビームを止める事は普通は出来ないが――陽電子砲ですら防ぎ切ったアカツキならば其れを止める事は理論上は可能であり、それを成す為にムウは此の場に来たのだ。
機動戦士ガンダムSEED INFINITY PHASE111
『反撃の夜想曲~Nocturne of Counterattack~』
「愚か者どもが跳ねっかえりおって……レクイエムの一号機を発射しろ!
オーブとプラントよりも、先ずは奴等の部隊を掃滅する!!」
ファウンデーションの宇宙本拠地『アルテミス』の指令室では、アウラが部下に指示を出してレクイエムの一号機の発射を命じていた。
レクイエムは中継地点を経由する事でビームを湾曲させて遥か遠距離から目標を攻撃する事が可能なのだが、ビームを湾曲させずに超大口径の超出力ビーム砲としても運用が可能となり、その威力は戦艦の陽電子砲を遥かに凌駕するモノだ。
エネルギー充填が完了したレクイエムは、その凶悪な破滅の光を発射したのだが――
「ところがそうは行かないんだよなぁ!!」
その超高威力ビームの前にムウのアカツキが躍り出て、全身にそのビームを受けた。
ビームに対しては絶対的な強さを誇るヤタノカガミが搭載されたアカツキは、レクイエムのビームを受けても破壊はされなかったモノの、そのあまりの威力に機体内部にはアラートが鳴り響きムウの表情にも焦りが浮かぶ。
「ムウ……」
ミレニアムのマリューもムウの無事を祈るように彼の名を呟き、艦長のタリアも事態を固唾を飲んで見守っていた。
「俺は不可能を可能にする男……奇跡は願うモノじゃなく、自分で起こすモノなんだよぉぉ!!」
ただ次の瞬間、レクイエムのビームは霧散し、アカツキが其の姿を現した。
とは言え、流石に無理をし過ぎたのかアカツキの特徴である黄金の装甲はその輝きを失っていた……流石のヤタノカガミもレクイエムのあまりの出力に其の力を使い果たし、ビーム反射能力を失ってしまったのだ――とは言え、反射できないだけでビームを無効には出来るが。
「此れでも喰らいな!!」
更にアカツキは無線操作で随伴させていた巨大兵器『ゼウスシルエット』を手にすると、超巨大なレールキャノンをレクイエム一号機に向けて発射し、見事レクイエム一号機を破壊する事に成功したのだった。
「よぉぉし!やりましたよ、草薙さん!!」
「……ムウ、何を言っているの?」
「あ……いや、気にしないでくれマリュー……さてと、今度はコイツを本来の使い手に渡さないとな。」
ムウが何やら言っていたが特に問題はなく、アカツキはゼウスシルエットを本来の使い手に渡すべく戦場をかけるのだった。
――――――
「ったく、雑魚がうざってぇ!喰らえ、データストーム根性焼き!!」
「ひでぶ!!」
「たわば!!」
「あべし!!」
「いってれぼ!!」
パーメットスコア6を解放したキャリバーンフリーダムは、パーメットフィールド内に入って来た敵機に対して機体のコントロール奪取は行わず、機体がリンクしている事を利用して敵機のパイロットにデータストームを強制受信させて機体を操作不能に陥らせていた。
データストームに対して多少の耐性があるマドカでも、スコア6のデータストームを喰らったら鼻血を噴出して血涙レベルなのだから、マッタク耐性がない人間が喰らったら一瞬で脳細胞が焼かれて即死なのだ。
「殺したくはないけど、明らかに敵対の意思を示す相手なら殺さずに済ませる理由もない!」
キラも迫り来るファウンデーションの部隊とクーデター部隊のモビルスーツを二丁リニアライフル(フェムテク装甲にはビームが効かないので実弾兵器のリニアライフルに差し替えられた)で次々と撃破し、放たれたミサイルをビームシールドでガードすると、爆炎が晴れると同時に腹部のカリドゥス複相ビーム砲を放って敵部隊を鎧袖一触!
「あ奴等……忌々しいモノよ……アレを全機出撃させろ!イチカ・オリムラとキラ・ヤマトを討ち取れ!!」
此の状況を目の当たりにしたアウラは、部下に何かを全機出撃させるように命じ、その命を受けた部下はモビルスーツのハッチに向かい、アコード達を除いては最強クラスとも言えるであろう戦力を戦場につぎ込んだ。
其の戦力とはデストロイだ。
装甲の脆さが露呈しているデストロイだが、其の巨体は歩くだけで都市を破壊し、更に搭載されているビーム兵器は戦艦クラスと言う化け物なのは変わらないので其れが複数体戦場に現れたとなれば脅威だろう――普通ならば。
「今更そんな木偶の棒にもならないウドの大木未満が俺達に通じると思ってんのか?
やられ専門の見掛け倒しは此の場で消えな!!」
「兄さんに仇なす愚か者が……其のまま死ね!そして閻魔からも死刑宣告を受けるが良い!」
だが生憎と、コンパスとオーブとプラントの連合軍には普通は通じなかった。
イチカが対艦刀バルムンクでデストロイを斬り裂けば、マドカも負けじとシュベルトゲベールの二刀流でデストロイを見事に十七分割して粉砕!玉砕!!大喝采!!
嘗てベルリンを壊滅状態に追い込んだ大量破壊兵器も、今やタダの巨大な的に成り下がっていたのだった。
「絶好調だなマドカ……俺が許す、敵はぶち殺せ。キラも今回に限っては不殺で済ます気はないみたいだから。」
「任せろ兄さん!
隊長が不殺を使わないのならば私が遠慮する道理もない……自分が誰に牙を剥き、剣を向けてしまったのかを後悔して地獄に落ちるが良い!!」
破壊されなかったデストロイの腕は、キャリバーンフリーダムがコントロールを奪取してビット兵器として使用してオールレンジ攻撃を強化していた。
アコード以外の切り札として繰り出したデストロイはアッサリと撃破され、無人のジンやクーデター部隊も次々と落とされて行き、旗色は確実にファウンデーションにとって悪くなっていた。
このまま行けば此の戦闘は連合軍が勝利するだろうが……
「貴様は此処で落ちろ、キラ・ヤマト!!」
「貴様もだ、イチカ・オリムラ!!」
此処でオルフェが駆るブラックナイトスコードカルラがフリーダムに、ゾルガが駆るブラックナイトスコードアニマがキャリバーンに斬りかかって来た――ラクスを狙っていたオルフェがキラに、カタナを狙っていたゾルガがイチカに攻撃して来たのだ。
「ったく、宰相なら大人しく本拠地で女王様の補佐してろっての……退けつっても聞かないだろうしなぁ……こりゃ、やるしかなさそうだぜキラ。」
「そうだね……だけどイチカ、なんでパイロットがタオ宰相だって分かったの?」
「スコア6のフィールド内に入った機体の事はパイロットを含めて分かるんだよ……ゾルガの野郎の機体にはアグネスも乗ってやがるのか……裏切者のクソビッチを生かす理由はないよなキラ?」
「マッタクないよ……そもそもにしてラクスを攫った時点で僕は彼等を許す心算はない。
何よりフレイからも『ラクスを攫った奴等をぶちのめしなさい』って言われてるからね。」
「おうふ、フレイ言うな……だが、そうなればやるだけだよな!!」
「そうだね……僕は、僕達は負けない!!」
ゾルガ機にアグネスが同乗した事が明らかになったがイチカもキラも動揺はしなかった――裏切者には死の制裁を加えるだけのだから。
「来いよ勘違いのクソ野郎……お前ら風情が俺やキラを超えるなんて烏滸がましいって事を教えてやるぜ!!」
キャリバーンフリーダムはバックパックに搭載された対艦刀『バルムンク』を抜いてブラックナイトスコードアニマに斬りかかり、ストライクフリーダムもドラグーンを展開してブラックナイトスコードカルラを攻撃する。
最終決戦の火蓋が、今此処に斬って落とされたのだった――!!
To Be Continued 
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