オーブの地下深くにあるモビルスーツ格納庫には、先の大戦で大きな戦果を上げたキャリバーンフリーダム、ストライクフリーダム、デスティニー、インパルスが改修された姿で佇んでいたのだが、それだけでなく――


「Zストライク、ライジングフリーダム、イモータルジャスティスも修理したのか……此の短期間で完全に直すだけじゃなくて追加装備も施すとかモルゲンレーテの技術者は優秀だなエリカ姐さん?」

「……此れは極秘事項なのだけれど、モルゲンレーテ社はジャンク屋のギルドとも提携していて、其処からの技術提供も受けているの。
 特にロウ・ギュール君からの技術提供は本当に目から鱗なモノが多いわ。」

「ロウの旦那が一枚噛んでんなら納得だぜ。」


先の戦闘で中破状態となったZストライク、ライジングフリーダム、イモータルジャスティスの三機も修理され、更に追加装備が施されてた。
Zストライクには右腕に腕と一体型のビームライフルと実体剣の複合装備が、左腕にはブリッツのトリケロスを思わせる大型複合武装盾が搭載され、二本のシュベルトゲベールと腰部に搭載されていたビームライフルショーティー改はオミットされて代わりに左右と後部の腰部アーマーにビームロングダガーとビームショートダガーをそれぞれ二本ずつマウントする形となっていた。
ライジンフリーダムには腰部のレール砲の基部とショルダーアーマー、シールドにドラグーンが搭載され、イモータルジャスティスには両腕に腕部と一体となったビームサーベルが搭載されていた。


「此の三機とインパルスはバッテリー機だけれど、何れもデュートリオンビームによる充電が可能になっているわ。
 それと、ストライクフリーダムとキャリバーンフリーダム、デスティニーにはデュートリオンビーム照射機能を追加しておいたから以前よりもエネルギーの回復は容易になったと思うわ。」

「母艦が無くてもエネルギーを補給できるってのは大きなメリットだ。
 だが、問題は誰が此れに乗るかなんだが……マドカ、お前にストライクを託す。……コズミックイラ史上最高傑作と謳われるストライクの最新型、お前なら扱えるだろ?」

「言われるまでもない……それに、Zストライクの追加武装は私が新たにパイロットになる事を想定していたかのようなモノだからな……兄さんの機体、有り難く使わせて貰うぞ!!」

「では、隊長の機体は私が。」

「レイ……任せても良いかな?」

「お任せを。期待には応えて見せますよ隊長。」


そしてZストライクにはマドカが、ライジングフリーダムにはレイが乗る事となり、残るはイモータルジャスティスなのだが――


「ヒルダ姐さん、イモータルジャスティスのパイロットお願いしても良いっすかね――てか頼んます。姐さん以外にイモジャを扱える人はいないと思うから!!」

「そう言う事なら任せときな坊や!!」


イチカの提案でイモータルジャスティスのパイロットはヒルダに決まり、一行はラクス達を救出する為に一路宇宙へと向かうのだった。









機動戦士ガンダムSEED INFINITY PHASE109
『反撃の狼煙~Signal zum Gegenangriff~』











「黒どころか真っ黒ね此れは。」


ところ変わってファウンデーションのコロニーでは、カタナが暗躍してファウンデーション内の機密事項を次から次へと暴いていた。
デスティニープランだけでもかなり危険なモノではあるのだが、其れ以外にもファウンデーションはレクイエムの開発と設置を行い、プラントの急進派であるジャガンナートと内通してプラントにおける軍事クーデターの引き金をも引いていたのだ。


「果てない野望と欲望を欲するがままに作られた人の業の集積体のような国な訳ねファウンデーションは……そして莫大な資金と権力を持ってして世界を混乱に導くと言うのであれば、コンパスとしても見過ごせないわよね。
 狂った国家は粛清対象よ。」


カタナは得たファウンデーションの情報をオーブのカガリ、プラントのデュランダル、そして連合のアズナブルに送ると、警備員の配置、警備員の人数、コントロールルームへのアクセス方法を調べる等々、更にファウンデーション内で暗躍をするのだった。


「イチカ達が此処に来ると仮定して、そうなればブラックナイト達は当然迎撃に出るでしょうから、ファウンデーション内部の警備は薄くなる可能性の方が高いわよね?
 となれば、その時が狙い目とみるのが上策……ラクス様から貰った忍び装束を纏っている事だし、此処は一つくノ一らしく『女である事を武器』にして戦うのも良いかも知れないわ――尤も、イチカ以外に私の女としての部分に触れさせる心算はないから仕掛けるだけ仕掛けて男の選手生命終わらせるけれど♪」


一仕事終えたカタナは、何処から取り出したのかキセルにタバコの葉を詰めると火を付けて一服……くノ一装束の美女がキセルでタバコを吹かす様は中々に様になっており女性特有の色香を醸し出していた。

一服終えたカタナは再度屋根裏に上ると、其処からラクスがいる部屋に向かい――


「天井からこんにちは!!」

「あらあら、派手な登場ですわねカタナ♪」

「派手なの嫌いじゃないでしょうラクス様も?
 コロニーの全体像は流石に掴めなかったけれど、少なくとも今私達が居る場所に関しては建物の構造や通路がどうなっているのかは把握出来たわ……イチカ達が此方に向かって来て、其れの迎撃にブラックナイト達が出払った時が狙い目だと思うの。
 警備の人間もいるから簡単ではないし、事と次第によっては荒っぽい事にもなる可能性があるけれど……脱走する、でしょ?」

「其れは勿論ですわ。
 如何にタオ兄弟が私や貴女と遺伝子的に最高の相性であったとしても、遺伝子の相性だけでは愛する心を超える事は出来ません――私が愛しているのはキラであり、貴女が愛しているのはイチカ。
 其処に他の誰かが入り込む余地はありません……尤も、フレイとキラも愛し合っているので彼女は例外な訳ですが……」

「ラクス様にフレイちゃん……コーディネーターとナチュラル双方で屈指の美女を侍らせてるとか、キラ君は非モテ男子が聞いたらブチキレそうな状態なのよねぇ……それはアスランもだけど。」

「……英雄色を好む、とも言いますし……」

「私としてはカンザシちゃんがイザークとくっついたのは兎も角として、ディアッカがミリアリアちゃんとくっついたのが意外と言えば意外だったわね……」


カタナから脱走の計画を聞いたラクスは、迷うことなくそれに賛同し、ブラックナイト達が出払った時を狙って脱走する事を決め、其れまでは暫し大人しくしている……筈もなく、『自分達もアコードなら他者への精神感応できるのでは?』と思い至り、試しに状況を確認しに来た警備員に対して精神感応を試み、其れが見事に成功すると其の警備員に『異常なし』との報告をさせる事に成功し、これを皮切りにカタナは更に暗躍して、警備兵の多くの精神を操り、『ラクス・クラインとカタナ・サラシキは外出は禁止だが施設内は自由に行動出来る』との認識を植え付ける事に成功したのだった。


「遺伝子による人類の統率……それは最早神の御業とも言うべきモノなのだけれど、歴史を紐解いてみれば神になろうとした人間は例外なく目的半ばにして死を迎えているわ。
 貴女程度が人類を支配しようだなんて、烏滸がましいも程があるわ……首を洗って待っていなさいな女王様――其の首、かっ切ってあげるわ。」


脱走の準備を着々と進めて行ったカタナは、建物の屋根に上ると、アウラが居るであろう王城に向けて手をピストルの形にして撃ち抜く仕草をするのだった。
そして警備がゆるゆるになったので、カタナはブラックナイト以外の人物の個室にお邪魔してゲームやらブルーレイディスクやらを拝借し、ラクスの部屋にて時が来るまでの間を楽しく過ごすのだった。








――――――








カタナからの情報を得たデュランダルは、コンパス部隊に出撃を命じ、更にはタリアをコンパスに出向させてミレニアムの艦長とし、同時にマリューをミレニアムの副艦長に任命した。
先の大戦で大きな戦果を上げたミネルヴァの艦長とアークエンジェルの艦長がコンビを組んだとなれば其れはもう間違いなく最強でしかないだろう。


「こうして貴女と同じ舩に乗る時が来るとは思っていなかったわ……頼りにしているわよラミアス副艦長?」

「その期待には応えますわ、タリア艦長。」


宇宙へと上がったミレニアムは、カタナから齎された情報を基に一路ファウンデーションのコロニーに向かって行った。


「そんじゃ艦長、魔乳さん、行って来るわ~~。」

「マリューさん、グラディス艦長、行ってきます!」

「イチカ君……いえ、これはもう言うだけ徒労よね……何にしても貴方達なら大丈夫だろうと思うけれど、気を付けてね?」

「絶対に無理だけはしないでね?必ず生きて戻ってくるように!」

「了解!イチカ・オリムラ、行くぜ!!」

「キラ・ヤマト、行きます!!」


此処でイチカとキラが出撃し――


「マッタク、大人しくしていられないんだな、キラもイチカも。」

「黙ってる方が辛いって事もありますよ。」

「其れを抑える事が出来ない、イチカもキラも情熱的って事さ……愛する者を救う為ならば手段は厭わない――嗚呼、これこそが真の愛か!!」

「ロラン、お前は何時でも平常運転だな。」


続いてアスランとロランのズゴックが出撃し、アスラン機がストライクフリーダムを、ロラン機がキャリバーンフリーダムをキャッチすると機体に搭載されたミラージュコロイド光学ステルス迷彩を発動して姿を隠した状態でファウンデーションのコロニー接近し、ギリギリのところでストライクフリーダムとキャリバーンフリーダムを離し、二機のズゴックはファウンデーションのコロニーの前に突如その姿を現す形となった。


「邪魔をするな!!」

「道を開けろ雑魚共!テメェ等に用はねぇんだよ!!」


当然警備兵がモビルスーツを持ち出して対処しようとしたのだが、エースパイロットが操縦する二機のズゴックは警備兵では相手にならず、次から次へとやって来た警備兵のザクを問答無用で撃滅するのだった。


「待ってろよカタナ……!!」

「ラクス……絶対に助ける。僕とフレイだけじゃダメなんだ……君が居ないとダメなんだ、ラクス。」


イチカ達はこうして出撃したのが、それに呼応するかの如くファウンデーションもブラックナイト達を出撃させ、らに其の宙域では武装決起したプラントのジャガンナート率いるクーデター部隊もイザーク率いる正規軍との戦闘になっており戦場はこれまで以上に混沌の様相を呈していくのだった。













 To Be Continued