Side:夏姫


実技試験の初陣を飾るのは鈴か――試験であっても、相手を挑発すると言うのは、攻撃的な鈴らしいが、其れにまんまと乗せられてしまった試験
官のレベルは高が知れていると言っても過言ではなないだろうな。

参考まで、この実技試験は何方が勝つと思う一夏、マリア?



「聞くまでもないだろ夏姫姉?
 この試合は鈴が宣言した通り、1分以内で鈴が勝つぜ?――千冬姉と、あの眼鏡の先生を除いた学園の教師じゃ、俺達の相手じゃないだろ?
 こんな事言ったらアレだけど、秋姉とスコールさんの実力は、IS学園の教師の3倍はあるからな?……そんな人達と訓練して来た鈴にとって、量
 産機を操る試験官なんて敵じゃないって。」

「私も一夏と同じ考えよ夏姫。
 鈴の能力は、相当だから……ハッキリ言ってこの模擬戦は試合にすらならないでしょうね……鈴が一方的に圧倒して終わりでしょうから。」



だろうな。
試験官である教師が、鈴の安い挑発に乗った時点で勝負は決していたのかも知れないけれどね。――尤も、それがなかったとしても、鈴が負ける
事は無いと信じてるがな。


何にしても、相手は良くて一流半だ……だから、さっさと撃滅してしまえ。



『任せなさい、ぶっ倒してくるわ!!』

「OK、ど派手にブチかまして来い。」

私達の先陣を切る形で鈴が実技試験に臨む事になったのだが、まぁ、負ける事は無いだろうね……プライベートチャンネルで通信してる余裕があ
る訳だからな。
先ずは、安い挑発に乗った試験官をフルボッコにしてやれ。

其れだけでも、大いに話題になるだろうからな。











Infinite Breakers Break6
『IS学園入学試験2~実技でも負けない~』










No Side


ペーパーテストを僅か十数分で終えた夏姫達は、ISスーツに着替えて実戦テストの順番を待ち、その中で一番最初に呼ばれたのが鈴だった。
鈴的には、大トリを務めたかったが、其処は気持ちを切り替え、一番最初に呼ばれたのは縁起が良いと考え、己を鼓舞する意味と、相手への挑発
を込めて一発かましたのだが……此れが、如何やら実技試験官の逆鱗に触れたらしく、試験官の顔からはあからさまに『マジで怒ってます』と言う
のが見て取れる。


「(あの程度の挑発でキレるとか沸点低いわね~~?気の短いオータム姐さんだって、あの程度の挑発には乗りもしないってのに。
  此れは、本気で1分で終わらせられるかもしれないわね。)」


其れを見た鈴は、試験官のレベルを即座に見抜くと、溜息を一つ……スコールやオータムと言った、超一流所と模擬戦を行って来た鈴――と言う
かISRIの企業代表である4人にとっては、実技試験官レベルでは相手にならないのだが、其れにしても、鈴の相手の試験官のレベルは可成り低
いとしか言いようがないだろう。



『其れでは、試験開始。』



其れを証明するかのように、試験開始と同時に打鉄を纏った試験官は、イグニッション・ブーストを使って鈴に接近してくる。――速攻で間合いを詰
めて一気に決める心算なのだろう。
其れ自体は悪い戦術でなない――試合開始と同時に間合いを詰められたら一瞬の隙が出来るし、其処を突く事が出来れば、倒せないまでも流れ
を自分の方に傾ける事が出来るのだから。

だが、其れはあくまでも一般的に考えた場合の事だ。


「其れがイグニッション・ブースト?オータム姐さんに比べたら遥かに遅いわ!」


鈴は本当ならば中国の代表候補性になっていただけの腕前があったのだが、ISRIの一員になった事で、超一流所との訓練が出来るようになった
事で、その実力を更に伸ばしていたのだ――故に、開始直後の速攻程度には驚かない。


「此れでも喰らいなさい!!」


試験官の動きを冷静に見極めると、右手にライフルを構え、左腕でゲイボルグⅡを抱えると、バックステップからビームライフル、右肩のコンボユニ
ット、ゲイボルグⅡを一斉掃射!
勿論ビームライフルに搭載されたグレネードランチャーを発射するのも忘れない。
イグニッション・ブーストで近付いてきていた試験官は、虚を突く心算が、逆にこの弾幕攻撃に虚を突かれ方向転換を余儀なくされるが……


「そいや!」

「!?」


その方向転換した方向に、何と鈴がシュベルトゲベールを投擲!
寸での所で急ブレーキをかけた事で直撃は免れた試験官だが、其れが命取りだった――何故ならば、彼女の目の前には双刃式ビームサーベル
を抜いた鈴が肉薄していたのだから。


「んな、この!!」

「ペーパーテストは退屈だったから、実技に期待してたんだけど……期待外れね。」


其処からは完全に鈴のターン。
双刃式ビームサーベルを巧みに操ってペースを握ると、途中で柄の部分からサーベルを分離して二刀流となり、順手と逆手の猛攻で試験官を攻
め立てる。
試験官も打鉄のISブレード『葵』で対抗するも、二刀流の猛攻は防ぎきれず、鈴が逆手に持った左のビームサーベルによって弾き飛ばされてしま
う。
こうなってはもうチェックメイトだ。
打鉄の武装は葵の他に、アサルトライフル『焔火』が存在しているが、近接戦闘に於いてアサルトライフルなど全く役に立たないのである。


再见(バイバイ)。」


そして次の瞬間、順手と逆手の目にも止まらない程の連続斬りが炸裂し、試験官の打鉄のシールドエネルギーが0に!


『試験官、シールドエネルギーエンプティ。凰鈴音の勝利。』

我的胜(私の勝ちね)。」


正に圧倒的な勝利。そしてこの実技試験の試合時間はジャスト1分。
鈴は宣言通りに、1分で勝利して見せ、ISRIの企業代表の力を、IS学園の教師陣に強烈に叩き込んだのだっだ。








――――――








続いて実技試験に臨むのはマリアだ。


「マリア・C・レイン。プロヴィデンス、発進します。」


準備を終えてカタパルトから出撃し、自身の相手を務める試験官と対峙する。
鈴の時とは違い、今度の試験官が纏っているISはラファール・リヴァイブ――打鉄同様に汎用性のある機体だが、打鉄が近接寄りならば、ラファー
ル・リヴァイブは何方かと言うと射撃戦寄りの機体と言える。
射撃戦を得意とするマリアには、良い相手だろう。


「マリアさん、此れはあくまでも試験ですが、だからと言って手加減はしません――貴女も全力で掛かって来なさい。」

「勿論、その心算です。(尤も、鈴があれ程強烈なインパクトを残してくれた以上、私も派手にやらせて貰うけれどね。)」


鈴の時とは違い、今度の試験官はそこそこのレベルであるようだ。
だが、それでも矢張り、マリアの相手ではないだろう。



『試験開始。』



「それでは、ダンスに付き合って下さい先生?……付き合う事が出来たらの話ですけれど。」


試験開始と同時に、マリアは円盤型のバックパックに搭載された5機、左右の腰部アーマーに1機ずつ、後部の腰部に2基搭載された、計11機の
ドラグーンを展開し、四方八方から試験官を攻撃する。


「BT兵器!?
 イギリスの第3世代機が搭載した最新装備を搭載してるの、貴女の機体は!?」

「その通りですが、イギリスのBT兵器と同じとは心外ね?
 此れはBT兵器じゃなくて、ドラグーン……BT兵器を超越した無線誘導攻撃ユニットよ。」


そしてその攻撃はただの空間制圧攻撃ではない。
プロヴィデンスの11機のドラグーンの内、3機の円錐形の大型ドラグーンには9門の、8機のスクエア形の小型ドラグーンには2門のビーム砲が搭
載されている。

9×3=27+2×8=16=43……ドラグーンだけで、プロヴィデンスは43ものビーム兵器を搭載しているのだ。
此れは攻撃される方からしたら堪らない――如何に四方八方からの攻撃と言えど、11本のビームが襲ってくるのと、43本ものビームが襲ってくる
のではまるで違うのだから。


「うわ!?おわわわ!?」


試験官は何とか躱している物の、四方八方から放たれる、合計43本のビームを避け切る事は出来ず、少しずつだが確実にシールドエネルギーが
削られて行く。
何よりも試験官が驚いたのは――


「其処よ。」

「く……11機のビットを操りながら自分も動くとか、どんな情報処理能力を持ってるのよ貴女は……!!」


マリアが11機のドラグーンを操作しながらも、動き回っていた事であった。
本来BT兵器の操作には高い集中力と空間認識能力が求められるため、例え適性があったとしてもBT兵器を操作する場合には、本体が動きを止
めざるを得ないのだが、マリアは其の通説を覆すかのように、ドラグーンを操作しながら動いているのだから、驚くなと言うのが無理があるだろう。

だが、マリアは普通ではない。
生まれもっての驚異的な空間認識能力と並行思考能力を徹底的に鍛えた結果、ドラグーンを操作しながら自由に動くと言う、驚異的な戦い方を会
得したのだ――故に、此れ位の芸当は朝飯前なのである。


「そろそろ終わらせるわ……」


そしてマリアは終幕を宣言すると、イグニッション・ブーストで試験官に近付くと、左腕の大型ビームサーベルを一閃し、試験官のラファールのライフ
ルを破壊する。


「せいや!!」


其れだけなく、マリアは見事な回し蹴りを放ち、試験官を蹴り飛ばす。――だけじゃなく、トドメとばかりにドラグーンとビームライフルを一斉発射!
合計44発のビームを喰らった試験官は……シールドエネルギーが0になり、ISが強制解除され、完全に目を回していた。
誰がどう見たって、マリアの圧倒的勝利なのは間違いないだろう。――尚、マリアの試合時間は59秒と、鈴の1分を1秒だけ上回っていた。








――――――








鈴とマリアが快勝した実技試験の第3試合に登場するのは、今や完全に時の人となった一夏だ。


「鈴とマリアがやってくれたんだ……此処で、俺が負けるなんてのは無しだよな?」

「だな。……行って来い一夏、お前なら勝てるさ。」

「貴方なら勝てるわ一夏……頑張って。」

「まぁ、アンタなら大丈夫だと思うけど……負けるんじゃないわよ一夏!!」


ピットでは、夏姫とマリアと鈴が出撃前の激励を行っていたのだが、何と此処で鈴が、一夏に抱きついてほっぺにキス。


「り、鈴!?」

「えへへ~~……さっきのお返しよ一夏。――絶対に勝って来なさいよ?アンタのカッコいい所、アタシに見せてよね?」

「……了解。此処までされたらやらないとだよな!」


鈴としては、自分が出撃する前に一夏がくれたデコチューのお返しの心算だったのだが、其の効果は抜群!寧ろ、効果は最大だったようだ。
因みにだが、この光景に夏姫とマリアは『まぁ、何時もの事だな。』と半ば納得しているようだだった。

鈴から最大のエールを受け取った一夏は、ブレードストライクを起動すると、カタパルトに入りスタンバイOK。


「蓮杖一夏。ストライク、行くぜ!」


そのままフィールドに降り立ち準備完了。
其の一夏の前に現れた試験官は、ラファール・リヴァイブを纏った、緑の髪と眼鏡が特徴的な教師――筆記試験で、千冬と共に試験官を務めてい
た『山田真耶』だった。


「先生が俺の相手ですか?」

「えぇ、そうです蓮杖君。全力で掛かって来て下さい。」


己の実技試験の相手に少し驚くも、一夏は目の前の真耶は、鈴やマリアが倒した試験官とは段違いにレベルが高いと感じていた。
元々感覚的に鋭い物を持っていた一夏だが、ISRIの一員となって以降は、スコールやオータムと言った超一流所との訓練を繰り返していた事によ
り、その感覚が更に鋭くなり、相対する相手の実力を大雑把にではあるが把握出来るようになっていたのだ。


「(……ルール無用の戦場なら兎も角、ルールの中での試合だったら可成りだな――千冬さんとスコールさんに次ぐ、教師内のナンバー3か。)
 勿論、全力で行かせて貰いますよ山田先生!」

「はい!……私も、今度はちゃんと試験官として戦わないとですから。」

「?……なんかあったんですか?」

「その……織斑一秋君の実技試験の相手も務めたんですけど、男の子が相手と言う事に緊張してしまって、試合開始と同時にイグニッション・ブー
 ストを暴発させてしまい、そのまま壁に突っ込んで衝撃で伸びちゃったんですよ。
 なので、今度はちゃんと確り行きたいんですよ。」

「そ、そっすか……(この人、可成り実力あるっぽいけど、それ以上にドジっ子属性持ちかーーー!?)」


真耶の実力を予想し、警戒していた一夏だが、その後の会話で暴露された真耶の失敗談に心の中で突っ込みを入れていた。

少々脱線したモノの、一夏も真耶もすでに準備は出来ている。
一夏の表情は引き締まり、真耶も柔和な表情から一転して鋭い表情に変わる……


『試験開始。』


遂に試験開始。
まず最初に仕掛けたのは真耶。ラファール・リヴァイブのライフルで一夏に対して先制攻撃を行う。


「うお、何つー正確な射撃だよ!……夏姫姉やマリアとの模擬戦やって無かったら、完全に当たってたぜ今のは!!」

「今のを躱すとは中々やりますね蓮杖君?……でも、マダマダ行きますよ!!」

「ちぃ!!」


其れは回避した一夏だが、真耶は攻撃の手を休めずに次々とライフルを撃って来る――其れも只連射するだけでなく、時には一夏の回避先を読
んだ上で撃って来るのだから、その腕前は相当な物だろう。
対する一夏も、ビームライフルショーティーと二連装リニアガンを使って弾幕を張るが、真耶は其れを回避してライフルを放って来る。


「(くっそ、汎用の訓練機でこの精度とか、専用機だったら夏姫姉の精密射撃上回るだろ絶対!!)」


其れを回避しまくる一夏だが、此のままではジリ貧は明らかだ。
一夏は元々射撃が得意ではなく、幾ら訓練をしても『正確な狙いをつけて撃つ』と言う技術が向上しなかった――故に一夏は射撃は近接戦に持ち
込むための牽制の技術と割り切り、束もそんな一夏の為に精密射撃の概念を取り払ったビームライフルショーティーを開発したのだ。

故に射撃戦では圧倒的に不利なのだ。(其れを示すかのように、夏姫とマリアとのタイマン勝負は、縛りプレイなしでは全敗中。)
だが、其れでも一夏に焦りはない――既に一夏の中で、接近するためのプランは出来ていたのだから。


「此れでも、喰らえ!!」


ビームライフルショーティーを腰部アーマーに戻すと、二連装リニアガンでの攻撃は続行したまま左腕のパンツァーアイゼンのキャニスターから、ビ
ームブーメラン『マイダスメッサー』を抜き、真耶目掛けて投擲!

無論真耶とてそれを簡単に喰らう事は無いが、ライフルを持った右腕を目掛けて投擲された事に依り、回避の為に射撃を中断せざるを得なかった
のだが、その僅かな射撃の中断が一夏にとっては好機だった。


「貰ったぁ!!」

「へ?きゃあ!!!」


その隙を突いた一夏は、パンツァーアイゼンを発射し、先端のグラバーで真耶を掴み強引に自分の元へ引き寄せたのだ――己が最も得意とする
『剣の間合い』に。


「此れは俺の間合いだぜ!!」

「!!」


言うが早いか、一夏はシュベルトゲベールを両手に持ち、真耶に斬りかかっていく。
真耶もラファール・リヴァイブに搭載されているISブレードで応戦するが……戦況は先程の射撃戦とは全く逆の状態になっていた。
即ち、攻める一夏に対して、後手に回る真耶と言った構図になっているのだ。


「ふっ!はぁ!せいやぁぁ!!」

「く……!!(蓮杖君、射撃戦は並程度だけど、近接戦闘に関しては鬼の様に強い!!――此れは、完全に蓮杖君の実力を見誤りましたね。)」


一夏の猛攻を辛うじて防いでいる真耶だが、内心では一夏の実力を見誤っていた事を悔いていた。
試験開始前に対峙した際に、大型のブレードを2本装備した機体である事から、一夏が近接戦闘型であると言うのは予想していたし、近接戦闘型
であるのならば、射撃戦はあまり得意では無いのだろうと考えていた。
そして実際に箱を開けてみれば、射撃戦が得意でないのは直ぐに分かった……弾幕を張る事は出来ても、真耶に対しての精密射撃は、ただの一
度も無かったのだから。
故に近接戦闘にさえ持ち込ませなければ安全だと踏んでいたのだが、実際には一夏は真耶が予想もしない方法で、半ば強引に己の間合いに真
耶の事を引き摺り込んだのだから、完全に予想外だ。

そして何よりも真耶を驚愕させたのは、一夏の剣の腕前だ。
二刀流の剣技と言うのは珍しくないが、一夏が行っているのは身の丈以上の超大型ブレードの二刀流――一本でも扱いが難しいとされる大剣で
の二刀流を普通に行っているのだから驚くなと言うのが無理があるだろう。


「そんな大型ブレードの二刀流をいとも簡単に……蓮杖君、貴方は――!」

「お喋りしてる暇はないぜ先生?――言っただろ、『此れは俺の間合い』だって!」


驚く真耶を他所に、一夏の攻撃は更に苛烈になっていく。
右手のブレードが袈裟懸けに来たと思えば、逆手に持った左手のブレードが逆袈裟に斬りつけ、正に息する暇がない程の猛攻で真耶を畳み掛け
て行く。


「く……でも、負けませんよ蓮杖君!」


だが、真耶も負けじとISブレードと、ライフルを使っての銃剣術で対抗していく――余り知られてはいない事実だが、真耶は嘗て日本の代表候補生
であり、その実力は千冬に次ぐ日本のナンバー2なのである。
その実力を持ってして一夏と渡り合っていたが、真耶は射撃は得意だが近接戦闘はあまり得意ではない故に、近接戦闘に特化した一夏に間合い
を制されては、本来の実力を発揮出来ないでいた。

故に、試験の終わりも唐突だった。


「そろそろ終わらせるぜ……!」


何度目かの攻撃と同時に、一夏が二連装リニアガンを発射し、真耶の防御を崩す。
そしてその隙を逃さず……


「行くぜ、超究武神覇斬!!」


イグニッション・ブーストで真耶に近付くと、2本のシュベルトゲベールを一閃し、次の瞬間には真耶の背後に。
素人目には、一夏と真耶が擦れ違ったようにしか見えないだろうが――


「今回は俺の勝ちだ。」


一夏がそう言ってシュベルトゲベールをストライカーパックに納刀した瞬間に、真耶が崩れ落ちた。
真耶が纏っていたラファール・リヴァイブのシールドエネルギーは0……擦れ違いざまの攻防で、一夏は真耶のラファール・リヴァイブのエネルギー
を完全に刈り取ったのである。

一夏にしか出来ない大剣二刀流の超必殺技である『超究武神覇斬』によって。
左右二択の一瞬16斬と言う人間離れした剣技を放たれては、真耶とて避けようがなかったのだろう――故に、真耶はシールド・エネルギーエンプ
ティとなってしまったのだ。


「へへ、燃えたろ?」

「はい、とてもいい試合でした。」


其れはつまり一夏の勝利なのだが、負けた真耶の表情も晴れやかだった。
負けた悔しさが無いと言えば嘘になるだろうが、それ以上に実力ある若者がIS学園にやって来ると言う事の嬉しさの方が勝ったのだろう――己を
打ち負かした一夏を称える意味で試合後の握手を求める。

無論断る理由は無いので、一夏も其れに応えて握手に応じる。
序盤は苦戦したモノの、中盤からは一夏が圧倒し、世界初の男性操縦者の実力を示した結果となった。

――尚、余談ではあるが、この一夏の勝利に対し、試合を見ていた千冬は誰にも知られる事なく拍手を送っていた。








――――――








Side:夏姫


鈴も、マリアも、そして一夏も実技試験で試験官を倒して、事実上の合格を手にしたか――ならば、アタシだけが不合格になる事は出来ないな?
……まぁ、ペーパーは間違い無く満点だろうから、実技で大チョンボをしない限りは合格確定なんだがね。



「まぁ、夏姫姉なら大丈夫だろ?」

「夏姫、如何か御武運を。」

「相手が誰だかは知らないけど、けっちょんけちょんにしてやりなさい!!」



鈴の物言いはアレだが、まぁ負ける心算は無いさ。
一夏の試験で山田教諭が出てきた以上、アタシの試験には山田先生未満の教師が出てくるだろうからね……流石に千冬さんやスコールさんを実
技の試験官にしたら拙いからな。

ま、誰が相手でも勝って来るさ。――其れじゃあ、行ってくる。



「夏姫姉。」

「「夏姫。」」



「「「勝ってこい!!」」」


「了解。蓮杖夏姫。フリーダム、行きます!」

そうしてフィールドに降り立ったわけだが……失礼だが貴女がアタシの相手なのか?――どう見ても教師には見えないが……アンタは何者だ?



「うふふ、そう怖い顔をしないで夏姫ちゃん。
 私の名前は『更識楯無』――IS学園の生徒会長を務めさせて貰ってるわ。……と言っても正式に生徒会長として認可されるのは4月1日だから
 今は厳密には生徒会長では無いのだけれど……ね?」

「IS学園の生徒会長様か……」

それ程の人が直々に相手をしてくれるなんて光栄だな?――寧ろ、これ以上の相手はいないだろうからね。
楽勝とは行かないだろうが、負ける心算もないんでな……勝たせて貰うぞ更識楯無――覚悟するんだな!












 To Be Continued… 



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