クリスマスが終わったら、大晦日までは取り立てて大きなイベントはない――だが其れはあくまでも一般人の話であって、オタク文化にどっぷりとハマった人間にとっては、大晦日前の、『ヲタとレイヤーの聖戦・冬の陣』と言っても過言ではない一大イベント、『冬コミ』が待っているのだ!
開催場所は、東京ビックサイトで、一夏達もやって来たのだが、一夏達の目的は、同人誌の販売でなくコスプレだ!一夏が平行世界を旅している間だけでなく、クラリッサは簪や夏姫と、更に数点のコスプレ衣装を完成させていたのだ!
全ては、此の冬コミで全力のコスプレを披露する為に……因みに用意した衣装は、参加者一人につき三種。
参加するのは織斑兄妹、更識姉妹、ヴィシュヌ、ロラン、グリフィン、クラリッサ、静寐、乱、布仏姉妹、五反田兄妹、夏姫の一五人なので、作った衣装は15×3の四十五着!!僅か一週間で此れ等の衣装を完成させるとか、本気を出したヲタの力と言うのは計り知れないモノがある。
「三人で四十五着……一人頭十五着で、其れを一週間でとなると一日二着と少しか……一体何時の間に、作ってたんだよ!?」
「私と簪は午後に良く出掛けていただろう?其の時に夏姫と合流して一緒にな……いやぁ、好きなアニメやゲームの推しを語りながらやると、作業も捗る事捗る事。」
「オタクにとって推し語りはエネルギーの補給になるから。」
「簪君の推しキャラは、分かり易いヒーローキャラが多いかと思いきや、意外とダークヒーロー系が多い事に驚いたよ……まぁ、私もダークヒーロー系は好きだが。」
推しキャラ語りはエナドリか何かなのだろうか?ヲタのエネルギー源はやや謎である。
「それにしても、夏の時もそうだったけれど、冬も人が凄いわねぇ?今日の東京の最低気温はマイナスなのに、こんなに早い時間から良く集まると思うわ。」
「こう言う光景を見ると、日本に於けるサブカルチャーと言うモノは本当に文化の一つとして定着しているのだと実感するけれどね……ん?」
「如何したロラン?」
「一夏、アレはお義姉さんではないかな?稼津斗さんに、スコール先生と、山田先生も居るみたいだが。」
冬コミ会場の東京ビッグサイトは多くの冬コミ参加者で溢れ返っているが、その人だかりの中に、ロランが千冬と稼津斗、スコールと山田先生の姿を見付けた……よもや、嘗て問題だらけの薄い本を作成した生徒が居る漫研のメンバーが何かやらかすのではないかと監視に来たと言う訳でもないだろう。少なくとも、教師ではない稼津斗が居る時点で違うだろう。
「千冬姉、其れにカヅさんとスコール先生と山田先生も、こんな所で何やってるんですか?」
「一夏、お前達も来ていたのか?……いや、スコールに『冬コミで一緒にコスプレをしてみましょうよ?どうせなら千冬の彼氏も誘って』と言われてな。私も少しばかり興味があったので参加する事にしたのだ。山田君は、序に誘った。
因みに、終わった後は此のメンバーで飲み会だ。」
如何やら千冬はスコールに誘われて稼津斗と共にコスプレ参加する事にしたらしく、山田先生は序で引っ張って来られたようだ……きっと山田先生は断り切れなかったのだろう。まぁ、千冬に誘われたのだから断ると言う選択肢はそもそも存在していなかったのかも知れないが。
しかしまぁ、何とも意外な人達がコスプレ参加をして来たモノだが、此れは此れでレイヤーさんの撮影に命を懸けているカメラマン&カメラ女子にとっては嬉しい誤算であると言えるだろう――世界最強と、世界最強と互角に戦ったIS操縦者のコスプレ写真とか、其れだけで一枚万単位の値段が付くのではなかろうか?
取り敢えず冬コミのコスプレは、夏コミの時よりも凄い事になるような気がするな。
尚、一夏の護衛を務めているオータムも、絶賛コスプレして冬コミに参加して、護衛の任を務めあげている……此の人もまた『真のプロ』と言っても過言ではないだろうね。
夏と刀と無限の空 Episode72
『ヲタの聖戦冬の陣!コスプレは文化だ!』
更衣室は当然別なので、一夏と弾は男性用の更衣室で、ご丁寧に『一着目』と張り紙がされたコスプレ衣装に着替えていた。着る順番と言うのもきっと大切なモノであるのだろう。良く分からないが。
「しかしまさか千冬姉が参加するとは予想外どころの騒ぎじゃねぇよ……ストⅢ3rdの強キャラはユンとケンだと思ってたら、研究が進むにつれ最強は春麗だった事と同じ位予想外だぜ。」
「一夏、其れ若干分かりづれぇ。」
「3rdの春麗は『3rdの闇』と言われるくらいのぶっ壊れクソキャラなんだよなぁ……満タンからゲージ全部吐けば七割持ってく上に、更に有利な状況を作れるって鬼かってんだ。
ぶっちゃけて言うと、オンラインのランクマッチでは使用禁止にして欲しいレベルだ。」
千冬達、『大人組』の参戦は余程予想外だったのか、一夏の例えが若干分かり辛いモノになっており、弾が突っ込みを入れたのは当然と言えるだろう。と言うか、其の例えは、一部の格ゲーファンにしか分からぬ。
「でもまぁ、千冬さんのコスプレとかめっちゃレアだから、ある意味其れを拝めるってのは得したって言えるんじゃねぇの?ぶっちゃけ俺は、あの人はIS纏った姿しかイメージにねぇ。」
「あ~~……まぁ、大抵の人はそうだろうな。
けど、俺は千冬姉よりもやっぱり刀奈達のコスプレ衣装の方が気になるんだよなぁ?クラリッサと簪、其れに会長さんが作ったコスプレ衣装ならクオリティは既製品とは比べ物にならないレベルだろうからさ……お前も、虚さんの衣装の方が気になるだろ?」
「そりゃ当然だろ?」
それはさておき、千冬のコスプレ姿は激レアではあるモノの、一夏も弾も真に興味があるのは己の恋人のコスプレ姿で、そして其れはとっても正しいと、寧ろ正しいを通り越した真理であると言っても過言ではあるまい!
愛する彼女の珠玉のコスプレ姿、其れはもう野郎にとっては脳内に永久保存モノであると言っても過言ではない!逆に永久保存しないと言う選択肢なんてモノは最初から存在していないのだ!存在していないのだ!とっても大事な事なので二回言いました。
稼津斗は、そんな一夏と弾を見ながら黙々と着替えている。とっくの昔に思春期を通り過ぎた彼には、一夏達の会話に入り込むと言う選択肢は無く、健全な男子高校生の会話に耳を傾けるに留まっているようだ。
そんな話をしながら、一夏も弾も一着目の衣装に着替え、これまた着替え終えた稼津斗と共に更衣室から会場へ出撃!
「おぉ、皆良く似合ってるじゃないか?」
「ありがと。一夏と五反田君も良く似合ってるわよ。」
丁度同じタイミングで女性陣も更衣室から出て来て、コスプレ集団の出来上がり。
夫々の衣装はと言うと、一夏が『Judge Eyes』の八神孝之、刀奈が『FFⅩ-2』のユウナ、ヴィシュヌが『StreetFIGHTERシリーズ』のエレナ、ロランが『空の軌跡3rd』のクローゼ・リンツ、グリフィンが『戦国無双』の井伊直虎、クラリッサが『黒森峰女学園・機甲科』のパンツァージャケット、円夏が『Devil
My Cry』のレディ、簪が『遊戯王』のリチュア・エミリア、静寐が『リリカルなのは』のアミティエ・フローリアン、乱が『バイオハザードシリーズ』のクレア・レッドフィールド、虚が『遊戯王』のTG
ハイパー・ライブラリアン、本音が『KOFシリーズ』のブルー・マリー、弾が『KOFシリーズ』の二階堂紅丸、蘭が『灼眼のシャナ』のシャナ、夏姫が『月華の剣士』の雪。
そして大人組は、千冬が『空の軌跡』のユリア・シュバルツ、稼津斗が『空の軌跡』のミュラー・ヴァンダール、スコールが『空の軌跡』のルシオラ、山田先生が『空の軌跡』のドロシー・ハイアットと、全員が『空の軌跡』のキャラで纏めて来た……ドジっ子属性持ちの山田先生のドロシーは、此の上ない当たり役であると言っても決して過言ではあるまい。
そして、スコールだけが『結社』のキャラであるのは、何と言うか雰囲気的にとても合っていると言うか何と言うか……取り敢えず、あの際どいコスチュームを着こなしていると言うのは見事であると言えるだろう。と言うか、あの衣装は動き辛いと思うのだが、まぁ其処は突っ込み不要としておこう。
尚、護衛のオータムのコスチュームは『空の軌跡』のヴァルター・クロンだった……偶然だろうが、大人組に分類される彼女もまた『空の軌跡』キャラであった。
「俺と刀奈達の衣装って……」
「電脳世界での衣装と一緒ね。」
そんでもって、一夏と嫁ズの衣装は、奇しくも電脳世界での一件の時に纏っていた者と同じモノだった――一夏は、電脳世界での嫁ズの衣装を『現実でも見たい』と思って居たのだが、期せずしてその望みは果たされた訳である。
ロランとクラリッサ以外は布面積が小さいので、冬コミでは可成り過酷な衣装なのではないかと思うのだが、レイヤーにとっては外気温よりも如何にキャラに忠実なコスプレをするかの方が大事なので、コスプレ精神が肉体を凌駕してしまえば、外気温の低さなどは大した問題ではないのである。
……実際に会場には、StreetFighterシリーズのザンギエフ、E・本田、サガットと言った『殆どパンツ一丁』なキャラのコスプレをしてる、気合の入りまくったレイヤーさんも居るからね。――なんで、そのコスプレがOKだったのか、コスプレのOKとNGの境界線に悩む所ではあるがな。
だがまぁ、其れだけ気合の入ったコスプレをしたレイヤーには万感の拍手を送るべきだろう。コスプレと言うモノは、レイヤーが己の限界を突破する為のモノであるのかも知れないな。
其れはさて置き、これだけレベルの高いコスプレが披露されたとあっては、レイヤーの撮影に命を懸けている連中が黙ってはいない!
一夏達の周りには直ぐにカメラを装備した人だかりが出来上がり、即座に撮影会がスタート!撮影者の多くはデジタルカメラを装備しているのだが、中にはデジタルの一眼レフを装備している者も存在しているだけでなく、アナログのフィルム搭載の一眼レフを装備して居る者まで居るのだ……アナログの一眼レフなど、最早骨董品と言えるレベルのモノだが、デジタルよりもアナログフィルムの方が現像後の写真の出来は良いので、令和の時代になってもアナログの愛好家は一定数存在しているのである。
そんな訳で、一夏達はレイヤー目的の撮影者に注目されて、撮影会が開始されたのだが、此処でも注目されたのは一夏と一夏の嫁ズだった。
千冬を始めとした大人組も注目されてはいたのだが、『世界初のIS男性操縦者』と、その嫁ズの方がネームバリューとインパクトでは上だったと言う事なのだろう。
まぁ、『世界初の男性IS操縦者』と、『男性操縦者重婚法』の制定によって、一夏と一夏に選ばれた者達に注目するなって方が無理な話なのだけれどね。
だが、勿論他のメンバーも注目されていない訳ではない!
と言うか、女性陣のコスチュームは、クラリッサ、簪、虚、蘭及び大人組の千冬と山田先生を除いて、割りと身体の線がバッチリ出るモノであるため、男性陣の注目を集めまくって居るのである……まぁ、邪な視線を向けて来た野郎は、即座に一夏に睨みつけられて退散する事になったりもしたのだが。
「すみません、織斑さん達三人一緒にお願い出来ますか?」
「更識さんも姉妹二人で一枚お願いします。」
撮影会の方は順調に進んで行き、中には一夏、千冬、円夏のスリーショットや、更識姉妹のツーショットを希望する者も居た……織斑姉兄妹と更識姉妹は、世界的に有名なので其れもまた当然と言えよう。
千冬は言わずと知れたブリュンヒルデであり、一夏は世界初の男性IS操縦者、円夏と更識姉妹は日本の国家代表で、刀奈は其れに加えて一夏の婚約者の一人なのだからね……布仏姉妹と五反田兄妹も、兄弟姉妹でコスプレしてるのだがネームバリューがマッタクないので織斑と更識に比べると、どうしても撮影者の数が少ないのは仕方ないと言わざるを得ないだろう。
「あの……若しかして、コスプレイヤーのKanchanさんと、Himechanさんですか?」
「うん、そうだよ。」
「アタシ達の事を知って居るのかい?」
「はい!私、お二人の大ファンなんです!サイトに上げられてるコスプレ写真、ドレもクオリティがとても高くて……特にKanchanさんの水霊使いエリアと、Himechanさんの色はトップクラスのクオリティだと思います!」
そんな中、簪と夏姫に声を掛けて来る人も居た――如何やらこの二人、何時の頃からか共同でインターネット上にコスプレ写真を公開するサイトを作ったらしく、定期的に『Kanchan』と『Himechan』と言うハンドルネームで新作のコスプレ写真をアップしており、そのサイトのファンだと言うのだ。
日本の国家代表とエジプトの国家代表が一緒になって何やってんだと思うだろうが、趣味の領域に彼是言うのは無粋であると言えるだろう……アップした写真の中には割とギリギリのラインを攻めた百合写真も少しだけあったりするのだが、其れも『キス寸前の距離で見つめ合ってる』、『夏姫が簪に壁ドン』、『簪が夏姫にしな垂れかかって、緩く鎖が巻かれている』と言ったモノであるので特に問題はなかろう。最後のは本当にギリギリのラインではあるが。
「簪と会長さん、何時の間にインターネットのサイト作ってたんだろうな?」
「さてね……でもまぁ、本人達が楽しんでいるみたいだから余計な事は言わないのが吉よ。其れよりも一夏、そろそろじゃない?」
「そうだな……5,4,3,2,1……はいドーモ、皆さんこんにちは織斑一夏です。」
「更識刀奈でーす。寒い日が続いてるけど、皆風邪とか引いてない?」
「ロランツィーネ・ローランディフィルネィだ。視聴者の皆は、今何をしてるんだい?」
「其れは、勿論この生配信を見ているのではないでしょうか?ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーです。」
「寒くても、コスプレは気合で頑張りまっす!グリフィン・レッドラムだよ!」
「我が左目に封印されし魔が滾る。暗黒の炎に焼かれて逝け!クラリッサ・ハルフォーフです。」
「え~とですね、本日は嫁ズと一緒に冬コミにコスプレ参加をしていまして、その様子をライブ配信して行こうと思いますので、視聴者の皆さんもチャットで俺達のコスプレへの感想とかをドシドシ送ってくれると嬉しいです。」
此処で一夏が嫁ズと共に、YouTubeでの生配信を開始!
事前に『冬コミで生配信します』って事は告知してあり、昨日の内にサムネもアップしてあったので、一夏と嫁ズのチャンネルを登録しているユーザーは、この生配信を視聴している事だろう。登録者数が、そろそろ百万人に到達する人気カップルユーチューバーの生配信と言うのは見逃せないし、めっちゃ貴重なコスプレ姿って言うのも話題性としては充分だと言えるからね。
因みに今回の生配信を撮影しているのが誰かと言うと、束製のアンドロイドである『T-はっぴゃっ君』である。『冬コミ当日に生配信をしたいけど撮影者が居ない』と悩んでいた一夏に、束が『当日に会場に向かわせるから』と一体派遣してくれたのだ。
そんでもって、T-はっぴゃっ君の見た目は、どう見ても『ターミネーター』のシュワちゃんであり、『T-800のコスプレ』とも言えるので、冬コミ会場に居ても違和感と言うモノは余りないのだ……此れだけ精巧なアンドロイドを作り上げてしまうとは、束は矢張り世紀の天才であると言えるだろう。
一夏と嫁ズは生配信をしながら撮影者の要望に応え、他のメンバーも夫々にコスプレを楽しみつつ、冬コミに参加しているサークルを回るなどして冬コミを満喫していた……サークルを回る中で、『千冬×スコール』と言う、所謂『生モノ』に手を出した同人サークルが千冬によって壊滅させると言うハプニングがありはしたが、其れ以外は概ね平和であったと言えるだろう。
と言うか、生モノ事態が割と地雷ジャンルであるのに、其処で百合捏造とかぶっちゃけドン引きジャンルだろう……しかも内容がR-18であると言うのであれば尚更である。少なくとも千冬はノーマルなので、余計にだ。
「千冬に彼氏が居なかったら、私も黙ってなかったのだけれどね……」
「……スコール、其れは冗談だよな?」
「いえ、本気だけれど?」
「真顔で言われると、対応に困るのだけれどな。」
スコールに関しては、若干怪しい部分があるが、略奪愛とかは考えてないみたいなので、千冬と稼津斗の仲が引き裂かれる事はないだろう……姪のレインが百合なら、スコールも百合だったってのは、果たして『血は争えない』と言うモノなのか如何か謎だけれどね。
「其れじゃ、衣装交換してくるので、ちょっと配信切るな。」
此処で最初の衣装交換となり、大人組以外は更衣室で二着目に着替える。
僅か五分で着替えを終えた次なる衣装は、一夏が『FFⅦAC』のクラウド・ストライフ、刀奈が『FFⅦAC』のティファ・ロックハート、ヴィシュヌが『FFⅦAC』のユフィ・キサラギ、ロランが『FFⅦ』のセフィロス、グリフィンが『FFⅦAC』のヴィンセント・ヴァレンタイン、クラリッサが『FFⅧ』の風神、円夏が『FFⅧ』のゼル・ディン、簪が『FFⅧ』のリノア・ハーリティ、静寐が『FFⅧ』のセルフィ・ティルミット、乱が『FFⅧ』のアーヴァイン・キニアス、虚が『FFⅧ』のキスティス・トゥリープ、本音が『FFⅧ』のサイファー・アルマシー、弾が『FFⅦ』のタークス・レノ、蘭が『FFⅦ』のタークス・イリーナ、夏姫が『FFⅧ』のスコール・レオンハートと、全員がFF系で纏めて来た。
が、其処は忠実にキャラを再現するのではなく、衣装以外は弄らないと言う、斜め上の方向でのコスプレをしていたのだが、其れが逆に良かったのか、二着目のコスプレも撮影者が大殺到!
しかも今回はジャンルが統一されていると言う事で、集合写真の依頼も多かったのだが、其れ以上にクラウドコスの一夏と、スコールコスの夏姫のツーショットを望む声が意外と多かった……クラウドとスコールは、キングダムハーツで共演してる上に、アリーナでタッグを組んで登場するので、このツーショットは中々に外せないモノであったのあろう。
スタンスを大きく開いて、大剣を構える一夏と、ガンブレードを肩に構えた夏姫のツーショットは、中々に良い感じになって居たからね――其れを見た一夏の嫁ズと簪が少しばかり妬いているかと思いきや、そんな事はマッタク無く、自分達は自分達で撮影者の要望に応えるポーズをしていた。
『此れはあくまでもコスプレの撮影会』と割り切っているのと、お互いのパートナーの事を信じていればだからこそだろう……此れが若しも――否、この『若しも』は考えるだけで気分が滅入りそうなので止めておこう。
撮影会では他にも、一夏とロランが鍔迫り合いをしているポーズや、弾の特殊警棒での攻撃を刀奈が拳で受け止めているポーズ、簪と夏姫がダンスをしている様なポーズ等々、様々なポーズでの撮影が行われ、一夏達は少しばかり疲れはしたものの充実した時間を過ごす事が出来た。
勿論この撮影会の様子は、T-はっぴゃっ君が撮影して生配信されており、其方の方のチャット欄、コメント欄も盛り上がりを見せていた。クラウドコスをしている一夏に、『超級武神覇斬やって』と言う無茶振りもあったりしたが、こう言うコメントがすっ飛んでくるのも、生配信のチャット欄の醍醐味と言えよう。
……一夏なら、やろうと思えばマジで超級武神覇斬出来るかも知れないけどな。既にリシャールの『桜花斬月』は略完璧にマスターしてる訳だし。次は一体どんな技を習得するのか楽しみと言えば楽しみではあるけど。
「其れにしても一夏、こんな長い刀は実際に戦闘で使えるモノなのだろうか?」
「絶対無理だぜロラン。
其れはプラスチックで作ってあるからそんなに重たくないけど、実際の剣だと鉄だからなぁ?重過ぎてとても振り回す事なんて出来ねぇって。……討鬼伝の太刀だって長過ぎる位だってのに、セフィロスの正宗は更に長いからな。」
まぁ、あくまでもゲームの世界の武器ですからねぇ?其れを言ったら、クラウドの剣だって持ち上げるのすら困難な鉄塊レベルだからな。
其れは兎も角、撮影会が一段落した所で、丁度ランチタイムになったので、一行は私服に着替えてからイートインスペースでランチタイムに。普通ならば、コミケ会場に出店してる屋台で買うモノであり、大人組はそうしているのだが、一夏達は弁当だ。其れも、重箱で!
総勢十五人分もの弁当を作るのは大変だと思うが、其処は一夏と一夏の嫁ズ、弾が力を合わせれば如何と言う事はない!
荷物が多くなると言う問題も、ISの拡張領域に弁当ぶち込めばマッタク持って問題ナッシング!拡張領域が、某青色猫型ロボットの四次元ポケット的な使い方をされるとは、開発者である束でも予想していなかった事であろう……拡張領域をこう言う使い方をするようになってからと言うモノ、出掛ける時でも結構な量の荷物を用意するようになってしまったのは致し方あるまい。
そして、その弁当はと言うと、お握りやサンドイッチと言った主食の他に、卵焼きや唐揚げと言ったおかずの定番、ロラン、ヴィシュヌ、グリフィン、クラリッサの出身国の郷土料理をアレンジしたモノ、五反田食堂の一番人気である業火野菜炒めを弁当用にアレンジしたモノ等々バラエティに富んでいる。
お握り一つとっても、定番のノリを巻いたモノの他に、おぼろ昆布で巻いたモノや、少し大きめに削った鰹節を巻いたモノなど大分凝っているし、サンドイッチのバターが具材に合わせて変えられているなんて言うのは最早基本である。因みに本日のお握りの具は、明太高菜、鮭の西京漬け、牛のしぐれ煮、サバマヨで、サンドイッチの具は、エビカツ&卵サラダ(マスタードバター)、スモークサーモン&クリームチーズ(粒ウニバター)、ローストビーフ&スライスオニオン(山ワサビバター)、生ハム&サニーレタス(ホースラディッシュバター)……マジで凝りまくってんなぁ?
「一夏、此のバターって全部お前のお手製か?」
「バターだけじゃなくて、卵サラダに使ってるマヨネーズも自家製だ。因みに、今日使ったマヨネーズはオリーブオイルを使った軽くて香りの高いモノだ。油と酢を変えるだけで、マヨネーズは幾らでも種類が作れる。」
「例えば?」
「今日使ったオリーブオイルのマヨネーズはイタリア風、ごま油と黒酢で作れば中華風、米油とすし酢で和風、ラー油を使えば辛口になるし、フルーツ酢を使えば甘みがあって爽やかなマヨネーズがになる。
個人的には、オリーブオイルとバルサミコ酢で作った、超イタリア風がお勧めだな。」
バターだけでなくマヨネーズも自家製だとは、何処までも料理には妥協しない一夏である。一夏の脳内にあるレシピだけで、マジで一冊レシピ本が出来るんじゃないかと思ってしまうな。
まぁ、此の特製弁当はとても美味しく、重箱は見事空になったので満足の良くランチタイムであったと言えるだろう――此のランチタイムも生配信され、見た目も豪華で味も良い弁当には多くの反響が上がっていたのだが、其れとは別に大人組のランチタイムも配信され、真昼間から焼き鳥を肴に缶ビールを開けている千冬とスコールの姿には別の意味での反響が有ったとか無かったとか……まぁ、千冬もスコールも350ml缶を二本空けた程度では全く酔わないので特別問題ではないのだけれどね……つか、昼間の屋台でそもそも酒を売るなである。
「あの、其れ大丈夫なんですか澤さん?」
「此れ位は全然大丈夫だぜ山田さん。」
其れ以上に、ウォッカをラッパ飲みしてるトンでもねぇ奴も居たりする訳なんですけどね……此れでマッタク持って酔っぱらってないと言うのだから、稼津斗のアルコール分解能力っては如何なってんのか謎だわ。
世界最強のブリュンヒルデの彼氏ともなると、もはや人間辞めてる……か。海上を阿修羅閃空で移動するわ、空飛ぶわで何でもありだからなコイツは?冗談抜きに稼津斗は素手でISをぶっ壊してるからな、一夏と刀奈が誘拐された時に。
千冬と束が天然のチートキャラなら、稼津斗は天然の無限チートのバグキャラと言った所だろう。コイツに勝てる人間が今現在地球上に存在しているのか、些か謎である。
ともあれ、ランチタイムを楽しんだ一行は、午後の部に向けて新たなコスプレ衣装に着替えるのだった。
――――――
午後の部の一行のコスチュームはどんなモノかと言うと、一夏が『KOFシリーズ』の草薙京(ⅩⅣVer)、刀奈が『KOFシリーズ』の麻宮アテナ(99Ver)、ヴィシュヌが『サムライスピリッツシリーズ』の真鏡名ミナ、ロランが『KOFシリーズ』のキング、グリフィンが『StreetFighterシリーズ』のキャミィ、クラリッサが『サムライスピリッツシリーズー』の柳生十兵衛、円夏が『サムライスピリッツシリーズ』のリムルル(羅刹Ver)、簪が『StreetFighterシリーズ』の春日野さくら、静寐が『サムライスピリッツシリーズ』のナコルル(羅刹Ver)、乱が『KOFシリーズ』のクーラ・ダイヤモンド、虚が『KOFシリーズ』のテリー・ボガード、本音が『KOFシリーズ』の不知火舞、弾が『ギルティ・ギアシリーズ』のソル・バッドガイ、蘭が『ギルティ・ギアシリーズ』の聖騎士団ソル、夏姫が『KOFシリーズ』のシェルミー(オロチVer2Pカラー)と、全員が格ゲーキャラのコスチュームで決めて来た!……ヴィシュヌのコスチュームが、一着目に続いて布面積少なめなのは突っ込んではいけないのだろうなきっと。
其れとは別に、隠れダイナマイトボディの持ち主である本音の不知火舞コスは破壊力が最上級特殊能力を発動したオベリスクの巨神兵の如しである……不知火舞のコスプレをしているレイヤーは他にも居るのだが、原作ゲームの凄まじいまでの『乳揺れ』までをも再現しているのは本音以外には居るまいて。
スタッフの暴走によって、ニュートラルポーズは基本的8フレームなのに、舞の胸の揺れには四倍の32フレームも使われた『乳揺れ』をリアルに再現する本音恐るべしである。
「のほほんさん、中々のお手前で。」
「にゃはは~、イッチーに褒められた~~♪」
その見事な光景に、一夏は柏手を打って、本音は喜んでいた……普通なら一夏は、嫁ズから折檻されそうなモノだが、一夏はマッタク難の他意もなく、本音のプロポーションを褒めただけなので咎められる謂れはマッタク無いのだ。
彼氏持ちの女子が、ボディビルダーのグラビアを見て『すっごい筋肉』と賞賛するのと同じ事だからな此れは……なので、嫁ズも其れを咎める事はないのだ。って言うか、この程度の事すら許せないとか、流石に器が小さいとしか言い様ない。真の嫁ならば、この程度の事は笑って流すモノだ。
一夏の愛を信じているのならば、他の女性とのちょっとした交流程度は一々騒ぎ立てるモノではないからね……尤も、陽彩とその嫁ズだったら――いや、これも考えるのは止めておこう。考えた所で、間違いなく胸糞悪いクソッタレな展開しか待ってないだろうからね。
そんでもって、午後の部も新たに撮影会が始まったのだが、午後の部で人気だったのは円夏と静寐の『サムスピ姉妹コス』だった。静寐の羅刹ナコルルも、円夏の羅刹リムルルも可成りクオリティが高いのは間違いないのだが、午後の部のコスプレでは唯一関係性の高いキャラのコスプレと言う事で注目されてしまったみたいである……まぁ、意外にも静寐がノリノリで、売店で犬のぬいぐるみを買って来て『シクルゥ』ですと言ったのには驚いたが、静寐は普段は真面目でも、ハッチャケル時には思い切りリミッター解除をするのかも知れない。其れだけに、リミッター解除した際には色々と凄いのかも知れないけどね。
勿論、其れに負ける事無く、一夏達も撮影者の要望に応えて様々なポーズを決めて撮影を行って行く――一夏を中心に、嫁ズが周囲を固めるって言う構図は、撮影者には中々の人気で、其れなりの枚数を撮影されたからね。
大人組は、午前中と同じ衣装だった事もあり、午前中よりは撮影者が減ったモノの、其れでもそれなりに撮影者が集まっている様だった。
そんでもって撮影会が終わった後は、コスプレ衣装のまま同人誌販売のブースを見て回ったのだが、其処で簪はお気に入りのサークルの同人誌を多数購入していた、其れは良いのだが――
「オイコラ、名前は微妙に変えてあるけど、これはどう見たって俺と嫁ズだよな?
俺達をネタにするのは百歩譲って良いとしても、R-18な内容にするんじゃねぇ!確かに俺は嫁ズとやる事やってるけど、こんな鬼畜プレイはせんわ!何が楽しくて嫁ズを亀甲縛りしてからやらんとならんのか、百字以内で説明しろやオラァ!!」
「此れは……流石に見過ごせないわねぇ?」
「表現の自由とは言っても、私達に無許可で此の内容は、流石にないかな。」
「一夏は、こんな事はしません!全力で遺憾の意を示します!」
「君達は一夏を何だと思ってるの?」
「返答次第では、明日の朝日は拝めないと思え。」
一夏と嫁ズをモデルにしたR-18な同人誌を販売しているサークルは、一夏達に見つかってしまい、めっちゃ詰め寄られていた――此れが全年齢のラブコメ本であったのならばまだ『生モノ』ギリギリ、本当にギリギリスレスレのレッドゾーン直前で許容する事も出来たのかも知れないが、モザイクを掛けてるとは言えガッツリとセック○シーンを描写している以上はアウトは確定だ。午前中に、千冬とスコールのR-18百合同人誌を販売して居てたサークルは見事に追放されてしまった訳だからね。
更に、一夏と嫁ズから殺気の混じった闘気のダイレクトアタックを喰らったサークルのリーダーは物の見事に失神してしまい、このサークルが発行した同人誌は一夏達によって回収され、そしてその場でヴィシュヌが燃やして灰にした。
サークルメンバーは己の力作が灰にされた事に血の涙を流さんばかりの勢いで嘆いていたが、そもそもにして、勝手に一夏達をモデルにしてR-18な同人誌を作って居たと言うだけでも『肖像権の侵害』で訴える事も出来るのだから、この程度で済ませてくれた事に、寧ろ感謝すべきであろうな。
その後、一行は会場内を適当に回っていたのだが、企業ブースの一つが、『コスプレコンテストin冬コミ2021』と言うイベントを開催していたので、一夏の嫁ズと簪と布仏姉妹と静寐、そして稼津斗と千冬がエントリーしたのだが……
「『コスプレコンテストin冬コミ2021』のグランプリは……エントリーナンバー52!ロランツィーネ・ローランディフィルネィ!!」
見事にグランプリに輝いたのはキングのコスプレをしたロランだった。此のクッソ長い名前を噛まずに言い切った司会を褒めても罰は当たるまい。
ロランは地元オランダでは舞台女優として活躍しており、女性ながら男役を演じる事が多かったので、『男装の麗人』と言うキャッチコピーのキングは、コスプレを超えた『ゲームキャラの実写化』であったのだ。
髪の色こそ違うが、ロランもキングもショートカットなのもポイントが高かったと言えるだろう。PS版のKOF´99とCAPCOMvsSNKシリーズの家庭版要素のカラーエディットでキングを銀髪にした人は決して少なくないだろうからね。
そんでもって、見事グランプリに輝いたロランは、ステージ上でキングの勝利ポーズの一つである『楽しかったよ、またおいで』を披露し、観客からは物凄い大歓声が湧いていた……ヲタの此のエネルギーを、物理的に取り出して利用する事が出来れば、世界のエネルギー事情は一気に解決する気がしてならない。
グランプリが決定した後は、参加者全員がステージに集まって記念撮影を行い、レベルの高いレイヤーの集合写真と言う、レイヤー写真蒐集家には垂涎の一枚が撮られたのであった……この写真は、その場でプリントアウトされ、参加者全員に配られたのだが、コンテストを観戦していた観客や野次馬も自分のカメラで集合写真を撮っており、その中には後日この写真オークションサイトに出品する者も現われてしまった。
この写真は『世界初の男性IS操縦者』である一夏と、一夏の嫁ズ全員が写真内に収まっている事、コンテストを制したのが一夏の嫁の一人だと言う事もあって、凄まじい高値で落札される事になったのだが、そんな方法で大金を手にした不埒な輩を束が許す筈もなく、此の出品者は束によって使用していたオークションサイトのアカウントを削除された上に、他のオークションサイトでのアカウントを作成出来なくなり、ネットオークションを利用する事が出来なくなってしまうのだった……『此れってもしかしたら高値で売れるんじゃね?』と言う思考が頭を過ぎってしまったのが敗因だったと言えるだろう。
「ふ~ん……これ、中々面白いな?一巻から最新刊まで貰える?」
「一夏、何買ったの?」
「空の軌跡の同人誌なんだけど、内容が『エステルのガサツさにクローゼがガチギレして、エステルに女の子としての彼是を叩き込む』って奴なんだけど、絵も上手いし、ギャグテイストではあるんだけどエステルもクローゼもキャラ崩壊は起こしてないし、終始突っ込み役に徹してるヨシュアとハンスとジルが良い味出してんだよ。
其れと、奥付のイラストも中々良くてさ。衣装を交換したエステルとクローゼとか、『偶には違った髪型にしませんか?』ってエステルの髪を弄ってるクローゼとか。」
「其れは確かに面白そうだね。」
其れは其れとして、コスプレコンテストが終わった後は、また会場を適当に回りつつ、気になった同人誌や同人グッズを買って充実した時間を過ごし、イベント終了まで思い切り楽しんだ。
結果として、ヲタガチ勢のクラリッサと簪と夏姫は荷物が爆増した訳だが、そんなモノは専用機を持っている彼女達にとっては大した問題ではない。だって拡張領域って言う切り札がある訳だからね――もういっそ、束はリアルに『四次元ポケット』を商品化しても良いのではないかと思うな。
――――――
そんなこんなで冬コミは無事に終わり、大人組は飲みに出かけたのだが、一夏達一行はと言うと……
「ヘイヘイヘイ!盛り上がってるか!?
今宵は無礼講だから思い切り楽しもうぜ!このパーティに老若男女なんてモノは関係ねぇから気の向くままに、思い切り楽しもうじゃないか!」
「「「「「イエーイ!」」」」」
東京ビックサイトから程近いカラオケ店での二次会で盛り上がっていた。
カラオケボックスなら、大人数での個室を借り切る事が出来るだけでなく、フードメニューも其れなりに豊富で、インターホン一本で注文出来ると言う事で、二次会の会場は此処になったのである。
大個室を『ドリンクバー付きのフリータイム』で借りた一夏達は、早速フードメニューを注文して、テーブルにはフライドチキン、ピザ、フライドポテトと言ったスナックの定番メニューだけでなく、ケーキやプリンと言ったスウィーツに加えて、色取り取りのノンアルコールのカクテルも並んでいた。……ドリンクに関しては、ドリンクバーで作った『カルピスコーラ』、『紅茶ジンジャエール』、『ミルク入りコーラ』、『烏龍カルピス』と言う色々とアレなモノも混じっていたのだが、此れ等は実際に飲んでみると、実は割とイケるモノだったらしく割と好評だった。
「なぁ、オレも居ていいのか?」
「オータムさんは俺の護衛なんだから、俺と一緒に居た方が都合が良いだろ?其れと、ぶっちゃけて言うとオータムさんのカラオケも聞いてみたいかなぁって。」
「まぁ、良いけどよ……だがな坊主、悪いがオレはカラオケには自信があるぜ?自慢じゃねぇが、一人カラオケで全国ランキングに参加した時には、英語の歌で軒並みランキング一位をとってやったからな!」
この二次会にはオータムも参加していたのだが、此れは普段護衛をしてくれているオータムへの一夏なりの労いと言った所だろう――護衛と言う立場上、中々プライベートな時間を取る事が出来ないオータムに、偶には羽を伸ばして欲しいと考えた訳である。
そんな訳で始まった二次会だが、この場に集まった面子は全員が歌がドチャクソ巧くめっちゃ盛り上がった!ガチヲタ勢のクラリッサ、簪、夏姫はアニソンオンリーだったのだが、そんな事は問題にならない位にレベルが高かった。
デュエット曲では、一夏と嫁ズがYouTubeの動画で『歌回』も配信してるだけあってレベルが高かったのだが、一夏と円夏、刀奈と簪、弾と蘭の『兄妹・姉妹デュエット』も高得点を叩き出した。
「そう言えば、虚さんまだ歌って無いですよね?カラオケ苦手だったりします?」
「だ、弾君……そう言う訳ではないのですが、私が得意な歌のジャンルが、場の雰囲気にそぐわないと言いますか……」
「え~?そんなの関係ないっすよ。カラオケなんてのは楽しんだモノ勝ちなんですから、先ずは楽しまないと損ですって。コスプレと同じっすよ。何より、俺が虚さんの歌聞きたいですし。」
「ですが……」
「おね~ちゃん、ダンダンもこう言ってるんだから一曲位うたってもい~んじゃな~い~?彼氏からのお願いは~、余程無理なモノでない限り聞いてあげた方がい~と思うんだけどな~?」
「本音……はぁ、分かりました。ですが、私の歌を聞いても引かないで下さいね?」
そんな中、虚だけはまだ一曲も歌っていなかったのだが、弾と本音に言われ、漸くマイクを手にするとデンモクで曲を選択したのだが……虚が選曲したのは、まさかの演歌だった。確かに、クラリッサとオータム以外はティーンエイジャーな此の面子でのカラオケでは、ちょいと雰囲気に合わないだろう。
だが、そんな事は関係なしに、虚の演歌はコブシの利かせ方やビブラートが完璧で素晴らしいモノだった。完全体のセルが『パ~フェクトだぁ』と言ってしまう位に完璧だったのである。
そんでもって、歌い切った後には拍手喝采!粉砕!玉砕!!大喝采!!!
虚の演歌披露によって、二次会は更に盛り上がる事になり、結局一夏達は日付が変わる頃までカラオケを楽しんだのだった。
尚、此のカラオケの様子も、一夏は自分と嫁ズ以外の顔が映らないようにして生配信しており、チャンネル登録者達も深夜までのライブに付き合う事になったのであった……最後まで配信を視聴した視聴者はマジでガチと言っても良いだろうね。
――――――
一夏達がカラオケボックスで二次会を楽しんでいた頃、大人組は居酒屋での飲み会を行っていた。
注文した酒は、稼津斗が熱燗で、千冬とスコールが冷や、山田先生が焼酎のロックだった……まさかの山田先生が一番度数の高い酒だった。しかも、本格芋焼酎『茜霧島』の二十五度だと言うのだから中々の通であると言えるだろう。
「焼き鳥のモモと皮とボンジリ、其れからレバーを四人前。全て塩で頼む。」
「ちょっと待って千冬。レバーは普通タレで頼むモノじゃないの?」
「普通はな。
だが、此の店はレバーや白モツも塩での提供をしている――つまり、タレの濃い味で誤魔化さなくても良い位の鮮度のモノを使っていると言う事だ。ならば塩で頼まないと言う手はない。
塩で提供されるレバーは、焼き加減もレアと言う、中々味わえないモノだからな……一度塩焼きのレバーを食べたら、二度とタレ焼のレバーは食えんぞ。」
「其れは楽しみね。
あと、其れから白子ポン酢を四人前ね。」
「ヤゲンナンコツの唐揚げと、イカゲソの唐揚げを四人前頼む。」
「タコワサを四人前お願いしますね♪」
酒の肴も、夫々がお勧めのモノを人数分頼んで、飲み会は盛り上がった……稼津斗が頼んだ唐揚げ二種に、スコールがレモンを絞ろうして、千冬が其れを止めて『レモンは個人的に掛けろ』と言う場面はあったけどな。
『唐揚げにレモンは是か非か?』此れは、人類にとって永遠の課題であるのかも知れない。
その後、数軒を梯子した事で全員が見事に出来上がってしまった……ウォッカを瓶で開けても酔わない稼津斗までもが出来上がってしまったのだから、相当に飲んだのだろうが、結果として全員がホテルのベッドで目を覚ます事になったのだった。
普段は、こんなになるまでは飲まないのだが、冬コミでのコスプレでテンションが爆上がりした結果、ついつい飲み過ぎてしまったと、そう言う事なのだろうな……稼津斗と千冬は恋人同士だから良いとして、スコールと山田先生が同じベッドで、しかも一糸纏わぬ姿で寝ていたのは、正に『酔った末の過ち』って奴だったんだろうけどね。
……だが、此れは一夜の過ちでは終わらず、後日新たな百合カップルが誕生したのであった。ま、精々幸せになってくれとしか言いようがないわな。
To Be Continued 
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