Side:遊里


……突然だけど、何処よ此処?薄暗い場所だってのは分かるんだけど、何でアタシはこんな所に居るんでしょうかね?
しかも、此の振動は――若しかしなくても、此処ってトラックのコンテナの中だったりするのかな?……だとしたら、尚の事何故此処に居るアタシ!

良し、落ち着け。取り敢えず今日の事を思い返して状況を整理しましょう。其れが良いわ。


取り敢えず、朝は普通に起きて、皆のDホイールのコンディションをチェックして軽くメンテナンスをしたのよね。
で、少し遅めの朝ごはんとして『言峰麻婆』の麻婆丼を食して……そう言えばジャック達がドン引きしてたけど、何で嫌うかな言峰麻婆を?激辛をも
超えた辛さの極地かも知れないけど、辛党としては一度食べたら止みつきになる美味しさなんだけどなぁ?

じゃなくて、其れの後で……そうだ、修理の依頼が来たのよね!
其れで依頼主の家に行ったんだけど、インターホンを押しても何の反応もなくて、其れで――――



――ガスゥ!!




!!……そうだ、いきなり後ろから殴られて、其れで気を失ったのねアタシは!!
で、気が付いたらこの状況……これらを総合的に判断して導かれる答えは……先ず間違いなく、アタシは誘拐されたって事よね此れ!?


『お目覚めかな上条遊里さん?』


コンテナ内のモニターが……貴方がアタシを誘拐してくれたのかしら?


『如何にも……貴女には我等のチームの一員としてWRGPに出て貰おうと思いまして、不本意ではありますが強硬策を取らせて頂きました。』

「其れはお断りよ……アタシはジャック達とWRGPに出場する事を決めてるし、こんなスカウトをする人になびく心算は毛頭ないわ。」

『其れで結構、我等のアジトに来た暁には、貴女の事は洗脳して傀儡とさせて頂きますからね……精々、残りの自我を堪能なさってくださいな。』


洗脳って、そんなの冗談じゃないわよ!!
コイツ等の操り人形になるなんて真っ平ごめんだわ――どんな手を使ってでも、此処から脱出しないと!!

幸い、デッキとレーゲンデュエルはコンテナ内に在るから、これらを駆使すれば出る事が出来るかも……其れでも、危険はたっぷりだけれどね……











異聞・遊戯王5D's Turn82
『事件発生!遊里誘拐!?』











Side:ジャック


遊里が誘拐されるとは、マッタクトンでもない事になったモノだな?
恐らくは不意打ちでも喰らって昏倒したところをと言う所だろうが、女性に手を上げるとは、犯人は許しがたい下衆だな……其れ以前に、俺達の仲
間である遊里に手を出した時点で、極刑は確定して居るのだがな!!


だが、遊里を奪還する事が出来なければ何も出来ん……一体、何処にいるのだ遊里よ?



『ザザ……ザザザ……上条遊里は……7…ん、レーンを疾走している……ラックの……荷台に……る。』



!?なんだ今のは!?
ノイズだらけの通信だったが、途切れ途切れながらも遊里の居場所を示していた?……一体誰が、何の為にこんな通信をして来たのだろうか?

いや、其れを考えるのは後だな。


少なくとも、ガセか本当かは別としても、遊里の居場所の手掛かりが得られたのだから、そちらに向かうのが上策と言う物だ!!
ノイズだらけではあったが、今の通信を信じるとするなら、遊里は7番レーンを疾走するトラックの荷台に居ると言う事――7番レーンに最も近い場
所を走っているのは、アインを乗せたセキュリティの追跡車両か……此処はアインに任せるのが良いかも知れんな。

俺達よりも遊里の近くにいるし、いざと言う時は何とかできるだろうからな。

今この場は、貴様に任せるぞアイン、俺達も直ぐに現場に駆けつけるからな!!!








――――――








Side:アイン


見えた、アレが遊里が囚われているトラックだ!!……ジャックからの通信の通りに、本当に7番レーンに居るとは――だが、此れで補足出来た!
もう見失いはしないぞ……御影、もう少しスピードを出してトラックに肉薄してくれ。


「無茶を言わないで!今でも結構ギリギリのスピードを出しているのよ!?これ以上は、エンジンが焼きついちゃうわ!!」

「セキュリティの車でも追いつけないとなると、アレは間違いなく違法改造車と言う事だな?
 しかし、エンジンが焼きつくか……ならば、エンジンに負荷をかけない方法で加速すれば良いだけの事!来い『混沌帝龍~終焉の使者~』!」

『グオォォォォォォォォ!!!』
混沌帝龍~終焉の使者~:ATK3000



「ちょ、其れを召喚して如何する心算!?」

「エンジンが限界ならば、後ろから押して速度を出すだけの事!頼むぞ、終焉の使者よ、この車を加速させろぉォォォ!!」

『グオォォォォォォ!!』


――グイィィィィィィィン!!!



って、押して貰う心算だったのだが、フロントバンパーに尻尾引っ掛けて牽引しはじめてしまったか……まぁ、速度は上がったし結果オーライだな。
ともあれ、今助けるからな遊里!








――――――








Side:遊里


ちぃ……予想はしてたけど、やっぱりこのコンテナは『中からは開かない』構造になってるみたいね。
其れでも工具箱が有れば、ドライバーとかスパナとか、その辺のツールを使って扉そのモノを解体出来たんだけど、ないんじゃ其れも無理……だっ
たら、物理的にぶっ壊すしか方法は無いわよね?良いわよね、全力全壊をしちゃっても?

「サテライトって言う場所で生きるには、デュエルの腕以外にも己の腕っ節も強くなくちゃならないからね……牛尾からセキュリティが使ってる格闘
 術を教えて貰ったのは正解だった……其れを、アタシ流にアレンジした一撃――受けろ、此のブロウ!!」


――ガァァァァァアァァァァン!!


……ダメか流石に。
多少は凹んだけどびくともしないと来たよ此れ………となると、やっぱり此処はデッキの相棒に頼るしかなさそうね。
狭いからシルバー・ウィンドは無理だけど、人型なら問題なし!頼むわよ、『プリンセス・ヴァルキリア』!!コンテナの扉を吹き飛ばして!!


お任せ下さい、マスター。
プリンセス・ヴァルキリア:ATK2500


この程度の扉など……破あぁぁぁぁぁぁぁ……デュランダル・ブレイザー!!


――バガァァァァァアアァァァアァァァァァァアン!!!


お見事!!あとは此処から、レーゲンに乗って脱出すれば………って、なんじゃありゃぁぁぁ!?
混沌帝龍に牽引されてる車って……若しかしなくてもアイン!?


「無事か遊里!!」

「この通り無事だけど、混沌帝龍に車引っ張らせて何やってんのアイン!?」

「お前を助けに来たんだ。
 セキュリティの車では追いつけないから、混沌帝龍に引っ張って貰ったと言う訳さ……本当は押して貰う心算だったんだけどね……」


さいですか……だけど、扉が吹っ飛んだ今なら、レーゲンに乗って此処から離脱できるから少し離れて――



――ガクンッ!!



「うわぁ!?」

「アイン!!!」


吹き飛ばされた扉の破片に乗り上げて、車体バランスを崩してアインが車外に………何とか腕を掴んでこっちに引き寄せたけど、大丈夫だった?


「何とかね……しかし此れから如何したモノか……」

「問題ないわ、レーゲンにタンデム乗車して、其れで此処から離脱するから。」

「……他に手もないか……分かった、失礼するぞ。」


うん、確り摑まっててよ!!


――ブオォォォォォォォォン!!


離脱するのは次のジャンクション……直前で降りて、此のトラックともおさらばさせて貰うわ!!――見えた、そろそろね………此処で!!



――バシュゥゥゥン!!!



コンテナを降りて、別ルートに入る!!これで、あのトラックとはおさらばよ!!
我乍ら、鮮やかなテクニックだったわ……もう一度同じ事をやれと言われたら、流石にちょっと無理かもしれないけどさ。

何にしても、此れで誘拐犯とはおさらばよね?
主犯格は逃げるだろうけど、徹底的に情報を洗い出してお縄にしてやるから覚悟しときなさいよ……アタシの情報収集力は半端じゃないからね?

こんなふざけた事してくれた連中は、社会的に抹殺してやるから覚悟しときなさい……全員闇に葬ってあげるわ。


その為にも、先ずはシティのコンドミニアムに戻る必要があるんだけど――




――キィィィィィィン………




そうは問屋が卸さないのが世の常なのよねぇ?
トラックから離脱したアタシ達の前に現れたのはヘルメットで完全に顔を隠したDホイーラー……体格的には女性だと思うけど、一体何者なのか…

「貴女は誰?……って、聞いた所で答えないわよね?」

「……デュエリスト同士ならば、言葉は不要でしょう?」


言ってくれるじゃない……確かにその通りだって言うのは否定しないわ――其れに売られたデュエルは買うのがデュエリストの礼儀って言うモノ!
悪いけどアイン、少しだけ付き合って貰うわよ?


「大丈夫だ……寧ろ、こう言う視点は新鮮だから、其れなりに堪能させて貰うさ。」


なら、遠慮無く行くわ!!このデュエル、受けて立つわ、覆面デュエリスト!!


「「ライディングデュエル・アクセラレーション!!」」


――グン……


ファーストコーナーは、貰った!!!其れじゃあ始めようか、覆面Dホイーラー!!!



「「デュエル!!!」」



遊里:LP4000    SC0
???:LP4000    SC0



貴女が何を目論んでいるかは分からないけど、このデュエルの勝利は譲らない!!!アタシのマックスフィールで叩きのめしてやるわ!!!










 To Be Continued… 






登場カード補足