Side:みほ


無事に合宿が終わって、残りの夏休みを満喫中。
宿題も、合宿の最中の自由時間に終わらせちゃったから、残りの日程を遊びに割り当てても全然問題はなくて、其れはお姉ちゃんも同じ。

だから、夏休み中に、一度は一緒に何処かに遊びに行こうとは思って居たんだけど。



「みほ、今度の夏祭り一緒に行こう。」



此れは、流石に唐突過ぎないかなお姉ちゃん?
いや、一緒に夏祭りに行く事自体は大歓迎なんだけど、もう少し言い方と言う物があるのではないかと私は愚考するんだけど、その辺は如何
考えるのかなお姉ちゃん?



「?何か間違っていたのか?」

「間違ってはいないけど、言葉が足りないって言ってるの!
 まぁ、夏祭りに行くって言う提案に関しては文句なし、諸手を挙げて賛成なんだけど、私とお姉ちゃんだけじゃ少し寂しい感じがするかな?」

「其れについては大丈夫だ。逸見と赤星は既に誘ってあるし、先程凛の方にもメールを入れて承諾を貰ったからね。
 みほも、友達を呼ぶと言い。折角の夏休みなんだ、多少羽目を外して大騒ぎをしないと、きっと後悔してしまうだろうからな――お母様も、思
 い切り楽しんで来なさいと言っていたからね。」



そうなんだ。
だったら、ナオミさんとつぼみさんと青子さんの召喚は確実だね!って言うか、今し方速攻でメール送って、そして速攻で返信が来たから♪
勿論、全員参加だったけどね♪










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer25
『夏祭りは徹底的に楽しむモノです!』









そんな訳で、夏祭り当日。
参加メンバーは一度家に集まって浴衣に着替えてから、会場までの神社まで皆一緒に歩いて向かう。履物は、勿論下駄で。(浴衣と下駄は
今日の為に、お母さんが菊代さんに用意させたらしい。)
うん、下駄の音が心地いいね♪




――で、歩く事10分。

夏祭りの会場である神社には、駐車場から境内まで所狭しと出店が犇めいてる……此れは、ここ数年で最大クラスの出店数じゃないかな?



「だろうな。
 決して規模の大きな祭りではないが、地元の夏の風物詩という事で、商工会の人達も色々と気合が入って居るんだろう。」

「これで、地域レベルのお祭りだって言うんだから驚くわ……私の地元の地域レベル夏祭りなんて、此れの半分程の規模よ?」

「まぁ、其れは地域によっても異なるのだろうね。」



やっぱり、出店数は最大クラスだよね此れ。
それにしても、何て言うか……お姉ちゃんと部長って、2人揃うと可成り『華』があるんだよねぇ?浴衣も、モデルみたいに着こなしてるし。
もしもの話になるけど、戦車道をやってなくても、お姉ちゃんと近坂部長は、普通にモデルとしてスカウトとかされてたかも知れないと思っちゃ
うよ、冗談抜きでね。



「アナタだって負けてないんじゃないの?と言うか、アナタの戦車クルーが全員集まると結構目を引くわよ?
 何て言うか、夫々は一見バラバラな個性なんだけど、4人纏まると何故か不思議とバッチリ絵になるのよ……此れもチームだからかしら?」

「逸見さん……其れはあるかも知れません。」

「まぁ、見た目のインパクトなら、銀髪と天パのコンビのお前等も結構目立つと思うけどな。」

「て、天パですか……まぁ、否定はできませんけれども……」

「……赤星の事を『モジャ頭』と言わなかった事だけは褒めてあげるけど、まだ頭髪ネタを持ち出すかアンタは!此の、青唐辛子のクセに!」



青子さん、本当に人の事を見た目の特徴で覚えるなぁ?私の事も、片腕って言う事で覚えてたし、ナオミさんとつぼみさんの事も、最初は『ベ
リショ』と『赤毛』で覚えてたらしいからね。
そして逸見さん、青唐辛子って……確かに名前をアナグラムにするとそうなるし、学校でも一部のクラスメイトからそう呼ばれているけどね?

まぁまぁ、2人ともその辺にして――先ずは如何しようかお姉ちゃん?



「そうだな?折角神社に来たんだから、先ずはお参りをしてこようか?
 初詣以外では滅多に来る場所でもないから、偶に訪れた時位は参拝したっていいだろう――此処の神社は、色々な勝負事に関する御利
 益もあるらしいからな。」

「中学3連覇の為の願掛け?」

「そう言う訳ではないが、折角来たのに、只祭りを楽しんで帰ると言うのも、此処に祀られている神様に申し訳ないと思ってね。」

「成程、お姉ちゃんらしいね。」

一見クールに見えるお姉ちゃんだけど、意外とこう言う事を考えてる所があるんだよね実は。
お姉ちゃんだって、神様が居るかどうかを信じてるか信じてないかで言えば、どっちかと言えば信じていない方なんだけど、それでも神社や
お寺さんでお参りする時は真剣にお祈りしてるから、神仏に対する心は大切にしてるのかもね。

だけど、お参りには賛成。御利益があればラッキーだからね♪



「100円玉は……よっしゃ、1枚残ってた!後は500円と1円だからなぁ……500円は兎も角、1円じゃ賽銭として安すぎっからなぁ……」

「なんだ、100円あったのか青子?なければ両替してやったのに……100円玉だけで20枚近くあるから、少し軽くしたかったんだけれど。」

「なら、悪いけど両替してくれるナオミ?生憎小銭切らしてて、1000円札しかないのよ……英世さんを100円10枚にしてくれる?」

「OK、毎度あり~~。」



こんな事をやりながら、本殿到着。
其れじゃあお賽銭を投げてから……


――パン!パン!


二礼のあとに二拍をしてから、手を合わせて心の中で願いをね。……中学校卒業までは、此のメンバーで戦車道を続けられますようにっと。
あ、それから、来年こそ優勝できますようにっと。
願いが終わったら一礼で、参拝終了!――さて、次は如何しようか?
このお祭りの二大イベントである龍舞と花火はマダマダ先だから、先ずは出店巡りって言うのが一番だと思うんだけど、皆は如何思うかな?



「異論なーし!って言うか、アタシ的には速攻で出店回りたかったからな!」

「青子……でもまぁ、異論はないわみほ。
 出店巡りって言うのは、祭りの楽しみ方の基本とも言えるし、適当に冷やかすだけでも出店巡りは楽しめるわ。」

「出店巡り……リミッターを解除するわ!」

「何のリミッターよ其れは……でもまぁ、食べ物以外にも色々あるみたいだから、出店巡りって言うのは案外楽しめるかも知れないわね?」

「射的に金魚すくいに、スーパーボールすくい……食べ物も、基本の今川焼やたこ焼き、フランクフルトと綿あめの他にも色々出ていますから
 目移りしちゃいますね。」

「ホント目移りするわ……何よりも、此処は地元じゃないから迷いそうよ。――だから、エスコートしてくれるまほ?」

「了解した。其れではこちらへどうぞ、マドモアゼル。」



満場一致で出店巡りに決定!
そして、お姉ちゃんと部長は何をしているのやら……冗談めいた部長の一言に、ガチで応えるお姉ちゃんの図は、なんだか凄いね色々と。
何て言うか、邪魔するのも悪いし、お姉ちゃんと部長は2人で楽しんでもらうとして、私達は1年生だけで楽しもうか?



「異論無しよ。」

「思いっきり楽しもうぜーー♪」

「私達は私達でね?良いんじゃない?」

「何よりも、お祭りは楽しまないと、絶対に損ですもの……と言うか、楽しんだ者勝ちよ!」

「至言ですね野薔薇さん……まぁ、私もその意見には諸手を上げて大賛成ですけれど。」



じゃあ、満場一致という事で、思いっきり夏祭りを楽しみましょう!パンツァーフォー!!








――――――








No Side


そんな訳で始まった、明光大と黒森峰の1年軍団による出店巡り。
一行は、先ずは腹ごなしとばかりに『ジャンボ串焼き』の出店で、みほとナオミとエリカが『ジャンボ牛カルビ串』を、青子とつぼみと小梅が『ジ
ャンボ豚バラ串』を購入して、其れを食べながら出店を見て回る。


「逸見さん……此れは外せないよね?」

「外せるわけないでしょう此れは――ある意味で、日本の夏祭りの代名詞と言っても過言じゃないんだから。」


そんな中で、一行が立ち止まった出店は、御存じ『金魚すくい』。
エリカの言うように、夏祭りの出店の代名詞と言っても過言ではない物であり、祭りに参加した者としても、結果はどうアレ、金魚すくいをしな
いと言う選択肢は存在しない。
其れ以前に、取れるかどうかも分からないにも拘らず、客を引き付ける不思議な力があるのだ金魚すくいの出店には――その証拠に、この
出店以外の金魚すくいの出店にも人が集まっているのだから。

となれば、やらないと言う選択肢は存在しないので、各々100円玉を店のおっちゃんに渡し、ポイを片手にレッツトライ!


「先にやって良いぜみほ、お椀は持っててやっからさ。」

「ありがとう青子さん。じゃあお言葉に甘えて!」


左手でお椀を持つ事が出来ないみほの為に、青子が代わりにお椀をもって、まず最初にみほとナオミと小梅がチャレンジ。
狙いを定めてポイですくおうとするが、これが中々どうして難しい。浅すぎると金魚を乗せることが出来ないし、逆に深く突っ込むとあっと言う
間にポイが破れてしまうのだ。
それでも何とか頑張って、みほと小梅が1匹ずつ、ナオミが2匹と言う結果に。まぁ、1匹でも取れれば上出来と言う所だからこんな物だろう。
だがしかし、この店にとっての悪夢は此処からだった。


「さぁて……やってやろうじゃない!」

「残らず取ってやるぜーーー!」

「明光大一の俊足からは逃げられないのよ!」


続くエリカ、青子、つぼみの3人が、水面を切るかのような動きで次々と金魚をお椀の中に放り込んでいく。お椀じゃなくて、ラーメン丼を用意
した方が良いんじゃないかと言う位に放り込んでいく。
此れには、俄かに周囲の客も興味を持って集まり、何時の間にやら人だかりに。
因みに、ある程度金魚が溜まって来た辺りで、みほがナオミと小梅に『金魚が可愛そうだから』と言う理由で水を張ったバケツを3つ持って来
て貰い、取った金魚をそっちに移した。
しかし、そんな事はお構いなしとばかりに、この3人は獲りまくる。とっくにポイの耐久値を超えてるんじゃないかとも思うが、それでも獲る!!
獲って獲って獲りまくり、水槽の中の金魚が残り10匹ほどになった所で、遂にポイがクラッシュ!此処に金魚すくいデスマッチは終結した。


「残り10匹か……惜しかったわね。」

「逸見さん、一体何処を目指してるの?」


青子とつぼみは割とノリと勢いでガンガン行くのでこう言う事もあるかもだが、エリカもまたクールに見えて一度火が付くと止まらないタイプで
あるらしかった。
因みに、大量に獲った金魚は、幾らなんでも全部持ち帰る事は出来ないので、お気に入りを2~3匹だけ貰って、後は全部返却した。
なお、この光景をスマホで動画撮影していた野次馬が、後日ネットにアップして何かと話題になるのは、また別の話である。


金魚すくいを楽しんだ一行が続いてやって来たのは射的。
食玩のおまけのような賞品から、お金を出したら結構値が張りそうな賞品まで多数取り揃えられている、割とよくあるタイプの射的の出店だ。
只一つ、賞品の中に『戦車』と書かれた木の板がなければだが。


「ナオミさん、あの札何としてもゲットして下さい。若しかしたら、明光大の戦力を底上げできるかもしれませんから。」

「OK、了解したわ隊長。」


エリカと小梅は、精々『太っ腹な賞品』程度にしか思っていなかったが、みほからしたら此れは喉から手が出るほど欲しい賞品だ。
試合に出せる規定量10輌しか所持戦車がない明光大は、1輌でも大破したら最悪の場合、次の試合を相手よりも少ない数で戦わなければ
ならない事に成る為、せめて1台くらいは予備が欲しいと思っていた所だったのだから。

そして、みほから『隊長命令』をされたナオミは、其れを遂行するのみだ。
100円払って5発のコルク弾を貰うと、ナオミの顔が祭りを楽しむ女子中学生から、獲物を撃ち貫く砲撃手の物へと変わる……こうなったナ
オミは撃破率100%だ。

先ずは3発、上・真ん中・下と弾を当てて、何処に当てれば一番倒れ易いかを確かめる…弾が当たった時の揺れから其れを判断するのだ。


「OK、何処に当てれば良いか見極めた――残り2発で落とすわ。」


そう言いながら4発目を込め、狙いを定めて発射!
弾は、一番最初に当てたよりも更に上部に命中し板が大きく揺れる!そして、其れを逃さずに素早く最後の1発を込めて発射!
其れは、大きく揺れていた板に見事命中し、そして倒す!明光大一の腕前を誇る砲撃手は、見事隊長命令を遂行したのであった。


「いやぁ、此れが落とされるとはなぁ……だがまぁ、落とされちまったモンはしょうがない。
 コイツを持って、駐車場の方に行きな――とっておきの最強重戦車『ティーガーⅡ』と引き換えてくれるからよ!」


しかもゲットした戦車はなんとティーガーⅡ!
足回りに問題が多いが、攻撃力と防御力に関しては大戦期に実戦投入され成果を上げた重戦車の中では間違いなく最強であり『キングタイ
ガー』の異名を持つ戦車だ。
問題の足回りも、レギュレーションギリギリの範囲で魔改造すれば何とかなる事を考えれば、途轍もない戦力が手に入ったと言えるだろう。


「ナオミさん、よくやってくれました。」

「隊長の期待に応える事が出来ないんじゃ、隊員として失格だからね。」

「……思わぬ形で、明光大の戦力が底上げされたわね……」

「此れは要注意です。」


明光大的には戦力強化、黒森峰からしたら最大級のライバル校の戦力強化と、一口に戦力強化と言っても異なる状況だっただろう。
何にしても来年以降の大会で、今年の大会以上に明光大が台頭するのは略間違いない事だと言って間違いない筈だ。
その後、エリカと小梅も射的に挑戦し、見事100円の弾数で、普通に買ったら1000円以上する商品をゲットしていた。(但し、エリカに関して
は、手元が狂って撃ち損じた一発が偶然商品に当たってゲットした物であり、しかも其れが巨大なボコの縫い包みであった為に、ボコ好きの
みほに譲る事に成ったのだが…)


何にしても、一行が夏祭りを思い切り堪能しているのは間違いないだろう。
ヨーヨー釣りの出店では、みほが店主からの提案を受け入れてじゃんけんで勝ち、料金1回分で2個のヨーヨーをゲットし、焼きイカの出店で
は、矢張り店主からの提案を受けたエリカが相子5連続の末にじゃんけんで勝利し、1個分の料金で2個分の焼きイカをゲット。
型抜き屋では、みほと小梅が職人芸的なまでの型抜きを披露して、店主が泣きを入れる事態が発生し、スーパーボールすくいでは、金魚す
くいの時の様にエリカと青子とつぼみが意味不明な無双を披露して店を営業停止に追い込んでいた……まぁ、此れもまた夏の思い出だ。

さて、1年生軍団が夏祭りを満喫していた頃、まほと凛は何をしていたかと言うと……


「落ち着いてていいわね此処?」

「それでいて、祭りの喧騒を感じることが出来るだろう?祭りの空気を感じつつゆっくりできる、私が見つけた穴場なんだ此処は――実を言う
 とみほにも教えていない。私以外で此処に来るのはお前が初めてだよ凛。」

「其れは、光栄極まりないわね。」


適当に食べ物と飲み物を購入した後で、夏祭り中は殆ど訪れる人の居ない本堂の一角に腰掛けてまったりと過ごしていた。こう言う過ごし方
も、アリなのだろう。
実際に、まほも凛も、実にリラックスした状態でこの雰囲気を楽しんでいるのだから。


「時にまほ、その袋の中身はなに?」

「此れか?合宿の打ち上げでも使ったモノだが、黒森峰特製のノンアルコールビールだ。
 打ち上げでは辛唐がトンでもない事をしてくれたおかげでトンでもない事に成ってしまったが、此処に有るのは全てノンアルコールだから大
 丈夫だ……一本どうだい?」

「其れじゃあ頂こうかしら?
 タコ焼きに焼きイカにフランクフルトと、肴に困らないしね。」

「ふふ、そうだな……では改めて乾杯しようか?此れからの戦車道の発展を祝って。」

「乾杯ね。」


――カチン


で、まほが持って来たノンアルコールの栓を開けて、そして乾杯。そして、それと同時に――



――ヒュ~~~……ドッパァァァァァァァァン!!



この夏祭りの最大の目玉である花火大会が始まった。
次から次へと、目まぐるしく色んな花火が打ち上げられる様は正に圧巻!規模的に、隅田川の花火には及ばないが地域祭りの花火大会とし
ては、間違いなく最大クラスの弩派手な物だろう。


「たーまや~~~……だな?」

「お馴染みの掛け声が、此処まで違和感を感じるってのは初めてね……キャラに合ってないわよまほ。」

「そうか……残念だな。」


少しばかり、微妙なやり取りがあったが、今年の夏祭りは色々な意味で思い出に残るモノとなる事は間違いないだろう――絶対に。








――――――








Side:しほ


「た~まや~~。」

「か~ぎや~~♪」



毎年の事ながら、此処からは夏祭りの花火が良く見えるわ……まほとみほが付き添いなしで祭りに行けるようになってからは、毎年のように
此処から花火を眺めるのがスタンダートになってしまったわ――ま、特等席だから文句はないけれどね。

今頃はあの子達もこの花火を楽しんでいるのでしょうね……友人が一緒という事で遠慮したけれど、やっぱり一緒に祭りに行きたかったわ。
まぁ、あの子達の邪魔をする訳にも行かないから、其れは元より無理な事なのだけれどね。



「私では駄目ですか奥様?」

「駄目だなんて、そんな事はないわ菊代。
 何よりも貴女は『飲める』のでしょう?なら、今日はトコトンまで付き合いなさい。夏の夜空に咲く花火を肴に飲むと言うのも割と良い物よ。」

「風情を肴に酒を飲む……良いですねそう言うのも――今宵は、トコトンまで付き合いますよしほちゃん。」



だから、その呼び方は止めろって言ってんでしょうが菊代ぉぉぉ!!――でもまぁ、今日だけはその呼び方を許してあげるわ。
今宵は無礼講の夏祭り――神仏ですら祭りの雰囲気に酔ってしまうと言うからね?……だから楽しみましょう菊代?酒の肴もあるでしょう?



「スルメにチーズかまぼこ、ビーフジャーキーにカルパス……取り揃えてるわよしほちゃん♪」

「GJ。流石ね菊代。」

偶にはこう言うのも悪くないわね。
何よりも、私には夜空に咲く大輪の花が、戦車道の明るい未来を暗示しているように思えてならないのよ――まほとみほなら、きっと中学戦
車道を塗り替え、そして高校戦車道すら塗り替えるに違いないからね。

いえ、そうなってもらわないと困るわ…お母様の唱える『歪んだ西住流』を正すには、まほとみほの2人の力が絶対に必要になるのだから。
中学時代では無理だろうから、勝負はまほとみほが高校に上がってからね……その時にこそ、お母様の歪みを砕く事が出来る。

其れは本来ならば、私がすべき事だったのでしょうけど、私では出来なかったから、貴女達に任せるわまほ、みほ。――貴女達なら、お母様
の言う歪んだ西住流を正す事が出来ると信じているわ。

でも今は……



「しほちゃん、もう一杯どうぞ。」

「ありがとう菊代。でも、貴女もちゃんと飲みなさいよ?」

「はい、ちゃんと頂いています♪」



この時間を楽しまないとね……うん、美味い酒を飲みながら友と一緒に花火を楽しむ――此れは最高の夏祭りの楽しみ方だわ。
きっとみほもまほも、夫々夏祭りを楽しんでいるでしょうね……ならば、トコトンまで楽しむのが王道!徹底的に、最後の最後まで残らずね!








――――――








Side:みほ


夏祭りも、フィナーレイベントの花火大会が終わって、此処にお終い。
最後まで居たのは今日が初めてだけど、最後の花火は物凄い迫力だったなぁ……思わず身体に力が入っちゃったかね。
で、流れで青子さん達は、今日は西住邸に泊まる事に成った――まぁ、異存はないけどね。

兎に角、お友達と一緒に夏祭りを過ごすなんて言う事は初めてだったから、貴重な経験だったかもしれないね。

で、その帰り道。
話題がお祭りの事だけじゃなくて、戦車の事も出てきちゃうのはまぁしょうがないかな?
学校が始まれば練習試合とかもある訳だからね……キッチリ準備して、来年の大会にも備えないと――今度こそ優勝したいし、逸見さんにだ
けは絶対に負けたくないから。



「私も、アナタにだけは負けたくないわ……だから、今度は全力で勝負よ!」

「望む所です!!」

だったら、然るべき場所で、完全決着と行きましょうか?――来年の大会で決着をつけましょう逸見さん!



「望む所よ、西住妹!!」

「返り討ちにしてあげます!」

夏祭りの後の会話としては、ちょっと物騒かも知れないけど、戦車乗り的には此れ位は当たり前のコミュニケーションだから全く問題なし!!
来年の大会、楽しみにしてるよ逸見さん!

……でも、其れよりも前に、射的で手に入れたティーガーⅡをギリギリのレベルで魔改造をするプランを練らないとだね……ギリギリの魔改造
をしないと、ティーガーⅡを実戦投入するのはリスクの方が大きいからね。

前途多難なんだけど、此れ位は乗り越えないと!――まぁ、まだ時間はたっぷりあるから確りと準備しないとね!













 To Be Continued… 




キャラクター補足