Side:夏姫


マドカの、引いては一夏と千冬さんの出生の秘密が明らかになった訳だが、だからと言って如何と言う事も無い――出生が如何であろうと、一夏は
アタシの弟であり、千冬さんが歳の離れた友人だと言う事は変わらないからね。
お前達だってそうだろう?特に、鈴と箒は。



「そうね、一夏の出生が如何とか、ぶっちゃけて如何でも良いわ。
 アタシにとって大事なのは、一夏は一夏だって言う事……アタシが好きになった、虐められてたアタシを救ってくれたヒーローだって言う事だから。
 一夏の出生とかは、あんまし気にしないわ。」

「奇遇だな鈴、私も同意見だ。
 私も、私を『男女』と言ってバカにしていたクラスメイトに一撃かまして黙らせた一夏の姿に惚れてしまったからな……正直、一夏がどんな存在であ
 るか等は、大した問題ではないな。」

「鈴、箒……ったく、俺は人工的に作られた存在だってのに、其れは全く問題じゃないって言うとか、ドンだけ胆が据わってるんだっての。
 だけど、そんな俺を受け入れてくれたってのは、正直に嬉しいよ――夏姫姉は俺の事を受け入れてくれたけど、正直不安もあったからな。」

「不安、ね?
 ま、アンタの不安が分かるとは言わないけど、ぶっちゃけそんな不安なんて持つだけ無駄だから、細切れにして犬にでも喰わせちゃう事をお勧め
 するわ。」

「夏姫にも言われた事だろうが、お前はお前だ、それ以外の何者でもなかろう?」

「……だよな。
 ったく、夏姫姉と言いお前等と言い、揃いも揃って人が良いっつーか何つーか……でも、そう言ってくれるとやっぱり安心するもんだぜ。」



ふふ、アタシだけでなく鈴と箒にも受け入れられた事で、僅かばかり残っていたであろう不安も、完全に消え去ったようだな?
こう言っては何だが、鈴も箒も全てを知った上でお前の事を受け入れてくれたんだから、ちゃんと大事にしろよ一夏――もしも、その2人を泣かせる
ような事をしたら、許さんぞ?



「分かってるって夏姫姉……俺が何者かを知っても受け入れてくれた鈴と箒を泣かせる事なんて出来るかよ。
 つーか、夏姫姉の方こそ楯無さんを泣かせるなよ?……って、既に臨海学校の時に泣かせちまったから手遅れか?いや、夏姫姉と楯無さんは同
 性だからノーカンか?」

「いや、知らないよ。」

「ホホホ、アレはノーカンよ一夏君。
 まぁ、夏姫には別の意味で啼かされてるけれど……」



オイコラ楯無、顔を赤らめながら身体をくねらせるな。と言うか人の前でそう言う事を軽々しく口にするんじゃない。
物怖じせず、大っぴらな態度なのはお前の美徳なのかもしれないが、だからと言って発言内容はよく考えろ……と言うか、耳まで真っ赤になる程に
恥ずかしいなら、無理に口にする必要もないだろうに。
まぁ、其れは其れとして鈴と箒のおかげで、一夏に僅かばかり残っていた不安が完全になくなってよかったよ――ホンの僅かであっても、不安を抱
えたままでは、戦闘に支障が出る処だったからな。










Infinite Breakers Break63
女権団をぶっ潰せ!寧ろぶっ殺せ!』










さてと、いよいよ女権団に戦いを挑む訳だが、この戦いに参戦するのは、必然的にISRIに所属するメンバーと、ジャンク屋のギルドに属しているマド
カとフォルテに限られてくるな?
IS学園は直接介入する事は出来ないし、メアリー、ラウラ、乱は国家代表候補だから、こう言った事に手を出すのは拙いからな。――国家代表候補
が、女権団の壊滅に加わったとなれば、どんな事が起きるか分からないからね。
そして、ブリーズは最初から除外だ……復学(?)したばかりな上に、まだ専用機を持っていないし、何よりも未だ信用する為の材料がないからな。



「姉上……其れは重々承知していますが、だとしたら更識姉妹は如何なのですか!
 更識楯無はロシア代表で、更識簪は日本の代表候補だった筈……で、あるにもかかわらず、何故女権団との戦いのメンバーになっているのです
 か!!説明を求めます!!」

「説明か……楯無、頼んでいいか?」

「OK、任されたわ夏姫。
 さてラウラちゃん、私と簪ちゃんは、確かに貴女の言う通りロシア代表と日本の代表候補ではあるけれど、同時にISRIの企業代表も務めている。
 そこまでは分かるわよね?」

「うむ、勿論だ。」

「なら、後は簡単よ。ISRIの企業代表と言うのは、同時に亡国企業に身を置くエージェントでもあるから、女権団との戦いに参加するのは可能なの。
 加えて国家代表や企業代表以前に、私も簪ちゃんも日本の暗部である『更識』の人間……女権団の様な連中と事を構える場合には、更識として
 の存在が最優先にされるから、国家代表や代表候補である事は意味をなさないのよ。
 だから、私と簪ちゃんは女権団との戦いに参加する事が出来るの――Hast du verstanden?(理解出来たかしら?)」

――【此処からは裏の世界】



的確な説明だな。
刀奈も簪も代表の肩書はあるモノの、それ以上に日本の暗部である『更識』の人間だから、こう言った事案の場合には『更識』として動く事が優先さ
れると言う訳だ。それは、分かるだろうラウラ?



「其れは分かる!分かっている……でも、軍人として、姉上達が出撃すると言うのに、私は黙って見ているしか出来ないなど、そんな事は受け入れ
 られん!!
 私も、姉上と一緒に戦いたいのだ!!」

「お前はいい子だなラウラ。」

だが、軍人であるのならば無理を通して道理を引っ込める事は出来ないと言う事は分かるな?
今回の件は、アタシ達の様な『裏の世界』に身を置くものが対処すべき案件だ……だからお前達は、私達が無事に戻ってくる事を学園で祈っててく
れ――そうすれば、アタシ達は必ず戻ってくるからね。



「姉上……分かった。
 姉上達が無事に戻ってくるように祈っている……だから、必ず戻ってきてくれ姉上!!嘘を吐いたら、絶対に許さないからな!!」

「おや?アタシがこれまでに嘘を吐いたことがあったか?冗談は言ったかもしれないが……」

「……ない。」

「だろう?
 ならば私達を信じて待っていろ。私達を信じられないのならば、私を慕うお前自身を信じろ――己が己を裏切る事だけは絶対に無いのだからな。
 Glaub an dich Laura.(自分自身を信じろラウラ。)」

「姉上……Das stimmt, wie du gesagt hast.(そうだな、貴女の言う通りだ。)」

「それで良い……生憎と『妹』を悲しませる趣味はないから、必ず戻ってくるさ。……たとえ、ドレだけ無様な姿になっても必ずな。約束だ。」

命に代えても守るってのは、アタシが一番嫌いな言葉だからね。
命に代えて守る事が出来るのは1度だけだ……本当の意味で守ると言うのなら命に代えてではなく、命の続く限り守るのが本当の事だからな。



「鈴お姉ちゃん……絶対に無事に戻ってきてね?」

「な~に、当たり前のこと言ってんのよ乱?
 アタシが、ってかアタシ達が女権団のクソッタレ共に負けると思ってんの?――確かに今の女権団は法律すら超越した権力を持ってるのかも知れ
 ないけど、立場に縋り付いて喚いてるアイツらは烏合の衆以下の糞雑魚でしかないわ。
 ぶっちゃけ負ける要素が何所にもない=アタシが無事に戻ってくるのは決定事項よ乱!」

「あ、言われてみればそれもそうか。」



鈴と乱の方も話が纏まったみたいだな――それじゃあ、行ってくる。



「姉上、ご武運を!!」

「ふ、任せておけ。」

「鈴お姉ちゃん、勝ってきて!!」

「OK、任せなさい!――女権団の連中は、1匹残らずに滅殺してやるわ!
 ……クソッタレ共に慈悲は無い!抹殺以外の道はないからね――そもそもにして女権団は気に入らなかったら、徹底的に潰してやるわ!!」



ふ、頼もしいな鈴。
そしてその意見には諸手を挙げて賛成だ――女権団は、元々は女性の社会的立場向上を目的として組織されたモノだったが、ISが登場し、其れが
女性にしか扱えないと言う事が判明した途端に女尊男卑、男性排斥を掲げる穿った思想の集団になってしまったからな。
其れだけならば未だしも、学園祭に忍び込んで、あまつさえアタシの弟に手を出したと言う事は到底見過ごして良いモノではない――学園からも抗
議はするだろうが、連中が其れを聞くとも思えんし、何時また今回のような事をしてくるか分からない以上、女権団そのモノを崩壊させる以外の手段
はないわ。

「時に楯無、日本政府の方は如何なっている?」

「フッフッフ、抜かりはないわよ夏姫。
 昨日のマドカちゃんの話の後、直ぐに家の方に連絡を入れて日本政府内にいる女権団のメンバーを洗い出させたわ……後は、私が号令するだけ
 で更識の精鋭達が政府内部の女権団のメンバーを一網打尽に出来るわ。」

「流石は更識の当主様、仕事が早い。」

「お褒めに預かり光栄ね♪ま、束博士が手伝ってくれたからと言うのも大きいのだけれど。」

――【恐悦至極】



更識の情報網に加えて束さんまで動いたとなれば早い訳だな。
アナログ方面から更識、デジタル方面から束さんに調べられたら、アメリカの大統領の個人情報ですら丸裸に出来るだろうからね……大きいだけの
組織でしかない女権団を丸裸にする位は児戯に等しいか。



「いや~~、たっちゃんの家の人達ってホント滅茶苦茶使える人ばっかだから束さん驚きだったよ。
 データの海では探り切れない女権団の個人情報の深部――兄弟姉妹両親の有無だけじゃなく、家族の名前や年齢、果ては女権団の思想にそま
 った肉親の有無までをも引っ張り出しちゃうんだからさ。
 でもまぁ、女権団の事を調べてく内に、今回の事以外でも女権団を潰す理由がスッゴイ沢山見つかったんだよね~~?」

「ほうほう、其れは是非とも聞きたいですなぁタバ姐さん?」

「フッフッフ、幾つかの情報の中の1つを聞いたら、箒ちゃんと鈴ちゃんとちーちゃんは間違いなくブチ切れマッハ一直線レッツ&ゴーだよ?
 女権団のクソ共はね、男性が経営してる店や企業を片っ端から経営難に陥れて潰してんだよね~~……ネット上である事ない事でっち上げて株
 を暴落させたり、実際に店を訪れて店員にクレームを盛大につけて店の評判を下げたりとかね。
 で、こんなのは序の口で夏の全国高校野球大会、通称『甲子園』を廃止させたり、男性アスリートが主役のスポーツを衰退させたのもコイツ等さ。
 下らないよね、男が活躍する世界があるのが間違ってるとか言って、人気スポーツを衰退させちゃうんだから……ま、スポーツ界に関しては、イカ
 れたバカを潰した後で再興させるけどね。資金面とか宣伝とか、そっちの準備は出来てるし、アスリート達だって辞めちゃった訳じゃないし。
 更に更に、女権団は社会的立場のない男性――例えばホームレスの男性なんかを拉致して、自分達の兵器の実験台にしたり、ISを使っての『男
 性狩り』とも言うべきテロを各地で起こしてる事も判明した……束さんのISでふざけた事しやがって。
 其れだけじゃ飽き足らず、IS関連企業に産業スパイ送り込んで技術を盗み出すなんてのは日常茶飯事、日本人が白飯に納豆や生卵掛ける位に
 当たり前のレベル。
 此れだけの事が出来る資金があるのは、株の売買で嘘みたいに大儲けしてるから……まぁ、この辺はいっ君を襲った奴が言ってた『教授』とやら
 が、株の価値を外部から不正に操作してたって見るのが妥当だろうけどね。」



聞けば聞く程、成程女権団を潰す理由しか出てこないな?
よくもまぁ、此処まで最低極まりない事が出来るモノだ……女尊男卑の極みをも突き抜けてるだろう絶対に?……と言うか、女尊男卑の連中は、そ
もそも男性が居なかったら自分が存在しないって事を忘れてるんじゃないのか?
忘れているんだろうな、実際に。或いは考えないようにしているのか……何れにしても、自分に都合の悪い事は考えないか忘れる連中なんだろう。

「聞いているだけで胸糞が悪くなる話ばかりだが、鈴と箒と千冬さんが確実にプッツンする情報ってのは、一体何なんだ?」

「其れはね……3年前にドイツで起きた『織斑一夏誘拐事件』をちーちゃんに伝えなかったのって日本政府の意向じゃなくて、いっ君誘拐の報せを
 受けた外務省の役人が女権団のメンバーで、ちーちゃんの2連覇の邪魔にしかならない情報だって勝手に判断して、外務大臣に伝えなかった事
 が原因だったんだよ。
 もしも、いっ君誘拐の報せを受けたのが女権団のメンバーじゃなかったらちーちゃんには、その情報が伝わってた可能性はスッゴク高いんだよ。」

「と言う事は、そいつがちゃんと外務大臣に伝えていれば、一夏が顔に一生残る傷を負う事は無かったと言う事ですね姉さん?」

「夏姫達が助けに来たから何とかなったけど、そのバカのせいで一夏は死に掛けた訳ね?……よし、殺そう。

束、今すぐ私の暮桜を使用可能にしてくれるか?
 女権団の馬鹿共には、この手で一発かまさねばならない理由が出来てしまったのでな……


「OK、気持ちは分かるけど少し落ち着こうぜちーちゃん。」



……成程、そう言う事か。うん、確かにブチ切れたわ。3人揃って殺意って波動ってるからな。
まぁ、アタシとしてはアレがあったから一夏と姉弟に成れた訳で、其れを考えると其処まで怒りは湧かないのだが、一夏を見殺しにする選択をしたと
言うのはやはり許す事は出来ん――って、何を驚いてるんだ一夏?



「アレって女権団のメンバーの独断だったのかよ?……てっきり国に見捨てられたかと思ったぜ。」

「あぁ、そう言う事か。
 だが、翌々考えてみると、腑に落ちる話だな……4期目の長期政権に入った安武真造首相の内閣だが、安武首相は自国民の安全を第一に考え
 ている、最近の政治家にしては真面な思考の持ち主だからな――そんな彼が、一夏の誘拐を知っていたなら見殺しにする等と言う事は無いだろ
 うからな。
 ククク……アハハハハ!!マッタクもって最高だ束さん!其れを聞いて心置きなく女権団を叩き潰す事が出来そうだ!!」

一夏が誘拐されたからこそ今のアタシ達の関係がある訳だが、そうだとしても一夏を、アタシの弟を危険に晒した女権団なんて存在は此の世から跡
形もなく消し去るべきだ。
政府内部の連中は生け捕りにして法の裁きを受けさせるのだろうが、此れから戦う連中は生かしておかん……泣いて命乞いをしても、そんなモノな
ど無視して滅殺だ。
女権団と言う害虫は、駆除する以外の選択肢はない。



「よっしゃ、女権団全員仏鼓露死。」

「オレの弟分に上等かました落とし前、きっちり付けさせてもらうぜ?」

「夏兄さんにふざけた事をしてくれたじゃないか女権団……纏めてぶっ殺す!!!」



一夏のお姉ちゃんズ&妹もブチ切れたからな。
時に束さん、さっき言ってた一連の情報って、もしかして既にネットに流してたりします?……って言うか、しない以外の選択肢はないですよね?



「勿論、ネットだけじゃなくて政府にも情報をリークしてやったから、政府内部でも女権団狩りが始まってんじゃない?
 それから、女権団の本部には多くの抗議者が殺到するだろうね……女権団は男性だけじゃなく、女尊男卑じゃない女性からも嫌われてたみたい
 だからね。
 つっても、あいつ等は結構な力持ってるだろうから、その場から空中移動要塞で逃げるかもだけどね――束さんの見立てでは、女権団の本拠地
 のビルは、多分変形するくらいはするだろうし。」

「変形するビルってなんだよ其れは……」

だが、そうなってくれれば逆に好都合だ――都心の一等地での戦闘となれば、一般市民への被害を考えなばならなかったが、連中が其処から別
の場所に移ってくれると言うのならば有り難い。
一般市民への被害がない場所での戦闘ならば思い切りやる事が出来るからね。

さてと、のほほんさんと虚さんも作戦には参加すると言う事だったが、其れは『布仏の人間だから』と言う事で良いのかな?



「はい、仰る通りです。
 布仏家は、代々更識家に従者として仕えて来た身。専用機を持たない私と本音ですが、オペレーターとしてサポートさせて頂きます。」

「やっぱり~、更識が動くのに従者である布仏が何もしないって言うのは格好がつかないからね~?頑張ってオペレートするよ~~。」



主が動くのに従者が動かない道理はないか。
布仏姉妹のIS操縦者としての実力は未知数だが、裏方の仕事に関する実力は疑いようもないから、オペレーターと言うのは合っているからな。



「其れよりもナッキーに質問~~。
 アークエンジェルを出すなら、ラウラウ達も乗せてあげても良いんじゃない~?戦闘には出れなくても、近くでナッキー達を見守る事は出来ると思う
 んだけど~~?」

「確かにのほほんさんの言う事も一理あるんだが、『女権団を攻撃した一団の中に国家代表及び代表候補が居た』と言う事が外部に漏れるのが拙
 いんだ。
 女権団は完全に叩き潰すから良いとして、何所で誰がアークエンジェルのホストコンピュータにハッキングをしないとも限らないから、所謂『裏』と関
 りのない生徒が今回の件に携わっていたと言う事は無くしておきたいんだよ。
 其れにラウラの場合は単純なドイツ代表ではなく軍の、其れも一部隊を率いている隊長だ……その隊長が本国の許可なしに女権団との戦いに参
 加したともなれば、最悪の場合ラウラは本国から帰還命令が出て、代表資格と専用機の剥奪なんて事にもなりかねないからね。
 ラウラほど厳しくないにしても、メアリーと乱も同じだ。本国からの帰還命令が出てお偉いさんからの説教は免れんだろうさ――以上の理由から裏
 に属さない生徒は一緒に来ない方が良いんだ。Understand?」

「さっき言ってた『何が起きるか分からない』って言うのは、一緒に行ったら最終的にラウラウ達が困った事になっちゃうからって事だったんだ~?」

「有体に言うのならばな。」

正直な事を言うのなら、戦力は多いに越した事は無いんだが、作戦に参加した事でラウラ達が不利益を被る可能性があるのならば、其れを是とす
る事は出来ないさ。
友としても、姉貴分としてもね。



「ふ、そこまで考えていたのだな姉上は……我々の事を考えてと言うのならば、其れを無碍にするのは良くない。
 改めて、姉上達の勝利と無事を祈って待っているとしよう。」

「そうしてくれ。
 あぁ、だが作戦には参加しなくとも、もしも女権団のメンバーが学園を襲撃して来た時には遠慮なくボコボコにして構わん。襲撃者を撃滅したと言う
 のならば大義名分があるからね。」

「「「了解だ!」よ!」ですわ!!」

「ふ、頼もしい返事だ。」

それじゃあ、改めて行くとしようか?……女権団は叩き潰すしかない相手だと言う事が、完全に明らかになったからな。



「言われるまでもないぜ夏姫姉……こんなふざけた連中は、叩き潰して駆除するしかねぇだろ?
 全員纏めて、エクスカリバーの錆にしてやるぜ!!」

「その意気だ一夏。
 いや、一夏だけでなくこの場に集まった全員が闘気をマックスにしているか……皆、行くぞ!!」

「「「「「「「「「おーーーーーーー!!!」」」」」」」」」



出陣前の気合を入れて、アークエンジェルに搭乗だ。
女権団がどんな飛行艇を持ってるかは知らないが、大天使の翼から逃げられると思うなよ?……自衛隊は日本の領海の外に出てしまえば追い掛
けては来ないだろうが、大天使はそうじゃない。
日本の領海の外だろうと、そんなモノは関係なく貴様等を追い詰めて滅ぼしてやるからな。
亡国企業のエージェントとしての活動は久しぶりだが、其れだけに思い切り暴れさせてもらうさ……久々に、亡国企業のエージェントとしてのコードネ
ームを名乗る事が出来る訳だからな。
『亡霊』を敵に回してしまった事を、精々後悔するといいさ……後悔した所で、後の祭りだろうけれどね。








――――――








No Side


束の読み通りと言うかなんというか、女権団の本部には束が暴露した女権団の彼是に抗議する市民が押し掛け、可成りの混乱状態となっていた。
女権団の本部の敷地は、有刺鉄線付きの柵で囲われている為に敷地内に入る者こそ居なかったが、敷地内には火炎瓶や腐った卵が投げ入れら
れ酷い有り様となっていた。
序に言うと、己の活躍の場を奪われた男性アスリートが、野球選手ならばボールを投げ入れるか、打者がボールをかっ飛ばし、サッカー選手ならば
ボールを蹴り飛ばして女権団のビルの窓ガラスを粉々にしていた。
其れだけならば大した事ではなく、ISを用いれば簡単に制圧出来る事なのだが、女権団のトップは、此処で抗議に来た連中をISで制圧したら、女権
団の評判が悪くなると思い、ビルを飛空艇に変形させての離脱に打って出たのだ。


「兎に角、日本の領海から出なさい!日本の領海を出てしまえば、自衛隊だって手出しは出来ないわ!!」

「り、了解です。」


よほど捕まりたくないのであろう、日本の領海を離れろと言い、女権団の飛空艇は、日本の領海の外を目指して急速前進!!そのスピードは機動
力重視のISを越えるモノであり、あっという間に自衛隊が派遣したIS部隊を振り切ってしまう。
このまま行けば逃げおおせる事が出来たかもしれないが、世の中そんなに甘くない。どれくらい甘くないかと言うと、言峰マーボーに花椒パウダーと
赤唐辛子パウダーをふんだんに加えたくらいに甘くない。むしろ辛い。激辛通り越して獄辛だ。


『申し訳ありませんが、ここから先は通行止めです。』


そんな声が聞こえたかと思った次の瞬間、日本の領海を出た女権団の飛空艇の前には、純白の飛空艇が現れて居たのだから。
その正体は言うまでもなくアークエンジェル――出撃と同時に全出力をマックスにして女権団の飛空艇の前に参上して見せたのだ……流石は束が
設計した飛空戦艦だけあってその性能は相当にチートな物であるようだ。


「んな、私達の行く手を阻むと言うの!!!」

『当然です。貴女達を逃がす理由はありませんので。』


オペレーターである虚が女権団と会話をしている間にも出撃の準備は続く――夏姫達はISスーツに着替え、夫々の専用機を纏った状態でカタパル
トに移動している。


――ピピ

・Generation
・Unsubdued
・Nuclear
・Drive
・Assault
・Module

――G・U・N・D・A・M



そのままOSを起動し、静かに出撃の時を待つ。――そして……



『進路クリア、皆出撃しちゃって~~~♪』

「その言葉を待ってたぜのほほんさん!アイン。ストライク、行くぜ!!」

「ベル。デスティニー、行くわよ!!」

「イエス。プロヴィデンス、発進します!」

「コキア。アカツキ、出るぞ!!」

「サイレス。カラミティ、出撃します!!」

「クリア。フォビドゥン行くよー!!」

「ヒール。レイダー目標を殲滅する!!」

「アクセサリ。バスター……敵を撃滅する。」

「ダリル・ケイシー。ケルベロス、行くぜ!!」

「オータム。デュエル、出るぞ!!」

「スコール・ミューゼル。ゴールドフレーム天、発進するわ。」

「フォルテ・サファイア。アウトフレームD、行くっすよ~!!」

「織斑マドカ。テスタメント……行くぞ!!」

「ノーシールド。ジャスティス……発進する!!」

「プリス。フリーダム、行きます!!」



ダリルとスコールとオータム以外のISRIのメンツは亡国企業におけるコードネームで発進し、女権団へと向かっていく――ISを越えるISが15機も出
て来てる時点で既に勝負は決したと言っても過言ではないのだが、女権団に一切の慈悲をかける理由はないのだから徹底的に潰すべきだろう。



「よし、ミーティアリフトオフ!!」

「「「「「了解!!」」」」」



オペレーターの虚もそう思っていたらしく、アークエンジェルの両側面にマウントされていたミーティアをパージし、フリーダムとジャスティスに合体させ
る――ミーティアとの合体でフリーダムとジャスティスが強化されることを見越してだ。

だが、女権団とて簡単にやられはしない。



「この、私達の邪魔をするってんなら容赦しないわ……ありったけのIS部隊と無人機を出撃させなさい!あいつらを纏めてブチ殺してやりなさい!」

「ハッ、了解しました!!!」


すぐさま保有ISの全てと、無人機で迎撃に打って出たのだが――今回は相手が悪かった。と言うかそうとしか言えないだろう。


「やはり出て来たか……其れだけならば未だしも、臨海学校の時に現れたザクとグフまで居るとはな……如何やら、クラス対抗戦や福音戦の時に
 現れた無人機は女権団のモノとみて間違いないだろうが……先ずはコイツ等を粉砕する!!」

「そうね、一気に殲滅するわよ夏姫!」



――ピピ、ピピ、ピピ


――ギュオォォォォォォォ……バガァァァァァァァァァァァァァァァァァン




すぐさまミーティアを装備したフリーダムとジャスティスがミーティアフルバーストを敢行し、攻めりくるザクとグフを文字通りの鎧袖一触!!
今の攻撃で100体近い無人機を葬った訳だが、此れは戦闘開始の花火に過ぎない。


「どうした女権団この程度なのか?……この程度じゃウォーミングアップにもならないから、もう少し本気でやってほしいな――それとも、今のが本気
 だったのか?
 だとしたら失礼な事を言った、謝るよ。」

「謝る必要はないわ、夏姫の言ってた事は事実なんだから。
 女尊男卑って言うイカレタ思考の狂信者の集団の実力なんて高が知れてると言うモノよ♪」


そして、このフリーダムとジャスティスのミーティアフルバーストを皮切りに、女権団との戦いが始まったのだった。








――――――







Side:イルジオン


如何やら、オリジナル達が動いたようだな?――ならば、私たちも動くとしようか?女権団は、最早必要なくなった烏合の衆だから存在価値なんて
言うモノは無いからな。
まぁ、これまで教授のおかげでいい思いをて来たんだ……ここらで、その代償を払ってもらおうか?
尤も私にとっては女権団がどうなろうと知った事ではないがな……奴等がどうなった所で如何でも良いからな。

私が望むのは、オリジナルとの邂逅、其れだけだ。――私の顔を見たらオリジナルは、一体どんな反応をするのか楽しみで仕方ないからね。



ククク、精々いい反応をしてくれよオリジナル?そうでなくては、マッタクもって面白さも何もないからな。










 To Be Continued… 





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