Side:束


戦局はなっちゃん達の圧倒的優勢って所で、女権団の馬鹿共が持ち出して来た新型とやらも敵じゃないんだけど……もうじき決着が付くって言う所
で介入して来たアイツ等は何者だ?
ザクとグフを伴ってきた以上は、此れまでちょっかい出してた馬鹿共だとは思うんだけど、それ以上に気になるのは、その一団を率いてた黒いフリー
ダムだね。
束さんが独自に開発したストライカーパックシステムをパクったウィザードとか言うのを搭載してるザクにもムカつくけど、束さんの傑作機であるストラ
イクに、なっちゃんが独自の改造を加える事で誕生したフリーダムをパクるとか良い度胸してんじゃんお前等……束さんは、ケンカは好きじゃないけ
ど、売られたケンカは買う性質なんだよねぇ?
だから、キッチリそのケンカ買ってやろうじゃないか。

うーちゃん、ローエングリン展開。黒いフリーダムとザクとグフをブッ飛ばす。

「うーちゃんって、私の事ですか束博士?」

「他に居ないっしょ?
 布仏虚だからうーちゃん。他に何が?」

「……其れで行くと本音はどうなるのでしょうか?
 夏姫さんからは『のほほんさん』と呼ばれている様ですが……」

「君は……のほほんちゃんで良いよね。って言うか、それ以外の呼び方が思いつかないし。
 其れよりも君からは、束さんと同じ波動を感じるんだよね~~……君って周囲の事は関係なく割とマイペースでしょ?絶対にマイペースだよね?」

「ほえ~~?どうだろ~~?
 でも~~、自分のペースは崩さないよ~~?」

「良し、充分同類だよのほほんちゃん。」

其れよりもローエングリン展開!あのふざけ腐った奴等をぶっ殺す!!



「お気持ちは分かりますが、少し落ち着いてください束博士。
 あの混戦状態の所に陽電子砲を放ったら、夏姫さんやお嬢様を巻き込んでしまいかねません……其れに、如何やらあの一団は此方と敵対する意
 思はないようなので、ローエングリンを放つのならば女権団の母船が良いのではないかと愚考します。」

「言われてみりゃ、其れもそうだね。」

まぁ、ローエングリンをブチかました所でなっちゃん達は余裕で回避するだろうけどさ。
しっかしまぁ、本気であの黒いフリーダムは何者なんだろうね?……なんて言うか、嫌な予感しかしないんだよねアイツからは――なっちゃん達が
負けるとは思えないけど、勝ち負け以上の何かを、アイツは持ってる気がするんだよ。
此れが、私の杞憂である事を願わずには居られないね。










Infinite Breakers Break65
女権団壊滅!されど、謎は尽きず』










No Side



黒いフリーダム率いる黒いザクと黒いグフの一団が戦闘に参加した事で、戦場は正に混沌として来た訳だが、状況としては亡国企業&謎の一団vs
女権団と言う構図になっているので、女権団の旗色が更に悪くなったのは間違いないだろう。


「邪魔だ……道を開けろ。」

「自由と正義の道を閉ざす事は出来ないわよ。」


そんな中でも、矢張りピカ一の活躍を見せているのは夏姫のフリーダムと刀奈のジャスティスだ。
ISRI製の機体の中でも抜きんでた性能を持っているフリーダムとジャスティスだが、此の2機……と言うか、夏姫と刀奈が組んだ時の強さたるや、敵
の方がドン引きする程の馬鹿強さだった。
元々フリーダムとジャスティスは姉妹機であり、近接メインのジャスティスを、射撃・砲撃主体のフリーダムが支援する事を主眼に置いていたが、フリ
ーダムとジャスティスが二次移行した事で、此のコンビネーションは単純な前衛・後衛スタイルではなくなっていた。


「そんな、なんで当たらないのよ!!」

「高威力のビームバズーカも、当たらなければ意味は無いな。」


女権団のメンバーが操る、ドムトルーパーのビームバズーカの砲撃を悉く回避した夏姫は、擦れ違い様にビームサーベルを一閃してドムトルーパー
の頭を切り落とし、更に迫りくる女権団のメンバーを2丁ビームライフルで的確に撃ち落として行く。


「ハイっと!此れは如何かしら?」

「背部のリフターが!うわぁぁぁぁぁぁ!!!」


刀奈は背部のリフターをパージして女権団のメンバーにぶつける。
ジャスティスの背部リフター『ファトゥム‐01』は、普段はジャスティス用の高機動バックパックだが、此のリフター自体に多数の武装が搭載されて居
る為、本体からパージした状態では単騎の飛翔斬撃武器として機能するのだ。
機首にビームサーベル、ウィングにグリフォンビームブレイドを搭載したファトゥムは、進行上に居る女権団のメンバーとザクとグフを切り裂いて撃破
していく。


「逃がさないわよ!!」

「!!」


ファトゥムの突撃から逃れた敵を逃がす事なく、脚部のグリフォンビームブレイドを展開した、文字通りの『殺人キック』で爆発四散させる――今の夏
姫と刀奈のコンビネーションは、機体の特性すら超えた隙の無い物となっていたのだった。
だが、特筆すべきが夏姫と刀奈であったからと言って、他のメンバーが活躍していない訳では無い。


「アイン、此れは返すぞ!」

「おっと、確かに返して貰ったぜコキア……そんじゃまぁ、俺の真髄を味わって貰おうかな。」

「サイレス、返すぞ。――デストロイを撃破した以上、此れは私には不要だからな。」

「マドカちゃん、本当の所は?」

「もしも使う事が許されるのであれば、此のロマンあふれるレーザーブレード対艦刀をもう少しだけ使って居たかった――が、此のバルムンクを自在
 に使えるのはお前だけだろう?
 ならば、その真髄を奴等に叩き込んでやると良いさ。」

「成程成程……で?」

「取り敢えず、兄さんに上等かましたクソッタレをぶっ殺せ。神や仏が許さなくとも私とちー姉さんが許可する。
 兄さんを殺そうとした時点で、女権団の連中は、1万年続く苦しみを1万回繰り返す地獄に送らねば気が済まんのでな……ぶっ殺せサイレス!」

「ブラコン此処に極まれりだけど、その意見には同意だよマドカちゃん。
 勿論、1機1人たりとも逃さない――そんな訳だから、斬り倒させて貰うからね?」


箒は一夏にエクスカリバーを、マドカは静寐にバルムンクを返し、その瞬間に一夏は得意のエクスカリバー二刀流で女権団の機体を切り伏せ、静寐
もまた、バルムンクをブレードの背で連結させた『斬馬刀』形態にすると、圧倒的な攻撃力をもってザクとグフだけでなく、有人機であるドムトルーパ
ーも斬り捨てて行く。
こうも簡単に有人機を撃破出来る事には違和感を感じるかも知れないが、ISRIの元々のメンバーだった夏姫達は兎も角、後発的にISRIの所属をな
った箒、静寐、清香、癒子は、現在の世界情勢を見る限りISは紛れもない兵器であり、IS学園とはその兵器を使う人材を育成する場所だと理解して
居たが故に、兵器を扱う心構えを――時には人の命を奪う事があるかも知れない覚悟を決めていただけだ。
実際に経験がなくとも、その覚悟が有るか無いかと言うのは、戦場で明確な差が出るのである――その覚悟がない女権団のメンバーは、次から次
へと撃墜されているのだから。


「此れまで好き勝手やって来たんだ、もうここいらで終わっても良いだろう。」


――ガシャン!

――ピ、ピ、ピ、ピ、ピ

――バガァァァァァァァァァァァァァァン!!



更に此処で、夏姫がドラグーンを展開しての『ドラグーンフルバースト』をブチかまし、ザクとグフだけでなくドムトルーパーも多数葬る――計17門の
火力を解放した攻撃は凄まじく、この一撃で50機以上のザクとグフとドムトルーパーを粉砕!玉砕!!大喝采!!!
そして其れだけだはなく……


「此処が貴様等の死に場所だ……其れを受け入れるが良い。」


黒いフリーダムもドラグーンフルバーストを敢行!
尤も、拡張領域から呼び出されたドラグーンは、夏姫のフリーダムのドラグーンとは違い、ビームエッジを展開して敵を刺突するタイプの誘導型近接
兵器であったらしく、ビームが放たれると同時に女権団に向かって突撃し、頭や胸を貫いて沈黙させる。


「敵の敵は味方とはよく言ったものだ……今、この場でお前が敵でないと言うのは、アタシ達にとっては幸運だったかもしれないな?」

「ククク……私としても、お前にこんな所で死なれてしまうのは本意ではないのでな――まぁ、お前がこの程度の輩に後れを取るとは思わんが、もし
 もの時の事を考えて介入したに過ぎない。」

「だとしたら相当に用心深いが……アタシが、この程度の連中にやられるか可能性があると思われるとは、随分と安く見られたものだな?」

「この世に100%と0%は存在しないと言うのが私の考え方でね……其れを踏まえると、お前がやられてしまう可能性は、0.03%だけ存在しての
 でな――故に介入に踏み切ったと言う訳さ。」


そして、大量の敵を沈黙させた2機のフリーダムは背中合わせに立って、言葉を交わす――共通の敵がある事で共闘状態にあるISRIと謎の組織は
仲間とは言えないが、共通の目的を持つ同志と言えなくもない。
戦闘の構図としては、ISRIもとい亡国企業、女権団、謎の組織の三つ巴だが、実質的には亡国企業&謎の組織vs女権団と言う形になっていた。


「そうかい……こう言ったらおかしいかも知れないが死ぬなよ?お前が何者であるのか知らないままと言うのは、気分がよくないからな。」

「其方こそ死ぬなよ?……勝手に死なれては、私の楽しみがなくなってしまうのでね。」

「口の減らない奴だ……」

「お互い様だろう。」


軽口を叩きながらも両手に保持したビームライフルで敵機を撃破し着実にその数を減らして行く――有人機と無人機を合わせて300機以上だった
戦力も、最早残存数は50%を切っていた。
元より、乗り手と機体の差が大きいのだから、この結果は仕方ないと言えるだろう。
女権団の機体であるザクとグフ、そしてドムトルーパーにはアウトフレームDの様に部分的なPS装甲すら存在していない全身ノーマル装甲である為
に、実弾をはじめとした物理攻撃の耐性が無い事で、本来ならば決定打にならないイーゲルシュテルンの様な小型のバルカン砲であってもシールド
エネルギーを削るには充分なのだ。
加えて、搭載された武装の差も大きいと言える。
ザクはウィザードの換装によって、高軌道型、砲撃型、近接戦闘型を使い分ける事が可能だが、グフとドムトルーパーは装備品が固定なのだ。
しかも、グフは無人機だから兎も角、ドムトルーパーに搭載されているメイン武装はビームバズーカとビームサーベルであり、汎用性はあるモノの尖
った性能を持つ相手に対しては如何しても不利になってしまう。


「オラァ!粋がってたくせに、この程度か!オレを満足させる事も出来ねぇのかよクソが!!」


其れを証明するかの如く、ダリルの操るケルベロスストライクはドムトルーパーを悉く塵殺している。
本来は束が開発した4つ足型の無人IS『バクゥ』に搭載される筈だった『ケルベロスストライカー』を搭載した、ダリルのケルベロスストライクは、外見
が奇怪なだけでなく、まるで腕が4本あるかのようなトリッキーな動きで攻撃を行うために非常に対処がし辛いのだが、近接戦闘武器がビームサー
ベル1本のドムトルーパーでは4方向から来る攻撃を防ぎきれと言うのが、土台無理な話だろう。

いや、ダリルだけでなく、ISRI+ジャンクギルドのメンバーの機体は、全てがパイロットに合わせてフルカスタマイズされた専用機であり、箒とダリル
とフォルテを除くIS学園生徒の機体は二次移行までしているのだからそもそもにして差があり過ぎるのだ。

更に、此処で戦闘に加わった謎の組織の機体も、黒いフリーダムは夏姫のエターナルフリーダムと略同等の性能を備えているが、黒いザクとグフも
女権団のザクとグフよりも高性能――グフは各種武装が強化され、ザクはブレイズ、スラッシュ、ガナーの何れでもない『統合兵装ウィザード』と言え
るバックパックを搭載していたのだ。
更に、生体CPUとして搭載された人の脳にも特殊な処置が施されているのか、女権団のザクとグフとは、明らかに動きの正確さと鋭さが異なってい
たのである。


「ふぅん?実弾兵器とビーム兵器を複合した大型バズーカとは、中々良いモンを使ってるっすね?
 でも、アンタ等じゃ宝の持ち腐れっすから、アタシが使ってやるっすよ。」

「このビームランチャー、中々良いよな?……悪いがオレが貰うぜ此れ。」


挙げ句の果てには、フォルテがドムトルーパーのビームバズーカ『ギガランチャー』を、ダリルがガナーウィザードを装備したザクから超射程ビーム砲
『オルトロス』を奪って使用する始末。
元より、結果が見えていた戦いではあったが、誰がどう見ても此処から女権団が逆転すると言う事は出来ないのだけは明らかだろう。




「そんな、そんな馬鹿な!!
 何故アイツ等が、ザクとグフと黒いフリーダムが私達を攻撃する!!アイツ等は教授の部下だろう……まさか、教授は私達を裏切ったのか!!」


だが、女権団の母艦のブリッジに居た女権団の団長たる女性は、敗北必至の現実よりも、教授が寄越したであろう一団が自分達に攻撃をした事実
の方が信じられなかった。
教授と女権団は持ちつ持たれつの関係で、此れまでも機体を貰う代わりに、教授の依頼――主に、女権団の目的と合致したモノではあったが――
を達成して来た。
今回の『蓮杖一夏抹殺』に関しても、女権団が元々考えていた事ではあるとは言え、其れに踏み切ったのは、偏に教授から『蓮杖一夏を抹殺してく
れないか』との依頼が有ったからだった。
その依頼は女権団にとっては渡りに船であり、早速学園祭に合わせて刺客を送ったのだが……結果は見事に失敗し、其れだけでは済まずに、こう
して完全に追い詰められる結果となった所に、教授が差し向けたと思われる一団が女権団への攻撃――教授が裏切ったのではないかと考えるに
は充分だっただろう。



――ヴン



『裏切ったとは人聞きが悪いね、女権団の団長殿。』

「教授……!!」


そんな中、女権団の母艦ブリッジのモニターに、突如教授の姿が映し出された――完全にハッキングによる介入であるのは疑いようもないだろう。
これ程の事が出来る時点で、教授が束クラスの頭脳を持っているのは確実と見て間違いない。


「貴様、此れは一体如何言う事だ!!
 何故、貴様の部下達が我々を攻撃する!!私達は、持ちつ持たれつのパートナーであった筈だろう!!!」


画面越しに、教授に噛みつく女権団の団長だが、其れを聞いても教授は何処吹く風と涼しい顔――それどころか、口元を偽悪的に歪める余裕すら
あるようだ。


『クククク……私達が君達のパートナーである等と、一体何時から誤解していたのかね?』

「なに?」

『私が君達程度の取るに足らない愚物とパートナーになったと本気で思っていたとは……実に滑稽な事この上ない。
 君達など、私にとっては所詮実験動物に過ぎない――『歪んだ思想を持った者達に力を与えたらどうなるのか?』と言う事を検証する為のね。
 いやぁ、結果は上々だった……君達は、私が与えた力に溺れて、歪んだ『女尊男卑』の思想を世に蔓延らせてくれた……そして、世界は変わって
 しまったのだからね。
 良き結果が得られた以上、実験動物は無価値だから処分すべきだ――だから、君達は此処で大人しく終わり給え。』



そして告げられた事実に、女権団の団長は絶句して閉口するしかなかった――持ちつ持たれつの関係だと思っていたのが、其の実は教授の実験
の為に踊らされていたと知ったら、絶句もするだろう。


「教授……貴様、最初からその心算で!!」

『ククク……無論その通りだが、私との協力関係を是としたのは、他でもない君自身だ――恨むのならば、私の本質を見極めらなかった君自身の
 無能を恨み給え。
 精々君達が、極楽浄土に行ける事を祈らせて貰おう……まぁ、最後まで足掻き給え。』

「教授ーーーー!!!」


女権団の団長が叫ぶと同時にモニターは砂嵐となって教授の姿は消え去ってしまった――其れを見て、女権団の団長は、漸く自分が教授の掌で
踊らされていたのだと理解した。してしまった。


「あは……あはははは!!
 何よ、何よ此れ?私は所詮、アイツの操り人形でしかなったっての?……アハハハハハ!笑えるわ!ホントに笑える!!……だからこそ、アイツ
 等は絶対に生かしておかない!!
 蓮杖一夏も、そして教授の手下も全部ぶっ殺してやるわ!!!
 全部隊に通達……どんな手を使っても良いから、奴等を皆殺しにしなさい!!」


そして、その衝撃は、女権団の団長の心をぶっ壊すには充分だったらしく、団長の目からは光が失われ、口元には完全に理性を失った歪んだ笑み
が浮かび、最後に残った『破壊衝動』のままに行動し、残存部隊に夏姫達の滅殺を厳命する。

其れを受けた無人機だけでなく、有人機も全く戸惑う事無く夏姫達に向かっていたのを見ると、女権団は人の命を奪う覚悟はないくせに、倫理観だ
けは宇宙の彼方のブラックホールに蹴り飛ばしてしまった集団なのだろう。


「馬鹿が……貴様等の思い通りにはさせんぞ。」

「貴女達が私達に勝てると思ってるのかしら?」

「俺達を倒すってんなら、此の100倍の戦力を連れて来いよ――この程度の相手じゃ、エクスカリバーの錆にもならないぜ!!」


――パリィィィィィィィン!!


だが、此処で夏姫と刀奈と一夏の頭の中で何かが弾ける感覚が起り、思考能力がクリアーにある。
次に如何動けば良いかが即座に分かる状態になった事で、女権団のメンバー及び無人機が何かをする前に、其れをカウンターする事が容易となっ
て、攻撃して来るザクとグフとドムトルーパーを鎧袖一触!!

そして、そのまま夏姫と刀奈と一夏は女権団の母艦に向かって突撃!!


「て、敵IS接近!!」

「全武装展開!!撃ち落とせぇ!!」


その状況に完全に恐慌状態となった女権団の団長は、母艦の全武装を展開して、夏姫達を落とそうとするが、艦船に搭載された武装は強力ではあ
るが小回りが効かないために、ISであるのならば避けるのに難はなく、夏姫も刀奈も一夏も芸術的な回避能力を持ってして女権団の攻撃を避けて
避けて、避けまくる!当てられるもんなら当ててみろとばかりに避けまくる!!
其れこそ、某悪魔を狩るアクションゲームの超上級プレイヤーが操ってるんじゃないかと思ってしまう位にスタイリッシュに避けまくる!!


「往生際が悪いな……ジェノサイドカッター!!」


更に黒いフリーダムが、拡張領域から持ち出した真空刃発生装置『ジェノサイドカッター』を使い、女権団の母艦の武装を悉く破壊し、完全な丸裸に
してしまう。
こうなっては、女権団の母艦は只の的でしかない。


「……精々祈れ。」

「此れが貴女達の運命よ。」

「あばよ……来世では、もうちっと真面な生き方を選ぶ事をお勧めするぜ――尤も、地獄に落ちるお前等の来世が何時来るかは知らないけどさ。」


その的となった女権団の母艦を、夏姫はビームサーベル二刀流で切り裂き、刀奈は脚部のグリフォンビームブレイドで両断し、一夏はレーザーブレ
ード対艦刀『エクスカリバー』の二刀流で叩き切ってターンエンド。
そして、其れは同時に女権団の完全崩壊も意味していた――ISの登場で増長してしまった女権団は、今この場に於いて完全にその存在が無くなっ
てしまったと言っても過言ではないだろう。女権団の団長も、母艦もすべてなくなってしまったのだから。
一夏の暗殺に失敗したその時から、女権団の終焉は決まっていたのだ――女権団のやった事は織斑千冬と篠ノ之束に喧嘩を売ったと言う事と同
じなのだから。

何れにしても、此処に女権団は完全に崩壊した。
政府内部に存在していたメンバーも、更識の者達によって全て捕らえられ、議員資格を剥奪された上で檻の中に叩き込まれる事になってしまった
のだから……如何考えても、女権団が再起する事は不可能であった。








――――――








Side:夏姫



ふぅ、女権団との戦いは此れで一先ずはお終いか――総本部が壊滅したとあっては、再起は難しいだろうからね……まぁ、其れをやった張本人の1
人であるアタシが言っても説得力はないかも知れないけどね。
だが、其れよりも、戦いは終わったのだから、お前達の目的を教えて貰おうか、黒いフリーダムよ?



「目的か……広義的な意味では、教授に命じられたと言う事になるんだが――私個人の目的は、お前だよ蓮杖夏姫。」

「アタシが目的とは随分と好かれたようだな?」

ならば其れには応えなくてはなるまい――抱きしめてキスでもしてやろうか?
其れとも、ビームの熱いキスの方がお好みかな?



「個人的にはハグからのキスを望むが、其れはまた次の機会にしておこう。
 私はお前に私の正体を告げる必要があったからね――ふふ、私の顔を見たら、お前がどんな反応をするか楽しみでならないよ。」

「……如何やら、相当に良い趣味を持ってるみたいだなお前。」

アタシの軽口的挑発に乗ってこない時点で、コイツの力は相当なモノだが……改めて聞くぞ、貴様は一体何者だ?



「私が何者であるかか――そうだな、私はお前だよ。」

「「「「「「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」」」」」」



アタシの問いに答える形で黒いフリーダムはフェイスパーツを解除したんだが、其処から現れた顔に、アタシ達は思わず絶句してしまった――解除さ
れたフェイスパーツから現れたのは、アタシその物の顔だったのだからね。
お前は一体?



「さてな……精々、自分が何者であるのかを悩むが良いさ。
 我が名はイルジオン――お前になれなかったお前だよ、蓮杖夏姫……私が言えるのは此処までだが精々悩むが良い、自分が何者であったのか
 と言う事実にな!!」」

「アタシになれなかったアタシ……其れは一体どういう事だ!!」

「其れは、篠ノ之束に聞くと良いさ。――尤も、お前が望む答えが得られる保証はないがな。」



あくまでも語る気はないか――だが、此れだけは聞いておくぞ、お前達の目的は何だ?
女権団を利用したり、無人機を使って学園を襲撃したり、お前達は一体何がしたい?お前達は、この世界を如何しようとしている?



「目的など、上等な物はないが――今回に限って言うのならば、教授の実験結果を確かめに来ただけ、その序に不要になった女権団を潰しに来た
 だけだ……そう言う意味では、お前達が女権団を攻撃してくれたのは都合が良かったよ。
 結果として、女権団を潰すと言う目的は達成出来たし、お前に私の存在を教える事も出来たからな。」

「あくまでも、根っこにある理由を話す気はないと言う事か?」

「私が話さずとも、いずれお前達にも其れが分かる時が来るさ……尤も、教授は大層悪趣味だから、可成り胸糞が悪くなる方法で其れを知らせる可
 能性は否定できないがな。
 ともあれ、目的は果たしたし、お前達と此処で事を構える気はないのでね、私達はここいらでお暇させて貰うとしよう。」



――ボウウン!!



言うが早いか、スモークを発生させるとは……しかもこのスモークにはジャミング効果もあるみたいだな?ハイパーセンサーでもアイツ等の事を探知
出来ん――完全にやられたな此れは。
如何やら連中はこの場から完全に離脱してしまったようだ。追跡は……いや、今は連中を追うよりも学園に戻るのが先か。
だがしかし、黒いフリーダムがフェイスパーツを解除して現れたのがアタシ自身だったとは冗談にしても性質が悪過ぎる……正直な事を言うのなら、
悪夢として斬り捨てたい所だからな。


だが、アタシと同じ顔をした奴が存在するとは、アタシは一体何者なんだろうか?
一夏が『織斑計画』の事で受けた衝撃とは比べ物に成らないかも知れないが、アイツの存在はアタシも可成りの衝撃を受けたからね。


アタシと全く同じ顔をしたアタシの偽物が存在してるとは……幾らなんでも予想出来る筈がないが、アイツの正体は一体何なんだ?
一番可能性が高いのはアタシのクローンと言う説だが、『アタシになれなかったアタシ』と言う言葉が気になるな……?
まさかとは思うが、アタシもまた一夏達を生み出した『織斑計画』の様な実験で生まれた存在だとでもいうのか――だとしたら、アタシもまた誰かに作
られた存在だと言うの?
そうであるとしたら、其れは勿論ショックな事ではあるが、若しそうであるのならば、子供の頃に一緒に暮らしていたアタシの家族は何だったんだ?

考えたくはないが、考えずには居られない――アタシが10歳まで暮らしていたあの家は、家族は、実は嘘であったのではないかと言う事を。

――アタシは一体何者なんだ……アタシの家族は一体何だったんだ?
父さん、母さん、ミツル……あの家は、家族は……誰か、誰か教えてくれ。教えてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!










 To Be Continued… 





機体設定