Side:アイン
……妙な感覚がするな?
ダークシグナーが力を使ったと言うのとはまた違う、もっと重々しく、そして深い悔恨や悲しみ、怒りなんかの負の感情が入り混じったような……
此れはまるでナハトの闇にも匹敵する負の力だ――捨て置く事は出来ないが、だからと言って私に出来る事も多くはない。
其れで何もしないかと言われれば其れは否だがな。
取り敢えずは妙な感覚を感じた方に行ってみるか。何か分かるかも知れないしな。
「おやアイン、お出かけかい?」
「少しばかり出て来るマーサ、何かあったら私の携帯に連絡を入れてくれ――直ぐに戻るから。」
「あぁ、分かったよ――だけど無理はするんじゃないよ?
アンタの事を慕ってる子供達は多いんだ……アンタに何かあったらあの子達が大層悲しむ事くらいは分かるだろう、アイン?」
あぁ、其れ位は理解している。
なに、少しばかり様子を見て来るだけだから危険はない。
だから心配しないで待っていてくれマーサ、必ず無事に戻って来るから。
「うん、気を付けて行っておいで。」
「――行って来る!」
しかし、まさか到着した先でシグナーとダークシグナーの戦いが繰り広げられていたとはね……しかもシグナーの方はブランシュだったとはな…
異聞・遊戯王5D's Turn53
『深く絡まりし因縁のデュエル』
Side:ブランシュ
神様を信じてるとは言わないが、もしも存在してるんならそいつはきっと、物凄く性根の意地悪な奴なんだろうな。
こうして俺とミスティを、シグナーとダークシグナーとして巡り合わせ、そして戦わせようってんだから……あぁ、トンでもない鬼畜なクソッ垂れだ。
だけど、不本意ながら俺はシグナーでミスティはダークシグナーだから、戦いを避ける事だけは出来ないよな……
「嘗て、嘗てこれ程神に感謝した事は無いわ。
遂に私は弟の、トビーの仇を討つ事が出来る――これ以上の喜びはないわ……寧ろこの為だけに、私はダークシグナーになったのかも…」
冗談じゃない……俺への復讐……てのとは違うかもしれないが、兎に角俺と戦う為だけにダークシグナーになったて言うのかミスティ!?
ドンだけ弟への執着が強いんだよアンタは……まぁ、その弟を殺したのは結果的に俺だって言うのは否定できない事なんだけどさ。
「アレは事故だから貴女自身には何の責もない……だけど、アルカディアムーヴメントが崩壊した今、私の恨みが向かう先は貴女しかないわ。
だからこそ、私は貴女を倒してトビーへの弔いとする――身勝手な自己満足である事は重々承知しているけどね。」
だからと言って、止めろって言っても手は止まらないだろ?……俺にも覚えがあるからな。
だけどミスティ、アンタの思いは分かった……だから、俺も一切の言い訳はしないでアンタとのデュエルをやらせてもらう……もう、戦うだけだ!
「そう来なくてはね……行くわよブラン!!」
「来いミスティ!!全て清算してやる!!」
「「デュエル!!」」
ブランシュ:LP4000
ミスティ:LP4000
「先攻は貰う、俺のターン!!手札から魔法カード『潮の満ち引き』を発動。
手札の水属性モンスター1体を墓地に送り、デッキからカードを2枚ドローする。そして『浅瀬のニンフ』を召喚。」
浅瀬のニンフ:ATK1100
浅瀬のニンフの召喚に成功した時、俺の墓地の水属性チューナー1体を選択し、効果を無効にして特殊召喚する。
ニンフの歌声によって蘇るのは、潮の満ち引きのコストとして墓地に送ったチューナー『ウェーブ・ガードナー』!!!
ウェーブ・ガードナー:DEF1700
更に魔法カード『フラットレベル・Max8』を発動し、浅瀬のニンフとウェーブ・ガードナーのレベルを8にする。
浅瀬のニンフ:Lv3→8
ウェーブ・ガードナー:Lv3→8
「行き成りレベル8のモンスターが2体……最高ランクのエクシーズを呼び出す心算ね?」
「言うまでもないだろミスティ?速攻こそが俺のデュエルの持ち味だからな!
俺はレベル8となった浅瀬のニンフとウェーブ・ガードナーでオーバーレイ!オーバーレイネットワークを構築!
エクシーズ召喚!かつての食物連鎖の頂に立ちし古代生物よ、今こそ現世に甦れ!『古代甲殻獣メガロ・ゴートゥス』!」
『グオアァァァァァァァァァ!!』
古代甲殻獣メガロ・ゴートゥス:ATK2600 ORU2
先攻ターンは攻撃できないからな、カードを1枚セットしてターンエンドだ。
「私のターン!手札から魔法カード『永久に続く魔法詠唱』を発動。
ライフを1000ポイント払い、デッキから永続魔法カードを3枚まで選択して、私の魔法・罠ゾーンに表側表示で置く。
私がライフ1000ポイントと引き換えにフィールドに顕現させるのは3枚の永続魔法にして、あの忌まわしき悲劇の記憶を今に伝えるモノよ。
発動せよ『サッド・ストーリー~悲しみの記憶~』『サッド・ストーリー~揺るがない真実~』『サッド・ストーリー~忌むべき日~』!!」
ミスティ:LP4000→3000
ライフを1000ポイント払って3枚の永続魔法カードをデッキから発動しただと?
ライフを払ってでも発動する価値のあるカードなのか?
「サッド・ストーリーは夫々がドローフェイズにドローしたカードをデッキに戻す効果がある。
悲しみの記憶はモンスターを、揺るがない真実は魔法を、忌むべき日は罠をデッキに戻す……此れが如何言う事かは分かるわねブラン?」
俺のドローフェイズは封じられた…!!
だがミスティ、その魔法の効果はアンタにだって有効な筈だ――この3枚だけで一概に俺が不利になったとは言えないと思うけどな?
「そう思うかしら?
私のフィールド上に永続魔法カードが3枚表側表示で存在する場合、このカードを特殊召喚できるのよ?
永久に続きし詠唱に応じて顕現せよ!出でよ『バッドエンド・エンプレス・ドラゴン』!!」
『イゲガァァァァァァァ!!』
バッドエンド・エンプレス・ドラゴン:ATK2500
!!手札を殆ど消費しないで上級モンスターか……!ダークシグナーになってもミスティのデュエルタクティクスは変わらずか。
だけど、このモンスターは俺の知らないモンスターだな?――ダークシグナーになってデッキを変えたのかもしれないな。
「バッドエンド・エンプレス・ドラゴンが存在する限り、私は『サッド・ストーリー』と名の付く永続魔法カードの効果を受け付けない。
そしてバッドエンド・エンプレス・ドラゴンの攻撃力は、私のフィールドの永続魔法1枚に付き300ポイントアップする!!」
バッドエンド・エンプレス・ドラゴン:ATK2500→3400
マジか!?……行き成りこんだけのコンボを仕掛けて来るとは――!!
初っ端から超ピンチじゃないか――ドローフェイズを完全に潰された上に、攻撃力3400を相手にしろってのは幾ら何でもきついだろうが!!
しかもミスティの墓地にはモンスターが居ないからメガロ・ゴートゥスの効果だって発動は出来ねぇ……行き成り最大の窮地なんて笑えないぜ。
「先ずは此れで開始の花火としましょうか?
バッドエンド・エンプレス・ドラゴンで、古代甲殻獣メガロ・ゴートゥスに攻撃、『悲劇のサッドインバース』!!」
――バガァァァッァアァン!!
「うわぁぁぁぁ!!」
ブランシュ:LP4000→3200
く……この衝撃はフィールやサイコパワーの比じゃない……ミスティの闇が其のまま力になった感じだ――!!
だが、もしそうだとしたら幾ら何でもやばすぎる――ミスティの心は最愛の弟を失った事で闇に染まりきってる筈だから、相当に思うところがな…
だけど俺は負けない…少なくともあの時トビーを殺したのが俺だって言うのは変えようのない真実さ。
だけど、其れでも俺はアイツを助けたかった――結局できなかったんだけどな……後はもう戦うしか――
――ヴィン…
!?……な、なんだ此れ?行き成り周囲がミラーハウスみたいに……同じ顔が此れだけ並ぶと自分の事ながら若干退くな…
だけど如何してミラーハウスを…こんな演出は俺のデュエルには必要ないんだが……
「本当に必要ない事かしら?……己の罪をその身で知りなさい?」
え?……な、なんだ此れ!?
此れはトビーの記憶?……サイコデュエリストととしての才を覚醒させるために拷問染みた事をされるトビー……此れは俺も知ってる事だ。
だけど此れは――!!!
『あ……あ……うわぁぁっぁぁぁぁあ!!た、助けてくれブランーー!!!』
俺に助けを求めるトビー……あの時、アイツはこんなに苦しんでたってのか!?……なのに俺は其れに気付けなかったって言うのかよ…!?
そして、俺は痣をこの身に宿し、結果的にトビーを殺した――アイツの助けてくれって言う事を無視して………!!」
「だが其れで良い。」
「!?」
お前は……ディヴァイン!!
葬ったと思ったが、生きていたのか――呆れた生命力の強さだな。
だが、今更何をノコノコと現れやがった?……テメェの出番なんぞは、もう何処にもないが?
「クックック……確かにそうだろうが、私には私の野望があるのでね――その為にも働いてもらうよブラン!!」
「お断りだ……お前等と一緒に何かをやるなんてのは願い下げ――寧ろ細胞レベルで拒否だ……きょひ……き………」
な、何だ?妙に頭がボーっとして……俺は一体……
「お前はダークシグナーを倒すために戦っているんだよブラン……自分の敵は全て倒さなければならないだろう?」
そうだ……俺の目的は全てのシグナーとダークシグナーを葬る事……!!
その為ならば命すら惜しくはない……リバースカードオープン『黒潮海流の恵み』。
俺の場の水属性モンスターが破壊された時、デッキから攻撃力1000以下の水属性モンスターを特殊召喚する。来い、『ネオンピライバ』!
ネオン・ピライバATK700
「…?雰囲気が変わったわね……今の男が何かしたのかしら?
――まぁ、良いわ。カードを1枚セットしてターンエンド。」
「何もない……だが俺はお前には負けないぜミスティ…俺のターン!!
3枚のサッド・ストーリーの効果で俺にはドローロックが掛かるが、そんな事は如何でも良い――俺は『イージス・キャンサー』を召喚!」
イージス・キャンサー:DEF1600
そして俺は、レベル3のイージス・キャンサーに、レベル5のネオンピライバをチューニング。 シンクロ召喚!折れぬ心をその身に宿し、深淵より浮上せよ!『鎧殻龍
シェルアーマー』!
鎧殻龍 シェルアーマー:ATK2600
続いて魔法カード『天よりの宝札』を発動!互いに手札が6枚になるようにデッキからカードをドローする!
これで手札も補充できた!更に装備魔法『深海の潮流』をシェルアーマーに装備!
このカードを装備したモンスターの攻撃力は800ポイントアップし、装備モンスターと戦闘を行う相手モンスターの効果を無効にする!!
鎧殻龍 シェルアーマー:ATK2600→3400
「そして此れだけではない…装備魔法『海流サンダーショック』をシェルアーマーに装備。
装備モンスターが相手モンスターを戦闘によって破壊した場合、相手の魔法・罠ゾーンに表側表示で存在するカードを全て破壊する!!」
此れでアンタの場をがら空きにしてやるよミスティ……シェルアーマーで、バッドエンド・エンプレス・ドラゴンに攻撃!!
バッドエンド・エンプレス・ドラゴン:ATK3400→2500
――バガァァァン!!
此れでアンタのフィールドは壊滅だ。そこそこダメージを与えたが……だが本質はこんな物じゃないだろう?
ミスティ;LP3000→2100
「勿論よ…リバースカードオープン『悲劇の導き』。
私の場に存在する表側表示のカードが2枚以上破壊された時、『サッド・トークン』2体を攻撃表示で特殊召喚するわ。」
サッド・トークン:DEF0(×2)
此処でトークンか?……呼び出す心算か、アイツを――!!カードを2枚セットしてターンエンドだ。
「私のターン!!
私はこの2体のトークンをリリースし――出でよ忌まわしき神……『地縛神 Ccarayhua』!!」
『みぎよぁぁぁぁぁあ!!』
地縛神 Ccarayhua:ATK2800
!!!……たった2ターン目で、地縛神だと!?……だが俺の目的の邪魔になる物は何であろうとも叩き潰すだけだ……
そして其れを成して初めて俺は、トビーに……な。
――――――
Side:アイン
――何と言う事だ……地縛神がその力を発揮しているとは……そんな兆候は見られなかったが――相当な状態なのだろうな。
だがそれ以上に、ブランのすぐ横に居るロングコートでグローブを付けたグラサンの方が怪しさ大爆発だ――寧ろ突っ込み待ち――はないか。
何れにしても、この現れた地縛神を何とかしなければ、何一つはじめる事は出来そうにないだろうね……被害が余りにも大きすぎた故にな。
同時に怪しさ全開の奴を如何にかしてやらないとならないだろうな………マッタク、仕事を増やしてくれるものだ……!!
To Be Continued… 
登場カード補足
バッドエンド・エンプレス・ドラゴン
レベル8 闇属性
ドラゴン族・効果
このカードは通常召喚出来ない。自分フィールド上に永続魔法カードが3枚表側表示で存在する場合にのみ特殊召喚できる。
このカードが表側表示で存在する限り、自分は「サッド・ストーリー」と名の付く永続魔法カードの効果を受けない。
このカードの攻撃力はフィールド上に表側表示で存在する永続魔法カードの数×300ポイントアップする。
ATK2500 DEF2000
潮の満ち引き
通常魔法
手札の水属性モンスター1体を捨てて発動する。
デッキからカードを2枚ドローする。
永久に続く魔法詠唱
通常魔法
ライフを1000ポイント払って発動する。
デッキから永続魔法カードを3枚まで選択し、選択したカードを自分フィールド上の魔法・罠ゾーンに表側表示で置く。
サッド・ストーリー~悲しみの記憶~
永続魔法
このカードを発動するターン、このカード以外の魔法カードを発動する事ができない。
ドローフェイズ時にドローしたカードがモンスターカードだった場合、お互いのプレーヤーはそのカードを自分のデッキに戻してシャッフルする。
サッド・ストーリー~揺るぎない真実~
永続魔法
このカードを発動するターン、このカード以外の魔法カードを発動する事ができない。
ドローフェイズ時にドローしたカードが魔法カードだった場合、お互いのプレーヤーはそのカードを自分のデッキに戻してシャッフルする。
サッド・ストーリー~忌むべき日~
永続魔法
このカードを発動するターン、このカード以外の魔法カードを発動する事ができない。
ドローフェイズ時にドローしたカードが罠カードだった場合、 お互いのプレーヤーはそのカードを自分のデッキに戻してシャッフルする。
深海の潮流
装備魔法
水属性モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップし、装備モンスターと戦闘を行う相手モンスターの効果は無効になる。
海流サンダーショック
装備魔法
水属性モンスターにのみ装備可能。
装備モンスターが相手のモンスターを戦闘によって破壊した場合、相手フィールド上に表側表示で存在する魔法・罠カードを全て破壊する。
黒潮海流の恵み
通常罠
自分フィールド上の水属性モンスターが破壊された時に発動できる。
デッキから攻撃力1000以下の水属性モンスター1体を選択して特殊召喚する。
悲劇の導き
通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するカードが1ターンの間に2枚以上破壊された場合に発動できる。
自分フィールド上に「サッド・トークン(星2・闇・爬虫類・攻守0)を2体特殊召喚する。
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