Side:夏姫


ん……もう朝か?此れは少しばかり寝坊してしまったかな?



「そうね、夏姫には珍しい位のお寝坊さんだったかも知れないわね?」

「刀奈……お前、起きてたのならアタシを起こしてくれても一向に構わないんだがな……と言うか、起こしてくれると助かる――普段は自分で起きる事
 が出来るんだが、自分が思っていた以上に疲れていた時はその限りではないからな。」

「其れは善処するけど……夏姫の寝顔が可愛くって、起こすのが躊躇われちゃうんだけど?」



可愛いって、誰の寝顔が?



「夏姫。」

「One Mor Say?(もう一度言ってくれ。)」

「夏姫の寝顔がめっちゃ可愛いから見とれちゃってたのよ~~……クールビューティーの夏姫の、あの無防備な寝顔を見る事が出来るのは夏姫の彼
 女である私の特権よね♪
 もう、夏姫の寝顔ってとっても可愛いから、思わずスマホで撮っちゃったわ♪」



……お前は何をしてるんだ刀奈?……其れは普通に肖像権の侵害に当たるんだがなぁ?……まぁ刀奈の場合は個人的に楽しむ事が目的だろうから
強く言う気は無いが、隠し撮りは感心しないな刀奈?



――グイ!……チュ……



「撮るのならば、正々堂々撮るんだな。」

「だ、抱き寄せてからのカウンターのキスって……幾ら何でも反則よ夏姫……!!」



隠し撮りと言う反則技を先にやったのはお前の方だろう刀奈?……ならば此れでお相子だ――って言うか、お相子って言う事にしろ。自分でやってお
いてなんだがな、アタシも結構恥ずかしかったんだぞ今のは――正に、自爆技も良い所だったよ。









Infinite Breakers Break96
Archetype Breaker:来る代表候補生』








刀奈と朝っぱらからイチャ付いたのは良いとして、ところ変わって此処は生徒会室。
昨日の襲撃の一件もあり、今日は生徒達は寮で待機という事になってるのだが、其れはあくまで一般生徒に限っての事であって、アタシ達レギオンIB
には関係のない事だ。
関係ないからこそ、夫々が自分の思うように過ごしていると思っていたのだが――

「楯無、生徒会室は何時からレギオンの溜まり場になったんだ?」

「ほほほ……つい最近かしらね?」



生徒会室は、レギオンIBの面子で満員御礼だ……まぁ、生徒会の仕事の邪魔だけはしないでくれるから、其れは有り難い事ではあるんだが見てるだ
けじゃなくて少しは手伝えと思ったアタシは悪くないよな?
何よりも今は、今度来る編入生の書類の処理で忙しい訳だからね……はぁ、中途半端な時期の編入だから書類も少なくないな。



「そうね……まぁ、此の時期だと言うのは各国夫々事情があるんでしょう?――専用機の準備とか、一夏君への対応とか色々とね。
 ……其れで夏姫、今度来る子の中で、気になった人はいるかしら?――タイ、カナダ、ブラジル、ギリシャ、オランダの代表候補生も、可成りの実力を
 持ってると思うのだけれど?」

――【期待の新星♪】


「センスの其れは微妙に違う気がするが、そうだな……注目株で言えば、ブラジル代表候補かな?」

「グリフィン・レッドラムちゃんね?……して、その心は?」



レッドラムと言うのは、サスペンスの巨匠スティーヴン・キングの小説『シャイニング』に出て来る登場人物と同じ名前なんだが、アルファベットでの綴り
は『Redrum』となる。
そして、この綴りを反対から読むとどうなるか……お前ならば分かるだろう楯無?――中々物騒な名前である事にな。



「Murder……マーダー!!殺人鬼!!」

「そう、その通りだ。」

まぁ、流石に此れは偶然だろうが、如何に偶然と言えども『殺人鬼』のアナグラムが姓になっている奴が普通であるとは思えない――何よりも、写真を
見る限り、肌は南米人特有の赤褐色だが、髪の色はお前と同じ鮮やかな青色だからね……気にもなると言うモノさ。
其れから、備考欄に書いてあった『孤児院育ちで、現在も孤児院の同じ境遇の子供達の面倒を見ている』と言うところも注目しているんだ……親が居
ないのはアタシやマリア、一夏も同じ事だからね。
でもって、アタシや一夏に至っては、生みの親すら存在してないからなぁ……アタシの母親は鉄の子宮でしたとか、シャレにもならないわ。
まぁ、其れは良いとしてだ、グリフィン・レッドラム以外で気になったと言えば、矢張りカナダの双子姉妹だな?――飛び級でIS学園に編入すると言うの
は、乱と言う前例があるし、マドカも書類上はそうなっているから驚く事でもないんだが、年齢が十二歳ってまだ小学生じゃないか。
乱とマドカは飛び級にしても中学生にはなってると言うのに、小学生で高校に飛び級とは恐れ入る……IS学園への編入は、ISの知識や操縦技術だけ
でなく、一般的な学力も必要になって来るからね。



「十二歳か……私が一番年下だと思っていたから、更に下が出来るとは思っていなかったが――この二人は何処かで見た事のある顔だな?
 ……思い出した、このコメット姉妹はカナダで双子のアイドルとして活動していた子達だ。ジャンク屋のギルドの仕事で、彼女達の護衛を行った事が
 ある。」

「あ~~……そう言えばそんな事もあったっすねぇ?」

「アラアラ、此の子達ってカナダのアイドルちゃんだったの?……となると、ISの知識と操縦技術は兎も角として、学力に関しては、無理矢理カナダ政府
 がねじ込んだ可能性が否定出来ないわねぇ?
 自国で大人気のアイドルが、IS操縦者としてもその力を誇示する事が出来ればカナダの国の価値を上げる事が出来るモノね――分かり易い広告塔
 という感じかしら?
 其れは兎も角、年齢的にはまだ小学生な訳だから、お姉さん達がちゃんと面倒を見てあげないとダメよねぇ?褒めるべき所は褒めて、叱るべき所は
 叱ってあげないとね?うふふ、色々楽しみね♪」

――【教育的指導】



お前の言わんとしてる事は分からなくはないが、扇子の其れは若干違う様な気がするぞ楯無?と言うか『教育的指導』は絶対違うと思う。
そしてお前の場合、指導と言いながら何やら悪戯を考えてそうで怖い……まぁ、年長者であるアタシ達が面倒を見てやらねばならないと言うのには全
面的に賛成するがな。
それから、自分達が扱っているのはあくまでも『兵器』であるという自覚も持たせるべきだろう――恐らくだが、年齢的にもそう言う自覚を持って居ると
は思えないしね。



「そうね?其処は確りと自覚を持たせてあげないといけないわよねぇ?」

「その自覚なしにISを動かしていたら、将来的に彼女達の為にもならないからな……折角IS学園に来るんだから、其処も確り学んでもらうとしようか。」

「会長と夏姫は何をする心算っすか?いや、答えなくていいっすけど。
 ……そう言えば、ギリシャからも来るんすよね?アタシも一応ギリシャの代表候補なんすけど……うげ、ギリシャから来るのはコイツっすか?」

「如何したフォルテ?ギリシャから来るのはベルベット・ヘル――知り合いかフォルテ?」

「知り合いどころじゃないっすよダリル~~!!
 アタシとベルは代表候補生になる前は、互いに切磋琢磨してた仲だったんすけど、アタシの方が先にギリシャの代表候補になって、でもって速攻ジャ
 ンク屋のギルドに所属しちゃったんで、ベル的には思う所があるんじゃないかと思うんすよね……」



でだ、フォルテはギリシャ代表のベルベット・ヘルと知り合いだったのか……何やら複雑な事情があるみたいだが、久しぶりに会うのであれば腹を割っ
て話してみては如何だ?
そうすれば、お前が感じているモヤモヤが解消されるかも知れないぞ?



「腹を割って話を……そうっすね、やってみるっすよ夏姫。
 アタシは、ジャンク屋ギルドの活動に感動して、そっちに参加したっすけど、代表候補になった途端に祖国を飛び出しちゃったアタシは、ベルから見れ
 ば裏切り者みたいなもんっすからね。
 ベルが来たら、一度ゆっくり話をしてみるっす。」

「あぁ、其れが良いだろう。」

其れで楯無、夫々の編入先のクラスは如何する?



「そうね……オランダ代表のロランツィーネちゃんとロシア代表のクーリェちゃんは一組、タイのヴィシュヌちゃんは二組、コメット姉妹は四組ね。
 三年生のベルベットちゃんとグリフィンちゃんは虚ちゃんと同じクラスね。」

「一組と四組が二人か、まぁ妥当な所かな?
 ……時に楯無、ロシア代表のクーリェは少々不思議ちゃんな感じがするんだが、何か知らないか?お前もロシア代表なんだから、彼女の事は知って
 るだろう?」

「鋭いわね夏姫……あの子はマジで不思議ちゃんよ。」



まさかの予想通りだっただと?……取り敢えず、ドレだけの不思議ちゃんなのかを教えてくれると助かるな――事前に知っていれば、ある程度の対処
が出来るだろうからね。



「一人称は『クー』で、クマのぬいぐるみの『ぷーちゃん』を何時も引き摺ってるわ……此れだけでも充分だけど、追撃としてイマジナリー・フレンドの『ル
 ーちゃん』が存在してるのよ。
 更には普通の人達には見えないゴースト・フレンドなるものが存在してるらしいわ。」

「あの楯無さん……アタシ割とガチで怖くなって来たので、此の子の受け入れ拒否しても良いですか?ぶっちゃけて言わせて貰うのであれば、不思議
 ちゃんを通り越した電波の面倒を見る自信はないわ流石に。
 と言うか、イマジナリー・フレンドは兎も角、ゴースト・フレンドは本気でヤバいから……精神病院受診した方が良くないか?」

「いやいやいや、クーちゃんは精神疾患がある訳じゃないのよ夏姫。
 ただ、幼い頃に両親を亡くして、ずっと孤児院で育ったから一般の人とは少し感覚が異なってるのよ――彼女の不思議ちゃんは其れが原因なの。」

「両親を亡くしているのか?……自分で聞いておいてなんだが、妙に詳しいな楯無?」

「それはね……あの子はIS適性がSと高かったんだけど、其れが原因であの子に耐えがたい実験や訓練が行われる事は火を見るよりも明らかだった
 から、私がロシア代表の地位と、更識の力を使って彼女を保護して私が訓練したからよ。
 私はロシア以上にあの子の事を知ってるわ。」



そう来たか……だが、楯無から直々の指導を受けたと言うのならばその実力は折り紙付きと言う所だろうね――楯無の指導能力の高さは、疑う余地
がないし、その指導力の高さは並行世界の楯無も同様だったからな。
殆ど素人だったイチにカウンターの達人レベルの防御能力と回避能力を叩き込んだのは普通に評価出来る事だしね。
無論、こっちの楯無だって先輩として一夏達を鍛えてくれているからね。……アタシ自身も楯無との訓練のおかげで地力が底上げされてるしね。
そんな、指導者として一流の楯無の一番弟子とも言える訳かこの子は……只の不思議ちゃんと侮った相手は痛い目を見る事になる訳か。

まぁ、取り敢えず新たな編入生のおかげで暫くは退屈しそうにない――己の命を賭ける様な危険すぎる刺激はノーサンキューだけど、編入生と言う刺
激ならば大歓迎だからね。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・



週明けの月曜日、今日はいよいよ編入生がやってくる日か……今更ながら、アタシも楯無もよく書類処理で過労死しなかったよな?――いや、アタシ
は造られたとは言えガチの超人だから大丈夫だが、其れに付いて来た楯無が凄すぎる。
アイツは、束さんと並ぶ天然のチートなのかも知れないな。

尚、件の編入生は土日で学園に到着していたらしい――対応したのは教師だったから、詳しい事は知らないが、何れの生徒も自国から専用飛行機で
学園に直接やって来たらしい……何れも小型~中型の飛行機だったそうだが、専用機で送って貰えるとはまるで政府の要人だな?
まぁ、代表候補生は其れだけ重要と言う事なのだろうが。
そう言えば、千冬さんから聞いた話ではオランダの代表候補は最も大きい飛行機でやって来て、中からは他に100人近い女子が出て来たとか。
……流石に其の子達は帰ったそうだが、オランダ代表には親衛隊でも存在していると言うのか……何だか、少し嫌な予感がして来たぞ此れは。



「其れにしても、この前の襲撃って一体何だったのかな?」

「この前の襲撃もだけど、何だか私達が入学してから結構問題多くない?
 クラス対抗戦の時には無人機が襲って来たし、臨海学校の時も何か起きたっぽいし、噂では修学旅行の時もIS学園が借りたホテルが襲撃されかけ
 たって聞いたし。」

「うぅ、今の所は私達には被害が出てないけど、これからもそうとは限らないからちょっと怖いよね……なんで、今年はこんなに事件が起きるんだろ。」



そんなホームルーム前の教室ではクラスメイトがこの間の襲撃やら何やらの事を話しているみたいだな……まぁ、確かに約半年の間に結構ヤバい事
が何度も起きてるからな。
関係者以外は誰も知らないとは言え、臨海学校の時なんてアタシ死に掛けてるし。

「……此れだけの問題が起こったのは、間違いなくアタシの弟が原因だろうな。
 今や世界で唯一のIS男性操縦者となった一夏のデータは何処の国も欲しがるのは当然の事だからね……その中に強硬手段に出る奴が居てもなん
 らオカシイ事ではないからね。
 だが、此れからはそう言う阿呆な輩は減るんじゃないかな?……IS学園に襲撃をかけた事でアメリカは事実上終わった訳だからね。」

「あ……確かに其れを考えるとそうかも……国民が怒って現政府を打倒して新たな政府を樹立って、何だかデジャブ。」

「フランスが同じ事になってたよね確か。」



まぁ、そんな訳で不安になるのも分かるから、今回の事でアメリカがどうなったかと言う事を思い起こさせる事で、不安を少しは和らげてやるってね。
尤も、諸国からの彼是は略無くなるだろうが、ライブラリアンの事があるから油断は出来ないのだけれどな……奴等との決着も、何れ付けなくてはなら
ないな――特にイルジオン、アイツとの決着はな。



「其れでは此れよりホームルームを始めるが……その前に、此度学園は新たにタイ、オランダ、カナダ、ギリシャ、ロシア、ブラジルから代表候補生を受
 け入れる事になった。
 そして、本日より我が一年一組にはオランダとロシアの代表候補生が編入する事となった。二人とも入って来い。」



そんな事を考えていたら千冬さんがやって来て編入生の紹介の流れか……事情を知ってるレギオンIBのメンバー以外の生徒は、突然の事に驚いて
いるみたいだが、其れは仕方ないか。
で、千冬さんに言われて編入生二人が教室に入って来て……



「「「「「「「「「「わ~~~~!!!」」」」」」」」」」



思った通りの歓声だな。
ラウラが来た時は、纏ってる雰囲気から歓声が沸く事はなかったが、今回はそんな事はないみたいだが……果たして、どんな自己紹介をしてくれるの
か……ラウラのように行き成りデカデカとホワイトボードに名前を書くと言う事はないと思うけれどね。



「ルククシェフカ、ローランディフィルネィ、自己紹介をしろ。」

「るーちゃん……うん、分かった。そうする。
 クーリェ・ルククシェフカ……ロシアからやって来た……その、宜しく。」



先ずはロシア代表候補の不思議ちゃんが自己紹介したんだが、自己紹介前にイマジナリー・フレンドとやらと会話をしていたみたいだな……普通に考
えると、ヤバい子確定何だが――



「今見えない誰かと話してた!?」

「不思議ちゃんキタコレ!!なんだか眠そうな見た目もポイント高し!!」



このクラスはその限りじゃないんだよな……時代遅れな自己紹介をしたラウラの事も速攻で受け入れたしな――取り敢えず不思議ちゃん事クーリェが
クラスで孤立すると言う事は無さそうだ。
続いてはオランダ代表だが……



「私は……おや?そこの眼鏡の美しい人!」



自分の名を名乗る前に何か言いだしたな?……眼鏡の美しい人――呼ばれてるぞ岸原。



「いや、この場合呼ばれてるのって蓮杖さんじゃないかな?私は確かに眼鏡キャラだけど美しいってガラじゃないし……と言うか、自分自称ウザキャラ
 ですから♪」

「自分で自分をウザキャラと言うな、ウザキャラ通り越して殴りたくなるから。」

「殴って躾けてくれますか蓮杖お姉様……」



……岸本理子、思った以上のキャラだなコイツは――自称ウザキャラは面倒なだけだと思っていたが、実際に話してみると自己演出して居るとは言え
ガチでうざい事この上ないからな?
まぁ、そのキャラで行くのならば卒業までそのキャラで行け……友達が出来るかは知らんがな。



「ふふ、素晴らしい反応だ……君の名は何と言うのかな?」

「対象はアタシだったか……蓮杖夏姫だ。
 だが、人に名を尋ねる前に、先ずは自分から名乗るのが礼儀じゃないか?」

「嗚呼、確かに其の通りだ……君の様な美しい人に会った事で少しばかり舞い上がってしまったようだ。
 私はロランツィーネ・ローランディフィルネィ……九十九人の恋人を持つ罪深き百合さ――そして今、私は新たな百合の蕾を見つけてしまった……蓮
 杖夏姫、君を私の百人目の恋人として迎え入れようじゃないか!」



……はい?何言ってるんだお前?
と言うか、初対面の相手に行き成り交際申し込むとか正気か?編入でテンション上がって脳ミソ煮えて溶け出してるんじゃないだろうな?其れよりも恋
人が九十九人って……千冬さんが言っていた百人近い女子と言うのはその恋人達か?



「其れを知ってたのかい?彼女達は如何しても付いて来ると言って聞かなくてね……まぁ、其れだけ私が愛されていると言う事なのだろうけれどね。
 そして、私が言った事が良く分からなかったようなので、改めて言おう蓮杖夏姫……君に一目惚れした――私の百人目の恋人になってほしい。」

「一目惚れと来たか……まぁ、其れは仕方ないと思うが、残念なお知らせとして無理だ。」

「な、何故だい?」



何故って、アタシには既に楯無と言う恋人が居るのでな。
其処に真の愛があるのならば、恋愛に性別は関係ないし、複数の相手と付き合うのもアリだとは思ってるが、生憎とアタシは多人数相手に同じ様に愛
情を注ぐと言う器用な事は出来そうにないから、楯無以外を受け入れる気はないんだ……悪いが諦めてくれ。



「既に恋人が居たのか……そして君は一途と来た――此れは君を落とすのは難易度が高そうだが、君を射止めた楯無と言う子の事も気になるね?
 良かったら紹介してくれるかな?」

「……ダメだと言ってもお前は退かないだろうから、昼休みの時に紹介してやるよローランディフィルネィ。」

「ふ、私の事はロランで良い……皆そう呼ぶからね。」



ならばそう呼ばせて貰うよ――ロランツィーネ・ローランディフィルネィと言うのは、流石に長いと思ったからね……って、如何かしたかルククシェフカ?



「貴女からは楯無の匂いがする……何で?」

「何でって……多分アレじゃないかな?
 楯無が『少しはお洒落にも気を使いなさい』って、自分が使ってる香水をアタシにも掛けたからじゃないか?――と言うか、そうでなければ楯無がアタ
 シの制服をコッソリ着ている事になってしまうからね。」

「成程、納得。」



納得したか。
しかしまぁ、予想以上に編入生は濃いな?胃もたれを起こしそうなくらいにキャラが濃いよ本気で……しかもアタシはロランにロックオンされたっポイし。
此れは、アタシの想像を遥かに超えた事が起きるのかも知れないね。
取り敢えず、ロランが楯無に何かしようとしたら、速攻で取り押さえる事にしよう――恋人が目の前で傷つけられるのを見過ごしてしまったら、其れはも
う恋人失格だからな。








――――――








Side:一夏


二組に編入して来たのは、タイの代表候補生のヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー……身長はセシリアと大差ないけど、何と言うかプロポーションが凄過ぎ
る気がするんですが、如何ですか解説の鈴さん?



「そうね……ドレだけ低く見積もっても彼女の胸部装甲の戦闘力は90cmは下らない、つまり巨乳の乳魔人認定よ――しかもデカいだけじゃなくて形も
 良いって、勝ち組かこの野郎!!」

「お姉ちゃん、落ち着いて!!」



如何やら、俺の思い過ごしじゃなくて、ヴィシュヌのプロポーションは良いみたいだぜ……だが、安心しろ鈴、俺は別に巨乳が好きって訳じゃないから。
確かに箒の魔乳は素晴らしいが、俺の手の中に収まる鈴の胸もまた素晴らしいと思ってるからな……男の意見として言わせて貰うなら、男が全部巨
乳好きだと思うなってんだ!!
因みに作者は貧乳派である!好きなキャラが長門と鈴である時点で其れは間違いない!!

まぁ、何が言いたいのかって言うと、愛があれば胸の大きい小さいは些細な問題、無問題って事だ。――現に俺は鈴の事を誰よりも愛しているから。



「一夏……」

「鈴……」

「はいはい、ラブコメは其処までにしておきなさいね?」



――パコーン!



で、良い感じになった俺と鈴に、スコールさんのペンタブ投擲が炸裂!!……チョーク投げに代わる教師の最終奥義は、ちょっとばかし効いた――そう
は言っても俺も鈴もバリバリ元気なんですけどね!!

取り敢えず、ようこそIS学園へ。
既に知ってるかも知れないが、俺は蓮杖一夏――世界初の男性IS操縦者だ。宜しくな?



――ブン!!

――パシィ!!




ってオイオイ、行き成り拳とは物騒だな?何か気に障る事をしちゃったか俺?



「へ?……あぁ、すみません!!またやってしまいました!
 申し訳ありません一夏さん……私は小学生の時からISの特訓を受けていた事で男性に面識がなくて、男性に声を掛けられると、頭で考えるよりも先
 に身体が動いてしまうんです……何とかしようと頑張っているのですが、中々克服は簡単ではないみたいです。」

「あぁ、其れはまぁ仕方ないかな。」

野郎に面識がない生活を続けて来たって言うのなら、そりゃ野郎に声かけられたらビックリするって言うモノだから、反射的に攻撃しちまうってのは仕
方ない事ではあると思うぜ?
でも、ヴィシュヌは其れを何とかしようと努力してるんだから偉いと思うぜ?――世の中には、テメェの欠点をそのまま放置して、だからと言ってテメェの
長所を伸ばそうとしないアホ共が存在するからな……其れが誰とは言わないけどよ。



「此れでも少しは良くなったんです……前は、拳ではなくムエタイ仕込みの蹴りが炸裂していたので……なので可成りの男性をKOしてしまいました。」

「ムエタイ仕込みの蹴りって……お姉ちゃん、中国拳法で何とか出来る?」

「……取り敢えず、負けない事は出来る――アタシに言えるのは其処までね。」



鈴がそう言うという事は、ヴィシュヌの実力は生半可なモノじゃないって事だな……まぁ、代表候補生にまでなった人の実力が生半可な筈はないか。
それも、候補生の代表としてIS学園に来たって事は、候補生の中では一番の実力者だとも言えるしな。
取り敢えずヴィシュヌ、昼休みに一緒にランチは如何だ?
俺の仲間達を紹介したいし、夏姫姉も俺と同じ事を考えてると思うからさ……まぁ、強制はしないから、ダメならダメって遠慮なく言ってくれていいぜ?
其の事でお前をハブるとか、器の小さい事はしないからさ。



「そのお誘い、お呼ばれさせて頂きます。――一夏さんのお姉さんにも挨拶をしておきたいですし。」

「んじゃ、決まりだな!」

今日のランチは凄く楽しい事になるかもな――夏姫姉はオランダとロシアの代表候補を連れてくるだろうし、簪はカナダの双子、虚さんはギリシャとブラ
ジルの代表候補を連れてくるだろうからさ。

へへ、面白い事になって来たぜ……楽しませてくれよな?



「……ゴメン一夏、そう言うのアンタのキャラじゃないような気がする。ぶっちゃけちょっと似合ってない。」

「鈴、自分でやって言うのもなんだけど、俺もそう思った。――もしも今のを誰かにスマホかなんかで撮られてたら、俺確実に死ねるかもしれない。」

まぁ、其れは其れとして、今回の編入生のおかげでIS学園の戦力は更に厚くなったから、並大抵の相手なら負ける事はないって言いきってやるぜ!

だけどまぁ、今は取り敢えず姦しくなるであろうランチの時間を楽しみにするか
――今日の鈴と箒の弁当は何かな?……其れを考えるだけで腹が鳴って来た!早く屋上に行こうぜ?どうせなら一番乗りしてやろうじゃないか!



「OK~~!最下位の奴はトップにジュース一本奢りね!」

「いきなり飛び出して、其れはズルいよお姉ちゃん!!」

「あぁ、待って下さい!!」



そして、鈴と乱とヴィシュヌは、速攻で打ち解ける事が出来て良かったよ……んで、二組に向かってた箒と合流して本当に一番乗りしちまったぜ。
さてと、次に来るのは誰だ?夏姫姉か簪か、はたまた楯無さんか虚さんか。



「早いな、もう来てたのか?待たせたてしまったか一夏?」

「いや、そんなに待ってないぜ夏姫姉。」

俺達の次に到着したのは夏姫姉達一組の面々……こうやって改めてみると、一組に戦力が可也集中してるよな?ドイツ代表、イギリス代表候補生に
ISRIの企業代表が五人って普通にあり得ねぇだろ此れ。
で、更に今回代表候補が二人追加だしな。

其れで夏姫姉、銀髪のショートヘアーの人と、クマのぬいぐるみ持ってる人がオランダとロシアの代表候補生か?



「そうだ。折角なので、親睦を深めようと連れて来たんだ――そして其れはお前もだろう一夏?」

「勿論。だけど、何も言わなくても連れて来てくれるとは、流石空気読んでくれるぜ。」

「ふ、空気を読み過ぎたか?」

「読んで読み過ぎると言う事は無いと思うぜ夏姫姉。」

やっぱり新たな仲間と親睦を深めるって言うのは大事だと思うし、親睦を深めておけば、いざと言う時に連携する事も出来ると思うからさ――其れに何
より、仲間が多いに越した事はないだろ?
飯も大勢で食べた方が美味いし、仲間が増えれば楽しい時間はより楽しくなるってモンだしな。

取り敢えず早く全員到着しないかな?腹減って仕方ないし、鈴と箒の弁当が何なのか、楽しみで仕方ないからな。



「ふっふ~~ん、喜びなさい一夏!今日はアンタの大好きな酢豚弁当よ!ご飯も只の白飯じゃなくて炒飯にしてみたわ♪」

「私のはおにぎりと唐揚げがメインだな。何方もお前の好物だろう一夏?」

「OK、どっちも大好物!俄然食欲がわいて来たって感じだぜ!!」

「一人で二つのお弁当って、凄いですね?私ならばどちらかだけでお腹一杯になってしまいそうですよ……」



まぁ、普通はそうだと思うぜヴィシュヌ?だけど、俺は此れで丁度いいんだよ。
ったく、自分で言ってりゃ世話ないが、マッタク持って燃費の悪い身体だぜマッタク――マドカも俺と同じ位食う事を考えると、織斑計画で生み出された
俺達は、揃って燃費が悪いのかもしれないな。

取り敢えずそれは其れとして、全員到着し次第、新たにやって来た代表候補生との親睦会を始めるとしようぜ。



だがしかし、まさか数分後に特大級の爆弾がカナダ代表候補の片割れから落とされるとは思ってなかったぜ!!――正に予想外のアトミックボムズ・
アウェイ……精神的なグラウンド・ゼロ……有名なのも時には問題なんだと思う事態が待ち受けてるとは予想出来なかったぜ流石に!!










 To Be Continued… 





キャラクター設定