Side:遊里


取り敢えず、予選の第1戦を勝てたって言うのは大きいわね。
次の予選第2戦を勝つ、或は引き分けなら、WRGP本戦への出場が確定する訳だからね――まぁ、引き分け狙いじゃなくて、ガッツリ勝つ心算だけどね!

でも、今は予選1回戦勝利を喜びましょうか?コンドミニアムの庭……と言うか、野外で、バーベキューパーティの真最中だしね。



「少しばかり、浮かれ過ぎではないかとも思うが……次の試合に向けての士気を高めると言う意味では、こう言うのも悪くないのかもしれんな?」

「良いんじゃない?
 皆が皆、其れなりに楽しんでるみたいだし、ジャックだってこう言うのは嫌いじゃないでしょ?」

「格式ばったパーティは苦手だが、仲間と共に遠慮なく楽しめるパーティならば大歓迎だ――俺も、こういう雰囲気は嫌いではないのでな。
 ――だが、そうであっても敢えて言わせて貰おうか?……遊里、お前の手の中に有る、オレンジのチキンと、真っ黒なビーフと、真っ赤なポークは一体
 なんなんだ!!途轍もなく、危険な香りがするぞ!!!」



あぁ、此れ?其処まで危険じゃないわよ?
激辛タンドリーチキンと、黒コショウをふんだんに塗したスーパーペッパービーフと、赤唐辛子の粉で表面をコーティングしたハイパーホットポークだから。
カレーと、黒コショウと、赤唐辛子……種類の違う辛さを味わう事が出来るんだから、此れは贅沢な串焼きよね?



「……お前以外に食せる者は存在しないだろうがな……見ているだけで胃が痛くなってきた。」



何でそう言うかなぁ?美味しいのに。
取り敢えず、〆の麺は、激辛レッドアイズブラック焼きそばで決まりね♪












異聞・遊戯王5D's Turn129
『小休止で明かされた新情報』













「ずいぶんと賑やかね、チーム5D's?まだ、予選の第一試合が終わっただけだって言うのに。」



ん?……って、シェリーじゃない!!如何したのよ、こんな所に行き成り!!
って言うか、貴女もWRGPに参加してるの!?……だとしたら、予選の第1試合は如何だったの!?



「勝たせて貰ったわ。
 私のチームは、私とミゾグチの2人だけど、だからと言って凡百なデュエリストに負けてあげる程柔じゃないわ――私の3人抜きで決めてあげたわよ。」

「3人抜きとは……中々やるな、お前も……」



確かにかなりやるねシェリー?
チームユニコーンとのデュエルは、結局互いのチームの大将戦にまでもつれ込んだ訳だから、其れを考えると3人抜きって言うのは、凄い事だわマジで。

それで?態々、此処に来た――アタシに会いに来たって言うのは、其れなりの理由が有るんでしょシェリー?そうじゃなければ、此処に来る理由が無い
と思うからね。



「流石に鋭いわね遊里……少し、忠告をしておこうと思ってね。」

「忠告?」

「此の大会、イリアステルが関わってる可能性があるわ。」

「「「「「「「「イリアステル?」」」」」」」」

「……奴等か。」



イリアステル……聞いた事が無いわね?衛遊は、何か知ってるみたいだけど……え~と、イリアステルって何者?



「イリアステルは、世界を裏で操ってると言われている秘密組織だ。
 其れこそ、政治、経済、果ては各国の紛争や内戦すらも、イリアステルが裏で動いて操作しているとまで言われている組織さ――シティの先代の長官
 である、レクス・ゴドウィンと、その兄ルドガー・ゴドウィンも、イリアステルと何らかの関係が有ったらしいからな。」

「ゴドウィンが!?」

「と言う事は、一連のダークシグナー事件も、そのイリアステルとやらがゴドウィン兄弟を使って引き起こした可能性もあると言う事か!!」

「だろうな……満足出来ねぇ話だぜ。」

「あぁ、確かにそうだな。
 だが、イリアステルは表の歴史に登場する事は無く、その存在を知っているのは、極一部の限られた人間だけなんだ。」



成程ね。――って、そうなると、何で衛遊はイリアステルの事を知ってるの?其れにシェリーも。



「俺は、連中と浅からぬ因縁があるからな。
 連中の存在を知ったのは偶然だったが、知ってからは奴等の活動を妨害して来たからな……イリアステルは、俺にとって倒すべき相手なんだ。」

「両親を殺害した犯人を調べて行ったら、イリアステルと言う存在に行きついたのよ。
 そして、更に調べて行くうちに、今の治安維持局の長官がイリアステルから派遣された者だと言う事も分かった……治安維持局の長官だったら、シティ
 で開催されるWRGPに、何らかの形で関わっているって言うのは間違いないでしょう?」



マジですか!?
シティの長官で、シェリーにとっては両親の仇って、其れだけでも凄いのに、其れに単身喧嘩売ってる衛遊って何者なの!?絶対に只者じゃないわよ!



「俺は一介の技術者さ。連中に対しての妨害も、ハッキングとかしか出来ていないからな。」

「世界を裏で操る組織に、ハッキングとかしてる時点で充分とんでもないんじゃないかと思う件について。」

「其れに付いては、ノーコメントを貫かせて貰おうか。」



ですよねーー。
でも、確かにそんな連中が大会に関わってるとなると、何が起きるかは分からないから、用心だけはしておいた方が良いのは間違いないでしょうね。



「もっと言うなら、一時期噂になったゴーストは、イリアステルの手先である可能性すらあるわ。
 もしそうだとしたら、大会中に大量のゴーストが現れる可能性だって否定できないでしょう?――だから、忠告をしておこうと思ったのよ。」

「ゴースト……!!」

シンクロとエクシーズに対するメタ効果を持った『機皇帝』を操る正体不明のデュエリスト。
アタシが倒したのはロボットだったけど、ロボットだったら量産も出来るだろうし、AIを強化して、搭乗Dホイールの性能を上げれば強化も容易だろうしね。

確かにゴーストが大量に現れたら、厄介かも知れないけど――だけど敢えて言うわ、其れが何?

「ゴーストが乱入して来る?しかも、此れまでよりも強化されて。
 其れだけを聞いたら、確かに脅威かも知れないけど――其れが如何した!!そんなモノ、アタシ達の前には、何の脅威にもなりはしないわ!!」

寧ろ、舐めるなって言いたいわね。
確かに、シンクロをメインにしてるアタシ達にとって、其れに対する最強クラスのメタ効果を持った機皇帝は天敵と言っても過言じゃないのは理解してる。
だけど、初見であってもアタシは勝つ事が出来たし、龍可と龍亞だって互角以上に渡り合ったんだから、恐れる要素は何処にもないのよ!!

其れに、来るなら来いって所だわ。
解錠覇王のアタシ、天上覇王のジャック、地上覇王の鬼柳、黒翼を従えたクロウに祝福の風のアイン――此れだけのデュエリストが集まった、アタシ達の
チーム5D'sが、そんな輩に負けるなんて言う事は有り得ないからね。



「言われてみれば、其れもそうね。
 なら、予選の第2戦も頑張りなさい?――何時ぞやのデュエルの決着も、つけたいからね……楽しみにしているわ遊里。」

「楽しみにしててよシェリー。絶対に第2戦も勝って、本戦への1位通過を決めて見せるからさ!!」

「……此れだけの事を聞いても、そのスタンスは崩さないとは、本当に貴女は凄いわね遊里。
 なら、必ず予選の第2戦も勝ちなさい?WRGPの本戦で、決着を付けましょう!」



大舞台での決着か……良いね其れ!何とも燃えて来るじゃない!!
時にシェリー、折角来たんだから、食べて行かない?丁度良い感じに、ビーフが焼き上がった所だし。



「……断るのも悪いから、御同伴に預かるわ。
 うん、確かに美味しそうに焼き上がっているわね、此のビーフは。」

「其れは……!!待てシェリー!!其れを食すな!!!其れは、普通の人間では食す事の出来ないS級の劇物だぞーーーーー!!!」



――パクリ



ジャックが止めに入るも既に遅く、シェリーはスーパーペッパービーフを一口!!お味は如何かしら?



「此れは……凄く美味しいわね!
 ビーフのどっしりとしたコクのある旨みに、刺激的なブラックペッパーの辛味が映え、そしてレアの焼き加減が其れを更に引き立てる…此れは良いわ。」

「なにぃぃぃ!?普通に食しただとぉぉぉぉぉ!!」



うん、此れには流石に驚いた。
そうやらシェリーは、私に負けず劣らずの『辛党』みたいね?――そうじゃなかったら、此れを『美味しい』って食す事なんて絶対に出来ないからね。

上条遊里、今此処に魂の同志(特異な味覚)を得ました!!流石はシェリー、只者では無かったわね!!



「もう突っ込む気にもならんが、如何やらそうだったようだな。
 だが、俺達が注目すべきは、明日のチームユニコーンと、チームカタストロフのデュエルだろう!その結果で、ユニコーンが本戦に出場できるかが決ま
 るのだからな!!!」

「其れもそうね。」

明日は、チームユニコーンの予選2回戦。
此処で勝つ事が出来れば、アタシ達が負けない限りは本戦への出場が決まる大事なデュエルだから、きっと凄い戦いになるでしょうね。
チームユニコーンが勝ったら、其の後は、アタシ達チーム5D'sがチームカタストロフを下せば其れで良い訳だから、明日の第2戦は必ず勝ちなさいよ!!



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で、翌日。
チームユニコーンの勝利を信じて、応援に来たんだけど――



『ななななんとー!!ファーストホイーラーのアンドレに続いて、セカンドホイーラーのジャンもマシントラブルでクラッシュ!!
 そして、この間にチームカタストロフと、チームユニコーンのスピードカウンターの差が12となり、チームカタストロフのテクニカル勝利だーー!!!』




アンドレとジャンが、続けてマシントラブルでクラッシュして、最後のブレオに繋ぐ事が出来ずに、スピードカウンターに12個の差が生じて、ルールに則って
のテクニカルジャッジで負けちゃった。

でも、今のデュエルは絶対にオカシイ!!
アンドレだけだったら、只のマシントラブルで済んだかもしれないけど、ジャンまでまったく同じようにクラッシュしたってのは納得できないわ!!特に、Dホ
イールの整備も担当してるアタシの目は誤魔化せない!!

アレは、マシントラブルじゃなく、何か別の外的要因で人為的に引き起こされたクラッシュだわ!!――WRGPの運営に訴えた所で、証拠不十分で処理
されるでしょうけれどね。



「アンドレ、ジャン……そんな、こんな事って有かよ!!
 これじゃあ、こんな事になっちまったら、チーム5D'sとの約束も果たす事が出来なくなっちまったじゃないか!!……チクショーーーーーーー!!」



ブレオ……そうだよね、悔しいよね、こんな終わり方じゃ!!
今からジャッジ判定を覆す事は出来ないけど、チームカタストロフの連中が、何らかの不正を働いてる事は間違いないだろうから、其れを解析し、そして
デュエルで其れを叩き潰してあげるわ!!

加えて、其れだけの力を有するに至った背後には、イリアステルの存在が無いとは言い切れないからね。



チームユニコーン、彼方達の仇は、アタシ達チーム5D'sが討ってあげるわ!!
そして、今のうちに精々首を洗っておきなさい、チームカタストロフ――貴方達に待っているのは、勝利ではなく、抗い様のない敗北なんだからね!!

同時に知るが良いわ……自分達が、ドレだけ愚かな事をしてしまったのかと言う事をね――!













 To Be Continued… 






登場カード補足