Side:鈴(今回からこの表記)


ISラビットインダストリー、通称『ISRI』。最近業績を伸ばしてるIS関連企業……其処に一夏が居るかも知れない。
新装備のテストパイロットの依頼も魅力的だったけど、アタシ的には其処に一夏が居るって事の方が重要だったわね――巻紙さんの話だと、テスト
の結果次第じゃ、ISRIの企業代表にもなれるってのも魅力だったけどさ。

で、今は巻紙さんが操縦する……此れは何だろう?ジェット機なのに、垂直離陸が出来るって言うトンデモない機体に乗って移動中。
アメリカ軍だって、プロペラなしの垂直離陸可能な機体は開発できてないってのに、其れを普通に所持してるとか、ISRIは想像以上の会社なのかも
知れないわ。

「そう言えば巻紙さん、何でお母さんを食堂の料理人としてスカウトしたの?」

「我が社の食堂のグレードアップを……と言うのが理由ではありますが建前ですね。
 貴方達の住んでいた地区には、近く大型ファミリーレストランのチェーン店が出店する事になっていたんですよ――如何に根強いファンが居たとし
 ても、そんな物が進出して来たら町の食堂は潰されてしまうでしょう?
 そうなってしまっては、貴女達が路頭に迷う事になりかねませんからね……其れを防ぐために、お母様もスカウトさせて頂いたのですよ。」

「んな、そんな計画があったの!?」

「因みに、そのチェーン店の資本は、代表候補性の座を金で買った彼女の親の会社の様です。」



マジで!?
金で代表候補性の座を買っただけじゃなくて、アタシとお母さんの居場所まで奪う心算だったのね、アイツってか、アイツの親は!!――次に会う
機会が有ったら、手加減なしでフルボッコにしてやらないとだわマジで。

其れで巻紙さん、本当に一夏はISRIに居るのよね?



「居ますよ……但し彼はもう『織斑一夏』ではありませんし、誘拐された時に怪我を負い、今も顔の眉間の所に、大きな傷跡が残っていますが。」

「……一夏、遂に『織斑』辞めたのね。」

千冬さんは兎も角、あのクズ野郎の一秋とは一緒に居たくなくなって然りだからね?……こう言っちゃなんだけど、一夏の双子のくせに、如何して
一夏とは違って、どうしようもないクズ野郎になったのか謎だわ。
でも其れは其れとして、眉間に傷跡……え、何それ凄くかっこいいんだけど!――アタシの想像で此処までなら、本当の一夏はもっと……!
此れは、再会するのが楽しみになって来たわ!!











Infinite Breakers Break3
『加入する中華娘は一夏の恋人』










んでもって、中国を発ってから30分が経ち、見えて来たのは絶海の孤島――なんだけど、島の上に物凄い超高層ビルがあるから無人島ではない
わよね?
若しかしなくても、此処がISRIの本拠地……



「此方『高速飛空艇ツクヨミ』の巻紙礼子だ。
 対象2人を確保して連れて来た、着陸ハッチの解放を求める。」

『機体照合完了。
 着陸ハッチ展開、ツクヨミ着陸どうぞ。』




って、島が変形して、緑の大地が反転してコンクリートの発着ポートに変形したですって!?……ウ○トラマンみたいな特撮でしか見た事のない光
景をリアルで見れるとは思わなかったわね。
此れだけの物を有してるISRIは、半端な組織じゃないのは確実だわ。

物凄いショックを受けながらも、アタシとお母さんは巻紙さんに促されて、ISRIの本社であろう高層ビルに。
いや、その間も地上のビルに行くためのエレベーターまでの通路が、動く床だったり、社員と思しき人に紛れて、普通にロボットが働いてたり、色々
とビックリする事が連続で起こって、本社ビルに着く頃にはお母さんは完全に放心してたわ……まぁ、ロビーに付く前に軽くチョップしたら目を覚まし
たけどね。

んで、お母さんとはロビーからは別行動になったけど(如何やらIS関連とその他じゃ、別々みたいね。)、お母さんはお母さんで『其れじゃあ頑張って
来る』って言ってたから、大丈夫でしょうね。
何よりも、お母さんの料理の腕前は、日本滞在中に一夏が追い付けなかったくらいだから。

「それで此れから、テスト開始ですか巻紙さん?」

「いんや、其れでも良いんだが、其れは懐かしの『彼』と再会してからの方が良いだろ?」

「ほへ?あの、喋り方変わってません?」

「ん?あぁ、アレは外用の演技ってか、そんな感じのもんだ。素の俺は、こんな感じなんだよ。
 でもなぁ、こんなのが行き成り現れたら、相手が警戒しまくっちまうだろ?……だから『巻紙礼子』の時は、物腰の柔らかい女を演じてんだよ。」



アレが演技!?めっちゃ自然だったんだけど!?
って言うか『巻紙礼子の時』って、その名前も本名じゃない訳!?



「あ~~……まぁ、そうだな?俺の名はオータムってんだ。
 しっかしまぁ、仕事とはいえ物腰柔らかい女を演じるってのは性に合わねぇなぁ?……俺よりもスコールの方が適任だろ絶対?何だって俺がこん
 な事をせにゃならんのか。
 まぁ、必要な事だってのは分かってるけど、流石に肩凝るぜ~~。スーツってのもガラじゃねぇしな。」



うわっ、素に戻ったら盛大にやさぐれたわね?
顔も声も同じなのに別人に見えるって、巻紙さん改めオータムさんの演技力はハンパじゃなかったって事か……でも、こんな人が社員のISRIって、
大企業でも肩肘張らずにやれるフランクな会社なのかも知れないわ。

っと、其れよりも性能テストじゃなくて『彼』と再会してからって事は……



「鈴!」

「!!!」

この声は……間違いようもない!
初めて会った時と比べたら幾分低くなったけど、この声は間違いない……虐められてたアタシを助けてくれたヒーローの声だ。アタシの告白に応え
てくれた、あの声だ!

「一夏……!」

振り向いた先には、アタシの一番大好きな人が居た。
顔の大きな傷が、昔とは違う印象を与えるけど……アタシが思ってた以上にカッコ良くなってた一夏が居た――やっと、やっと会えたわね一夏!








――――――








Side:夏姫


オータムさんが鈴音と、その母親を連れ帰ったとの事でロビーまで出迎えに来たんだが……あのツインテールの子が鈴音か?
ふふ、こう言っては何だが、一夏にはお似合いの相手なんじゃないか?――パッと見た限りでは、彼女は間違い無く『天真爛漫』『元気溌剌』を地
で行く子だろうから、真っ直ぐな一夏にはぴったりの子だな。



「一夏…………生きてたんなら、連絡の一つくらい入れろ、この馬鹿ーーー!!

過激で素敵な愛情表現!?



って、鈴音が一夏に行き成りの飛び蹴り!?
流石は中国拳法の本場と言うか……恐ろしくキレのいい飛び蹴りが突き刺さったが、大丈夫か一夏?――ほんの一瞬だが、首が曲がっちゃいけ
ない方向に曲がった気がしたんだが……



「いや、大丈夫だぜ夏姫姉……其れに、此れ位は心配かけちまった代償として甘んじて受けるさ。
 ……にしても、相変わらず切れのいい飛び蹴りだな鈴?」

「………」

「鈴?」



如何した?何やら静かになってしまったが……



「……生きてるんだよね一夏、本当に。
 アンタが死んだってニュースを見た時、本当に死んじゃったのかって思った……お母さんのおかげで、アンタが生きてる事を信じてたけど、それで
 も、心の何処かでは本当はアンタが死んじゃったんじゃないかって、ずっと不安だった。
 一夏が居なくなっちゃったんじゃないかって……」

「鈴……俺は生きてる。そして此処に居る――聞こえるだろ、俺の心臓の音。」

「うん……聞こえる。ドクン、ドクンて波打ってる。」



……成程、鈴音は一夏が本当に生きてるかどうかが不安だった訳か。
それで、そんな鈴音の頭を自分の胸元に当てて心臓の音を聞かせるとか……何処のラブコメだこれは?――あ~~……仲が良いのは構わない
が、アタシとマリアが居るのを忘れるなよ一夏?



「え?あ、あぁ、そうだった!!夏姫姉とマリアも居たんだった!!」

「仲が良いのは、素晴らしい事だと思うけれど、恋人同士の戯れは、少し人目を憚った方が良いわ一夏……」

「へ?あ……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?みみみ、見てたの!?」

「見てたと言うか、お前達が見せつけてくれたと言うか……取り敢えずお前達が心の底からお互いの事を大切に思ってるんだって事は分かった。」

「あう……って、この人達は誰なの一夏?
 てか、眼鏡の人の事を『夏姫姉』って……如何言う事?」

「え~~っとだな、秋姉から聞いてるかもしれないけど、俺はもう『織斑』じゃなくて、今は『蓮杖一夏』って名乗ってるんだ。
 で、彼女は『蓮杖夏姫』って言って、戸籍上は俺の双子の姉だ――ってか、小学校の時に鈴に話した事があったよな?白騎士事件の後で行方
 不明になっちまった姉貴分が居たってのは。」

「其れは聞いたけど……若しかして、この人がそうなの!?」



なんだ、小学校の時に一夏が話していたのか?
なら話は早い。蓮杖夏姫だ、一夏が言ったように、戸籍上は一夏の双子の姉って事になってる――お前の事は一夏から聞いてるよ鈴音。



「初めまして凰さん。マリア・C・レインよ。宜しくね?」

「鈴で良いわ。アタシも貴女達の事は夏姫とマリアって呼ばせて貰うから。
 何より同い年なんだから、変に敬称付ける方が堅苦しくなるってもんでしょ?」

「確かに、そうだな。鈴の言う通りだ。」

「その気楽さってか、明るさが鈴の取り柄だからな。
 だけどな鈴、夏姫姉とマリアと秋姉は俺の命の恩人なんだぜ?――1年前のあの時、夏姫姉達が来てくれなかったら、俺は間違い無く誘拐犯の
 主犯に殺されてただろうからさ……」



命の恩人か……そう言われるとくすぐったいが、お前を一秋(あの馬鹿)から引き剥がす事が出来たと思えば悪くないな。
一秋は、確かに類稀なる才能を持った『天才』だったかもしれないが、其れだけに性格が歪み切って、一夏の努力を馬鹿にし続けていたからね…
…其れでも折れずに努力を止めなかった一夏は凄いと思うがな。



「そっか、そうだったんだ……なら、アタシからもお礼を言わせて。
 夏姫、マリア、一夏を助けてくれてありがとう!……アタシの大切な人を助けてくれた事、感謝してもし切れないわ――」

「感謝は要らないぞ鈴――大事な弟分を助けるのに理由は必要ないだろ?」

一夏はアタシの弟分だ。その弟分を助けずに、何が姉貴分だって話さ。
――だが、其れは其れとして、此処に来たって言う事は、オータムさんの話を受け入れたって事なんだろうが、本当の目的は別に有る……其れは
聞いていないよな?



「本当の目的?テストパイロットじゃないの?」

「……一夏、話してやれ。」

「……了解。
 あのな鈴、ISRIが新装備のテストパイロットを探してたって言うのは嘘なんだ――お前が中国の代表候補に落ちた事を知った俺達が、お前をISRI
 に引き込むために作ったモノなんだ。
 まぁ、新装備のテストパイロットってのは嘘でもないんだけどな。」

「はぁ!?ちょ、どう言う事か説明しなさいよ一夏!!」

「説明するって。
 ISRIってのは、確かに最近業績を伸ばしてるIS関連企業だけど……その実態は『亡国企業』なんだ――お前も聞いた事があるだろ鈴?」

「亡国企業!……世間的にはテロ集団って言われてるけど、その本質はこの世界の安定を目指した裏の組織……!!」



流石は代表候補性選考の最終試験に残っただけあって洞察力は素晴らしいな鈴?
マッタク持ってお前の言う通りだが……アタシ達の真の目的は、お前を此方側に引き込む事だ鈴――お前の力は本物だからな、其の力を世界の
為に揮ってみる気はないか?
私達の目的は、ISを本来の姿に戻す事にある――が、今のままでは戦力不足なのでな……お前の力を貸して欲しいんだ鈴。
お前を裏の世界に引き込む事は重々承知しているがお前の力は私達にとって必要なモノになるのは間違いないからな……ダメか、鈴?



「……アタシを舐めないで欲しいわね?
 アンタ達の目的はよ~~く分かった!――要は、この歪んだ女尊男卑世界を終わらせたいんでしょ?
 アタシも女尊男卑の考えってのは大っ嫌いだから、其れを叩き潰す為なら力を貸してやろうじゃない!!
 裏の世界が何だってのよ!!一夏が一緒なら、アタシは地獄の果てまでだって行ってやるわ!!」

「……だそうだ。愛されてるな、一夏。」

「とっても光栄です!」



だが、鈴がアッサリと此方側に来てくれたのは一夏の存在が大きいのは間違いないだろうな?……もしも一夏が居なかったら、もっと勧誘は難航
していただろうからね。
一夏も鈴も、互いに相手の事を信頼しているからこそ、裏の世界に引き込む事を躊躇せず、裏の世界に居た事を非難する事も無かった訳か。
しかし何だろうな?……鈴が仲間になったのは嬉しい事の筈なのに、猛烈に嫌な予感がするのは……



「話は纏まったみたいだねぇ?いやぁ、ようこそISRIへ鈴ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

「トラップ発動『デモンズ・チェーン』!!」

「ごわぁ!?ISの腕部だけを展開して、ワイヤーアンカーで束さんを絡めとるとはやるねぇいっ君?」

「間違いなく鈴に被害が及びそうだと思ったら、身体が脊髄反射で……」

「うわぉ!正に愛の力だね!!」

「……嫌な予感は束さんだったか……」

アタシにぶっ飛ばされ、一夏に一撃必殺を喰らったと言うのに、本当に学ばないな束さん?
今回は鈴に抱き付く心算だったんでしょう?……まぁ、一夏が何とかしなくとも、鈴がカウンターの中国拳法で何とかしたと思いますけど――って鈴
が完全に置いてけぼりになってるな。

あ~~~……俄かには信じられないかも知れないが、この人こそISの生みの親である『篠ノ之束』本人だ。――亡国企業の頭脳であり、ISRIの社
長兼開発主任を務めてる人だ。



「えぇ!?この人がISの生みの親!?
 何て言うか、もっと頭がガチガチに固そうな研究者タイプを想像してたけど、マッタク持って予想を裏切られたと言うか何と言うか……取り敢えず
 肩肘張らなくても済みそうな人で安心したわ。」

「そうそう、束さんはそんなに固い人では無いのだよ鈴ちゃん!!
 其れでは、改めてようこそ鈴ちゃん!私達は君を歓迎するよ~~!中国政府のデータベースにハッキングして、君のデータを見たけど、君のISパ
 イロットとしてのレベルは、あの裏金候補生の倍はあるから、其れだけの腕前のパイロットが来てくれるのは嬉しいしね。」

「……束さん、1G下で1tの物質を振り回しても切れないワイヤーを普通に素手で千切らないで下さいよ……」

「わっはっは、束さんは頭脳だけでなく、肉体も細胞レベルでチートなのだよなっちゃん!そりゃもう、リインちゃんが引くぐらいにね!!」



其れは知ってます。
そして、大国のデータベースに普通にハッキングとか、相変わらずやる事がぶっ飛んでると言うか何と言うか……まぁ、今更だがな。
其れよりも、そろそろ本題に移りませんか?――鈴が此方側に来たら、渡す心算だったんでしょう、鈴の専用機を。



「へ?アタシの専用機?」

「お~~!其の通りだった!
 だけど、実はまだ鈴ちゃんの専用機は完成させて無いのだよ――どうせなら、鈴ちゃんの好みを取り入れたいと思ってたからね。」

「束さんらしいな。」

なら、さっさとラボの方に移動して、鈴の専用機を完成させてしまいましょう?
鈴も自分の専用機と聞いて、驚いてるのと同時に興味深々みたいですからね。








――で、ラボに移動して来た訳なんだが、此れが鈴の専用機?……カラーリングこそ一夏のブレードストライクよりも明るめですけど、これって『スト
ライクEタイプ』ですよね束さん?



「その通り。
 ストライクは元々ストライカーパックの換装でどんな状況にも対応できる機体だったから、専用のストライカーパックを開発してあげれば、同じ機体
 であっても個人の専用機にするのは難しくないんだよね?
 だから、鈴ちゃんの専用機もいっ君の専用機同様に、ストライクEに専用のストライカーパックを搭載する事で鈴ちゃん専用にしようと思ったのさ。
 何よりも、いっ君と同じ機体なら鈴ちゃんも喜ぶと思ったしね♪」

「一夏と同じ機体……心の底から感謝します束さん!」

「ハハ……まぁ、少し照れ臭いけど悪い気はしないよな。」



そう言う事か……確かにストライクの強みは、ストライカーパックの換装による汎用性だったから、操縦者専用のストライカーパックを開発すれば簡
単に専用機を開発出来るって訳か。
其れで束さん、鈴の専用機はどんなコンセプトなんですか?



「んっとね、中国のデータベースから引き出したデータによると、鈴ちゃんはガンガン攻めて行くタイプの子みたいだから、性能を攻撃力と機動力に
 全振りした機体かな?
 どんな距離でも最大の攻撃力を発揮できる機体だよ!」

「何それ、滅茶苦茶アタシ好みなんだけど!!」

「攻撃力と機動力に全振りか。」

ストライカーパックには追加のブースターとスラスターが見て取れるから、機動力は可成りのモノなのは間違いないし、一夏の物と比べると少しばか
り小型だが長大なレーザーブレードであるシュベルトゲベールが装備され、左の腰部アーマーには双刃式のビームサーベルか。
確かに此れならば、攻撃力と機動力は充分かも知れないが、束さん的には火器の搭載を迷ってるって所でしょうか?



「その通り!
 近接戦闘武器に関しては、シュベルトゲベールと双刃式のビームサーベルを搭載したけど、火器に関しては鈴ちゃんの好みを聞いて搭載しようと
 思ったのさ。
 本体装備のビームライフルと、ストライカーパックのメイン火器は、搭乗者に直接選んでもらった方が良いかもだからね?
 と言う訳で、選んでくれたまえ鈴ちゃん!」

「そしてここで鈴に丸投げとかマジか?……否、束さんらしいと言えばらしいけどな?
 んで、如何するんだ鈴?お前の専用機の装備なんだ、慎重に選んだ方が良いぜ?」

「大丈夫よ一夏、カタログを見せて貰ったけど、アタシはストライカーパックに搭載するメイン火器に『ゲイボルグ』を、本隊装備のビームライフルには
 『グレネードランチャー装備ビームライフル』を選択するわ!」



だが、その火器もアッサリと決まったようだな?
悪くない選択だと思うが、どうしてそれを選んだんだ鈴?ストライカーパックのメイン火器ならアグニの方が遥かに上だし、ビームライフルだって、ア
タシのフリーダムに搭載されてるルプスの方が高性能だ。
なのにどうして、其の2つを選んだんだ?



「アグニは確かに強力だけど、連射性に乏しいでしょ?
 ゲイボルグは威力では劣るけど連射性と速射性に優れてるし、何よりも『面の破壊力』が魅力だったの。――ビームライフルに関しては、ビームと
 グレネードの両方を使える点が優秀だったからね。」

「成程、其れがお前に最も合っていたと言う訳か。」

「おぉ、此れは良いね?素晴らしいよ鈴ちゃん!
 やっぱり操縦者の意見を直接取り入れるってのは大切だね?……鈴ちゃんの希望の装備をぶっこんだ結果、鈴ちゃんの専用機である『バースト
 ストライク』は、束さんの予想よりも30%ほど強い機体になりました!!
 まぁ、ゲイボルグは肩掛け式のバズーカタイプからの変更が必要になるだろうけど、これで完成したよ鈴ちゃんの専用機『バーストストライク』が!
 此れはある意味でストライクの究極形とも言える機体だよマジで。」

「此れがアタシの専用機……よろしくね、ストライク!!」



――キィィィィン……バシュン!!



って、バーストストライクが輝いたと思ったら、次の瞬間には鈴の右腕にブレスレットが……成程、お前も一夏と同様にストライクに選ばれたって事
か鈴。



「ISに選ばれたって……悪い気はしないわね?」

「なら、選ばれた者として、その期待には応えないとだよな鈴?」

「勿論よ!
 専用機ってのは、己の半身であり相棒とも言える存在でしょ?――その相棒の期待に応えられなくて、な~にが専用機持ちだってのよ!!
 アナタの期待には応えるわストライク……だからその力、アタシに貸しなさい!!」



――轟!!!



此れは、鈴の決意と気合いにバーストストライクが応えた事で発生した衝撃波か?……此れだけの力を発揮出来るのならば、仲間としては頼もし
い限りだよ鈴。
改めて、此れから宜しく頼むぞ?



「任せなさい!アタシの力、存分に使わせて貰うわ!!
 アタシの実力を見て、驚いて腰を抜かすんじゃないわよ一夏!夏姫とマリアもね!!」

「自信満々だな鈴?
 いや、お前は昔から自信のある事に関しては強気だったけどな……だけど、お前の実力なら不安はないぜ鈴?――此れから、宜しくな!!」

「こっちこそ宜しくね、一夏♪」



ふ、如何やら鈴は完全に馴染んだようだな。――此れからの任務、頼りにさせて貰うぞ鈴。お前のパイロットしての腕前は超一流だからね。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・



そんな事があってから、あっという間に1年が経ち、気付けばアタシ達は中学卒業の年だ。
学力に関してはスコールさんが勉強を教えてくれたから問題ないし、体力面ではオータムさんが鍛えてくれたから、通信制であるとは言え、アタシ
達4人全員が、中学卒業の単位を最高レベルで取る事が出来たからな。

だけど、アタシ達の目の前では、そんな事がどうでもよくなる位のトンデモない光景が映し出されていた。



『世界初の男性IS操縦者現る?その名は織斑一秋!!!』



自称天才が、ISを動かしたって言う衝撃のニュースが世界を駆け巡ってたんだからな。
だが、此れは逆に考えると良い機会かも知れないな?――本当の世界初の男性操縦者が一夏だと言う事を世間に知らせる事が出来るし、世間
に『男性操縦者』の印象を植え付ける事が出来るからね。
なら、精々利用させて貰おうじゃないか――スクープ目的のマスコミさん?……お前達が派手に報道してくれればしてくれるほど、アタシ達としては
有難い事だからな。


此れは、世界を駆け巡るスクープになるのは間違いないだろうが、アイツが世界初と言うのは間違いだ――本当の世界初のIS男性操縦者は、アタ
シの弟である蓮杖一夏だからね。

――どうやら、一夏の存在を世界に公表する時が来たみたいだな……

















 To Be Continued… 



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