Side:みほ


春休みが終わり、今日から私も晴れて2年生。
で、今日は始業式なんだけど、新年度の始まりで気になるのは、クラス編成!――今年は一体、誰と一緒のクラスになるのかって言うのは、
私だけじゃなくて気になる事だからね。

んん……よいしょっと。

私は――今年は2年5組だね。
去年一緒のクラスだった人達も其れなりに居るみたいだけど――それ以上に、青子さんとナオミさんとつぼみさんが同じクラスって言うのには
流石に驚いたかな?
まさか、戦車道の隊長チームが同じクラスになるとは思ってなかったからね――或は、学校側が、隊長チームを同じクラスにして戦車道大会
での更なる飛躍を期待した可能性は無くもないけど。



「ま~~、その辺はどーでも良いだろ?大事なのは、アタシ達とみほが一緒のクラスになったって事だ。アタシは去年も同じクラスだったけどな。

「青子の言う通りね。――私達が同じクラスになったって言うのが重要なのよみほ。」

「同じクラスであれば、ちょっとした休み時間でも、簡単な作戦会議とかは出来ますから♪」



まぁ、深い事は考えないで、今は同じクラスに慣れたって行くことを喜ぶべきだね!――取り敢えず、今年1年、宜しくお願いしますね青子さん
、ナオミさん、つぼみさん!



「「「此方こそ!」」」



新たな年度……進級した今年も、色々と楽しめそうだね♪










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer27
『新たな戦車道の仲間です!!』









とは言え、始業式の日は授業がなく、基本的に部活も休みなんだけど――新学期が始まって早々に、部長に呼び出されました。
集まってるのは、隊長チーム全員と、それ以外のチームの車長――この面子を考えると、結構重要な何かじゃないのかって思うのが普通だ
と思いますが、何があったんですか近坂部長?



「あったわよ、大当たりな事がね。
 昨年度の大会における我が校の快進撃に感激した、地元の商工会が資金を提供してくれて、其れで新たな戦車を買う事が出来たのよ!
 しかも聞いて驚け!新たに購入したのは、最強の中戦車であるパンターG型よ!!
 此れで我が校は、3体のパンターを有する事に成った!――去年の2学期に齎された、魔改造ティーガーⅡと併せて、此れは即戦力になる
 戦車よ!」

「此処でパンターがもう1輌……!」

其れは、何とも有り難い事ですよ部長。
パンターの性能は他の中戦車を遥かに凌駕する、大戦期の超ハイスペック中戦車ですから、明光大の戦車力が更に底上げされたのは間違
いありません!――資金提供をしてくれた、商工会の方々には、今度ちゃんとお礼をしないとですね。



「パンターがもう1輌ってのは心強いわね。
 此れで明光大の得意とする、機動力を生かした戦い方に更に鋭さが増すわ――ルールで使用できる戦車の中に、パンターを超える機動力
 を持った中戦車以上の戦車は存在しないんだから。」

「そーそー、ナオミの言う通りだって。
 戦車の性能に頼りきる心算はねーけど、最高性能の戦車が増えるってのは、マジで有り難いからな――今年は、出来るかもだぜ優勝!」

「勿論、新入生がドレだけ入って来るかも、大事な要素ですけれどね♪」



新入生かぁ……確かに其れは取っても大事な事だねつぼみさん。
今年入部希望者が0だと、来年が凄く大変になるから、去年の私達とまでは行かなくても、3チーム分くらいの人数は入部して欲しい所だよ。
明日が入学式で、明後日からは新入生に対する部活動の勧誘とかが出来るようになるから、確りと戦車道部をアピールして、新入部員を確
保する事にしましょう!



「勿論その心算。――そう言う意味では、去年のベスト4って言うのは宣伝文句としては悪くないわ。
 其れも只のベスト4じゃなくて、絶対王者黒森峰と互角に渡り合った末のベスト4なんだから、此れは新入生を勧誘する上での大きな武器
 になるでしょ?」

「部長の言う通りだろうな~♪
 押しも押されぬ絶対王者と互角に渡り合ったってのは、戦車道に関わってる奴なら知ってるだろうが、関わってない奴でも『スゲー』と思う
 のは、間違いねーって!実際アタシだったら思うしな!」

「確かに、新入生の興味を引くには充分かも知れないね。」

加えて、お姉ちゃんのジュニアユースでの活躍や、黒森峰高等部が無敵の7連覇中って言う事もあって、戦車道は俄かに活気付いて注目度
が増してるから、此れなら意外と新入生を呼び込めるかもしれないし。
でも、大会の成績だけじゃちょっとアレだから、もっとこう強烈なアピールが欲しい所かな?



「なら、戦車に乗ってビラを撒くって言うのは如何かしらみほ?其れも、迫力抜群の新隊長車であるティーガーⅡシュバルツで。
 部活の宣伝としては、間違いなく他の部活を完全に凌駕するインパクトがあると思うわよ?」

「OK、それで行きましょうナオミさん。」

其れなら確かにインパクトがあるし、其れ位のインパクトが有った方が新入生の印象にも強烈に残るだろうから。
――いっその事、ネットで旧日本軍の軍服を買って、カラーリングを黒に改造して着ちゃおうか?更にインパクトは強くなるし。



「……黒い日本軍の軍服を着たみほと黒いティーガーⅡか……其処に、同じ軍服を着たまほ姐さんと黒いティーガーⅠを加えてみよう!!」

「「如何足掻いても勝てる気がしない!!!」」

「……並の戦車乗りなら、敵前逃亡するわ其れ……」



……私とお姉ちゃんを何だと思ってるんですか貴女達は――私とお姉ちゃんは『西住』だから、色々とアレなのは否定しないけど、だからと言
って中学最強って言う事でもないでしょ?安斎さんは、お姉ちゃんと互角にやり合ってたし。



「気分的な問題よみほ……ぶっちゃけ去年の合宿で、貴女とまほが組んだ時の模擬戦、私は絶望を通り通り越した、真の恐怖って言う物を
 バッチリと味わったからね?
 こう言っちゃなんだけど、アンタ達姉妹は『混ぜるな危険』だわマジで。」

「去年の合宿の事を言われると、反論できないのが辛いです。
 じゃなくて、部活勧誘はその方向で行くって言う事で良いんでしょうか凛部長!!」

「OK、問題ないわ。」

「でも、黒の日本軍軍服ってのは味気ないから、衣装の方はアタシがバッチリ用意してやるから楽しみにしてなみほ!……衣装代は、部費で
 落ちるって言う事だから、思い切りやらせて貰らうからさ!!」



えぇと……つまり、この案で良いって言う事だね?
青子さんが用意するって言う衣装が少し気になるけど、戦車道部の部員が増やせるなら、余程の際物衣装じゃない限りは着るから大丈夫!
何よりも、西住流に『撤退』の文字は無いらしいから、逃げるって言う選択肢は無いからね。



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という訳で二日後。
今日から新入生の部活勧誘が解禁されるんだけど、まさか青子さんが隊長チーム全員の衣装をネットで発注してるとは思わなかった……し
かも、チームメンバーの個性を引き出す衣装だったからね。

でも、確かに個性は引き立つけど、何でデザインが微妙に『黒のカリスマ』っぽいのかな?
ナオミさんは黒のレザーパンツに黒のタンクトップに黒のロングコート、つぼみさんは黒いミニスカートに黒のインナーに黒のノースリーブのレ
ザージャケット、青子さんは黒のハーフパンツに黒のTシャツと黒の短ベスト。
其れだけでも凄いのに、私に至っては黒い軍帽に、黒のボタン付きシャツと黒のミニスカート、黒の袖なしコートにサングラス、そしてトドメに
黒のハイヒールブーツ+オーバーニーソックスと来てるからね?
……ハッキリ言って、普通に街中で会ったら、逃走確実な格好だと思うんだけど……なんで此れをチョイスしたし。



「みほなら似合うと思ったし、インパクト半端ねぇから♪」

「其処まで言いきられると、怒る気すら失せるよ青子さん。」

まぁ、戦車走らせる前から注目集めてるから、其れを考えるとこの衣装のチョイスは大成功だったって言えるかな?――でも、本番は此処か
らだから、行きましょう!

「Panzer Vor!」

「「「Jawohl.!」」



先ずは戦車発進と同時に、昨日のうちに作っておいた勧誘用のビラを青子さんがティーガーⅡの後部に立ってばら撒き、適度に移動した所
で、今度はあらかじめ装填しておいた、部活勧誘用の特殊弾を空に向けて発射!
うん、角度よし、位置良しの最高の場所だね――あそこなら、外に居る生徒にも教室内に居る生徒にもよく見えるから。流石はナオミさん♪
で、その特殊弾が何かと言うと……



新入生諸君、来たれ戦車道部へ!!



文字を形作る特殊スモーク花火の弾。うん、新入生だけじゃなくて加入活動してる他の部活の人達も思わず見ちゃってるから、効果は覿面。
さてと、其れじゃあそろそろ仕上げと行こうかな?
先ずはキューポラの上に立って、其れからサングラスを外して胸元に引っ掛けて……良しOK。

「明光大付属中学校戦車道部の隊長、西住みほです。
 経験者、未経験者を問わず、私達は貴女達新入生を歓迎します――細かい事は言いません、興味を持ったのなら、是非戦車道部へ。」

で、此処で一礼して、それで帽子を投げると……こんな感じでOKかな青子さん?



「OK、OK!カリスマ性バッチリ。つーか、その格好でキューポラの上に立っただけで『黒の軍神』だから大丈夫だって。
 少なくとも、新入生の連中に強烈なインパクトを与えたのは間違いねーだろ?弩デカいインパクトを与えれば、絶対興味持つからな♪」

「だと、良いんだけどね?……アレ?」



――ポス



「わひゃ!?」



ありゃりゃ……投げた帽子が、偶然1年生の子の頭に被っちゃった。思わぬハプニングだけど、此れは此れで利用できるかな?

「……その帽子、貴女にあげるよ。大事にしてくれると嬉しいかな?」

「は、はい!勿論です!!」



「……アドリブで其れかよ、マジスゲェなみほ?取り敢えず、1名確保は確実だな。」

「自分でも、咄嗟にあんな事が出来た事に驚きだよ青子さん。あの子は、間違いなく入部してくれるだろうけどね。」

何となく、ちょっとやり過ぎてる感はしなくもないけど、私にはお姉ちゃんの『ジュニアユース代表』みたいな分かり易いネームバリューは無い
から、此れ位やって強烈な印象を残さないと、戦車道部への勧誘って言うのは難しいもん。
加えて、『片腕の隊長』って言うのは間違いなく新入生の間で話題になるだろうからね?……自分の身体のハンデ部分だって、プラスに使え
るなら徹底して使うのは当然だよ。

最終的な入部人数は、仮入部期間が終わった後で正式な入部届を出した人の数になるから今は未だ分からないけど、仮入部期間に戦車道
の面白さを知ってもらう事が出来れば、確実に部員を増やせると思うから、そっちの方も大事だね。

「部員、増えるかなぁ?」

「間違いなく増えるんじゃない?少なくとも、さっきの貴女のカリスマ性は半端な物じゃなかったと思うよみほ――其れこそ、まほさんにだって
 負けてなかったわ。」

「ぜってー増えるから大丈夫だって!経験者だろうと、未経験者だろうと可也来る筈だぜ♪」

「そうね。私が新入生だったら、さっきのみほさんに惚れちゃうかもだし……其れこそ、学校が学校だったら『お姉さま』って呼んじゃう位に。」



其処まで!?
って言うかつぼみさん、『お姉さま』って……其れはどっかの『○リア様が見○る』の世界でやってね?



「スールの契りは、ロザリオの受け渡しじゃなくて、戦車の受け渡しで!」

「ロマンチックな雰囲気も何もないよ其れ!?鉄と油と火薬の匂いしかしないからそれだと!!」

「でも、それが戦車乗りとして正しい匂いでしょう!」

「うん、否定はしないけどね!?」

何て言うか、色々アレだなぁつぼみさんは……普段の様子からは考えられないけど、意外とお嬢様的な事に憧れ持ってたりするのかなぁ?
……こう言ったら凄く失礼だけど、物凄く似合ってないよ其れは流石に、其れなのにお嬢様キャラになったら、其れは其れで素晴らしいキャラ
性を発揮してくれんじゃないかって思う辺りつぼみさんのポテンシャルは計り知れないよ。

でもまぁ、取り敢えず宣伝はバッチリしたから、後はドレだけ部員が集まるか……其れに尽きるね。



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で、仮入部期間も終わった四月半ば……此れは、結構新入部員が集まったね?
計16名――4チーム分の人員が確保出来たって言うのは大きいよ。3チーム分確保できれば上出来と思ってたから。



「……仮入部期間中に、みほが『西住流フィジカルトレーニング』を敢行しなかったら、もっと部員が増えていた件について。」

「堅い事言うなよナオミ!アレは、正規部員になる奴等の振るい落としだったんだって多分。
 仮入部でアレを経験して、それでいてなお戦車道部への入部を決意した奴だけが此処に集まってる――つまりトンでもなく根性の座った奴
 等が此処に居るって事だろ其れは!
 気合と根性があれば、大抵の事は如何にか出来るから、先ずは其れが無いと話にならねぇだろ!!」

「……何処かの赤毛三つ編みお姉ちゃんの理論よね其れ……まぁ、否定はしないけれど。」



……別に意識した訳じゃないんだけど、仮入部期間のアレが、結果として部員の選定になってたんだ――確かに、あれ位で根を上げるようじ
ゃ、戦車道を続けるのは難しいからね。

でも、だからこそ新たに入部してくれた16人には、期待しちゃうかな?
お姉ちゃんをして『普通じゃない』と言った西住流フィジカルトレーニングを体験して、それでも入部を決めてくれた訳だからね♪此れは、色々
と期待しちゃうよ。

さてと、先ずは挨拶だね。

「明光大付属中学校、戦車道部隊長の西住みほです。――ようこそ戦車道部へ!
 貴女達が入部してくれた事を心の底から有難く思います。共に、大会で優勝を目指しましょう!!」

「「「「「「「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」」」」」」」



うん、返事も元気があっていいね。
其れじゃあ先ずは自己紹介から行こうか?今日からは此れがチームになるから、互いの名前はちゃんと覚えておく事も必要になるからね。
じゃあ、先頭の人から行ってみようか?



「は、はい!和歌山市立第三小学校出身の田村なのはです。小学校では、戦車道クラブで砲手をやってました。」



ふぅん?経験者が居るって言うのは有り難いかな。いろんな面で、頼りになるからね。










そんなこんなで、新入生の自己紹介が続き……次の子は――アレ?あの子は……



「ひたちなか市第一小学校出身の澤梓です。
 戦車道は未経験ですが、去年の大会に感動してこの学校に来ました!――戦車道に関しては素人ですが、宜しくお願いします!!」



部活勧誘の時に投げた帽子が偶然頭に乗っちゃった子……思った通り、入部してくれたんだ。
しかも、去年の大会に感動してって……嬉しい事を言ってくれるよ。――未経験者であるにも関わらず、瞳の奥からは凄い闘志を感じるから
ちゃんと鍛えれば、物凄い戦車乗りになるかも知れないね澤さんは。

加えて、澤さんだけじゃなく、新入部員全員が相当な資質を持ってるから、此れは今年は本気で優勝する事が出来るかも知れないよ。
ううん、絶対しないとだからね今年は――近坂部長に、優勝って言う最高の卒業祝いを送りたいしね。

今日からこのメンバーが、我が校の戦車道のチームです――頑張っていきましょう!!



「「「「「「「「「「「おーーーー!!!」」」」」」」」」」」×他沢山



優勝を目指す以上は、黒森峰を倒さないとならないけど、1回戦で当たろうと、決勝で当たろうと、今年は私達が勝つから覚悟しておいてねお
姉ちゃん――今年は、私達が優勝させてもらうから!!








――――――








Side:まほ


ふむ……今年の新入部員は、20名か――まぁ、妥当な所だな。
それでも去年と比べると些か数が少ないのは、ある程度の数がみほ率いる明光大か安斎率いる愛和学院に流れたからだろうな……チャレ
ンジャー精神に溢れる者ならば、王者黒森峰に入学するよりも、挑む側である学校に進むだろうからね。

だが、だからこそ今年は去年以上に面白い大会になるかも知れないな?
強化された明光大と愛和学院が、どれほどの力を持ってして私の前に立ちはだかるのか……其れを想像しただけで、私の戦車乗りとしての
闘争本能が疼いて来るじゃないか。



「隊長?」

「……何でもない。だが、今年の大会は去年よりも荒れるぞエリカ、小梅。大会は、まだ少し先だが、今の内から覚悟を決めておけ。」

「「り、了解!!」」



私の中学生活最後となる大会は、矢張り優勝して終わりたいからな。
願わくば、みほと安斎の両方に勝利して、中学最後の大会に華を添えたいものだ――まぁ、そう簡単に華を添えさせては貰えないのだろうけ
れどな。

何にしても、今年が中学最後の大会だ……悔いの残らぬように全力で臨まねばだ!!――私を楽しませてくれよみほ、そして安斎!!












 To Be Continued… 




キャラクター補足






田村なのは
明光大の新入生で、小学校時代は戦車道クラブで砲手を務めていた経験者。
天真爛漫な性格で、誰にも好かれるタイプだが、一度戦車道のバトルスイッチが入ると、二重人格かと言う程に人が変わって、全力全壊の砲
撃で敵戦車を殲滅してしまう、ちょっと困った一種のタンクジャンカー。