Side:夏姫
並行世界から戻って来て早数日……戻って来た当初は軽く時差ボケ的な状態になってしまったが、其処は束さんの特製活力ドリンクのお陰でスッキ
リ直ってしまったがな――原材料が一体何であるのか非常に気になる所ではあるが、其れは聞かない方が良いんだろうなきっと。
「少なくとも地球上の物質であるとは思うわよ?
あと、イチ君に渡した精力ドリンクに使われていたと思われる材料は使われてないんじゃないかしら?……もしも使われてたら、鈴ちゃんと箒ちゃん
が、ねぇ?」
「其れもそうだが、相手が居るならば未だしも、居ないと普通に地獄を味わう事になりそうだなあのドリンクは。」
今日も今日とて、平和な日常だ……無論其れ自体はとても素晴らしい事だと思うんだが、修学旅行の初日の戦闘以来、ライブラリアンが何もして来な
いのは妙だな?
イルジオンが『大分被害が大きかった』と言っていたが、其れにしても無人機すら寄越さないと言うのは正直不気味だ……余程アタシ達に壊された機
体と散の修理に手間取っているのか、其れとも今は息を潜めて水面下で戦力を増強しているのか。
何れにしても、あの手の組織が沈黙している時と言うのは、大抵の場合ロクデモナイ事を考えている時だから、平和な日々は嵐の前の静けさと思っと
いた方が良さそうだわ。
「そう言えば刀奈、非常に今更かもしれない事なんだが……此の部屋、ベッド2つ要るか?1学期の頃は兎も角として、最近はアタシのベッドしか使っ
てないよな?
普通に寝る時もそうじゃない時も。」
「言われてみればそうねぇ?
ベッド2つだと場所取りになっちゃうから、セミダブルベッドに交換しちゃいましょうか。勿論、生徒会の予算で♪」
「待て、其れは予算の不正利用と職権乱用じゃないのか?そして何故セミダブル?」
「ダブルだと大きすぎるじゃない。セミダブルの方が通常のダブルベッドよりも遥かに安いし。……いえ、其れよりも先に一夏君と鈴ちゃんの部屋を3人
部屋に改装して、部屋割り編成で箒ちゃんも同室にして、3人で使える巨大ベッドを入れるべきかしら?」
「よし、真剣に如何でも良い事で悩むのは止めようか刀奈。」
「そうね、やっぱりまずはこの部屋のベッドからよね。」
「いや、そうじゃない。」
この後、何故かこの話題の事で彼是意見を言い合う事になり、最終的には『今のベッドをリサイクルショップに売り払って、其れで得た金を資金に足り
ない分を2人で折半してセミダブルを購入する』と言う事で落ち着いた……まぁ、それ以前に学校の備品を勝手に生徒が処分して良いのかと言う問題
がある訳なんだけれどね。
尚、こんなしょうもない話題に時間を使ってしまい、処理すべき書類が全く手付かずだったせいで、2人揃って虚さんに叱られたのは、また別の話だ。
Infinite Breakers Break87
『爆誕!独立機動部隊レギオンIB』
Side:イルジオン
京都の一件からそろそろ2週間が経つが、壊れた機体は未だ修理が出来ていないのか教授?それから、散の奴の右腕も。
「そう、急かすモノではないよイルジオン……機体にしても散君にしても、只直してやれば良いと言うモノではないのだよ――どうせやるのならば強化
してやらねばツマラナイだろう?
其れに、この間IS学園に光学迷彩を纏ったドローンを送り込んだのだが……蓮杖夏姫君の機体がパワーアップしていた。更識楯無と共に、『学園最
強』として君臨している彼女の機体が強化されたとなれば、此方も戦力を強化しなければならないだろう?」
「オリジナルの機体が強化されただと?……アイツの機体は、臨海学校の時に二次移行した筈だが、其れなのにか?」
「正確に言うのならばドラグーンが強化されたようだね。
映像を見る限りでは、ドラグーンに搭載されているビーム砲塔が2つに増えていた――其れから、ドラグーン自体の動きも、以前よりも滑らかに洗練
されているように感じたよ……此れは単純に、夏姫君の操作技術が向上しただけでなく、ドラグーンの反応速度も向上したと見るべきだろう。
早々あり得る話ではないが、ドラグーンの方が夏姫君の情報処理能力に付いていけなくなって、強化せざるを得ない状況になってしまったのかもし
れないね。」
「ドラグーンの強化か……」
ドラグーンの方がパイロットの命令に付いて行けなくなるなどと言う事は通常は考えられない事だが、私やオリジナルの場合に限っては充分あり得る
話ではある事だ。
『超人』である私達ならば、常人では考えられないような事をしてしまっても、何ら不思議はないからな……それ所か、より強くなったと言うのなら、私
としても望むところだ。
最強であるオリジナルを倒してこそ意味があるのだからな。
「時に教授、何を見ているんだ?」
「あぁ、此れかい?
いやなに、少し息抜きにアメリカ国防総省のメインコンピュータにハッキングをかけて機密情報を見ていたのだよ……流石は大国アメリカ、ISに搭載
する為の兵器も素晴らしい性能の物ばかりだ。」
――ガッ!
――ゴン!!
――バガァァァァァン!!
……ハッキングとか息抜きにする事じゃないだろう?
私達は裏世界の組織だから、ハッキングを一々咎めるでもないが、だからと言って息抜きでやる事では絶対にない。
息抜きならもっと普通の事にしろ、殴るぞオイ。
「弩派手に琴月 陰をかましてから言う事でもないと思うのだが……私も伊達や酔狂でハッキングをかけた訳では無いのだよイルジオン。
何か使えそうな情報はないかと思ってね……そしたら、見事に大物を見つける事が出来た――見たまえ、アメリカ軍が行おうとしている極秘作戦の
内容を!!」
「アメリカ軍の極秘作戦、だと?」
言われてパソコンの画面に映し出された作戦指令書を読んでみると……おい、アメリカは本気でこんな事をやろうとしているのか?
成功すれば確かにアメリカは大きな利を得る事が出来るかも知れないが、失敗したら何も得られないどころか、世界中からのバッシングを喰らって国
際社会としての立場を失う事になりかねんぞ?
「確かに失敗したらアメリカは国其の物が失墜しかねないが……此の極秘作戦は、失敗してもアメリカには一切不利益は生じないのだよ。」
「……説明して貰おうか?」
「この作戦に参加する兵士は、『誰1人として存在していない』のだ。
いや、正確に言うのであれば『出生記録』は勿論、其れまでの学歴、米軍への入隊記録及び、その他如何なる個人情報も存在していないだね。」
「如何言う事だ、其れは?」
「この兵士達は、米軍でも最悪と言われている実行部隊でね……この部隊に配属されたその瞬間からその兵士達は社会的に存在しない事になるの
だよ。
出生記録を含めたありとあらゆる個人情報、入隊記録及び其れまでの訓練記録まで完全に抹消された『ゴースト・ソルジャー』となって、アメリカにと
って不都合な存在の抹消や、他国の軍事機密の強奪等の後ろ暗い任務を専門に行う為にね。
仮に任務が失敗し、捕らえられたとしても一切の個人を特定する情報が無いのであれば、米軍の差し金だとバレる事もない……正に『自国が正義』
を地で行くアメリカらしい特殊部隊と言えるだろう。――私個人としては嫌いではないがね。」
「だろうね。寧ろお前の様な外道ならば、嬉々として受け入れそうな部隊だ。」
だがまぁ、デジタルデータでも紙媒体のデータでもその一切が残されて居ないと言うのであれば、篠ノ之束であっても正体を割り出す事は不可能に近
いだろうからね。
しかし、その部隊の事が分かっても解せん……その作戦指令書には『ISRI製の機体を強奪せよ』と書かれているのに、なぜ襲撃する場所がIS学園な
んだ?
確かにIS学園にはISRI製の専用機、其れも二次移行した機体が揃って居るが、其れだけに強奪は困難だぞ?――何よりも、幾ら米軍の特殊部隊と
は言え、汎用の軍事用ISではオリジナル達の機体とは性能差があり過ぎてそもそも勝負にならんだろうに。
ISRI本社にある汎用の量産機を狙った方がリスクが小さいと思うのだがな?
「其処は強欲なアメリカらしい作戦と言うほかないだろう。
だが、彼等とて馬鹿ではない……IS部隊の他に海からISを使わない白兵戦用の兵士も強襲させるらしい――ISでの戦闘ならば未だしも、生身での
戦闘となれば、学生がプロの兵士に勝てる道理は無いと踏んでいるのだろうさ。」
「……米軍は織斑千冬の存在を忘れているのか?アイツならば、プロの兵士が相手であっても1人で1個小隊余裕で潰しかねんぞ。
いや、そもそもにして、もしもIS学園の生徒に被害を出そうものならば、間違いなく全員9割殺しにされるんじゃないのか……正直な事を言うと、本気
でキレた織斑千冬には、最高神ゼウスですら敵わないんじゃないかと思う。」
「微妙に否定出来ないのが辛い所だが、勿論彼女の対策も講じてあるようだ。
実働部隊だけでなく、サイバー部隊も使ってIS学園の機能をマヒさせるようだ……そうなった場合、織斑千冬は指揮官としてマヒした学園の機能の
回復の為に、電脳ダイブの指揮を執らねばならなくなるから、戦士としての彼女を封じられると言う訳だ。」
成程、周到な作戦だ……だが、其処まで周到にやっても成功率は極めて低いと言わざるを得ないな――先ずIS部隊だが、オリジナルと更識楯無がミ
ーティアを装備して出撃すれば其れこそ瞬殺だろう。
電脳ダイブに残りの専用機持ちの半分を当てたとしても、6~7人は残る上に布仏姉妹も加われば白兵戦部隊も鎮圧出来るだろうさ……生身では敵
わなくとも、ISを展開すれば問題ないからね。……正直言って、IS学園の戦力を過小評価していないかコイツ等は?
「まぁ、其れもまた仕方ない。
作戦指令書には『ISRI製の機体を強奪せよ』と書かれているが、その本当の目的は臨海学校の時の一件でイスラエルと共に痛い目を見る事になっ
た事への仕返しみたいなモノだからね。
ゴースト・ソルジャーズを使って、IS学園に一杯喰らわせてやろうと言う、子供じみた意趣返しだよ。
だが、此れは私にとっては良い機会でね……作戦は間違い無く失敗するだろうが、だからと言ってIS学園側とて彼等を全員拘束する事など不可能
だからね……イルジオン、君には捕まらなかった兵士達を捕らえて此処に連れて来て欲しいのだよ。
彼等ならば、良い駒になりそうだからね。」
「……矢張り碌でもない事を考えていたか。――しかも、其れだけではないんだろう?」
「ククク当然だろうイルジオン。
本来ならば、電脳ダイブの訓練の時に仕掛ける心算だったのだが、これ程面白い事が起ころうとしているのならば、その時の電脳ダイブに仕掛ける
と言うのもまた一興だろう?
電脳ダイブ中に起きたトラブルに、さてどう対処するのか楽しみだ。」
そんな物を楽しみにしているのは、世界広しと言えどお前だけだからな?――此処まで性根が腐り切っていると言うのは、ある意味で凄い事と言える
のかも知れんな……勿論悪い意味でだが。
何にしても、この作戦は教授が横槍を入れた所で成功する確率は精々0.01%と言う所だろうな……まぁ、オリジナルが健在ならば有象無象が如何
なっても知った事ではないけれどね。
まぁ、やられた連中は可能な限り捕らえてやるとするか……教授の玩具になるであろう事には同情するが、だからと言って私は何も感じないからな。
精々、教授によって改造されてしまえば良いさ……ぶっ壊れる事が前提の尖兵にな。
オリジナルと戦う事も出来ない退屈な任務になりそうだが、暇潰しに強化されたドラグーンの性能とやらをこの目で確かめてみる事にするか。
――――――
Side:一夏
今日は中間試験の振り替え休日って事で丸一日学校は休み――だから、午前中から剣道部の練習だった。近く新人戦が控えてる事もあってか、皆
練習に気合が入ってたぜ。
特に部長は凄かったなぁ……まぁ、3年生が引退して新しく部長になった直後の大会なんだから、そりゃ気合も入るよな。大会の出場メンバーが本気
でガチだったし。
俺と箒と四十院神楽さんの『1年3強トリオ』は出場可能な試合には全部エントリーされてるからな。(俺は個人戦と混合団体戦、箒と四十院さんは個
人と団体戦と混合団体戦。)
新部長や他のレギュラー陣も全員個人戦に出場するみたいだし……確実に女子個人戦の上位3人はIS学園の生徒が占めるだろうな。
「お疲れ様でした蓮杖君。次の新人戦、頑張りましょう。」
「お疲れ一夏。四十院の言うように、新人戦も頑張ろうな。」
「箒に四十院さん、お疲れ。言われるまでもなくやってやるって……夏の大会に続いて、男子個人の部で優勝掻っ攫ってやるぜ!!」
「篠ノ之さん、貴女の殿方はとても頼りになる御仁ですね。」
「殿方って……いや、間違ってるとも言い難いのだが、今時その言い回しをする人が居る事の方に若干驚いているぞ四十院……」
「でしょうね。自分の言葉遣いが一部古風な言い回しになって居る事は自覚していますので。」
で、部活後の片づけをしながら1年3強トリオで雑談中。……まぁ、確かに四十院さんは物腰柔らかな大和撫子って感じだけど、話し方って言うか言い
回しが、少し古風な所があるよな。
其れも個性だと思うけどさ。
「ありがとうございます。
そう言えば蓮杖君、何時の間にあんな見事なカウンターを身に付けたんですか?」
「あ~~……アレはな、実は密かに箒と練習してたんだ。守りに入った時に、流れを変える為の一手としてな。」
「うむ。
一夏は攻めてる時は鬼のように強いが、守りに入ると弱いと言う訳では無いのだが、使える手の限られる剣道だとやや苦戦する事も珍しくなかった
のでな。其れを是正する為の一手としてカウンターの練習をしていたのだ。」
「そうだったのですか。」
……本当は、並行世界の俺こと『イチ』のカウンターを真似ただけなんだけど、流石に其れは言えないからな。
アイツに出来る事なら、若しかして俺にも出来んじゃねぇかと思ってやってみたら、思った以上に出来てビックリだぜ――それでも、『相手の攻撃が出
切ったのを見てから回避か防御を行ってからのカウンター』ってのは俺には出来そうもないけどな。
――タララ~ン!ダラタラッタッタッタ!(ルパン三世サブタイトルのテーマ)
――問おう……貴女が私のマスターか?
っと、夏姫姉からメールだ。箒にもメールが入ったみたいだけど、なんでメール着信音がセイバーなんだ?――剣繋がりって事か?……だったらセイ
バーよりも佐々木小次郎であるアサシンの方が合ってると思うんだけどな……まぁ、其処は好みの問題か。
しかし、夏姫姉がメールを送って来るってのは珍しいが……
『レギオンのメンバーは至急生徒会室に集合する様に。』
如何やら、電話で話せる内容じゃないらしいな――箒の方に来たメールも、『此れ』と同じか?
「私には楯無さんからだったが、同じ内容だった。――スマンが四十院、私と一夏は急用が出来てしまったので、今直ぐ生徒会室に行かなくてはなら
なくなってしまったので後は任せても良いか?」
「えぇ、大丈夫です。もうやる事は殆ど残っていませんし、後は道場を施錠するだけですのでお任せ下さい。」
「悪いな四十院さん、今度なんか奢るよ。」
「そうですか……では、学食の『極厚レアステーキサンド』をお願いします。あの分厚いステーキを豪快に挟んだサンドイッチを一度は食べてみたいと
思っていましたので。」
「予想外のメニューに驚きだけど、OKだぜ。箒も良いだろ?」
「うむ、其れ位ならお安い御用だ。」
極厚ステーキサンドは高級メニューだけど、2人で出せば其処まででもないからな……てか、てっきりスウィーツ系が来ると思ったら、思いのほかガッ
ツリ肉で来たから虚を突かれたぜ。
外見と好みってのは一致しないんだな。
そんじゃまぁ、生徒会室に向かうとするか――あの文面からすると、レギオンのメンバー全員を生徒会室に集めるんだろうけど、一体何が起きたんだ
ろうな?
ま、行ってみりゃ分かるか。
――――――
Side:夏姫
さて、此れで全員集まったな?……レギオンの全メンバーが集結しても尚、生徒会室には余裕があるのだから、生徒会室がドレだけ広いかが良く分
かると言うモノだな。
流石に、ソファーを入れても全員分の椅子は無いから、何人かは立ったままだったり、机に腰掛けたりしているけれどね。――序に時間が昼時だった
と言う事で、アタシを含めた全員がおにぎりやらサンドイッチやら、簡単に食べられるモノを持って来ているな。
「して姉上、何故私達は生徒会室に集められたのだろうか?」
「其れは今から説明するよラウラ。」
サンドイッチを頬張りながら聞いて来るラウラ……可愛いな、うん。
並行世界のラウラがアレだったので、何と言うか何時も以上に可愛く見えてしまう……此れもまた、妹分と言う存在に対しての贔屓目と言うモノか、そ
れともこれも一種の姉馬鹿なのか、其れは分からんがな。
さて、皆に此処に集まって貰った理由だが、此度我々レギオンIBは、IS学園学園長の轡木十蔵殿から特殊権限を認めてもらう事が出来た。
「特殊権限って、何だ夏姫姉?」
「其れはな一夏、アタシ達は学園長から直々に『独立機動権』を与えて貰ったんだ――正確に言うのであれば、修学旅行後に生徒会から申請してい
たモノが認可されたと言う事になるのだけれどな。」
「其れはどっちでもいいが、独立機動権と言うのは素晴らしいな?
つまり私達は此れから、有事の際にはフユ姉さんに指示を仰がなくとも、自分達の判断で行動する事が可能になると言う訳か……此れは、学園側
にとってもメリットが大きい訳だ。」
「その通りなのよマドカちゃん。
織斑先生が指揮し、スコール先生が隊長として立ち回る教師部隊は、使用機体がウィンダムになった事も有って、充分な戦力なのは間違いないの
だけれど、学園の指揮下にある部隊である以上、学園長が織斑先生に出撃許可を出して初めて出撃が可能になるの。
更に、其処から教師部隊に出撃命令が伝わって、ウィンダムを動かせる教師がISスーツに着替えてからウィンダムを起動して、漸く出撃……あまり
にも出撃までに時間が掛かってしまうわ。
スコール先生はゴールドフレームを、山田先生はデスティニーウィンダムを夫々待機状態で所持しているから即時展開が出来るけれど、自分のISを
持っていない教員はそうも行かないからね。
そういう意味でも、私達レギオンIBが学園の指揮系統から外れた独立機動権を得た事の意味は大きいわ――ほぼ全員が専用機を所持している上
で独自の判断で動く事が出来ると言うのであれば、有事の際に即動く事が出来るのだから。」
「成程な……そりゃ最高じゃねぇか楯無。
元々亡国企業は、現場の判断で動く事が多かったからこっちの方がオレの性に合ってるってモンだ……ケルベロスの牙は、誰かに命じられて其の
鋭さを顕わにするモンでもないからよ!!」
「おぉ、流石はダリル!その凶暴さにメロメロっす!」
その特殊権限が『独立機動権』だと言う事を伝えてやったら、思いのほか反応が良かったみたいだな?……立場上は『学園公認の非正規部隊』と言
う、少しばかりオカシナ立場ではあるが、通常の指揮系統に組み込まれていない非正規部隊であるのならば、楯無が言ったように有事の際に即対処
する事が可能になるから学園側にとってもプラスになるモノだ。――まぁ、だからこそ学園長も認可したんだろうがな。
「つまり、アタシ達レギオンIBはIS学園公認の集団になったって事ね……良いわね、燃えてくるじゃないそう言うの!!
此れからは、何かあった場合でもその都度千冬義姉さんの許可を得る必要もないって事でしょ?……てか、敵が攻めて来たその時に、一々迎撃許
可とか待ってられないし!!」
「鈴お姉ちゃん、その思考若干物騒だから……でも、通常の指揮系統に属してないって言うのは良い事、なのかなラウラ?」
「うむ、有効ではあるぞ乱。
通常の指揮系統に属している部隊では、その指揮系統の中でしか戦う事が出来ないが、通常の指揮系統に属していないのであれば、極論を言え
ば『何でも出来る』訳だからな。
故に、非正規部隊が暴走しないように、部隊を纏め上げる隊長の手腕が問われるのだが……姉上が隊長になるのであれば大丈夫だろう。」
でだ、ラウラが乱に非正規部隊の利点を説明してんだが、なぜ其処でアタシが隊長になると言う話になるんだ?と言うか、隊長は此れから決めようと
思ってたんだけどな?
……其れだけラウラに信頼されていると言う事なのかも知れないが……
「ラウラ、アタシが隊長になると決まった訳では無いから、既にアタシが隊長になるのが決まっているような事は言わないでくれ……と言うか、アタシよ
りも隊長に相応しい奴は居るだろう?」
「ん~~~……如何だろう?
確かに楯無さんや、虚さんも隊長としては良いかも知れないけど、私も夏姫を推すかなぁ?」
「静寐やラウラの言うように、やっぱここは夏姫姉が隊長だろ?ってか、今までも夏姫姉が号令かける事が多かったし、もっと言うならガキの頃から夏
姫姉って自然と周りを引っ張ってくリーダータイプだったから隊長にピッタリだろ?」
「と、言う訳で隊長は夏姫で良いわね♪」
「待てコラ楯無、静寐と一夏の言う事は兎も角として、何をさらりとアタシを隊長にして終わらせようとしているんだ?と言うか、お前は年長者として、生
徒会長として、更識の当主として隊長を務めようとは思わないのか?」
「逆に、生徒会長で更識の長だから、更に非正規部隊の隊長までやる事になったら肩書過多で肩凝り起こしちゃうわよ♪……虚ちゃんは隊長って言
うよりも、裏方の黒子って言う感じだから、そもそも選択肢から除外だし♪」
隊長を引き受けない理由が軽いなオイ。
まぁ、確かに虚さんは隊長と言う感じではないが、だからと言って本当にアタシが隊長で良いのか?……1年であるアタシが隊長だって言うのは如何
かと思うんだが……
「いえ、貴女が隊長で問題ないわ夏姫……6年前も貴女が私を引っ張って居てくれたおかげで、ストリートチルドレンとしてそれなりに生きる事が出来
たし、ISRIのメンバーになった後も、有事の際には貴女が周りを引っ張っていく事は少なくなかったわ。
そう言った事を総合的に考えると、貴女以上に隊長に適任な人物は居ないと思うわよ夏姫。」
「マリア……子供の頃から苦楽を共にして来たお前にそう言われてしまっては断る事も出来ないか――だが、本当にアタシが非正規部隊の隊長で良
いのか?」
「夏姫姉が隊長で良いと思う人挙手!」
「はい!!」
「「はい!はい!!」」
「「「はい!はい!!はい!!!」」」
……まさかの満場一致か。
よもや、アタシが反論出来ないレベルの満場一致でアタシが隊長に抜擢されるとは思わなかったが、其れだけ期待されていると言うのであれば、アタ
シは其れに応えるだけか。
「満場一致か……ならば、不肖蓮杖夏姫、隊長を務めさせて貰うとしよう。」
「ふふ、頼りにしてるわよ夏姫♪」
「尚、隊長権限で副隊長には楯無を指名するから。もう決めたから異論は認めない。」
「はぁ!?ちょ、其れは権力の横暴じゃない!?」
「そうかも知れないが、楯無よこんな言葉を知っているか?……『使える時に使わないで、何が金と権力か!!』『此れが権力だ!!』『権力さえあれ
ば思いのままだ。』『最高の力ってのは財力でも暴力でもない、権力だ。』『権力か……気に入らねぇな。』。」
「最後のは若干、的外れじゃない?」
「其れは突っ込むな。」
まぁ、冗談はさておき、アタシが隊長を務めると言うのであれば、副隊長はお前以外には有り得んぞ楯無……一夏は副隊長と言うガラではないし、マ
ドカも同じくガラじゃない――と言うか、お前と静寐とマリア以外は、副隊長としては論外だ論外。
「ちょ、論外ってのは言いすぎじゃねぇか夏姫よぉ?」
「なら聞くがダリル、お前自分が副隊長に向いているとでも?と言うか、アタシが上げた3人以外は副隊長よりも隊員として現場で派手にドンパチかま
す方が得意だと思うんだが其れは如何思う?
異論があるのならば聞くが?」
「いや、確かに其の通りではあるけどよぉ……けど、何で候補が3人居るのに楯無なんだよ?」
「マリアと静寐は、確かに副隊長としての器があるとは思う。思うんだが……アタシに何かあった場合、此れだけ個性の強い面子を纏め上げる事が出
来ると思うか?
と言うか、出来そうかマリアも静寐も?」
「無理ね。」
「1組の面子纏め上げるよりもある意味難しいと思う。」
「つまりそう言う事だ。」
副隊長には、時として隊長に変わって隊員を纏め上げなければならない事がある……そうなった場合、楯無でなければこの面子を纏め上げる事など
出来んぞ?
何よりも、アタシがお前に副隊長を任せたいんだ……其れでも受けてくれないか楯無?
「ふぅ、確かに私でなければ夏姫が不在の際にこの面子を纏め上げるのは無理だろうから、副隊長の任は受けさせて貰うわ――何よりも、私に任せ
たいだなんて言われたら断れないしね。
考えてみれば自由と正義は、並んでこそ其の力を最大限に発揮出来るのだから、私が副隊長にならない理由は存在しないわ……副隊長として、し
っかりとサポートさせて貰うわ。」
「そう来なくてはな……頼りにしているぞ楯無。」
「ふふ、任せなさいな♪」
此れで非正規部隊改め、独立機動部隊の隊長と副隊長も決まりだな……アタシ達の出番なんてモノは無いに越した事は無いんだが、有事の際には
其の力を最大限発揮出来る様にはしておかなねばならないだろうね。
まぁ、話と言うのは此れで終わりだから此れで解散――
――ヴン
『やっほ~~!レギオンの皆聞こえるかい~~♪』
しようとした所で、突如束さんから通信が……と言うか、行き成り光学ディスプレイで通信入れてくるのいい加減に止めてくれませんかね?流石のアタ
シ達でも行き成りだと驚きますから。
で、何かあったんですか束さん?貴女が、行き成り通信を入れて来る時と言うのは、大抵何かあった場合ですよね?
『なっちゃん大正解!
実はね、IS学園を襲撃しようとしてる奴等が居るんだよ、ライブラリアン以外でね……まったくの偶然なんだけど、IS学園の周辺は何もないかな~
~って調べてたら、IS学園に向かってる武装集団を発見したんだよ。』
「「「「「「「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」」」」」」」
ライブラリアン以外でIS学園に襲撃しようとして居る奴等が居る、だと?
女性権利団体は潰したからその線は無いとして一体何者だ?……何処の馬の骨とも知らない奴が、襲撃を仕掛けてくるとは良い度胸だと言ってやら
なくも無いが、此れは流石に予想外だったよ。
――まさか、学園から独立機動権が認可されたその日に、其れを行使する事になる事態が起きてしまうなどと言う事はな……!!
To Be Continued… 
キャラクター設定
・四十院神楽
剣道部に所属している黒目黒髪の純和風少女で、箒とはまた違った大和撫子と言った感じの美少女。
柔らかな物腰で、誰に対しても敬語で話すが、剣の腕前は超一流で、生身の状態であれば一夏や箒ともタメ張る位の実力の持ち主だったりする。
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