No Side


全国大会準決勝第1試合である黒森峰女学院中学校と、愛和学院中学校の、ある意味で因縁の対決とも言える試合は、終盤に入って手に
汗握る展開となっていた。

序盤は双方探りを入れたような戦い方だったが、中盤で試合が動き、残存車輌数は黒森峰が8、愛和が9と、若干愛和有利の状況となってい
たのだ。

そしてこの終盤、黒森峰はエリカが搭乗する隊長車にしてフラッグ車であるティーガーⅠと、小梅が搭乗する副隊長車のティーガーⅠを含む3
輌のティーガーⅠが開けた場所までやって来たのだが、其れこそが愛和の隊長である西の狙いだった。
キルゾーンにフラッグ車を誘き出して一斉掃射で終わらせる――其れが西の狙いだったのだが。キルゾーンに誘い込まれた筈のエリカは、焦
るどころか、逆にその顔に笑みを受けベていた。


「トロイの木馬は予定位置に到着したわ。サンドウィッチ作戦開始よ!」


そして、エリカが作戦開始を告げると同時に、愛和の後方からパンター3輌とヤークトパンター2輌が現れ、キルゾーンに入った黒森峰のフラッ
グ車を攻撃しようとしていた愛和の戦車を強襲!
それによって、愛和の隊列は乱れ、戦局は一気に激しい戦車戦へと発展。

此れこそがエリカの策だった。
敢えて相手に誘い込まれたと見せかけて、その実包囲を越えた挟撃を仕掛ける事こそが狙いだったのである。

そのエリカの狙いがバッチリと嵌り、挟撃を喰らった愛和の一時的に指揮系統が乱れ部隊は大混乱!そして、其れを逃すエリカではない。


「此れで終わりよ西!!」

「しまったぁ!!!」



奇襲部隊に気を取られた西のT-34/85(フラッグ車)を、エリカのティーガーⅠの88mm砲が撃ち貫き、ゲームセット!
黒森峰は、見事去年の雪辱を果たして決勝の椅子を手にしたのだった。











ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer53
いざ、準決勝の開始です!』









Side:エリカ


ふぅ……何とか勝つ事が出来たわね。西が、挟撃に的確に対処して来たら不味かったけど。
まほさんだったらもっと簡単に勝てたのかも知れないけど、生憎と私には其れだけの力はないから、私の持てる力の全てを持ってして戦わせ
て貰ったわ。勝ったとは言え、やり辛い相手だったのは間違いないわね。

「やるわね西。貴女の戦車道、しかと見せて貰ったわ。」

「いやぁ、貴女こそ見事なものです逸見隊長。
 我等の策を逆手にとってそれを逆利用するなどと言う事には、考えも及びませんでした!!逸見殿の思考の柔軟さには驚かされました!!
 何とか決勝に駒を進めて、明光大に去年の雪辱をと思っていたのですが、思うようには行かないモノです。」



こっちだって2年連続で同じ相手に負ける事は出来ないわよ。
其れにね西、悪いけど明光大を倒すのは黒森峰であり、あの子を、西住みほを倒すのはこの私……他の誰にも其の役は渡さないわ。
みほは、私にとって一番の恋人なのよ。



「こ、恋人とは!?其れはもしや、禁断の恋と言う物では……」

「……何を勘違いしてるのか丸分かりだけど違うわよ?
 って言うか、一番のライバルや、最も戦いたい相手の事を『恋人』って称する事が有るんだけど……若しかて知らなかったの?」

「はい、存じ上げておりません!」

「あ、そう……」

兎に角、今年の大会で優勝するのは私達黒森峰よ。
十中八九、決勝に上って来るのは明光大だから、アンタも決勝を見に来なさいよ西?――狂犬と軍神の戦を、その目に焼き付けると良いわ。



「はい、楽しみにしております!!――しかし、逸見隊長は狂犬と言うより、銀狼では?」

「そんな上品なのは、私のキャラじゃないわ。敵は全て食い殺す狂犬の方が性に合ってるのよ。」

私達は決勝に駒を進めたから、次は貴女の番よみほ――必ず準決勝を制して決勝まで上がって来なさい。其れが、今の私の一番の願いよ。
決勝で最高の戦いをしましょうみほ――一足先に最高の舞台で待ってるわ。



「それにしても、西住みほ隊長殿は、観客席に居ても目立ちますなぁ?
 よもや肩に子ぎつねを乗せ、更には虎まで引き連れて観戦とは……いやはや、流石は天下の西住流!我々とはスケールが違いますな!」

「まぁ、其れは否定しないわ。」

みほったら、本当にあの時の虎を自分のペットにしちゃったのよねぇ……流石のまほさんも寄港日に家に帰ったら虎が居て驚いたでしょうに。
まぁ、真に驚くべき事は、子ぎつねは兎も角、獰猛な虎をみほが完全に飼いならしてる事なのよね……此れもみほの才能と言うか、軍神のオ
ーラが可能としているのかもね。

何よりも虎は勇猛の証であり、其れを従えているって言うのは猛将であり名将である証――益々、貴女に勝ちたくなってきたわ!!
必ず勝ちなさいみほ。中学校最後の大会で、最大のライバルと戦わずに終わったなんて言うのは、流石に興醒めも良い所だからね。








――――――








Side:みほ


準決勝第1試合はエリカさん率いる黒森峰が制したか……まぁ、予想通りだけどね。
西さんも戦車乗りとしては『強者』のレベルだけど、エリカさんと小梅さんは『絶対強者』の域に達しようとしてるし、中戦車部隊を率いてたツェス
カちゃんも『強者』の域に達してるから、圧倒的に力の差があったよ。
でも、今回の敗北で西さんも更に強くなるだろうから、来年の高校戦車道は面白い事になりそうだね♪



「だろうな。
 其れと、今週の週刊戦車道見たかみほ?」

「見てないけど、如何したの青子さん?」

「いんや、大会前のお前の激怒を収める程度の記事は載ってたからな。……取り敢えず見てみ?」



ふむふむ……ふぅん?此れは、エリカさんの黒森峰の快進撃を見て、大会前の自分達の下馬評は間違いだった事を認めたって言う事かな?
大会前の記事とは違って、この記事を書いた人は、ソコソコ戦車道を見る目が有るみたいだね。



『逸見エリカ率いる新生黒森峰快進撃!圧倒的な戦い方ではないが、相手フラッグ車を確実に撃破する作戦を駆使して決勝進出!!
 隻腕の軍神・西住みほが率いる明光大と決勝で相まみえるのは確実――今年の決勝戦は、去年の決勝戦以上になるのは間違いない。』




エリカさんの活躍を見て、その実力を正しく評価しているからね。
だけどエリカさんは本当に凄いと思うなぁ?――言っちゃ悪いけど、去年までの黒森峰はエリカさんや小梅さんが居たとは言っても結局はお姉
ちゃんありきのチームだったから、頭を潰されたら其れまでだったけど、新生黒森峰はエリカさんのワンマンチームじゃなく、全員が力を合わせ
て戦うチームになってるからね。

此処までチームを作り上げたエリカさんと、其れをサポートした小梅さんには頭が下がるよ。

でも、だからこそ準決勝を突破して決勝戦に進まないとなんだけど――ナオミさん、確か次の相手は……



「茨城県の私立つくばガーディアン中学よ。
 戦車道のチームとしては、今年全国大会に出て来た新参校だけど、隊長の見事な指揮と重装甲で防御力の高い戦車で構成された部隊は、
 機動力こそ低いけれど堅くて隙が無いわ。
 現実に、準決勝までの2試合で撃破された戦車は僅かに1台……此れだけでも、相手の力量が分かるんじゃないかしら?」

「確かに途轍もない戦車乗りみたいだねガーディアン中学の隊長は。」

2試合で1輌しか撃破されてないって言うのは恐らく今大会に於ける最低の損害率なのは間違いないかな……私達だって1回戦はパーフェク
トだったけど、2回戦では3輌撃破されてるし、黒森峰は準決勝終了時点で10輌撃破されてる訳だから。
そして、高い防御力を誇る戦車は車体が頑丈って言う事もあって、総じて強力な主砲を備えてる場合が多い――普通に考えると、火力と防御
力では向こうの方に分があるって言う事だね。
明光大が勝ってるのは機動力って言う事になるけど、準決勝の会場はどんな場所だったっけ?



「試合会場も、何方かと言えばガーディアンの方に分があるわね。
 フィールドは開けた平原に幾つかの小高い丘が点在してる見晴らしのいいフィールド……複雑に入り組んだ地形や障害物らしい障害物もな
 いから、機動力の低さはあまり問題にならないって言う所ね。」

「と言う事は、私達が唯一勝っている機動力も活かしきる事が出来ない……可成り不利な戦いねみほさん?」

「準決勝は、隊長車をティーガーⅡにしたらどうでしょうか西住隊長?
 機動力でかき回すのが難しいのなら、此方も少しでも火力と防御力を上げた方が良いと思うんですが……」



其れは私も考えたよ梓ちゃん。
だけど、其れは多分ガーディアンの隊長も予想してる事だと思うんだ……最悪の場合、徹底して明光大最強のティーガーⅡを潰しに来る作戦
だって考えてるかもしれない。
だから、此の試合でティーガーⅡは使えない。1回戦、2回戦同様に、準決勝も隊長車はパンターで行こうと思うんだ。

それで、フラッグ車は1回戦同様に梓ちゃんのティーガーⅠにお願いしたいんだけど、良いかな?



「はい、勿論です!
 でも、どうして私なんですか?相手の機動力が低いなら、パンターの機動力で攻撃を逃げ切る事が出来ると思うんですけれど……つぼみ先
 輩の操縦技術って凄いですし。」

「確かに其の通りだけど、逆に言うなら避け切れなかった1発が決定打になっちゃう可能性も否定できないんだよ。
 勿論戦車の性能によるけど、機動力を捨てて防御力を上げた戦車は、さっきも言ったけど火力が高くて、パンターの装甲を軽く貫けるモノが
 結構多いんだ。
 だけど、『食事の角度』を取ったティーガーⅠの正面装甲なら耐える事が出来る事も多い。
 其れに、ティーガーⅠは数ある重戦車の中でも攻守速のバランスが抜群に良いから、堅くて強い集団を相手にする場合のフラッグ車には持
 って来いなんだよ。」

「分かりました。そう言う事なら、誠心誠意務めさせて頂きます!!」



うん、お願いね。
さてと、其れじゃあ作戦を考えないとね――攻守で劣ってる上に、機動力が意味を成さないフィールドじゃあ、如何足掻いても明光大絶対不利
なのは間違いないから、其処は作戦で補わないと。

取り敢えずネットマップとストリートビューで試合会場の地形とか特徴を徹底的に頭に叩き込まないとね。
30分で覚えるから、其れまでは夫々ボードゲームで練習してて。



「試合会場の地形やら何やらを30分で完全記憶って……ナオミ、お前出来るか?」

「無理ね。」

「青子さんは出来るんじゃない?テスト範囲丸暗記で3年間試験を乗り切って来たんですから。」

「いや、無理。
 戦車道の試合フィールドって滅茶苦茶広いじゃんよ?その全てを頭に叩き込むなんてみほ以外には出来ねぇって。其れこそ、まほ姐さんや
 銀髪だって、全部を完璧にってのは無理だろ?
 クラス全員の名前と誕生日を完璧に記憶してるみほだからこそ出来る芸当だっての。」



ふっふっふ、自慢じゃないけど記憶力には自信が有るんだよ私。
小学校の時だって、掛け算の九九を学年で1番に1~9の段まで覚えたし、歴史年表だって完璧に覚えたからね!!



「1192年。」

「鎌倉幕府の発足。」

「1573年。」

「室町幕府崩壊の始まりだね。」

「「「「「「「「「「おーーーー!!ハラショー!!!」」」」」」」」」



此れ位は余裕だよ?
だけど、広大なフィールドを全部記憶するのは可成り集中力が居るから、私が『終わった』って言うまで話しかけないでね?集中力が乱れると
覚えられるモノも覚えられなくなっちゃうから。



「りょーかい。アタシ達はアタシ達で『終わった』の声が出るまでボードゲームやってっから、みほはみほでバッチリ地形覚えて作戦考えてくれ。
 中学最後の大会は、やっぱ優勝で飾りたいからな!!」

「うん!最高の最後にしようね!!」

それじゃあ、記憶開始!!――ふむふむ、西側陣営のスタート地点にはすぐ近くに丘が有って、逆に東側のスタート地点には小さな藪が点在
してるか……スタート地点が何方になるかで戦い方が変わって来るね此れは。
出来るなら西側のスタート地点を取りたい所だね……堅い相手とは言え上からの攻撃は有効打になり得るから、稜線を取っておけば地の利
を得る事が出来るから。
逆に西側のスタート地点を取れなかったら……その時は明光大の機動力を見せる時だね。相手が稜線を取る前に仕掛けるだけだよ。

決勝戦ではエリカさんが、小梅さんが待ってるから、先ずは準決勝を勝たないとね!



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そして準決勝当日!
準決勝第1試合も相当な盛り上がりで屋台が結構出てたけど、私達の準決勝第2試合も負けない位の大盛り上がりだね!第1試合の時に負
けず劣らずの屋台の数と観客の数だからね。

で、今は何をしてるのかと言えば、お決まりの試合前の腹ごしらえ。腹が減っては戦は出来ぬ。因みに本日のメニューは関西風タコ焼きです。
ふわふわの生地と、タコの食感が相性抜群!お陰で、試合前にエネルギーがチャージ出来たよ!!
今の私は、阿修羅をも超える存在だぁ!!!



「……私の娘は、一体何時どこぞのフラッグファイターになったのかしら……?」

「……お母さん?」

どうしたの?って言うか、何でこんな所に居るのかな?



「あら、娘の試合を見に来て悪いかしら?
 2回戦は連盟の方の仕事と重なってたから見れなかったけれど、今日は見に来る事が出来たのよ――貴女達が準決勝を、如何戦うのかを
 楽しみにしていますよ。」

「なら、その期待には応えるよお母さん。
 私の戦い方は純粋な西住流じゃないかも知れないけど、だけど私は私の戦い方に誇りを持ってる――此れが、私の戦い方だから。」

「ふふ、それで良いわみほ。寧ろそれが大切なのよ。
 まほは西住流こそが自分に最も合った戦い方だと理解して其れを極めんとしているけれど、貴女は貴女の戦車道を模索して、見つけた其れ
 を貫こうとしている……それで良いのよ。
 西住流の娘だからと言って、其れに拘る必要はないわ。貴女は貴女の戦車道を突き進みなさい。」



うん、勿論だよお母さん!
お姉ちゃんにも言われたからね『お前はお前の戦車道を見つけるんだ』ってね――まだまだ模索中だけど、必ず見つけるよ、私の戦車道を!



「ハッハッハァ!まあ、見ててくれよしほさん!アタシ達は絶対勝つからよ!!
 準決勝は圧倒的に不利なシチュエーションだけど、其れが負ける理由にはならねぇって!何たって、みほが地形を完全暗記して作戦を立て
 てくれたからな!」

「正直、負ける気がしないわ。」

「私達は勝ちますよ、絶対にね。」

「……その意気や良し。貴女達の戦い、見せて貰います。」



うん、見せてあげるよお母さん。そして魅せてあげるよ、まだまだ未完成だけど、明光大の3年間で見つけた私の戦車道の欠片と言う物をね。



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そしていよいよ試合開始。
試合前の礼……つくばガーディアン中学校の隊長は綺麗なブロンドの髪に翡翠のような緑の瞳……ハーフか、或は髪を染めてカラコンを入れ
てるのかは分からないけど、目を引く外見なのは間違いないね。

「明光大付属中学校戦車道チーム隊長の西住みほです。今日はいい試合をしましょう。」

「つくばガーディアン中学隊長の湖城雛菊です。
 中学戦車道界隈ではその名を知らぬ者は居ないと言われる『隻腕の軍神』こと西住みほさんと戦えるとは光栄の極みです。
 全力を尽くしましょう。」



言われるまでもなくその心算です。最高の試合をしましょう、雛菊さん!!



「此れより明光大付属中学校と、つくばガーディアン中学校の試合を始める。互いに礼!」

「「よろしくお願いします!!」」



さぁ、始めようか?決勝戦の最後の椅子を懸けた戦いをね!!








――――――








No Side


準決勝第2試合はこうして幕が上がった訳だが、先ずは両校のオーダーを見て行くとしよう。


明光大付属中学校

・パンターG型(アイスブルーカラーリング、隊長車)×1
・ティーガーⅠ(パールホワイトカラーリング、副隊長車兼フラッグ車)×1
・パンターG型(オキサイドレッドカラーリング)×4
・ティーガーⅠ(オキサイドレッドカラーリング)×2
・Ⅲ号突撃砲F型改(G型仕様)×2



つくばガーディアン中学校

・ブラックプリンス歩兵戦車×5(其の内1輌は隊長車兼フラッグ車)
・トータス重突撃戦車×4
・SECRET×1




明光大は1回戦と同じオーダーだが、ガーディアンの方は此の準決勝にSECRET戦車を持って来ていた。
ルールでは、2輌まで試合に使用する戦車をSECRET扱いにして、その存在を秘匿する事が認められている――故に、つくばガーディアンは、
此の準決勝でSECRET車輌の使用に踏み切ったのだ。
裏を返せば、其れだけみほの事を脅威と感じていると言う事なのだが、正体不明の戦車があると言うのは、相手にとってはプレッシャーになる
のだから。

だがしかし、みほの顔にはプレッシャーを受けた感じはまるでない。
それどころか、浮かんでいるのは未知の強敵と戦える事への歓喜――みほの中の眠れる本能が覚醒し、この準決勝をとことん楽しもうとして
いるのだ。

更に運が良い事に、明光大のスタート地点は西側――すぐ近くに小高い丘があるスタート地点を得る事が出来たのである。


「其れじゃあ行きます!Panzer Vor!!」

「「「「「「「「「Jawohl!!」」」」」」」」」


みほの号令と共に、明光大の戦車は、一路丘を目指して前進!
同時にガーディアン中の部隊も進撃を開始。

ガーディアンの部隊は明光大を取り囲む形で陣を展開しているが、機動力で勝る明光大が稜線を取って陣形を整えるのが先なのは間違いな
く、観客の多くもそうだと思っていたのだが――


――ドガァァァァァァァァァン!!!


「!?」


稜線を取ろうとしていた明光大の部隊に、突如として砲撃が炸裂!!
幸いにして撃破された車両はないが、着弾地点に出来たクレーターを見る限り、少なくとも20mmを越える砲弾での砲撃である事は間違いな
いだろう。


「――!!散開!稜線を取るのは中止!平原に出て、相手を迎え撃ちます!!」

「「「「「「「「「了解!!」」」」」」」」」


此れに稜線を取るのは無理だと判断したみほは、すぐさま作戦を変更して其れを伝える。
この柔軟さもまた明光大の強みであるのだが――


――ズガァァァァァァァン!!!


「こんの……おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ごめんなさーい!!!」




――キュポン!×2



『明光大付属、Ⅲ号突撃砲1号車、2号車行動不能。』


その最中に再び凶悪な砲撃が炸裂し、試合開始2分で、明光大はⅢ突を2輌失う結果に。――だが、此れが逆にみほの感覚を研ぎ澄ませて
謎の砲撃を放った相手が何であるのかを看破するに至っていた。


「(此れは明らかに此方の射程外から攻撃出来る超長距離砲撃が出来る戦車である事は間違いない。
  多分、SECRETの戦車なんだろうけど、Ⅲ突2輌が撃破される直前に見えた砲弾にはロケット推進機構が見えた……と言う事は!!)
 この砲撃を放ったのは、シュトゥルムティーガー……!!」

「はぁ!?シュトゥルムティーガーだと!?……マジかオイ……!!」


その正体はシュトゥルムティーガー。
現在の戦車道のレギュレーションで認可されている戦車の中では、最強無比の380mmロケット砲を搭載した超重爆の自走砲――其れがつく
ばガーディアン中のSECRET機体の正体だったのだ。


「シュトゥルムティーガー……まさか、そんな物を持ち出してくるとは、何が何でも私達に勝ちたいって言う所かな?
 だけど、勝つ為にあらゆる手段を講じるって言うのは嫌いじゃないよ、ルールで合法とされてる物を使ってくるならね――最高だよ雛菊さん、
 貴女なら準決勝の相手として申し分ない。
 隻腕の軍神の力、見せてあげるよ。」


――轟!!


しかし、みほは其れに怯むどころか、口元に凶暴な笑みを浮かべた上で、稜線の下からやって来るガーディアン中の部隊を見やる。
2輌のビハインドを喰らったとは言え、そんな物はみほにとっては大した痛手ではないのだろう。


「本番は此処から……行くよ、ナオミさん、青子さん、つぼみさん!!」

「任せなさいみほ!どんな相手でも狙い撃ってやるわ。」

「お前の言うレベルで装填速度を早くしてやるから、ガンガン命令してくれよみほ!!」

「みほさんと一緒なら負ける気がしないわ!!どんな無茶な命令でも熟して見せるわ!!」

「……ありがとう。其れじゃあ、行くよ!!」

「「「「了解!!」」」」


――轟!!


同時に、みほの命令を受けた隊長車のクルーも己の潜在能力を解放!!その影響で、隊長車であるアイスブルーのパンターには白銀のオー
ラが纏わりついているのだ。


「今のは序章、本幕は此処からだよ。」


先手を取ったのはつくばガーディアンだが、しかし明光大の士気は逆に高まっている。――準決勝第2試合は、此処からが本番だろう。



「炎が、お前を呼んでるよ雛菊さん……」

「ならば燃え尽きて下さい西住さん……潔くね。」


「「行くよ!!」」


激闘必至の準決勝2試合目は、序盤から予想外かつ、凄まじい試合展開となっていた。










 To Be Continued… 





キャラクター補足