Side:遊里
一体何処まで続いてるのかしらこの道は?
皆と別れて少なくとも10分は走ってる筈なのに、未だに先に有るのは暗い道だけ……まさかとは思うけど、ラスボスへの直通ルートってな
事は無いよね?
そんな物が有るなら、態々分断する必要は無いからね。
其れよりもミスターX、貴方は一体何者なの?敵じゃないのは分かるし、アタシがアクセルシンクロを体得する事に成ったデュエルの時は、
イリアステルを止める事が目的だみたいな事を言ってたけど……
「俺の正体か……何時までも隠し通せるものではないが、もう少しだけ秘密にさせておいてくれ――俺達がこの先のフロアに辿り着くまで
はな。」
「……分かった。だけど、道を通り抜けた先のフロアに辿り着いたら教えてもらうからね?――まさか、自分で言った事を覆したりはしない
でしょ?」
「あぁ、勿論だ。
必ず話すと約束しよう――此処で嘘を吐いたら、後でアキにきついお仕置きをされてしまうかもしれないからな。」
なんじゃそりゃ?……って言うかアキって誰?
まぁ、気にしても仕方ないか――この道がラスボスへの直通じゃないって言うのなら、きっと何処かで中ボスの部屋にぶつかる筈だから、
そこで彼の正体は話して貰うとしましょう。
んで、敵じゃないなら其処に現れた中ボスを相手に共闘する事も出来るだろうからね?…悪いけど、中ボス戦で負ける事は無さそうね!
異聞・遊戯王5D's Turn173
『明かされた真実と予想外の門番』
其処から更に走る事約3分!遂に視界が開けて、やって来ましただだっ広い部屋に!
てか、此の部屋の大きさはドンだけだ!?幾らアーククレイドルがデカいとは言え、アーククレイドル全体で占めるこの部屋の割合は凄い
んじゃないかって思うわ――ちょっとした小島くらいの広さがある訳だし。
其れは兎も角、中ボスは何処?
「まだ、現れないみたいだが……そうか、お前は遊里を極限まで強くした上で其れを叩き潰す心算なのかゾーン……そうする事で、障害と
なるモノ全てを排除する事が確定すると言う事か。
其れならば、俺と遊里が一緒にアーククレイドルを進んだのも、お前にとっては予想の範疇だったのかもしれないな。
だが……全てがお前の思い通りに行くわけじゃない――遊里はお前の上を行く筈だ。」
と……え~~と、如何したのミスターX?
何をぶつぶつと……って言うか、此処に辿り着いたら正体を明らかにするって言ってなかったけ?――見せて貰えるかしら、貴方の素顔。
「……約束だからな。――此れで良いか、遊里。」
「へ?」
えぇぇぇぇ!?ちょ、此れってマジ!?本気と書いてマジ!?
ヘルメットをとバイザーを外したミスターXは、チーム5D'sの頼れる凄腕メカニックの星津衛遊!――貴方がミスターXの正体だったの!?
「そう言う事に成るかな……記憶が無いというのも嘘だ――全ては、お前達に接触するためのモノだったからな。
俺の目的は、お前達と接触し、お前にアクセルシンクロの可能性を見せて、其れを体得させる事に有った……イリアステルを倒す為に。
尤も、其れに触発される形で、ジャックがバーニングソウルを体得したのは嬉しい誤算だったけれどな。」
「衛遊?……貴方は一体……」
「それと、俺の本当の名は星津衛遊じゃない……俺の本当の名は――不動遊星だ。」
って、衛遊がミスターXだったってだけでも驚きなのに、此処で更なる驚きが来た!?星津衛遊は偽名で、本当の名前は不動遊星って!
でも、ちょっと待った!
今の時代に於いて、不動姓だったのはお父さんとお母さん位の物だから、他に不動姓を持ってる人がいる筈が無いんだけど……
「だろうな……だが、俺は不動遊星――ゼロリバースに巻き込まれ、しかし命を落とさずに時を超えた不動博士の息子だ。」
「え?」
ゼロリバースに巻き込まれて時を超えた不動博士の息子って……そんな、其れじゃあ貴方は――アタシの、兄さんって言う事なの……?
でも、そんな事って……否、普通にあるかも。
そもそも、アタシだって前世の『ユウリ』の記憶を断片的に持ってる訳だし、ダークシグナーは死者が能力を得た存在で、イリアステルは未
来からの使者って事を考えると、ゼロリバースに巻き込まれた影響で、遥か未来に飛ばされた人が居たとしても不思議じゃないわね?
其れに、この人は良く見ると前に見たお父さんの幻影の面影が有る――って言うか髪型とか殆どそのまんまだし。
でも、貴方は本当にアタシの兄さんなの?こう言っちゃなんだけど、未来から来たって言うなら過去の情報から色々言う事は出来るよね?
「確かにそうだが……そうだな、なら一番確実な証拠を見せるとしよう。
父さん――不動博士がモーメントの制御に使っていたカードは、実は4枚ではなく5枚で、失われた1枚は俺と共に時を超えた。
其の1枚が、俺の『煌天龍 スターダスト』だったんだが、このカードはお前の持つ『輝天龍 シルバー・ウィンド』の言わば兄弟札なんだ。
共に守護と強化を司る龍……この2枚のカードは、正しい持ち主の手にある場合に限り、互いに共鳴現象を起こすんだ。」
「へ~~~……って、ゴーストとのバトルロイヤルの時は共鳴してなかったと思うんだけど?」
「其れはそうだ。あの時は、共鳴現象が起きないように『スターダスト』のカードにはちょっと仕掛けをしておいたからな。
だが、今はその仕掛けを外してあるから、2枚のカードは共鳴するはずだ――シルバー・ウィンドのカードを出してくれ遊里。」
……分かった。
――ヒィィィィィン……
此れは、カードを出した瞬間、アタシのシルバー・ウィンドと、彼のスターダストが光った!?若しかして、此れがカードの共鳴現象なの?
でも、此れが起きたって言う事は彼はスターダストの正しい所有者……そして、其れが示すのは彼がゼロリバースの際に未来に飛ばされ
たアタシの兄だって言う事。
此れだけで決めるってのは乱暴かも知れないけど、この共鳴現象が起きた時にハッキリと感じる事が出来た、彼のデュエリストの魂って言
う物を……その魂が、彼はアタシの兄さんだって教えてくれた。
理屈じゃなくて、理屈を超越した感覚が『其れが正しい』って言っていたのよ……本当に、貴方はアタシの兄さんなんだね、遊星。
「あぁ……とは言っても、ゼロリーバースの時に別れ、18年間も離れ離れになっていたのだから、あまり実感はないかもしれないがな。」
「其れはそうだけど、兄さんが生きていたって言うのは嬉しいよ。
ゴドウィンが『若しかしたら生きて居るかも知れない』って言ってたけど、正直言うと生存は絶望だって思ってたから、こうして会えた事が
本当に嬉しいよ。」
「あぁ、其れは俺もだ遊里。」
でも、未来に飛ばされたのは良いとして、如何して兄さんはこの時代に?イリアステルを止めるって言うのは分かるんだけど、アイツ等の言
い分を信じるなら、未来は結構ヤバい状態なんでしょ?
連中はそうならない為に過去に干渉してる……如何して、兄さんは其れを止めようと思ったの?
「俺が飛ばされた未来は、モーメントの逆回転によって壊滅的な被害が起き、更には突如現れた『機皇帝』によって世界が蹂躙されている
絶望の世界だった。
勿論、其れで諦める人々ではなく、レジスタンスとも言うべき組織が日々機皇帝との戦いを続け、世界の滅亡を防ごうとしていたんだ。
俺もまた、15歳の時にレジスタンスに参加し、カードを武器に機皇帝と戦っていた――奴等には、既存の武器よりもデュエルディスクで
召喚したモンスターの攻撃の方が効果が高かったからな。
だが、戦いを続けていく中で、俺はイリアステルの存在を知った――奴等は、あの世界を無かった事にする為に、レジスタンス組織を倒し
更には過去に干渉して歴史を変えようとしたんだ。
俺だって、あんな絶望の世界は無い方がいいと思うが、全てを無かった事にする為に必死に戦う人達を殺し、そして過去を破壊すると言
うアイツ等のやり方には同調できなかった。
だから、現地での奴等の活動を妨害し、連中が過去に飛んだならば、俺も過去に飛んだ――過去の破壊は、絶望の未来の回避に繋が
るとは思えなかった……寧ろ、更に悪い未来を作り出す可能性すらあったからな。」
「成程、納得。――で、アキって誰?」
「未来における俺の仲間の1人で、俺の大切な人だな――俺が過去に飛んだ理由の一つが、彼女を守りたいからだからな。」
其れをサラッと言っちゃう兄さん凄いです。
でも、そうなると一度そのアキさんとやらに会ってみたいな~~?兄さんの大切な人って言う事は、将来的にアタシの姉さんになるかも知
れない訳だし。
「何で、アキが遊里の姉さんになるんだ?」
「大切な人と認識しておきながら、そっち方面では朴念仁かいコンチクショウめ。」
此れは、意外とアキさんて人は苦労してそうだなぁ……朴念仁の兄を如何かお許しくださいとしか言いようがないわ此れ。
同じ時代に生きてたら、アタシは兄さんの恋愛事情で苦労してたかもしれないわね……本当に、イケメン朴念仁って言うのは厄介だわ。
でも、其れは其れとして、どうやらこのフロアの番人が現れたみたいだよ?
「ようこそ……良く此処まで来たわね。」
「え?」
「馬鹿な、お前は――!!」
でも、此れはマジなの?
アタシ達の前に現れたのは、アタシ!?マーカーは無いし、髪の色も異なるけど、それ以外はまるでアタシ其の物じゃないのよ此れは!!
悪い冗談……にしては、性質が悪いわね?アンタ、一体何者なの?
「何者とは、おかしな事を言うな上条遊里?……既に知っているんじゃないのか?――私が何者であるのか。」
「……まさかとは思ったけど、やっぱりそうだったんだね?――アタシの前世『ユウリ・エーベルバイン』!!
如何して、貴女が此処に……」
「……私は偶発的に生まれた存在に過ぎない――彼女が英雄の力を得ようとした段階で生まれた、言わばバグの様な存在よ。
でも、そんな存在でも、あの絶望の未来を見過ごす事は出来ない――だからこそ、彼女達と共に時を超え、絶望の未来を防ぐ事にした。
5000年前の戦いで、私は使命を果たす事が出来なかったからね。」
偶発的に生まれた存在……そして、5000年前の後悔から、イリアステルに協力してるって事か――だけど、兄さんが言ってたように過去
の破壊が未来の救済に繋がるとは限らないわ!
それどころか、より劣悪な未来になっちゃうかもしれないんだよ?
「だが、其れでも私は僅かな可能性を信じたい――だから、お前達にはここで散ってもらう事にする。此処に入って来た者達を排除するの
が、私の使命だからね。」
「ユウリ……!!!」
「如何やら、彼女を倒さなければ先には進めないらしい――ならば、全力で行くぞ遊里!!」
OK兄さん!
何よりも、デュエルで道が開けるって言うのなら容易いってモンだわ――アタシは、此れまでそうやって生きて来たし、此れからもそうやっ
て生きて行く心算だからね!
デュエルよユウリ!
貴女を倒して、アタシ達は先に進む――この世界をイリアステルに壊させはしないわ!!
「良いだろう……ならばこのデュエル、ライディングデュエルで相手をしてやろう。」
――パチン!
!!
此れは、ユウリが指を鳴らした途端に景色が一変した?……此処は一体?
「此れが、私達の戦うライディングデュエルの舞台だ。
コースは単純な円形サーキットだが、このサーキットの中心部には全てを飲み込むブラックホールが存在し、ライフが0になったデュエリス
トはブラックホールに飲み込まれて命を落とす。
このデュエルは、文字通り命を懸けたデスゲーム――敗者に待っているのは死……其れでも、彼方達は私と戦うと言うのかしら?」
「敗北=死か……確かに危険なデュエルだが、俺は降りない!お前を倒して、未来を救ってみせる!」
「アタシだって降りないよ――何よりも、アタシの前世であるアンタがこんな事をしてるって言うのは見過ごす事できねーんだわマジで。
だから、此処でアンタを倒して止めて見せる!!」
「ふふふ……そう来なくてはな――では、始めるとしようか、命を懸けたライディングデュエルと言う物を!行くぞ――」
「「「デュエル!!!」」」
遊里:LP4000 SC0
遊星:LP4000 SC0
ユウリ:LP4000 SC0
このデュエルは、ある意味で自分自身との戦いとも言えるから、絶対に負ける事は出来ないわ!!
ユウリ・エーベルバイン――アタシの前世であるシグナー……だけど、イリアステルに加担するって言うなら容赦はしない!アタシと兄さん
が、アンタを倒して見せるわ!!
さぁ、デュエルの始まりよ!!
To Be Continued… 
登場カード補足
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