Side:みほ


この試合もいよいよ佳境に入って来たね?
高校選抜も大学選抜も、互いに損失を出しながらも主力部隊は略健在だからね――それだけに、大後さんとエリカさんのお姉さんを撃破出来たのは可
成り大きな戦果だよ。
特に大後さんは私の戦車道とは相性最悪の天敵とも言える存在だしね。



「妹隊長だったら、相性最悪の天敵であっても別に問題なく倒しちゃうんじゃないかと思う件について如何よ梓?」

「其れは……御免ツェスカ、若干じゃなくて大幅に否定出来ない。
 こう言ったらなんだけど、西住隊長の戦車道の前には相性とかそんなモノは一切意味がないから……ぶっちゃけて言うと、相性の悪さなんて言うモノ
 は、宇宙の彼方まで蹴り飛ばしてるから。
 無理を通して道理を蹴っ飛ばすのが西住隊長の戦車道だから。」

「何それ怖い。そして、其れを否定出来ないのが更に怖い。」

「なんだか言いたい放題言われてるけど、私自身否定出来ないのが何とも……お姉ちゃんが居なくて、私が西住流の後継者だったら絶対に叱られて
 ると思うし。」

でも、私以上に凄いのって梓ちゃんだよ?
こう言ったらなんだけど、私の勘とか、思い付きが大部分を占めてる私の戦車道をマニュアル化して、明光大付属中戦車道の基本にした訳だし……多
分だけど、個人の才能によるところが大きい戦い方をマニュアル化したのって梓ちゃんが世界で初めてなんじゃないかな?



「何よ其れ……師匠が化け物なら弟子も化け物って事?」

「其れを考えると、中学三年の時の全国大会でその化け物である私を倒したツェスカもまた化け物って事になるのかな?」

「つまり、今此処には戦車道に於ける化け物が三匹も集まってるって事ね……は~いどうも、化け物三女です。」

「化け物次女です。」

「化け物長女です♪」

「「「三人揃って、化け物シスターズでーす。」」」


はい、バッチリ決まったね♪
と、悪ふざけは此処までにしてと……何処で愛里寿ちゃんと戦おうかな?去年の遊園地と違ってフィールドの広さは市街地の方が上だけど、観覧車み
たいな大掛かりな攻撃は出来ないからね?
そもそも、市街地の何処でエンカウントするかも分からないし、エンカウントした場所で出来る戦術を取るのがベターかな。……出来れば駅前での戦い
に持ち込みたい所だけど。

でもその前に、最後の仕込みを終わらせておこうかな。――市街地戦で、市街地にある施設を使っちゃいけないって言う規定は無い訳だしね♪










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer223
燃えたろ?寧ろ燃えるべき!です!』









No Side


市街地戦が始まり、互いに損失を出した高校選抜と大学選抜だが、フラッグ戦である以上、フラッグ車が無事であるのならば残存車輌数は究極的には
あまり関係が無いだろう。フラッグ車を仕留めれば残存車輌が一輌でも勝ちになるのだから。
だがしかし、其れはあくまでも究極的に言えばの話であり、フラッグ戦であっても残存車輌が多い方が有利であるのは間違いない。


「一手お願い出来ますか、蛍先輩?」

「Wao、アリサ!久しぶりね~~?OK、相手になってあげるわ!」


なのでエンカウントしたら余程の不利な相性でない限りはオープンコンバットなのだ。
市街地の中央郵便局前で戦闘を始めたのはアリサ率いる小隊と、蛍率いる小隊と言う、サンダースの新旧隊長同士。申し合わせたかの様なバトル展
開だ。
高校時代の蛍に一度も勝った事が無いアリサとしては、今の自分の力をぶつける絶好の機会を得たと言えるだろう。――そして、其れ以上に自分を中
隊長に任命してくれたみほに、見える形で戦果を残したいと言う思いもあるのかも知れない。


「今のアタシはサンダースの隊長じゃなくて、高校選抜の中隊長……サンダースの流儀を守る必要はない!行くわよ!」

「Come on!」


誤解が無いように言っておくと、アリサが蛍に勝てなかったのは、決してアリサが蛍よりも劣っているからではない……サンダースの基本である、『シャ
ーマン部隊で制圧』と言う戦車道では蛍の方がアリサよりも上だっただけであり、サンダースのドクトリンを度外視して戦った場合はどちらに軍配が上
がったか分からないだろう。
其れにそもそもアリサは、正面切って戦うよりも、良くも悪くも策を弄して戦う方が得意な訳で、そう言った意味では『ルールに違反しなければ何でもあ
り』なみほの戦車道の方が肌に合っていると言えるのだ。
そんなアリサが、何でもありの市街地戦を行ったらどうなるか?


「ちょ、ちょっとアリサ攻撃がHard過ぎないかしら!?Excitingだけど!!」

「なら良いじゃないですか?どんどん行きますよ、どっせーい!!」


其れは、水を得た魚の如く大暴れだ。
中央郵便局付近と言うのはスクランブル交差点があるのだが、その交差点は後から整備されたものであり、横断歩道が作られる前までは移動に使わ
れていた大きな歩道橋があるのだ。
横断歩道が出来た今も、信号待ちをしたくない人が使っているのだが、横断歩道があるのならば其れを市街地戦に利用しない手はない。
アリサ率いる小隊は、歩道橋に備え付けられている車用の信号機や道路の案内板を落として攻撃し、マンホールを砲撃でぶっ壊して地面にクレーター
を作ったり、路駐してある車を弾き飛ばして蛍の戦車にダイレクトアタックさせたりと正にやりたい放題し放題。


「今はサンダースの隊長である必要は無いから、アリサ本来の力が発揮されてるとでも言うの?……まさか、あの子が此処までみほの戦車道とバッチ
 リ相性が良かったとは予想外だったわね。」


リミッターが解除されたアリサに蛍は思わず身震いした……サンダースの隊員、サンダースの隊長である事がアリサの真の実力に蓋をしていたのだと
言う事に気付いてしまったからだ。
良くも悪くも勝利に貪欲なアリサこそ、何でもありの『みほ流』が合っていたのだ。


「そう言えば蛍先輩は、エクレールと付き合ってるんですよね?」

「え?えぇ……エクレールとは付き合ってるけど、其れが如何かしたの?」

「チクショー!なんでアタシには相手が居ないのよ!如何してタカシはアタシに振り向いてくれないのよ!アタシのどこがダメだって言うのよ~~!!」

「……ハイ?」

「隙ありぃぃぃぃ!!」

「しまった!!」


更に此処で、自虐ネタを曝して蛍を呆気に取らせると、その隙を突いてみほ流奥義の一つである『歩道橋落とし』を使って、蛍の小隊の上に歩道橋をそ
のまま叩き落す!
キューポラの中に入れば特殊カーボンが守ってくれるだろうが、如何にパーシングと言えども巨大なコンクリートと鉄の塊が上から降って来たら堪った
モノではない……特に上面は戦車の弱点の一つでもあるのだから。


――ドゴォォォォォォォン!!

――キュポン!



『大学選抜、パーシング三輌、行動不能!』


歩道橋の瓦礫に埋まった蛍の小隊は白旗判定になり完全壊滅!
己の心の傷を自ら抉る自爆技を持ってして蛍を撃破したアリサは天晴と言えよう……果たして己の傷を曝す事の出来る人間がどれ程居るのか考えれ
ば、アリサのした事は称賛に値するってモンだ。


「はぁ……いっそタカシは諦めて、みほが勧めてくれたように、同性に可能性を求めた方が良いのかしら?……最近割とガチで、其れもアリかって思う
 ようになって来てるし。」

「もしそうであるのなら、私などは如何でしょうアリサさん?」

「へ?クラーラ?え、アンタ何言ってるの?」

「同性もアリと言うのならば、アリサさんの相手に立候補しようかと思いまして。
 こう言っては何ですが、ロシアのレズビアンやバイの女性は気の強い女性を好むんです……そして私もその御多分に漏れず、気の強い女性が好み
 なんですよ。……アリサさんは気が強くて可愛いので、私好みですし。」

「……真に幸せになりたいのなら、自分が好きな人よりも、自分を好きな人と一緒になりなさいって言葉があったわね……クラーラ、アタシで良いの?」

「アリサさんが良いんです。」


んで、なんか新たなカップルが誕生したっぽかった。――アリサはノーマルだと思ってたが、矢張り戦車道女子の御多聞に漏れず、最終的には百合の
道に進んだらしい。
だがそれは其れとして試合は続く訳で……


『高校選抜、ARL-44、チャーチル、マチルダ、行動不能。』


高校選抜側も、エクレール、オレンジペコ、ルクリリが撃破されてしまったようだ。
試合展開はまさにどちらも退かない一進一退ならぬ一進一進!!やられたらやり返すの撃滅上等の市街地戦!砲撃音が響く度に、信号機が落ちて
電柱が圧し折れ、コンビニが粉砕!玉砕!!大喝采!!!
高層ビルなんかは速攻で瓦礫の山に早変わり!9.11の同時多発テロも真っ青なビル崩壊を見せているのだ。――みほ流の市街地戦は矢張り恐ろ
しい事この上ない。


「グァッデーム!
 此れがみぽりんの戦車道だ!よく見とけオラ!大学選抜?高校選抜だけ見てりゃいいんだ!ファッキン!!」

「魅せ方って言うのを良く分かってるよね。みほちゃんが女子レスラーだったら、俺はスカウトしてたかもしれないな。」


観客席では黒のカリスマが絶好調で、その親友の天才がこんな事を言ってとか……この二人に認められるとか、本気でみほは凄いと言わざるを得な
いだろうな。


「引退した身なのに、あの子の戦車道を見ると戦車乗りとしての血が騒ぐわ……貴女達もそうでしょう、千代、好子?」

「そうね……血が騒ぐわ。」

「俺もマジで血が騒ぐぜ……また、学園祭のイベントで戦う事が出来ると良いな。」


そして、しほと千代と好子もまたみほの戦車道に戦車乗りとしての血が騒いでいた……引退した者の血を騒がせる時点で、みほの戦車道の質の高さ
が分かるってモンだ。――引退した戦車乗りの血を再び騒がせる事の出来る戦車乗りなど、世界中を探しても稀だからね。


「でも、其れもそろそろ終わりの様ね。」


そう言ってしほが目を向けたオーロラヴィジョンには、みほ率いるパンター軍団と、愛里寿率いる小隊が駅前でエンカウントした映像が映し出されてるの
だが、映し出された映像に観客は息をのんだ。
何故ならば映像に映っていたパンターは、全てがアイスブルーのカラーリングになって、フラッグ車である事を示すフラッグを立てていたのだから。
そして此れこそがみほの切り札だ。
みほは、『市街地戦で市街地の施設を利用するのは反則ではない』と言うのを利用し、市街地にあった車の塗装工場を使い、梓とツェスカのパンターも
自機と同じアイスブルーに塗り替え、更にフラッグ車の証の旗を立ててフラッグ車の偽物を作ったのだ。
フラッグ車の分裂による、敵部隊の混乱を狙ったのである。――隻腕の軍神の戦術はどこまでも深いみたいだ。








――――――







そんな、三輌のフラッグ車と対峙した愛里寿とまほと千代美の小隊だが……


「みほさんが分裂した?……相手にとって不足はない。」

「みほが三人で嬉しさ三倍だな。」

「西住、大学の奴が其れを聞いたら色々アレだから私以外の人の前で絶対に言うなよ?」


以外と冷静さを保っていた……まほの発言が若干危険ではあるが。
此の三人はみほの戦いを既に経験しているので、『フラッグ車の増殖』位ではもう驚かないのだろう。――確かにみほの此れまでの戦い方を考えれば
フラッグ車が増えた程度で一々驚いていては身が持たないのかも知れない。
とは言え、本物のフラッグ車を撃破出来る確率は三分の一……普通に考えたら有り得ない事と言えるだろう。普通はフラッグ車は一発で見分けが付く
モノなのだから。


「なんだ、あんまり驚いてくれないみたいだね?つまらないなぁ……」

「流石に此れまでトンデモ戦術やり過ぎましたかね?」

「最早感覚がマヒしてるって事?ドンだけよ其れ……」


だが、何と三輌のパンターのキューポラが開き、其処から車長であるみほと梓とツェスカが姿を現した。


「「「え?」」」


此れにはまほも千代美も愛里寿も驚く。
せっかくフラッグ車を偽装したと言うのに、車長が姿を現したらどれがフラッグ車なのか一発で分かってしまうからだ――だが、だからこそ考えてしまう
のだ、『何かあるのではないか?』と。


「みほ……フラッグ車の偽装をしておきながら車長が姿を見せるとは、一体如何言う心算だ?
 お前が姿を見せてしまったら、本物のフラッグ車がドレであるのか教えているのと同じだろう?」

「そうだね……だけど、私が乗ってるパンターは本当にフラッグ車なのかな?」

「……!」

「みほさん……まさか!?」

「そう言う事か……!」


そして、実際に姿を見せたのもみほの作戦だったらしい。
外見の偽装によって、『搭乗員が分かれば』と無意識に思わせた所で姿を現し、相手が『フラッグ車はドレか分かった』と思ったところで、『私が乗ってる
のがフラッグ車とは限らない』との揺さぶりをかける。
外見の偽装が『表の三択』を迫るモノであるとすれば、己の姿を晒すのは『裏の三択』と言えるだろう……同じ性能の戦車だからこそ可能だった表裏の
三択は、迫られた方からしたら可成りきついモノが有るだろう。
同じ戦車だけに、搭乗員がマルっと入れ替わっても何ら問題が無いのだから。


「でも此れも、お姉ちゃん達を惑わすための嘘かもね?」


更にみほは揺さぶる。
まほも千代美も愛里寿も、戦車道ならば一流だが、こう言った心理戦はあまり得意ではない――戦車道での心理戦は兎も角、こう言ったギャンブル的
な駆け引きは得意ではないから余計に刺さる感じだ。


「確かにそうかも知れない……でも、其れなら全部倒せば良いだけ。全部倒せば確実にフラッグ車を撃破できるから。」

「ふふ、そう来るか愛里寿ちゃん……そう言うのは嫌いじゃないよ。
 其れじゃあ始めようか?鉄と油と火薬に塗れたパーティを!!」


だが、愛里寿は『どれが本物か分からないなら全部倒せば良い』との結論に至り、そしてみほのセリフを合図に戦闘開始!!
場所はみほが望んだ駅前と言う事もあり、最初から手加減なし!
普通の戦車戦なんぞ行われる筈もなく、信号機が落とされ、駅のバスターミナルに停まっているバスが吹っ飛び、駅ビルのガラスが砕け散る……裏技
使い放題である。
去年の観覧車の様な大仕掛けこそ無いとは言え、絶えず戦車砲以外の攻撃にも気を回さねばならないと言うのは、如何にみほと戦った事が有るとは
言ってもキツイモノが有るだろう。


「其処!!」

「どわあ!お前何処から現れた!?」


其れに加えて厄介なのが梓だった。
みほとツェスカが頭上からの落下物攻撃を行う隙を埋めるかのように戦車戦を仕掛け、別方向からのプレッシャーを与えて来るのだ――それも、ベスト
なタイミングでだ。
しかも狙って来るのはフラッグ車であるセンチュリオンではなく、まほのパーシングか千代美のチャーフィー……フラッグ車の護衛を減らそうとしてくるの
である。
其れがかえってまほと千代美の精神を削る事になっているのだ。――意識外からの攻撃を何度も喰らえば精神的に辛いからね。


「トラップ発動!『残骸爆破』!!」

「へ?どわぁぁぁぁぁあぁ!!」

「安斎!!」



――キュポン!


『大学選抜、チャーフィー行動不能。』


此処で遂に千代美が脱落!
みほとツェスカの落下物攻撃を回避しようとしたところに、梓が此れまでの戦闘で発生した瓦礫に砲撃してその欠片を飛ばして動きを止め、其処に見事
に歩道橋だったコンクリートの塊が直撃したと言う訳だ……目の前にコンクリートの塊が落ちて来た千代美が絶叫したのは仕方あるまい。


「(直接的ではないとは言え安斎を撃破するとは……此れは、澤の蓋が開き始めたか?)」


千代美が撃破されたのを見たまほは、其れをアシストした梓の蓋が開き始めたのを感じずにはいられなかった……みほの弟子で、みほの凄さを誰より
も知っている梓だからこそ無意識にしてしまった己の才能の蓋をだ。
その蓋が開き始めたと言うのはつまり、みほ以上の戦車乗りが誕生するかもしれないと言う事であり、此の状況ではあまり喜べるものではないだろう。


「なかなか面白い事になってるじゃない!私も混ぜなさいミホーシャ!」

「仲間外れは少し酷いですよ?」


千代美が撃破され、大学選抜が不利になったかと思った瞬間、其処に優子と奈緒が現れ戦闘に加わる。数の上では、此れで大学選抜にアドバンテー
ジが出来たと言えるだろう。
だが――


「ガァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


此処で高校選抜の切り札とも言える暴走エリカが大乱入!!白目を剥いて口から煙が出てるとかマジ怖いわ!!てか、口から煙って本当に人間です
か?……実はオロチの血が混じってたとか言わないだろうな?若干心配だ。
まぁ、其れは兎も角として、暴走エリカが加わった事で数も互角……なのだが、暴走エリカの参戦は大学選抜側にとってはとても有り難くないことだった
だろう。


「ウガァ……ガオォォォォォォォ!!」

「ちょっとエリーシャ!アンタ人じゃなくなってるわよ!?」


暴走エリカは敵とみなした相手には問答無用で襲い掛かるのだ……ある意味で、『大洗の狂犬』の本領発揮とも言えるが、襲われた側からしたら冗談
ではないのだ。
しかも今は、みほによる『市街地を更地にする』と言わんばかりの攻撃が行わているのだ……其処に暴走エリカの攻撃が加わったらマジで半端ないだ
ろう――暴走エリカだけでなく、半覚醒状態の梓も居るのだから尚更だろう。

……みほと言えば、駅前のコンビニを粉砕した際に、爆風に飛ばされたサンドイッチをキャッチして食べる余裕すら見せてるのだが。
マッタク持って常識外れ、戦車道の概念すら破壊しかねない戦いだが……


「楽しい……やっぱりみほさんとの戦車道はとっても楽しい!」

「なら、良かったよ愛里寿ちゃん!」


愛里寿はこの戦いを心の底から楽しんでいた。
島田流の後継者として戦車道の英才教育を受け、その才能をめきめきと伸ばしてきた愛里寿だが、それ故に飛び級で進学した大学でも満足出来る相
手は居なかった……去年中隊長を務めていたバミューダ三姉妹も、愛里寿にはコテンパンにされてたりするのだ。
そんな中で去年みほに出会い、そして己の人生で初めての敗北を知った……其れが愛里寿にとっての刺激になり、みほとの再戦を望ませたのだ。
だからこそ楽しいと、そう思ったのだろう。

みほがバスを吹き飛ばせば愛里寿は其れを躱して反撃し、みほは其れを食事の角度で弾いて決定打を与えさせない……正に手に汗握る試合とは此
の事だろう。


「うぅぅ……キシャァァァァァァァァァァァ!!」

「ちょっと!何とかしなさいよマホーシャ!エリーシャは貴女の後輩でしょ!?」

「そう言われても、暴走したエリカは私ではどうしようもないぞ?恐らくだが私の声も聞こえては居まい。」


……暴走エリカが優子を追いかけてるのが何ともアレだがな。
そんな中でもみほと愛里寿の攻防は続き……


「行くよ、蕾さん!」

「了解ですわみほさん!いっきますわよー!!」


此処でみほのパンターが愛里寿のセンチュリオンに向かって突撃――すると見せかけて戦車ドリフトを行い、センチュリオンの後方を取ろうとする。
だが、愛里寿は此れは一度見た戦術なので冷静に砲塔を回転させてみほのパンターに狙いを定めるのだが……愛里寿は見てしまった。みほの口元
に笑みが浮かんでいるのを。


「此れで終わりだよ!!エミちゃん!小梅さん!梓ちゃん!」

「「トラップ発動、『隠れ兵』!!」」

「マジック発動、『デス・メテオ』!!」


次の瞬間、駅前の弁当屋とモスバーガーがぶっ飛んで中からエミのティーガーⅠと小梅のチャーフィーが現れてセンチュリオンに向かって砲撃を行い、
梓のパンターが伝家の宝刀戦車プレスを敢行!!
まさかまさかの三重奏攻撃を避ける事は愛里寿も出来ず、攻撃はクリーンヒット!!
如何に最強のセンチュリオンとは言え、最強重戦車と名高いティーガーⅠの砲撃と、破格のスペックと言われる軽戦車であるチャーフィーの砲撃だけで
なく、パンターの戦車プレスを喰らったらタダでは済まない……って言うか普通にゲームオーバーだ。


――キュポン!!


『大学選抜、フラッグ車行動不能!よって、高校選抜チームの勝利です!!』


センチュリオンは行動不能になり、フラッグ車の撃破により、高校選抜の勝利で試合は終了だ。


「……最後の最後で試合を決めたのは澤だったか……此れは、面白くなりそうだな。」


そんな中で、まほは実質的に試合を決めた戦車プレスを行った梓に注目していた……最後の一撃で、『蓋は開いた』と確信したのかも知れないな。
何にしても、今年の試合もまた高校選抜が大学選抜を倒すと言う結果になったのだった。








――――――








Side:みほ


ふぅ……勝てたね。
フラッグ車を偽装して、そして梓ちゃんとは搭乗員をマルっと入れ替えたんだけど、其れが最後の最後で功を奏したね……愛里寿ちゃんは私がフラッグ
車だと思ったみたいだったけど、実は梓ちゃんがフラッグ車だった――だからこそ、最後の戦車プレスが巧く行った訳だからね。



「みほさん……私の負けだね。完敗だった……でも、とても楽しかった。」

「楽しかったなら良かったよ愛里寿ちゃん……でも、本当に楽しいのは此れからだよ?」

「え?」

「ペパロニさん。」

「おうよ!テメェ等、準備は良いか!!」

「「「「「「「「「おーーーー!!!」」」」」」」」」



アンツィオ勢が来てる以上、試合後の宴は外せないからね♪
さぁ、此処からは試合後のパーティだから思い切り楽しもう?――試合ではガンガンやっても、試合が終われば仲間って言うのが戦車道だからね。



「話には聞いてたけど此れが……」

「アンツィオ流のもてなしだ。楽しんでくれよ隊長?」

「ん、分かった。」



安斎さんの後押しもあって、愛里寿ちゃんも試合後の宴を心行くまで楽しむ事にしたみたいだね?良い事だよ。
そして、その後の宴はとても盛り上がった。
アンツィオの料理が美味しいのは今更だけど、大学選抜の人達用に用意してたワインを、バミューダ三姉妹ががぶ飲みして酔っぱらって、酔いの勢い
で色んな宴会芸を披露してくれたからね。
まぁ、其れとは別にサンダースが持って来てくれたカラオケマシンでのカラオケも盛り上がった……特に私とお姉ちゃんがデュエットした『奇跡の地球』
は拍手喝采だったからね。って言うか、お姉ちゃんの桑田佳祐パートが再現度が凄かった。

でも、此れで私の高校生活最後の戦車道は終わったね……勝てて良かったよ。こう言うのを有終の美って言うんだろうね。












 To Be Continued… 





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