Side:しほ


ふむ、つくばガーディアン中の隊長はそんじょそこらの掃いて捨てるような戦車乗りではなかったみたいね?
恐らくは徹底的に明光大の事を研究して来たのでしょうけれど、それでもみほを相手にファーストアタックを取ったと言うのは、とても大きいわ。
まほですら、最終的には勝った模擬戦でも、ファーストアタックを取ったのは数えるくらいしかないのだからね。
射程外からの超長距離砲撃と言うのは、思った以上の成果を上げたみたいだわ――



「ですが、その砲撃を放っていたシュトゥルムティーガーはみほお嬢様が撃破し、明光大の本隊も、重装甲の戦車を相手にして中々頑張って
 いますから、如何転ぶかは分かりませんよ?」

「確かにそうかも知れないけれど、結果は覆らないわ、みほの試合に限って言えばね。」

みほの戦い方は、あの子の母を15年間務めて来た私にも予想はつかない――と、言うよりも予想できなかったと言うのが正しいのかも知れ
ないわ。みほの戦術は、古今東西ありとあらゆる戦術を取り入れた物だから次の一手が予測できない。

そして、其れを受け継いだ副隊長の澤さんもまた、戦車道を始めて1年であるにも拘らず、並の戦車乗りを凌駕してしまっているもの。
その証拠につくばガーディアンの本隊に攻め入った、梓さん率いる部隊は、パンターが撃破されたけどフラッグ車は無事――此の準決勝は、
このままでは終わらない――寧ろ、別動隊となっていたみほが本隊に加わわり、隊長と副隊長が揃った時に、明光大の本領が発揮される。

さて、此処からどう攻めていくのか、楽しみね。



『ガルルルル……』

『♪』




そして、彼方達は本当にいい子だわ、ロンメルにアンドリュー。みほから話を聞いた時には驚きましたけれどね――ふふ、ならば彼方達も、し
かと見届けなさい?
彼方達の主が、みほが、決勝戦へと駒を進めるその瞬間をね。











ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer55
鋼鉄の猛獣と黒き王子の激突です』









No Side


開けた土地で戦車戦となった明光大とつくばガーディアンの戦いは、序盤につくばガーディアンがシュトゥルムティーガーの砲撃で先手を取っ
たが、そのシュトゥルムティーガーの存在に気付いてからのみほの対応は迅速で、シュトゥルムティーガーの単騎征伐に向かって、其れを撃
破して見せたのである。


そして撃破と同時にみほは、本隊との合流をすべくパンターを発進させる。
目的を果たしたのならば本隊に合流し、敵部隊との戦闘に加わるのは当然の事であるが、其処で一計を案じるのがみほなのだ。


「此のまま本体と合流します。
 ですが、最短ルートで合流するのは相手も読んでる筈だから、迂回ルートになる高台の裏を通って行きます。悪路だけど、大丈夫だよね?」

「お任せ下さいみほさん!!」

「じゃあ、態々遠回りするのに矛盾してるかも知れないけど、最速でお願いね、つぼみさん?」

「かしこまり!リミッター外しちゃうわよぉ!!」


先の撃破アナウンスは当然みほも聞いているので、現在残存車輌数が同数だと言う事は知っている。で、あるのならば普通は最速で本隊と
の合流を考えるだろう。別動隊を含めて車輌数が同じと言う事は、別動隊の分だけ本隊の車輌数は少なくなるのだから。
しかし、此処で敢えてみほは最短ルートを捨てて、迂回ルートを最速で進むと言う選択をしたのだ――如何やら、シュトゥルムティーガーの超
長距離砲撃のお返しに、何かを思いついたようだ。








――――――








一方で、明光大の本隊と交戦状態になったつくばガーディアンの隊長である雛菊は、現在明光大の部隊を指揮している梓の腕前と、明光大
の実力に舌を巻いていた。


「(見事な物ね、明光大の副隊長は……普通、副隊長と言うと隊長の補佐のような役割で、指揮権も一部しか持ってないと言うのに、彼女は
  みほさんが不在の間、完全に全権を委任されてる。
  其れはつまり、みほさんが彼女の事を信頼している証であり、明光大の隊員も副隊長である彼女の事を信頼していると言う事……自分達
  が、自由に動く為とは言え、指揮権の全権委任なんて、普通は絶対にしないわ。)
 側面を取られない様に気をつけて!常に正面で相手を捉えておいて!!」


何よりも、普通では考えられない『副隊長に指揮権の全権委任』を一時的とは言え行った事が一番の驚きだ。
確かに、そう言う場面がない訳ではないが、普通はそう言う事は隊長車が撃破されてしまった時や、一時的に動く事が出来なくなった場合に
限る事で、隊長車が独自に動く為に、副隊長に全権委任する等と言う事は考えられない事なのである――下手をしたら、指揮系統が混乱し
て、部隊総崩れの危険性すら孕んでいるのだ。

だが、みほが迷わずそれを選択したと言う事は、梓ならば全権を委任するに値する副隊長であり、自分達が目的を果たすまで部隊を持ち堪え
させてくれると確信していたから。
同時に、明光大の隊員達も、隊長であるみほが手塩にかけて育てた梓ならば、一時的な指揮官代理であっても不安は全く無かったのだ。


「兎に角、足を止めずに動き回りながら撃って下さい!
 行間射撃では精度は落ちますが、攻撃の手を緩めたら相手に攻撃の機会を与えてしまいますから!徹底してヒット&エスケープです!!」


だから、明光大の動きはみほが指揮している時と遜色ないと言って良いだろう。
勿論、梓はまだまだみほには及ばないが、みほから直接指導された事と、明光大と黒森峰の合宿が、梓の潜在能力を開花させ、戦車道を始
めてから僅か1年であるにも係わらず、小学校から戦車道を続けて来た雛菊と互角に渡り合っているのである。


「(まだまだ粗削りな部分はあるけど、基本は確り押さえている――此方の攻撃を悉く避けるだけでなく、回避できないと判断した攻撃は、『食
  事の角度』を取る事でやり過ごしている……才能に物を言わせた強さではないと言うのは、厄介ね……)
 全車散開!敵フラッグ車を包囲して、叩きます!」


此のままでは分が悪いと判断した雛菊は、此れまで固まっていた部隊を散開させ、梓が乗るフラッグ車を徹底して狙う作戦にシフトし、部隊を
展開していく。

ヒット&エスケープを行っている相手に対して部隊を展開するのは、各個撃破される危険性がある事から、本来は悪手なのだが、敵の攻撃に
耐えられる防御力を有しているのならばその限りではない。
実際にブラックプリンスとトータスの装甲厚は最大で140mmを越える堅牢さであり、此れは実戦投入に耐えうる戦車では最高の防御力である
と言える。(マウスとヤークトティーガーの装甲厚は200mを越えるが、利点よりも欠点の方が大きいので実戦向きではない。)
だから、この方法を選択する事が出来る。
相手の攻撃に耐える事が出来るのであれば、多少の被弾には目を瞑って、敵フラッグ車を徹底的に狙った方が得策なのだ。


しかし、そう簡単には問屋が卸さない。



「部隊を展開して来た……ティーガーⅠは後方に下がってパンターは前に!
 機動力で勝る中戦車で対応しつつ、強力な重戦車の砲撃で相手を沈黙させます!!」


つくばガーディアンの部隊展開を見た梓は、すぐさま陣形を変え、パンターが前衛でティーガーが後衛の布陣を完成させ、つくばガーディアンを
迎え撃つ。
大戦期に製造された戦車の中では最高の機動力を有するパンターが動き回れば敵は狙いを絞る事が出来ない――ならば、フラッグ車を直接
叩けばいいと思うだろうが、其れはちょこまかと動くパンターのせいで相当に難しいのだ。


「トラップ発動『攻撃の妨害』!攻撃を無効にするよ~♪」

「おのれぇぇぇ!!!」


更には、フラッグ車を狙って攻撃しようとした車輌には的確に『妨害』が入るので、フラッグ車を集中狙いするのも儘ならないのである。



――ドォォォォン!

――キュポン!



『明光大付属中学校、パンター2号車、行動不能!』


それでも、明光大の主力であるパンターを再び撃破出来た言うのは大きいだろう――主力車輌が減少すれば、其れだけ自分達に追い風とな
るのは間違い無いのだから。
しかし、それでもフラッグ車を撃破出来ないのでは意味がない。
如何に主力戦車を撃破して、数の上で有利になったとしても、フラッグ車を倒さない限りは勝ちではなく、逆に言うならばフラッグ車が倒されな
ければ負けではない。

加えて、つくばガーディアンは出来るだけ早く梓の乗るフラッグ車を撃破せねばならない。
シュトゥルムティーガーを撃破したのならば、みほの隊長車は確実に本隊に合流するだろう――副隊長の指揮で略互角な状態な所に隊長が
帰還し、再び指揮に当たったら間違いなく拮抗は崩れてしまうのだから。

そうした焦りもあるだろうが、パンターが2輌やられた事で、明光大の動きは逆に良くなり、砲撃が更に当たりにくくなった。
此れにはつくばガーディアンの部隊は驚きを隠せず、そして焦りも加速する。


「た、隊長、敵戦車の回避能力が上がりました!的を絞る事が出来ません!!」

「……!そんな………如何に最高の機動力を持っているパンターであっても、あんなに機敏な動きが出来るなんて……!
 それ以上に、重戦車であるティーガーⅠですら、カタログスペック以上の機動力で……幾らレギュレーションギリギリの改造を施したとしても
 あんな事は……いえ、其れだけ明光大は回避訓練に力を入れていると言う事?
 それで鍛えられた回避能力が、パンターを2輌失った事で100%解放されたと言うのなら、戦車の性能を越えた回避もありうるわ……!!
 全車へ通達。動き回る戦車に攻撃はせず、此方を撃破する為に動きが止まった所を狙って下さい。
 其れなら、最悪でも相討ちには持ち込めるはずです。」


だが、雛菊は流石隊長と言うべきか、動き回る戦車を狙うのは止め、自軍の戦車を撃破する為には行間射撃でなく停止射撃をするだろうと予
測して、その瞬間を狙うように指示。
此れならば、攻防力で勝る自軍の方が戦果が上がると考えたのだろう。そして、其れは実際に間違った選択ではないだろう。





その予測が的中したのならば。





「な、なんで?如何して止まらないの?」


雛菊の予想に反して、明光大の戦車隊は一向に動きを止める気配がない。
行間射撃にしては可成り正確ではあるが、それでもブラックプリンスとトータスのウィークポイントに命中する数は極めて少ない――と言うより
も、ウィークポイントには命中していない。
端から見れば、其れはつくばガーディアンの戦車を撃破する気が無いように見える……が、だからこそ雛菊は気付いた。
この攻撃は『時間稼ぎ』であると。

梓は最初からフラッグ車の撃破は狙っておらず、あくまでみほが合流するまでの時間を稼ぐのが目的だったのだと。
ならば完全に術中に嵌った事になるのだが、其れに気付いた事で同時に疑問も新たに浮かび上がった――みほが合流するのに時間が掛か
り過ぎていないか、と。

シュトゥルムティーガーの配置位置から、現在の交戦場所までは、パンターの機動力をもって最短ルートを通って来れば5分弱で到達できる。
しかし、既にシュトゥルムティーガー撃破のアナウンスが響いてから10分が経過しようとしている事を考えると、余りにも遅い。
或いは、此方に向かう際にマシントラブルでも起こして走行不能になったのかとも考えてしまうが、そうであるならば『パンター走行不能』のア
ナウンスが別途入るので、其れはない。

ならば如何して?


その答えは、突如として訪れた。


――ズドォォォォン!!!


『ブラックプリンス3号車、行動不能!』


ブラックプリンスが突如撃破されると言う形で。


其れは全く予測して居なかった事であり、予測しない場所からの砲撃……つくばガーディアンの真後ろから現れたアイスブルーのパンターが、
ブラックプリンスのターレットリングを撃ち抜いて沈黙させたのだ。

此れは完全に雛菊の予想を超えた事だった。
何故ならば、みほ率いる隊長車が現れた場所は、最短ルートを通って来たのならば絶対にあり得ず、自軍の背後から気付かれない様に現れ
るには、シュトゥルムティーガーを配置した場所から大回りをしてこなければならないからだ。


「(背後から……確かに有効かもしれないけれど、大回りをすると言う事は其れだけ本隊との合流に時間が掛かると言う事であり、フラッグ車
  が撃破される可能性も高まるのに、其れを迷わず選択するなんて……!
  ……いえ、みほさんは、副隊長ならば自分が合流するまで持ちこたえられるって確信していた――!)」


雛菊は思わず歯噛みする……余りにも、あり得ない事が連続で起きたと言う現実に。
シュトゥルムティーガーの撃破は未だ良い。超長距離砲撃の犯人を看破されたら、真っ先に撃破しに来る事位は予想していたから――だがし
かし、副隊長への指揮権全権委任と、不意を突く為の大回りなど普通は絶対にあり得ない事だけに予測のしようがない。
それが結果として、みほを本体に帰還させる事になってしまったのだから、歯噛みするのも仕方ないだろう。


「隊長、待ってましたよ~~!指揮権全権、お返しします!!」

「ただいま皆!よく持ち堪えてくれたね――さぁ、此処から一気呵成に攻めるよ!!」

「「「了解!!」」」


反対に、明光大はみほが戦線に加わった事で一気に士気が爆発的に上昇していた。
決して梓の指揮に問題があった訳でなく、指揮そのものは見事だったが隊長と副隊長では、どうしても隊員の信頼度に置いて差が出てしまう
モノなのだ――寧ろ、其れを考慮するとみほ合流まで持ち堪えた梓の指揮官としての能力は凄まじいの一言に尽きるだろう。

兎に角、隊長が合流した事で明光大の力は120%発揮される事となる。
そうなれば、残存車輌数であるのは有利な状況であると言える――みほは、圧倒的に不利な状況からでも戦況を引っ繰り返してしまうだけの
力があるのだから。

更に、みほがつくばガーディアンの後方から現れた事で、戦況は明光大がつくばガーディアンを挟撃した状態であり、動きの遅い重装甲戦車
にとっては完全にアドバンテージを失った盤面であった。


「……此れが、みほさんの……いいえ、明光大の実力……!!
 全軍総攻撃!隊長車でないパンターは無視して、徹底的に隊長車とフラッグ車を狙って!」


それでも雛菊の闘志は衰えず、徹底的に明光大の隊長車とフラッグ車を狙うように指示。
フラッグ車を撃破出来ればその時点で勝ちであるし、隊長車を撃破すれば指揮能力を低下させる事が出来るからだ。

しかし、みほが合流した以上其れはない。


「行くよ、梓ちゃん!!」

「はい、隊長!!」


みほと梓はつくばガーディアンの砲撃を回避すると、其のまま疾走して、此のフィールドに存在する数少ない障害物である大岩に登ると、其処
からスピードを緩めずに飛び出して大ジャンプ!
此れには、つくばガーディアンの部隊も驚き、攻撃の手が止まってしまうが、其れが命取りだった。


「必殺!」

「戦車ボディプレス!!」


――ドゴォォォン!!


『トータス1号車、ブラックプリンス5号車、行動不能!』


大ジャンプしたパンターとティーガーは、其のままつくばガーディアンのトータスとブラックプリンスを1輌ずつ押し潰して撃破!
如何に強固な装甲を持っているとは言え、重戦車と中戦車が真上から、其れも落下速度を伴って降って来たら堪ったモノではない――尤も、
こんな攻撃をするのは明光大位の物だろうが。

しかし、この戦車ボディプレスは単なる奇策ではなく、勝利への布石だ。


「これで……」

「チェックメイトですね?」

「――!!」


ブラックプリンスを押し潰したみほのパンターと、トータスを押し潰した梓のティーガーⅠの砲身は、雛菊の乗るフラッグ車である、ブラックプリン
ス1号車に向いていたのだから。

ゼロ距離とは言わないが、この超至近距離でパンターの超長砲身から放たれる75mmと、ティーガーⅠの88mmを喰らったら、如何に強固な
装甲を有するブラックプリンスでも耐える事は不可能だろう。


「「撃て!!滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)!!」」


――ズガァァァァァン!!

――ドォォォォォォォォン!!!



――キュポン!




『つくばガーディアン中学校、フラッグ車行動不能。明光大付属中学校の勝利です!!』


結果、鋼鉄の虎の牙と、鋼鉄の豹の爪が、黒い王子の喉笛を切り裂き試合終了。
キューポラから身を出していたみほと梓は、敵フラッグ車撃破のアナウンスを聞くと、互いにサムズアップして勝利した事を感じ合っていた。








――――――








Side:みほ


ふぅ……勝てた。
5輌も撃破されるなんて、今大会最大の損失だよ……其れだけ雛菊さんが強かったって言う事だけどね。

「お疲れ様でした雛菊さん。良い試合でしたね。」

「はい。負けたとは言え、私は全力を出したので悔いはありません……隻腕の軍神の実力、この身をもって体験させていただきました。」



あはは……でも、まさかシュトゥルムティーガーを持ち出してくるとは思いませんでした――アレのお陰で、序盤に考えていた戦術を取る事が
出来なくなりましたから。
でも、シュトゥルムティーガーのような超長距離砲撃が出来る戦車があるのならば、其れで徹底してフラッグ車を狙うべきでしたね。



「え?」

「此方の戦術を崩すと言うのは良い手であり、殲滅戦であれば其れは可成り効果を発揮するでしょう。
 ですが、フラッグ戦の場合はその限りじゃないんです――極端な事を言えば、最終的にフラッグ車を撃破した方の勝ちなんですから。
 なら、貴女はシュトゥルムティーガーで徹底的にフラッグ車を狙い、本隊で圧力をかけるべきだった――そうすれば、シュトゥルムティーガーを
 倒されても、アドバンテージは維持出来たかもしれないし、シュトゥルムティーガーが撃破される前に、私達のフラッグ車を撃破する事が出来
 たかもしれないから。」

「あ……言われてみれば。」



私達の射程外から攻撃出来る手段を得た事で慢心しちゃったね?
同時に、攻防力でも上回っていたから、圧倒的に有利って考えたんじゃないかな?――確かにそうかも知れないけど、カタログスペックなんて
言う物は、戦術と戦略で幾らでも覆す事が出来るんだからね。



「そうですね……此の試合で、其れを痛感させられましたみほさん。
 隻腕の軍神の二つ名は決して伊達ではなく、その実力に相応しいモノだと思い知りました……だから決勝戦も頑張って下さい。
 烏滸がましいかも知れませんが、御武勇をお祈りしています。――貴女に、勝利の祝福が有らん事を……」



ありがとう雛菊さん。そのエールは確かに受けとったよ。
元より、負ける心算なんて毛頭ないよ――決勝戦の相手が、最強のライバルであるエリカさん率いる黒森峰であってもね。否、寧ろエリカさん
率いる黒森峰だからこそ負けられない!寧ろ勝ちたい!!

私とエリカさんの戦績は、此れまで1勝1敗だから、此処で決着を着けても良いかも知れないからね。

「Bang!」

だから、『絶対に負けないよ』って言う意味を込めて、手で拳銃の形を取って客席にいるエリカさんに向かって撃てば、エリカさんも其れに応え
るように親指で首を掻っ切る動作で返してくれた。

「(勝たせて貰いますよエリカさん!)」

「(貴女には負けないわみほ……勝つのは私よ!!)」

「(私も居ますからね!!)」



そして私とエリカさん、小梅さんの視線が交錯して火花を散らす――ふふ、最高だよ。
エリカさんも小梅さんも強いから相手にとって不足はないし、ツェスカちゃんも相当の実力者だから油断はできないかね――マッタクもって楽し
みな事この上ないよ!!

だから確信できる……此の決勝戦は、私が此れまで戦って来たどんな試合よりも激しく楽しい物になるってね。

ふふ……決勝戦当日が待ち遠しい――此れは、待ち切れるか怪しいかもね。まぁ、待ち切れなかった時は、お母さんか菊代さんに模擬戦の
相手をして貰おうかな?そうすれば、決勝戦まで持つだろうからね。


何れにしても、次が中学校最後の公式戦だから、全力をぶつけて優勝をもぎ取らなくちゃだね!!



「応よ!!」

「勿論その心算よ。」

「優勝以外にはないわ!!」



うん、だから全力全開を越えた全力全壊で決勝戦に臨まないとね!!――中学最後の公式試合で、有終の美を飾るとしようか♪











 To Be Continued… 





キャラクター補足