Side:遊里


見えた!!あの巨大施設が、恐らくはダークシグナー達の活動拠点になってるんだと思う。
流石に今は出払ってるみたいで、見張りすら居ないみたいだけど、其れが逆に好都合!!面倒な横槍を入れられずに、目的地に辿り着けるもの!


そして此処には、ダークシグナーの長とも言えるルドガーが陣取っているのは間違いないわ。
恐らくは私の事を待っているんだろうけど――なら其れには応えないとだよね!!


「――で、到着した訳なんだけど……」

「コイツはまた、如何にもって感じだな……」

「廃墟だと言うだけでも不気味だが、その不気味さ以上の強力な闇の気配を感じるな……」


うん、物凄く強い『闇の気配』を中から感じる――しかもそれを隠そうともしてない。


『俺は此処に居るからさっさとかかって来い』って所かしらルドガー?……言われなくても直ぐに行ってやるわ、宇里亜を助ける為にもね!!











異聞・遊戯王5D's Turn59
『現れる最後のダークシグナー』










Side:ゴドウィン


如何やらシグナーとダークシグナーの戦いは、今の所シグナーの優勢ですか……まぁ、此れは予想の範疇ですけれどね。
寧ろ私の目的は、この先に待つデュエルにこそあると言えるでしょう。

「別に付いてこなくても宜しいのですよ?」

「いえ、ゴドウィン長官の護衛もまた、我々セキュリティの任務ですので。
 何よりも治安維持局長官ともあろうお方を、サテライトの得体の知れない廃墟に1人で向かわせる事など出来ません。」


そうですか。仕事熱心なその態度は実に好感が持てると言うモノです。
ですが、君達の職務に忠実な態度に感心し、私を護衛してくれることに感謝しつつ敢えて言います――此れから会う相手に銃など効きませんよ。

彼は、既に『死者』なのですから。


「「「「「「?」」」」」」

「まぁ、会ってみれば分かるでしょう。」

尤も、向こうから出向いて来てくれたようですが。


「矢張り来たか、レクス。」

「!総員、捕縛にかかれ!!」

「ふむ……小煩い外野には黙っていて貰おう。」


――シュルルルルルッルルルルルル!!


「「「「「「「のわぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁ!?」」」」」」」


蜘蛛の糸……此れもまたダークシグナーになった事で得た力ですか、兄さん?


「如何にも。……それで、何の用だレクス?」

「いえ、先ずは少しばかり話をしようと思いましてね――ボマーの故郷を焼いたのは兄さんでしょう?
 恐らくはボマーとその兄弟だけが生き残るようにして、そしてダークシグナーの力でボマーに強烈な暗示をかけた『犯人はレクス・ゴドウィン』と。
 そうしてボマーの心に憎しみを植え付け、ボマーが私に対して牙を剥く時を待つ。
 ですが、セキュリティの警護を抜けて私に危害を加える事は略不可能に近いので、ボマーは行動を起こしても捕らえられる可能性が極めて高い。
 捕らわれれば後は簡単です、護送車を襲ってボマーを連れ出し、憎しみの炎を増大させてダークシグナーの道を歩ませれば其れで良い。
 日堂亜美やミスティ・ローラをダークシグナーとして引き込んだのも全ては兄さんの仕業でしょう?……そして5000年前の『彼』も。」

「そんな事を聞きに来たのかレクス?
 まぁ良い、確かにお前の言う通り、其れをやったのは全て俺だ――が、お前はこうなる事を見越してシグナーを集めたのだろう?
 上条遊里、ジャック・アトラス、鬼柳京介、龍可……成程、どいつもこいつも類稀なデュエリストであるようだ。1匹得体の知れない奴が居るがな。」


ブランシュ・ノーチラスですね?
彼女に関しては私の方でも予想はしていませんでしたよ――まさか、人工的にシグナーを生み出そうとしている輩が居るとは思いませんでした。

まぁ、其れは其れとして、私の目に狂いはなかったようです。
上条遊里、彼女を中心にシグナー達の団結力はデュエルをする度に強くなって居る上に、次々とダークシグナーを打ち破っていると来ている。

ダークシグナーも残るは兄さんただ1人――其れでもまだ諦めませんか?


「問うまでもないだろうレクス?」

「そうでしたね………ならば、せめて引導くらいは私の手で渡して差し上げましょう、兄さん。」

「……ほう?俺を止めに来たのかレクス……良いだろう、お前とのデュエルはもう何年ぶりになるか……せめて楽しむとするかレクス!」


えぇ、どちらが勝っても今生の別れとなるデュエルです、本気で行きましょう!!


「「デュエル!!」」


レクス:LP4000
ルドガー:LP4000



まぁ、このデュエルの結果こそが私の目的でもあるのですがね……さぁ、全力で来てください兄さん!!








――――――








Side:クロウ


遊里と日堂のデュエルの後、遊里達とは別行動を取ってたんだが、如何にもこの廃墟から『やな予感』を感じたんで来てみたらビンゴだ。
既に中に入ったみたいだが、表には遊里と鬼柳のDホイールが停まってたからな――此処にダークシグナーが居るのは間違いねぇ。


と、そう思って中に入ってみたんだが、ゼロ・リバース以前は何だったんだ此処は?
内部構造がまるで迷路だぜ!?適当に壊れてるせいもあるんだろうけど、先に何があるかが全く分からねぇ……また分かれ道かよ!!!

本来なら壁で隔てられてた通路が適当にくっついちまってるから、マジで訳が分からねぇ!遊里は何処にいんだ!!


「おや?君は確か上条遊里の友人ではなかったでしょうか、クロウ・ホーガン君?」

「あん?……って、ゴドウィン!?」

アンタ何やってんだこんな所で!?
てか、俺の事知ってんのか?アンタに名乗った事あったっけか?


「サテライトの子供達の為に盗みを繰り返す『義賊クロウ』の名は、シティでも有名なのですよ。
 君のしている事は確かに犯罪行為ではありますが、その理由が自ら生きる力を持たぬ子供達の為と言うのは実に感心できます。
 昔の石川五右衛門や鼠小僧ではありませんが、シティの一部の人間は君の事を『現代の人情義賊』として支持しているようですからね。」


……マジで?全然知らなかったぜ。
いや、其れは別に良いけど、治安維持局の長官様が護衛も連れずにこんな所で何してやがるんだ?

ダークシグナーの事が気になるってんなら、別に問題ないとおもうぜ?
俺も1人倒したし、遊里も1人倒したし、ジャックと龍可も負けるとは思えねぇからよ。


「でしょうね、ダークシグナーはこの場所に居るルドガーで最後です。
 そして、彼とは遊里が戦うでしょうが、遊里が負ける事はないでしょう……事は全て問題なく進んでくれたようです。」

「は?」

「クロウ君、遊里に伝言を頼みます――ルドガーを倒したらシティに来るように、レクス・ゴドウィンが待っている――と。」


なんだか良く分からねーが、伝えとくぜ。
てかそれ以前に、遊里が何処に居るか知りてーんだけどよ……


「ルドガーはこの廃墟の中心部にて相手を待っているでしょう。
 適当に崩れて入り組んでしまっていますが『Central』の表示看板に従って進めば中心部に着きます――彼女も其処に居る事でしょう。」


成程な……サンキューゴドウィン、アンタの伝言必ず伝えるぜ!


「えぇ、頼みましたよ。」


中心部って事はこっちか!!ダークシグナーとのラストデュエル、キッカリ拝ませてもらうぜ!!!








――――――








Side:遊里


闇の気配がする方に向かって歩いて来たけど、此れはまた如何にも『この先にラスボスがいます』って感じの重厚な扉が現れてくれたわね?
しかも、この扉電子式みたいだから手動じゃ開ける事できないし……如何したもんだろうね此れ?

せめてコントロールパネルが生きてれば、其処からハッキングも出来たんだろうけど、液晶が割れてコードが千切れてるのを見る限りは無理よね。
この先にルドガーが居るのは間違いないけど、どうにかしてこの扉を開ける事は出来ないもんかな?最悪壊しても良いからさ。


「壊しても良いのか?ならば私に任せろ遊里!!
 頼むぞ、『カオス・ソルジャー』『裁きの龍』『ダーク・アームド・ドラゴン』『究極龍騎士』!!」

カオス・ソルジャー:ATK3000
裁きの龍:ATK3000
ダーク・アームド・ドラゴン:ATK2800
究極龍騎士:ATK5000→6000



はいぃぃぃ!?何召喚してんのアイン!?
まさか、其れで扉吹っ飛ばす気!?明らかにオーバーキルってか過剰戦力ってか……この布陣についてどう思われますか、実況の鬼柳さん!?


「良いな……此れで満足できるぜ。」

「だ、そうです!つ~事で思い切りやっちゃっていいよアイン!!」

「ならば手加減はしない!!皆、一斉攻撃だ!!
 『カオス・ブレード』!『ジャジメント・フレア』!!『ダーク・ジェノサイド』!!!『ギャラクシー・クラッシャー』!!!



――ドッゴォォォォォォン!!!



見事に吹っ飛んだわね~~~……お見事アイン!
さてと、粉塵が晴れた先には――やっぱり居たわねルドガー!


「派手な登場だな遊里……よくぞここまで辿り着いた……見事なモノだと素直に称賛させて貰おう。
 いや、それ以前にシグナーとダークシグナーと言う関係でなければ、お前とは良いデュエルが出来たのかもしれんが――」

「IFの未来を語る事に意味は無い……って、何処かで聞いた事があるよ。
 確かに少し関係が違えば、良いデュエル仲間になった可能性もあるけど、現実は違う――ダークシグナーもアンタで最後だから、終わりにする!」

「そう来なくてはなぁ……お前と本気でやりあうのは少しばかり楽しみにしていたのだ。」


ほざくな……アンタは此処で倒す、そして宇里亜の魂を地縛神から解放する!
同時にシグナーとダークシグナーの戦いも、今此処で終止符を打つ!!――デュエルよルドガー!


「無論望むところだ……貴様を倒し、そしてダークシグナーと化してやろう!
 そして其れを反撃の狼煙とし、シグナーを全て狩りつくしてくれる!!」

「やってみなさいよ……出来るモンならね!!行くわよルドガー!!」

「来い、上条遊里ぃぃぃ!!」


「「デュエル!!!」」


遊里:LP4000
ルドガー:LP4000



「先攻は貰うぞ!手札を1枚捨て、レベル-5の『ボリスパイダー』を召喚!」
ボリスパイダー:ATK2000


「更に、手札の『ネガ・アラーネア』は、我がフィールド上に『ボリスパイダー』が攻撃表示で存在する場合に特殊召喚できる!」
ネガ・アラーネア:ATK1900


レベル-5のモンスターが2体……行き成りダークエクシーズ?上等じゃない!


「私は、ボリスパイダーとネガ・アラーネア、2体のレベル-5のモンスターでダークオーバーレイ!
 万物を絡み取る蜘蛛の糸が世界に蔓延り、世は混沌に落ちる。ダークエクシーズ!現れよ、『スパイダー・クィーン』!!」

『きしゃぁぁぁぁぁあっぁ!!』
スパイダー・クィーン:ATK2400



うげ……此れはまた生理的に受け付けないモンスターを呼び出してくれたものね?
蜘蛛の頭の部分から、6本腕の女性の上半身が生えてるとか勘弁してよ……しかもその腕のうち2本はカマキリの鎌みたいになってるし!!


「スパイダー・クィーンの効果発動!
 このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除き、次の相手のターンでの魔法カードの発動を封じる!私は此れでターンエンドだ。」


魔法の封印て、クロウが聞いたらブチ切れそうなチート効果ね其れ!?
しかもそんだけの効果を持ちながらも帝級の攻撃力を備えてるってんだから笑えないわ……まぁ、何とかできなくはないけどね!

「アタシのターン!!…『幻想の闇魔導師』を攻撃表示で召喚!」
幻想の闇魔導師:ATK1500


幻想の闇魔導師の効果発動!
このカードの召喚に成功した時、手札からレベル1のモンスターを特殊召喚できる!!出番よ『ツメクリボー』!!

『クリ~~~!!』
ツメクリボー:ATK300


レベル4の幻想の闇魔導師に、レベル1のツメクリボーをチューニング!
集いし絆が、此処に新たな力を誘う。光射す道となれ!シンクロ召喚、羽ばたけ『ヘル・カースド・ドラゴン』


『グゴガアァァァァァァ…!!』
ヘル・カースド・ドラゴン:ATK2000



「呪いの力を宿した竜か……!!」

「その通り!そしてヘル・カースドがその身に宿した呪いの力は、ドラゴン以外のモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずに破壊する!
 スパイダー・クィーンは昆虫族……呪力をその身に宿した竜の敵じゃない!!焼き尽くせ『カーズ・フレア』!!!」



――バガァァアァッァアァァン!!



「むおぉ!?」


まぁ、ダメージ計算がないから相手に戦闘ダメージは発生しないんだけど、ノーダメージでも効いたでしょ、アタシのフィールは?



このまま一気に押し切ってやるわ!ダークシグナーの計画も此処で破綻する……させて見せる、絶対に!!

さぁ、今のはホンの小手調べよルドガー、デュエルは此処からが本番でしょう?……完膚なきまでに叩きのめして冥界に送り返してやるわ!!












 To Be Continued… 






登場カード補足



スパイダー・クィーン
ランク-5    闇属性
昆虫族・ダークエクシーズ
レベル-5の昆虫族モンスター2体。
このカードのオーバーレイユニットを1つ取り除いて発動する。
次の相手のターン終了時まで、相手は魔法カードを発動出来ない。
オーバーレイユニットを持ったこのカードが破壊された場合、自分フィールド上に『クィーン・トークン』(星1・光・攻守0)を可能な限り特殊召喚する。
ATK2400     DEF1000



ボリスパイダー
レベル-5    闇属性
昆虫族・効果
手札を1枚捨てる事で、このカードは手札から特殊召喚できる。
ATK2000    DEF600



ネガ・アラーネア
レベル-5    闇属性
昆虫族・効果
自分フィールド上に「ボリスパイダー」が表側攻撃表示で存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
ATK1900    DEF800