Side:夏姫


正直キツイ、予想以上だ……まさか女子からの視線が此処までキツイ物だとは……今なら動物園のパンダの気持ちが分かるぜ――ってな事を
考えてるんだろうな、一秋の奴は。



「多少の差異は有れど、略同じ事を考えているんじゃないかと思うわ夏姫。」

「まぁ、女子校であるIS学園に放り込まれた異物である2人の男子の片割れがクラスに居れば、注目されるのも当然とは言え、御愁傷様だ。
 同情する気は全く無いが。」

と言うか、睨んでいる暇があるなら助けてやったらどうだ金髪ポニテ?……アタシの記憶が確かなら、お前はあの馬鹿を慕ってた筈だろ、散?



「その通りだが、6年ぶりの再会とあって、戸惑っているようだなアイツは。」

「箒か……6年ぶりか、久しいな?」

「あぁ、久しぶりだな夏姫?
 ……白騎士事件が起こってから数日、お前が行方不明になり、死亡したと聞いたが、生きていたんだな?……良かった、本当に。」



両親の遺産はクソ共にくれてやったが、アタシ自身をやるつもりはなかったからね……貿易船に潜り込んで国外逃亡した訳さ――今は詳細を伏
せるが、色々有って今のアタシは同姓同名の別人なんだ、戸籍上はな。
まぁ、だからと言って何が変わる訳でもない……また会えて嬉しいよ箒。



「あぁ、私もだ。……時に、彼女は?」

「マリア・C・レイン……アタシの仲間だ。」

「マリア・C・レインよ、宜しくね箒さん?」

「篠ノ之箒だ。此方こそ宜しく頼む。」

「ファーストコンタクトは上々なようで何よりだ。
 それと、一夏もこの学園に来ているぞ?知ってるかもしれないがな――一夏が居るのは2組だから、休み時間にでも会って来ると良い。」

「テレビで、一夏を見た時には驚いたぞ?しかも織斑ではなく蓮杖とは……若しかしてお前達は。」

「お察しの通り姉弟さ、戸籍上だがな。」

「戸籍上か……何やら深い事情があるようだが詮索はしないでおく。……後で、一夏にも会いに行ってみる。」



そうしてやってくれ。
しかしまぁ、一秋は兎も角として、箒と再会するとはな……恐らくは束さんの妹だからと言う理由で、IS学園に強制入学させられたんだろうが、果
たして其れは如何なんだ?
まぁ、おかげでアタシ達の縁を紡ぎ直してくれたと考えるなら悪い事でもないかも知れないけどね。











Infinite Breakers Break8
『IS学園入学~Let's Beginning~』










んで、そんなこんなをやってる内に、1年1組の副担任である山田先生が現れ、挨拶をしたんだが……其れに対して答えを返したのが、アタシと
マリア、そして箒だけってのは如何なんだ?
挨拶に返すのはマナーだと思うんだがな……見た目のせいで、舐められてるのかも知れないな山田先生は。

実際は可成りの実力者なんだが……其れを示す機会が無ければ、此のままだろうなきっと。

なんて事を考えてる内に自己紹介が始まり、一秋の番がやって来たんだが……



「えっと、織斑一秋です。
 2人目の男性操縦者と言われていますが、そんな事は気にせずに、気軽に話しかけてくれると嬉しいかな?――趣味は読書とナンプレ。
 不慣れな事も多くて迷惑をかけるかも知れないけど、宜しくお願いします。」



歯の浮くような自己紹介だな此れは?
名前だけ言って終わりよりは遥かに良いかも知れないが……好印象を与える為の自己紹介と言うのが見え見えで、正直気分が悪いな?
尤も、其れを感じる事が出来るのは、幼い頃からのアイツを知ってるアタシと一夏、其れと箒と鈴と束さん位だろうと思うがね。……一秋の本性を
知らなかった千冬さんも『格好をつけるな』位は思うかもしれないが。

が、思った以上に反応が薄くて戸惑っているみたいだな?
其れも仕方ないんじゃないか?……お前は所詮2番目……真の1番目である一夏と比べたらネームバリューが可也下がるからな。



「ふ、多少は真面な自己紹介が出来た様だが……もう少し工夫した方が良いぞ織斑?」

「げぇ、呂布!?」

「誰が三国志の豪傑だ馬鹿者!!」




で、此処で千冬さんが登場し、一秋の脳天に『絶対無敵の出席簿』をかます……まぁ、幾ら千冬さんが強くても、呂布は無いだろ呂布は。
千冬さんは女性なんだから、其処は王元姫位にしておけ……まぁ、不用意な事を言って飛び火させる事も無いから口には出さないがな。



「すまないな山田先生、SHRを任せてしまって……マッタク、毎度の事ながら無駄に会議を長引かせようとする奴が居て困る……」

「お疲れ様です織斑先生。」



如何やら千冬さんが遅れたのは会議のせいみたいだな?――無駄に会議を長引かせる……大方、物事が決まる直前で異を唱える奴が居るん
だろうな?自分をアピールしたいだけの脳足りん(誤字に非ず)が。
そんな奴はさっさと解雇してしまえと思わなくも無いが……其れよりも問題なのは、今のクラスの状況だ!
千冬さんが挨拶した瞬間に黄色い声が上がって、文字通り空気が震えたぞ!?……音は不可視の兵器となるとは聞いた事があるが、まさか本
物の音響兵器を体感する事になるとはな……



「マッタク、如何して毎年毎年こうして馬鹿が集まるのか……其れとも、私のクラスに意図的に馬鹿共を集めているのか……」



その気持ちは分からんでもないが、今は逆効果だぞ千冬さん?
……今ので、更に一部の生徒が暴走して音響爆弾と言っても過言ではない程の黄色い声を上げているからね?……あ、窓に罅入った。



「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!すっごいイケメン!!」

「二枚目だけど、顔の傷が漢の魅力を倍増させてるわ~~!!」

「だけど既に嫁が居たーーー!おのれ、神は居なかったのか!!」

「だけど彼が居るだけで、後10年は戦える!!お母さん、産んでくれてありがとう!
 今年の母の日には、造花じゃない生のカーネーションを送るね!!」




そして追撃のように隣の2組からも黄色い歓声が……此れは一夏が自己紹介したな?……何やら鈴が予め予防線を張ったみたいだがね。
其れと最後の奴、本当に感謝してるならもっと良い物をプレゼントしろ。……親が居なくなってから『あぁしとけば良かった』と言うのは、後の祭り
だからな。

まぁ、ちょっとしたハプニングは有ったがSHRでの自己紹介は続き……



「セシリア・オルコットと申します。
 イギリスの代表候補性を務めさせて頂いていますが、此処では私も一生徒に過ぎません……共に学んでいきましょう。」

「「!!」」


アタシとマリアにとっては衝撃の展開が待っていた。
今自己紹介した奴……セシリア・オルコット、だと?
……馬鹿な『セシリア・オルコット』は6年前のあの日に死んだ事になってる筈だ。スコールさんが、現場にセシリアの死の痕跡を捏造したんだか
らな。
何よりもセシリア・オルコットは、マリア・C・レインとなって此処に居る……なら、あのセシリア・オルコットは一体何者だ?

……如何やら、6年前の『セシリア・オルコット暗殺事件』は、まだ本当の意味で終わってはいないみたいだな。



「その様ね夏姫……よもや、嘗ての私を名乗る者が現れるとは思わなかったわ……」

「まぁ、予想しろと言うのが無理だ――其れよりも、お前の番だぞマリア。」

「そうね。
 マリア・C・レインです。ご存知の方も居ると思いますが、ISラビットインダストリーの企業代表を務めています。
 趣味は、読書と音楽鑑賞、其れとお菓子作りです。先ずは1年間、宜しくお願いしますね?」



うん、無難な自己紹介だな。
尤も、趣味のお菓子作りを『料理』と言い腐った場合には、速攻でダウトを突き付けたけどね……こう言っては何だが、マリアの菓子以外の料理
は殺人兵器だからな?
つまみ食いする方も如何かと思うが、つまみ食いしたオータムさんが冗談抜きで三途の川を渡り(異界送りされ)かけたからね。
一夏と鈴が教えているが、この『歩く毒物生成機』に人並みの料理の腕を仕込むのは前途多難だろうなぁ……と言うか、一体全体何処を如何や
ったら、只のハムサンドから鉄の味がするのかを知りたいものだ。
こう言っては何だが、マリアの料理を使えば毒物が検出されない毒殺が可能なんじゃないかと思ってしまうな……正に完全犯罪だ。

なんて、しょうもない事を考えてる間にアタシの番か。

「蓮杖夏姫だ。マリア・C・レインと同様に、ISラビットインダストリーの企業代表を務めている。
 序に言っておくと、2組に居る初の男性操縦者である蓮杖一夏は、アタシの双子の弟だ……因みに一夏は既に彼女持ちだから、アプローチを
 考えていた奴は諦めろ。
 ……少々話がずれたが、趣味はチェスとギター演奏だ。
 まぁ、企業代表とかそんな事は気にしないで接してくれると助かる……特別扱いされるのは、あまり好きではないんでな。」

まぁ、こんな所か?――って、如何してクラスの連中は、アタシを見ているんだ……?



「「「「「「「「「き……」」」」」」」」」」

「き?」

何だか嫌な予感がする……マリア、耳を塞げ!!



「「「「「「「「「「きゃーーーーーーーー!!」」」」」」」」」」



そして、予感的中か!!
ガラスの罅が、更に増えたぞ!?……一体全体何処に狂喜する要素がアタシの自己紹介にあったのか……小一時間ほど問い詰めたい気分だ
ぞマッタク……!!



「千冬様とは違う、キリっとクールなハンサム女子……キタコレーーーー!!」

「クール系ハンサム女子……お前なら、私を満足させてくれるかもな。」

「グデーリアンは言った『並の男子よりも、ハンサムな女子』と!!」

「クールなハンサム女子……最高にハイって奴だ!!」

「是非ともお姉さまと呼ばせてください!!」



突っ込み所が満載だが、特に最後の2人には突込みしかないな……小学校の時から、同性からのラブレターを貰ってたが、アタシは同性受けす
るのかマリア?



「まぁ、否定はできないわよ?
 少しきつめだけれど切れ長の目はクールな印象を与えるし、後で一本に束ねながらも、実は二本に分かれてる独特の髪型は私から見てもカッ
 コいいもの。
 其れに、万年男日照りの女子校に、男子以上にカッコいいハンサム女子がやって来たらモテて然りよ夏姫。」

「……激しく納得いかん……」

まぁ、此れもまた運命と受け入れるしかないか。
だが、其れとは別にセシリア・オルコットの事は調べておかないとな……実力の程は分からないが、アイツを捨て置く事は出来ないからね。








――――――








Side:一夏


予想はしてたし覚悟はしてたけど、此れは予想以上にきつかった!!ドレ位きつかったかって言うと、マリアのドラグーンの攻撃を全部避けるっ
て課題くらいにきつかった!!!
こう言っちゃなんだけど、鈴が居なかったら俺潰れてたかも……



「大袈裟ねぇ?
 ……まぁ、たば姐さんが、学園にハッキングしてアタシとアンタを同じクラスにしてくれたんだろうけど……確かに一緒のクラスで良かったかも知
 れないわね一夏?別のクラスだたら、もっときつかったでしょ?」

「そりゃ間違いなくな。」

とは言え、俺が注目されてるのは1人目って事+自己紹介の時に、鈴が『一夏はアタシの旦那だから』って言ったのも大きいよな?……まぁ、俺
も調子に乗って『鈴は俺の嫁な?……もしも鈴を泣かせたら、斬るぜ?』って言ったのが決定打だったかもしれないけど。



「えっと……此方のクラスに、蓮杖一夏君は居るだろうか?」



誰か来たみたいだな?って、アイツは箒か……!?
居るのは知ってたけどまさか来るとは思わなかったぜ、此れは若しかしなくても、俺の事を夏姫姉から聞いたな?
……蓮杖一夏は俺だ、何か用か?



「あ~~……その、少し話したい事があるんだが、屋上までご足労願えるか?」

「え~~っと……行ってきても良いか鈴?」

「良いわよ、行ってきなさいよ一夏。
 別に、他の女子と話をする位で嫉妬する程、アタシは器の小さい女じゃないつもりだし?」



まぁ、其れは知ってるけどな?ってか、お前が独占欲強かったら、女性の方が多いISRIでの生活で、俺は何度か殺されかけてると思うから。
って言うか、相手の事を好きなのは良いと思うけど、独占欲が強いってのは如何なんだ実際?……あんまり束縛したら、絶対に愛想を尽かされ
ると思うんだけどなぁ?
――恋は、盲目って奴なのかもな其れは。

そんじゃあ行くか。休み時間は限られてるからな。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



で、屋上にやって来た訳だが、さて、何をどう話したもんだろうな?
此処は箒の方から話すのを待つのが上策か……



「蓮杖一夏……お前は、私の知っている『織斑一夏』で良いんだよな?……夏姫から聞いたんだが……」

「やっぱ夏姫姉から聞いてたか……あぁ、その通りだよ箒。俺は『織斑一夏』――と言うよりも『織斑一夏』だった存在だ。
 今の俺は『蓮杖一夏』だからな。」

「……お前に一体何があったのかを聞きたい所だが、今は時間もないし、其れは追々聞かせて貰う事にする。
 改めて、久しぶりだな一夏?」



あぁ、6年ぶりだな箒?
6年前と比べたら大分大人っぽくなったけど、一目で箒だって分かったぜ――髪型が、あの頃のままだったし、誕生日にプレゼントしたリボン、ま
だ使っててくれたみたいだしな。



「大人っぽく?……ふふ、そう言って貰えると嬉しいな。
 この髪型はお前が褒めてくれたモノだから変える気がないんだ――此のリボンも、大事な物だから、直しながらずっと使って居るよ。」

「其処まで大切にして貰えたらプレゼントした方としても有難いぜ。
 そう言えば、去年の剣道の全国大会で優勝してたよな?テレビ中継を見てたけど圧倒的だった――『姉妹対決』って謳われてた決勝戦が、蓋
 を開けてみれば姉の圧勝だったからな?」

「まぁ、アレは姉としてのけじめのつけ方だな。
 散はあの大会、剣道とは程遠い、暴力の剣を振るって相手を叩きのめしていたからな……そんな愚妹を叩き伏せねば、アイツの暴力に傷付け
 られた人達に申し訳が立たないからな。」



あぁ……成程。
あの大会の散は、何かにイラついてて、そのイラつきを竹刀に乗せて、感情のままに相手を攻撃してたからな……正直、あそこまで醜い剣を見
たのは初めてだったぜ。

んで、本題は何だ箒?まさか、世間話をする為だけに俺を屋上に連れ出した訳じゃないだろ?



「あぁ、その通りだ。
 ……一夏、私は子供の頃からお前の事が好きだった!だから、私と付き合ってくれないだろうか?」

「ほわ!?」

だから他の目的が有るって思ったんだが、此処でまさかの告白だと!?
目をつむって、顔を真っ赤にして拳を握ってる箒は可愛い……じゃねぇ!!!いや、この箒が可愛いのは否定しないぜ?大抵の野郎は、この箒
を見たら撃沈だろうからな?

だけどゴメン箒……俺はお前の思いに応える事は出来ない。
俺にはもう大切な人が居るんだ――だから、ゴメン。



「……矢張りダメだったか……初恋は叶わぬとは言うが、その通りだったな。
 寧ろハッキリと言ってくれた事に感謝したいくらいだ――曖昧な答えでお茶を濁されていたら、私も諦めきれなかっただろうからな。」

「矢張りって、予想してたのか?」

「2組から聞こえて来た絶叫で、2組の男子生徒に彼女が居ると言うのは予想していたし、あのツインテールの子の存在が決定打だった。
 あの子が、お前の大切な人なんだな一夏?」



あぁ、その通りだよ箒。
彼女――凰鈴音が、俺の一番大切な人なんだ……折角勇気を出して思いを告げてくれたのに、本当にゴメン。



「謝らないでくれ……正直に言うと、覚悟はしていたのだ。
 お前と再会したその時に、お前の隣に私以外の誰かが居ると言うのはな……私とお前は、あまりにも永く離れ過ぎていた……なれば、お前に
 大切な人が出来いてもオカシクは無いし、其れに対して私が彼是言うのはお門違いだ。
 お前が私に振り向かなかったのは、6年前に一歩踏み出す事が出来なかった私のせいだしな……」

「箒……」

「だが一夏、私はお前の大切な人には成れなかったが、私の友ではいてくれるのだろう?」



……何言ってんだよ、当然だろ?
夏姫姉は俺の姉で、鈴は俺の彼女だけど、異性の親友が誰かと聞かれたら、俺は間違い無くお前だって即答するぜ箒?――改めて、此れから
も宜しくな親友?



「あぁ、改めて宜しくな一夏!」



一度繋がった縁は簡単には切れないって言うけど、箒との縁は正にそうかもな。
尚、教室に戻って来た際に、鈴と箒は何かが通じたのか、無言で握手を交わした後、肩を組んで高笑いしてた……こう言っちゃなんだが女子っ
てのは良く分からないぜ……夏姫姉に聞いても、多分分からねぇよな?
まぁ、取り敢えず鈴と箒が仲良くなってくれてよかったぜ。








――――――








Side:夏姫


SHR後の休み時間、箒は2組に行ったみたいだったが、アタシとマリアの所には一秋(バカ)(アホ)が来て、色々面倒だったな。
まぁ、相手にする必要もないと思ってたから、無視を決め込んでいたが……金髪ポニテが木刀で殴りかかって来たしね――尤も、束さんから護
身用として持たされていたコンバットナイフ『アーマーシュナイダー』で木刀を切り落としてやったがな。
ストライクに搭載されていたのと全く同じアーマーシュナイダーは、PS装甲以外の大概の物を切り裂けるから、木刀など紙に等しいさ……木刀を
折られたアホの顔は見物だったがな。

序に、私が木刀を切り落とした辺りで箒が戻って来て、散に鉄拳制裁を喰らわせていた……うん、アレは痛そうだ。一撃でKOされたからな。
其の事に対して一秋が抗議していたが、箒が『行き成り木刀で殴りかかる馬鹿には当然の制裁だ』って言って黙らせた……うん、間違いなく正
論だと思うぞ箒。

そんな訳で休み時間も終わり、1時限目が始まった訳だが……まぁ、内容は基礎的な物だから、アタシやマリアからしたら復習をしている様なモ
ノだな?ISRIでは束さんやスコールさんにみっちり教え込まれたからね。

まぁ、意外だったのは一秋が意外とISの事を理解していた事だな?
一夏はストライクを起動したその日から、ISの事を自ら学んでたから知ってるのは当然として、起動して3ヶ月も経ってない奴がソコソコ分かって
るとは、腐っても天才と言う事か……だからと言って、参考書を電話帳と間違えて捨てるのは如何かと思うがな。

因みに、箒の鉄拳でKOされた散は、授業が始まっても目覚めず、千冬さんの出席簿アタック(スーパーコンボレベル3)で強制的に覚醒させられ
ていた……二段重ねのタンコブを、現実で見る事になるとは思わなかった。

そして、今は1時間目の後の休み時間なんだが……

「アタシに何か用か、布仏?」

「えへへ~~、用って程でもないんだけど、ちょっとお話してみたくってね~~?」



話をする位なら構わないが……何と言うかのほほんとした奴だな布仏は?
確かフルネームは『布仏本音』だったから……ふむ、その雰囲気と名前から、お前は『のほほんさん』だな。うん、我ながら良いネーミングだ。



「お~~、いいね~~?それじゃあ蓮杖さんはナッキーなのだ~~!」

「夏姫の『つ』を小さい『つ』にしたか……ならば、マリアはどうなるんだ、のほほんさん?」

「其れは勿論マリリンだよ~~♪」

「マリリン……まぁ、悪くはないわね?」



渾名を付ける才能があるのか、のほほんさんは……小学校の時にも、こう言うのが得意な奴が居たなそう言えば。
しかしのほほんさんも物好きだな?よりにもよってアタシに話しかけてくるとは――普通なら、あっちの男性操縦者2号の方に興味を持ちそうだと
思うんだが?



「ん~~~~……なんて言うかおりむーはちょっと嫌な感じがするんだよね~~?見た目は爽やかだけど、腹の中は真っ黒的な感じで。
 それに~、ナッキーの方が絶対凄いよね~~?だって、楯無お嬢様と引き分けたんでしょ~~?」

「は?知ってるのか?
 と言うか楯無お嬢様って……お前、楯無の使用人か何かなのかのほほんさん?」

「フッフッフ、何を隠そう、私のお姉ちゃんが楯無お嬢様の専属メイドで、私はその妹のかんちゃんの専属メイドなのだ~~!」

「……聞きましたかマリアさんや、専属メイドですってよ。其れも姉妹に1人ずつ。」

「更識楯無さんは、実は物凄いお嬢様でいらっしゃいますのね……私達庶民とは縁遠い世界ですわね夏姫さん。」

「マッタクだな~~。」

まぁ、マリアの場合はストリートチルドレンになるまでは、メイド付きの生活とかしてそうだけどな。
取り敢えず、のほほんさんと言う新たな仲間が出来たのは良いとして……一秋には件のセシリア(仮)が何やら言いよっているみたいだ――大
方、エリートぶって男性操縦者の面を拝みに行ったと言う所か。

其処から何やらヒートアップしていたが……一秋、お前幾ら何でも『代表候補性って何?』は無いだろ……クラスの殆どが盛大にずっこけたぞ?
ガチで知らなかったのか、それとも只の挑発かは知らんが、此のカウンターには流石に面食らったようだなアイツも。

――で、一秋がこんな状態なら、絶対に散があのセシリア(仮)……面倒だからパチモンに木刀で殴りかかりそうなモノだが――



「放せ姉さん!あの無礼な金髪を成敗させてくれ!!」

「無礼な金髪はお前もだろうが、この愚妹が!良いから大人しくして居ろ!!」



成程、箒がフルネルソンで拘束していた訳か……完璧に決まったフルネルソンからの脱出は難しいからな。
あ、そのままドラゴンスープレックス行った。うん、高さ、角度、ブリッジ共に100点満点の見事なドラゴンスープレックスだったぞ箒。

そして、箒のドラゴンスープレックスが炸裂したと同時にチャイムが鳴り休み時間終了。
パチモンが一秋に何か言ってたみたいだが、結局何がしたかったんだろうなアイツは……何も面倒事が起きなければ良いんだが、恐らく其れは
望み薄だろうなぁ……はぁ……



そして2時間目が始まった訳だが……



「其れでは次の授業に入る……と言いたい所だが、先ずはこのクラスの代表を決めてから授業に入る事にする。
 クラス代表とはその名の通り、このクラスの代表――再来週に予定されているクラス対抗戦を始め、学園のイベントにクラスの代表として出場
 する事になる役職だ。
 他にはまぁ、一般校の学級委員の様な仕事が大半になる。尚、就任したら1年間は交代できんから其の心算でいろ。
 自薦他薦は問わんが、自薦する者は其れなりに実力がある者だけにしておけ。代表とは、このクラスの顔でもあるのだからな。」



クラス代表か……まぁ、積極的に立候補する奴はいないだろうな。
千冬さんも暗に『自薦は己に自信がある奴だけにしろ』って言っていたからね……あのパチモン辺りは立候補しそうだが、どうにもそうじゃないら
しい……何か考えがあるのか?

だがまぁ、自薦者が居ないとなれば……



「はい!織斑君を推薦します!!」

「私も!!」

「折角の男子なんだから、これを使わない手はないでしょ!」

「って、俺!?」



まぁ、そうなるだろうな。
本当の1人目は2組に居るとは言え、世界で2人しか居ない男性操縦者の事を、女子高生が放っておくはずもないからな?実力は兎も角、希少
価値で代表に推薦されるのは当然だろうね。



「はいは~い、其れじゃあ私は、ナッキーもとい蓮杖夏姫さんを推薦するのだ~~!」

「へ~、アタシか……って、何をしてくれてるんだのほほんさん?」

「え~?だって、入試試験で学園最強の生徒会長と引き分けたナッキーの方が代表に相応しいかなって。
 試験官は普通訓練機なのに、かいちょーは専用機を使ってたにも拘らず時間切れの引き分けって事は、ナッキーの実力はロシアの代表と同
 レベルって事だもん♪」

「おうふ、そう来たか……ならアタシはマリアを推薦する!
 ISRIの企業代表の中で、最短の試験官撃破記録を持ってるからなマリアは。」

「……夏姫、私を巻き込まないでくれる?」

「冷たいな?苦楽を共にしてきた仲じゃないか……アタシが面倒事を受けるなら、お前も受けろと言う理不尽だ。」

そして、千冬さんの性格的に、推薦された者に拒否権はないだろうからな?
……実際に、一秋が『拒否権は!?』って聞いて『無い』と一蹴されてたからな……一秋が一蹴された……うん、駄目だな寒い親父ギャグは。



「ちょっと待って下さい!そのような選出は納得いきませんわ!!」



っと、何やらパチモンがいちゃもんを付けて来たな?
顔を真っ赤にして、如何にも『私怒ってます』と言わんばかりの表情だ……マッタク、セシリア・オルコットの名を騙るなら、もう少し淑女としての振
る舞いを身に付けろよ。
アタシと会った時のマリアは、10歳でありながら既に淑女としての振る舞いを身に付けていたんだからね。



「蓮杖さんと、レインさんはまぁ良いとしましょう、企業代表ですし。
 ですが、男がクラス代表だなんて、恥さらしも良い所ですわ!
 実力からすれば、私がクラス代表になるのは必然にして絶対!……其れを、物珍しいと言う理由で下賤な男にされては困りますわ!!」



……なら、立候補すれば良いだろうに。
まさか、推薦待ちだったとか言わないよな?だとしたら、自信過剰の大馬鹿野郎としか言いようがないんだが……と言うか、此のパチモンはアタ
シが最も嫌いな『女尊男卑』の輩か。

抗議の声を上げてからは、まぁ出るわ出るわ、男性への差別発言の雨霰。
其れだけなら未だしも、果ては日本国その物に喧嘩を売るような発言までし腐ってくれたからなぁ……と言うか、日本を『極東の島国』って言うな
ら、イギリスだって欧州の島国だろうに。

取り敢えず、これでパチモンがクラス全員を敵に回したのは間違いないだろうな……千冬さんも、額に青筋を浮かべてたからね。
問題は、この場を如何治めるかだが……



「言いたい放題言ってくれてるけど、イギリスだって大したお国自慢は無いだろ?
 あぁ、言うなら世界一料理が不味いって特徴があるか?……完璧な味覚を1とした場合、0.2しかないくせに偉そうな事言うなよなライミー?」

「――!貴方、男のくせに私の祖国を侮辱しますの!?」

「先に俺の祖国を侮辱したのは、アンタの方だろ?」



一秋よ、何故余計な事を言う?
否、コイツは此処でパチモンをやり込めて、クラスにおける自分の好感度を高めようって言う魂胆なんだろうが……此れは、如何足掻いても面倒
な事になるのは避けられないだろうな。

やれやれ、IS学園入学初日から、色々と面倒事が起きてくれたみたいだが……取り敢えず、退屈だけはしなくて済みそうだな。



「れ、蓮杖さんの不敵な笑み……我が人生に一片の悔いなし!!」

「クール系美女のニヒルな笑みが此処までとは……此のままでは終わらんぞーーー!!」



……其れよりも先ずは、このクラスの馬鹿共を如何にかする必要があるかも知れないけれどね……まぁ、精々楽しませて貰う事にするわ。
取り敢えず一秋だけでなくセシリアの名を騙るパチモン……此の2人は、潰すの一択だがな――!











 To Be Continued… 



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