Side:夏姫
学年別トーナメントの結果だけを言うのならば、優勝したのは簪と静寐のペアだった。
バスターとカラミティは、本来何方も砲撃型だが、カラミティは近接特化の『ソードカラミティ』に換装できるのが大きな勝因だったのは間違いないだ
ろうね――この換装機能によって、自在に攻撃レンジを変える事が出来たし、簪も得意の遠距離攻撃に集中する事が出来た訳だからな。
「簪ちゃんも勿論凄かったけど、静寐ちゃんも凄かったわ。
と言うか、武装の換装をアレだけ素早く行える上に、砲撃戦でも近接戦でも、どちらでも95点の力を出せる静寐ちゃんって、若しかしなくても可成
り強いんじゃないかしら?」
「少なくとも、ISRIのテストパイロットをやった3人の中では一番強いと思うぞ楯無。
即座に今最も最適な武装に換装する判断の鋭さに、正確な砲撃と、一夏に匹敵するシュベルトゲベールの二刀流を使う事が出来て、更に常に戦
局を冷静に見る事が出来るからね。」
「成程、才能は有った訳か――尤も、其れも貴女と会わなかったら埋もれていた才能よね夏姫ちゃん?」
「さぁな、其れは分からん。
あの3人は、アタシと出会わなくても、己のやり方で才能を開花させていたかもしれないからね――アタシとの出会いは、単なる切っ掛けに過ぎな
いさ。」
何にしても、トーナメントは中止にならずに全日程を終えたんだが――一秋と散の馬鹿には、重い罰が下されなかった……否、下す事が出来なか
ったと言うのが正しいか?
ラウラが暴走したのと時を同じくして、何者かがIS学園のメインコンピュータにハッキングして、一秋と散が鈴に暴行を働いた映像と、トーナメントでラ
ウラにプラスチック爆弾を投げつけた映像が完全に抹消されており、更にネット上に上がっていた動画までもがすべて削除されていた――そのせい
で、物的証拠不十分で重い罰を科す事が事が出来なかった。
……鈴の怪我が速攻で治ってしまった事も、今回は奴等にとって有利になってしまったか――まぁ、其れでも目撃証言は多数あるから無罪放免と
は行かず、学園に在籍中は常に監視用のチップが搭載された特殊電子ロック式のチョーカーが付けられる事になったが……この程度のペナルティ
では温すぎる気がしてならないぞ?
「仕方ないわよ夏姫ちゃん……状況証拠だけでは、余り重い罰は科せられないのよ――物的証拠に乏しい場合、証拠不十分で無罪放免だってあ
り得る訳だから。
取り敢えず、首輪を付ける事が出来ただけでも僥倖よ。」
「そう、考えるのが良いかも知れないな。
あの首輪は特殊合金製で、アーマーシュナイダーの高周波振動ブレードでも斬る事は出来ないしね。」
だが、今回奴等に厳罰を科す事が出来なかったのは少し痛いな――あの馬鹿共は、首輪付きだと言う事を忘れて、絶対に何かやらかしてくれるん
じゃないかと思うからね。
――まぁ、何かやらかしたらやらかしたで、今度は確りと首輪のチップに記録される訳だから、今度こそ厳罰は免れないだろうけどな。
Infinite Breakers Break35
『タッグトーナメント終了後のエトセトラ』
さてと、1年1組の教室は何時も通りだが、周囲の噂話は一秋と散に関する事が殆どだな?――まぁ、聞こえてくる話は連中のマイナス面の話だけ
だがな。
まぁ、悪評が広がるのは仕方ないだろうね――試合が終わったと言うのに、プラスチック爆弾で攻撃したと言うのは、卑怯を通り越した外道の所業
だからね……クラス代表を決める時に一秋を推薦した子ですら、一秋の事を完全に見限ったみたいだからな。
「クソ、何で天才の俺がこんな目に遭わないといけないんだ……納得できるか!!アイツ等さえいなければ……今頃俺は……!!」
「全てはアイツ等のせいだ……姉さんと連城姉弟のせいだ……!!!
今回の恨み、何時の日か必ず晴らしてやる――!!」
で、その2人が教室に。
一秋は顔面包帯グルグル巻きで、散の方は身体のあちこちに絆創膏を張ってのご登場――なんだが、此の2人が教室に入った途端に、教室内の
温度が感覚的に2度ほど下がったな。
マッタク、アレだけの恥を曝しておきなら、こうして普通に登校してくるとは、大した神経の持ち主だな一秋、そして散よ。
己の行いが招いた行動だと言うのに、勝手にアタシ達を逆恨みすると言うその根性にはある意味で感心するぞ?……絶対に人として見習ってはい
けないモノだと思うが。
「……登校出来たんだ。入院生活かと思ったのに。」
「無駄に頑丈に出来てるみたいだね……って言うか、何であれだけの事して普通に来る事が出来るんだろう?」
「やっぱり織斑先生の弟と、篠ノ之束博士の妹って言う事で深く追及されなかったのかな?……だとしたらオカシクない?」
「本当だよね……なんかもう、クラス代表をリコールしたい気分だわ……」
何と言うかもう、1組には一秋と散の居場所はないと言った感じだな――まぁ、ゴールデンウィークに入る頃には、既にアイツ等にクラスでの味方は
いなかったような気もするけれどね。
しかしまぁ、クラス代表のリコールと言うのはアタシも賛成だ。
「私も其れには賛成するわ夏姫。」
「私もだ。……序に言うなら、姉さんに頼んで散を篠ノ之の戸籍から抹消したい気分だ……」
「箒、心中察するよ……」
「此れは、本気で新しいクラス代表を決めるべきじゃない?」
「そーだそーだ~~!新しいクラス代表を決めるべきなのだ~~!」
「いや、本音はテンション上がり過ぎでしょ……」
「クラス代表のリコール……当然ですわね。」
「クラス代表のリコールだと!?」
「貴様等、一秋をクラス代表から降ろすと言うのか!!」
その心算だが、何か問題があるか?
元々お前は、クラス代表決定戦で全勝したアタシが押し付ける形で代表になった訳でお前も乗り気じゃなかっただろ?――其れに、お前の様な品
性下劣な奴を代表に添えていては、1組の品位や常識に係わるからリコールもやむなしだ。
そんな簡単な事も分からなかったのか天才君?
「お前……俺を舐めるな、凡人風情の分際で!!」
「一秋を馬鹿にするな……貴様は万死に値する!!」
「ヤレヤレ、沸点の低い馬鹿を相手にするのは楽じゃないな。」
一秋と散は殴りかかって来たか……早速自分達が首輪付きだと言う事を忘れてしまっているようだなコイツ等は。トリ頭か?
まぁ、この程度のノロい拳を喰らう程の間抜けではないが、今回に限っては避ける必要はなさそうだ――避ける前に、頼もしいガーディアンが護っ
てくれるみたいだからな。
――ガシィィン!!
「戦う牙も持たん駄犬が、ティーガーに勝てると思っているのか?」
「馬鹿は死ななければ治らないと言うが……如何やらそれは、貴様の事だったか散よ。」
一秋の拳はラウラが、散の拳は箒が掴み取り、そのまま握力を持ってして拳を握っていくか――ラウラの握力は56kgで、箒の握力は恐らく高校生
最強の115kgだから、拳を振り解く事は出来ないだろうね。
と言うか、握力が100kgを越えると開けてないスチール缶を潰す事が出来るらしいから、箒がその気になれば散の拳を文字通り潰す事が出来ると
言う事だな。
「合わせろ、篠ノ之箒!!」
「応!!」
で、其処から2人ともハンマースローで一秋と散を投げて当人同士をぶつけると、箒は袖をまくって右のウェスタンラリアートを散の喉笛に叩きつけ、
ラウラは右足での稲妻レッグラリアートを一秋に喰らわせて、箒とのサンドイッチラリアートを完成させたか。
実に見事な合体攻撃だったぞラウラ、箒。
「うむ、お褒めに預かり光栄だ姉上!」
だがな、行き成り何を言ってるんだラウラ?
『姉上』って、アタシはお前の姉になった覚えはないぞ?――お前は一体何を言っているんだ?
「副官のクラリッサから聞いたのだが、日本では血が繋がって無くとも、尊敬する女性を『お姉様』と言うのだろう?――だが、お姉様と言うのは私
のキャラでは無いので、姉上と言った次第だ。
そう言う訳で、本日この時よりお前を私の姉とする!異論は認めん!!」
「……突っ込み所が多すぎて、何処から突っ込めばいいのか分からんな此れは……」
だがまぁ、アタシの事を『姉上』と呼びたいなら好きにしろ。
と言うか、如何言う訳かアタシの事を『お姉様』と呼ぶ生徒が多いからな――同い年か年上なのに、アタシをそう呼ぶのはオカシイと思うが、特に実
害が無いから良いとしよう。
乱もアタシの事を最近は『夏姫お姉ちゃん』と呼ぶしね。
それで、箒とラウラの変則サンドイッチラリアートを喰らったコイツ等は如何する?……完全に気絶してるから、動かすのも面倒なんだが……取り敢
えず席にだけは座らせておくか?
「誰がやるのだ姉上?」
「アタシはやらないぞ?」
「私も辞退いたしますわ。」
「パス。」
「無視。」
「シカト~~♪」
まぁ、誰もやりたがらないだろうな?
なら放置プレイの方向で良いか……どうせホームルームが始まれば千冬さんが物理的に叩き起こすだろうからね――まぁ、下手したら更に深い眠
りに就く可能性がないとは言えないけれど。
「ホームルームを始めるぞ、全員席に付け。……織斑と篠ノ之妹は如何した?」
「箒さんとラウラさんの合体攻撃喰らって伸びてます。」
「何故、そうなった……と言うか、早速問題を起こした訳かそいつ等は……頭が痛い。」
「何故、と聞かれれば、学年別トーナメントでの数々の無様な姿を曝した上での愚行と蛮行の数々に、『クラス代表をリコールしたい』との声が上が
って、アタシが其れに同調したら、我も我もとリコールの声が上がったんですよ織斑先生。
で、当然それに過剰反応したんで、如何してリコールされるのかを説明してやったらブチ切れて殴りかかって来て、其処をラウラと箒が止めてから
の合体攻撃で撃沈したと言う訳です。」
「成程、良く分かった。
だがまぁ、クラス代表のリコールとはタイムリーだな。
諸君らが望んだように、本日のホームルームは新たな1組のクラス代表を決める事とする――此れは学園長直々に『織斑一秋の様な生徒をクラ
ス代表にしていては困るので、早急に代表を変更する様に』とのお達しがあったからだ。
今回も前回同様、自薦、他薦は問わないので、我こそはと思う者や、この人ならばと思う者が居れば遠慮せずに挙手しろ。
但し、蓮杖姉だけは生徒会の役員と言う事で除外するのでその心算で。」
学園長直々にクラス代表のリコールを命じたと言う事か……学園のトップが決めたとなれば、あの馬鹿ップル(バカップルに非ず)共も従わざるを得
んだろうね。
時に織斑先生、候補が複数出た場合は如何するんです?……流石に今度はISバトルとはなりませんよね?
「まぁ、今度は投票だろうな。」
「あまりにも多くの候補が出た場合は一次投票を行って、その結果の上位二名による決選投票と言う形が良いと思いますね。」
「ふむ、その方向で行こう山田先生。」
投票でか。
で、其処から立候補や他薦で候補が次々と挙がって行き、クラス代表候補となったのは此の7人。
・マリア(他薦)
・セシリア(自薦)
・ラウラ(他薦)
・箒(他薦)
・静寐(他薦)
・癒子(他薦)
・清香(他薦)
まぁ、この面子はセシリアことメアリーが立候補すると共に他の6人を推薦したからであり、更に他のクラスメイトも納得したからなんだが……専用機
を持っていない箒を推薦する辺り、箒の隠された実力を見抜いているみたいだなメアリーは。
で、先ずは一次投票。
アタシとしては此の7人なら誰がクラス代表になっても大丈夫だと思うんだが、白紙投票と言うのも如何かと思うので静寐に入れておいた。……もし
も箒が新たな代表になったら、間違いなく束さんが速攻で専用機を作るだろうな。
そして、一次投票の結果決戦投票に進んだのは何と静寐とラウラ。
ラウラはドイツ代表候補生だし、学年別トーナメントでもその強さを如何なく発揮してくれたから当然だが、まさか静寐がイギリス代表候補生のメアリ
ーを抑えて決選投票にコマを進めるとはな……学年別トーナメント優勝が大きく影響しているのかも知れないな此れは。
続いては運命の決選投票……アタシは、悩んだ末に今度はラウラに。……『姉上』と慕ってくれる相手に、一票を投じないと言うのは少し不義理な
気がしたからね。
全員の投票が終わり、千冬さんと山田先生による開票作業が続き……
「此れで最後か。……ふむ、最終的には7票差だったか。
決選投票の結果、当選、鷹月静寐、21票!次点、ラウラ・ボーデヴィッヒ、14票!よって、新たなクラス代表は鷹月に決定した!」
当選したのは静寐だったか。
矢張りタッグトーナメントを制したと言う実績は大きかったみたいだな――なら、新たなクラス代表として一言挨拶してみては如何だ静寐?
「そうだな。
鷹月、新たなクラス代表として一言頼む。」
「はい。
クラス代表に選出されましたので、粉骨砕身頑張りたいと思います――至らない点もあると思いますが、皆さん宜しくお願いします。」
静寐が就任の挨拶をすると、クラスからは拍手が自然と沸き起こり、新たなクラス代表を歓迎したな――ラウラに投票した連中も、特に問題はない
みたいだからね……どちらにするか迷った挙句にラウラに入れたと言う所だろうね。
何にしても新たな代表は静寐に決定だ。
因みに、静寐に決まった後で目を覚ました愚か者タッグは予想通り噛みついて来たが、其処は千冬さんが『奥義:出席簿アタック』をブチかました後
にクラス代表のリコールは学園長からのお達しだと言う事を聞かせて強制的に黙らせた。
流石のアイツ等も、学園の最高権力には逆らえなかったみたいで歯軋りをしながらも首を縦に振らざるを得なかったみたいだ――まぁ、此れは未だ
始まりに過ぎん……貴様等の因果が応報する先駆けだよ。
一夏の努力を否定して馬鹿にしていた一秋と、其れに同調して調子に乗っていた散……今度は、貴様等が嘗て己がしていた事をその身で味わう
番だ――精々、楽しみにしておくが良い。
――――――
Side:一夏
午前中の授業も終わって昼休み……まぁ、何時ものメンバーで屋上ランチなんだが……
「夏姫ちゃん、お願いがあるんだけど……」
「なんだ楯無?」
「寮に戻ったら脱いで。」
「……はい?」
「美術の課題なのよ~~!
デッサンの課題なんだけど、何を思ったか担当教師が『何のデッサンかはクジで決める』とか言って、運悪く『ヌードデッサン』を引き当てちゃった
のよ~~!!!
課題提出しないと評価マイナス付いちゃうから、お願い夏姫ちゃん!!」
「美術教師よ、課題をクジで決めるのは兎も角、ヌードデッサンを入れるのは如何なんだ?と言うか、普通高校でヌードデッサンなどやらんだろう。
……まぁ、課題だと言うのならば仕方ないから協力してやる――が、ポーズは西洋画の裸婦像みたいなものにしてくれよ?」
「其れは大丈夫よ、マネの裸婦像のポーズの予定だから。」
楯無さんと夏姫姉が、何やらやってました……否、夏姫姉の言う通り何してんすか美術の先生は――若しも俺が同じ課題を引き当てたら……鈴に
頼む事になるんだろうけど、そうなったら理性を保つ自信がないぜ……割とマジで。
ってか、課題だから仕方ないってアッサリOKする夏姫姉も如何かと思うけどな。
「アタシ的にはウェルカムだけどね。
其れよりも一夏、この前のタッグトーナメントの時に箒は嫁として認めるって事を箒に言ったんだけど、箒の事アンタの嫁にしない?」
「おい鈴!アレは冗談ではなかったのか!?」
「……否、話がアレ過ぎてちょっと付いてけないんだけど?」
「だから、箒もアンタの嫁にしようよ?」
あの、鈴さん?貴女は一体何を仰っていられるのでしょうか?
「箒もアンタの嫁にしろ。」
「命令形になった!?」
いやいやいや、色々と待とうぜ鈴?
確かに俺は箒の事も好きだよ?幼馴染だし、気軽になんでも言い合えるしさ――だけど、俺にはお前が居るんだぜ鈴?其れなのに箒をって言うの
は、流石にダメだろ?
「アタシが認めてるから問題ないわ。
其れに箒、アンタは一夏に振られたとは言っても、未だ一夏の事は好きよね?……正直に言いなさい!!!」
「す、好きだ!好きに決まっているだろう!!
お前と言う相手が居たから身を引いたが、此の思いを捨てる事など出来るか!!――友達でも良いと思ったが、本音を言うなら一夏の隣に居た
いに決まってるだろう!!」
うぉーい、ぶっちゃけましたね箒さん?
いやいや、そうなるとお前を振った俺の立場どうなるのよ?……此処で箒も選んだとなったら、只の最低の尻軽男になっちまう気がするんだが、俺
は一体如何すれば良いんだ!?
「一夏。」
「なんだよ夏姫姉?」
「たった一人の女性しか愛してはいけないと、一体誰が決めた?」
「は?」
「一夫一妻でなくてはならないなど誰が決めた?
寧ろ自然界の哺乳類に於いては一夫多妻は極めて当たり前の事だ――お前が鈴と箒を平等に愛する事が出来るのであれば、恋人が2人居て
も全く問題ないとアタシは思っているぞ?」
「マジかオイ。」
だけど確かに、箒だって可成り美人で俺好みではあるんだよな?
小学校の時に虐められてたのを黙って見てる事は出来なかったし……って、其れ踏まえると鈴をいじめっ子から助けた時と同じじゃねぇか此れ!
って事は何か?俺は無自覚に箒の事も好きだったてのか、異性として!?
はは……弾に『この一級フラグ建築士』って言われる訳だわな。――だが、だとしても恋人が二人と言うのは……
「「「「「「「「「「「「全然問題ない。」」」」」」」」」」」
「箒と鈴以外、良い笑顔でサムズアップしないでくれよ……と言うか、止めて下さいよ虚さん。」
「今回ばかりは無理です。私も同じ思いなので。」
OK、逃げ場がなかった!!
はぁ、こうなったら俺も覚悟を決めるか――今も未だ俺の事を思ってくれてる箒の思いに応えないなんてのは、男が廃るってモンだからな!!
お前が其れで良いなら、お願いします箒!!
「う、うむ……不束者だが、宜しくな一夏。」
「良い男は、良い女を侍らすモノだとは言うが、お前も御多分に漏れなかったみたいだな一夏。」
否定したいけど、否定できないぜ夏姫姉。
だけど、鈴と箒って言う二人の極上美少女に惚れられた俺は、世界一の果報者かも知れないな――なら、俺は鈴も箒も守って見せるさ……テメェ
の大事な人を守れずして、何が漢かって話だからな。
――――――
Side:夏姫
放課後、アタシは楯無と共に学園の地下独房を訪れていた――理由は言わずもがな、目下投獄中のデュノアと面会するためだ。
……学園別トーナメントも終わったから、そろそろ伝えてもいい頃だからね……さて、久しぶりだなデュノア?気分は如何だ?
「食事は美味しいし、独房の中にもベッドは有るからソコソコ悪くない気分だよ――贅沢を言えば、1時間くらいは日の光に当たりたい所だけどね。」
「まぁ、其れは諦めるしかないだろうよ……お前は拘留中の身だからね。」
まぁ、其れは其れとして、今日はお前に伝える事があって来たんだ。
良い報告と悪い報告があるが、どっちから聞きたい?
「じゃあ、悪い方から。」
「賢明な判断だ。」
では言うが、悪い報告は……デュノア社が完全に消えてなくなった――お前を学園に潜入させた父親も、利用していた母親も死亡し、デュノア社は
事実上の倒産となった。
つまり、お前は保釈されても帰る場所が無いと言う事だ。
「そっか……でも、今更如何でも良いかなそんな事は。
其れで、良い報告って言うのは?」
「今回の件で、フランスでは2度目のフランス革命が起き、腐敗していた政府を市民が打ち倒し、新たな政権が発足したんだ。
そして、その新政権が、お前を保護したいと言って来たんだよデュノア――お前にその気があるならば、新たな戸籍を与えた上で新生フランスの
永住権を発行するそうだ。」
「え?」
分からないか――お前は、此処から出られるかもしれないんだデュノア。否、お前が救いの糸を掴めば必ず此処から出る事が出来ると言う訳だ。
「僕は、此処から出られるの?」
「あぁ、お前が其れを望めばな。」
「え……あ……本当に?僕は、許されるの?」
アタシは許していないが、新生フランスの国民がお前を許すと言うのならばアタシは何も言わんし、お前の成長を見させて貰う事にするよデュノア。
尤も、今度ふざけた事をしたその時は、問答無用で叩きのめすがな。
そんな事が起きないように、頑張れよデュノア――お前は、どこぞの馬鹿と違って未だやり直せるかも知れないんだから。
「頑張ってねシャルロットちゃん?」
「はい……はい!!ありがとう……」
此れで、デュノアの一件も無事解決だな。
――何となく、色々と巧く行きすぎてる感じがしなくもないが、面倒事が起きるよりは遥かに良いからね……フフ、精々頑張れよデュノア?お前が更
生して、アタシ達の前に再び現れたその時は、全力で戦おうじゃないか!
お前との戦いは、割と楽しめそうだからね。
―――――
Side:束
ある程度は予想してたけど、此処までテンプレ的な展開になると思わず笑いが出るモノだね……学年別トーナメントの一件で力を欲した愚妹が、力
を求めて専用機をねだって来るとは、いやはや呆れちゃうよ。
「だけどお前に専用機なんて作ってやる訳ねーじゃん。頼めば作って貰えると思ってるとか馬鹿じゃないのかね?……否、言うまでもなく馬鹿か。」
お前にはISに乗るのに必要な事が欠けている――ISを所詮は機械としてしか見てないからだろうだけど、ISへの信頼が全くない……そんな奴に専
用機を渡す気は更々ないってのよ。
でも、箒ちゃんには最新鋭の機体を作ってあげる――今設計中のこの機体は、箒ちゃんにこそ相応しいからね。
此れを箒ちゃんの誕生日に渡したいから、臨海学校の頃にお邪魔するかもしれないよ~~――待っててね箒ちゃん、君に相応しい機体をプレゼン
トしてあげるからね♪
To Be Continued… 
機体設定
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