Side:まほ


稜線を取るギリギリのタイミングで仕掛けてくるとはな……流石はみほだ、此方が『稜線を取れる』と無意識に気を緩めた所を狙って来るとはこの上なく
効果的で、そしてえげつないからな。
並の戦車乗りならば、其れだけでマインドクラッシュされていただろうさ。



「マインドクラッシュって……だがまぁ、確かにみほは相手の心をバッキバキに折るような戦術を繰り出してくるからなぁ?
 私も中学時代、フラッグ車の一騎討ちかと思ってたら土壇場で近坂の奴がド派手に登場して、『此処で伏兵とかアリかマジで!?』と、軽く絶望した記
 憶があるぞ。」

「私も去年の決勝戦、フラッグ車の一騎討ちに誘い込まれたと思っていたら土壇場で小梅が現れたからな……みほと戦う時には本当に一瞬たりとも気
 が抜けん。
 みほの戦車道は『有り得ないと言う事が有り得ない』と言う感じだからな。」

「本当に、アイツと戦っていると戦車道の常識ってのを疑いたくなるぞ。」



うん、その気持ちは良く分かるよ安斎。一体何処の誰が、空から戦車が降って来るのを想像出来るのか……姉の贔屓目抜きで見ても、みほに勝てる
戦車乗りなど、世界規模で探しても両手の指で数えられる程度しか居ないだろう。
ルールを殲滅戦に限定した場合、その人数はさらに減るだろう……残念ながら、私も私だけだったらみほには負けるからな。



「だよなぁ……今年の大学選抜は黄金世代とか言われてるけど、島田姉以外は去年全員みほに負けてるんだよなぁ……だが、だからこそ此の試合は
 勝ちたいけどな!
 単体では勝てなかったけど、力を合わせればきっと勝てる!いや、勝つ!!」

「そうだな。負けっぱなしと言うのは良い気分ではないからな。」

私も安斎も、琳(ダージリン)も蛍(ケイ)も加地(カチューシャ)も、私達の隊長である愛里寿ですらみほには負けているが、逆に言うと今年の大学選抜
は去年とは違ってみほとの試合経験を持つ者が在籍して居ると言う事にもなる。
みほのやり方を知っているのと知らないのでは大きな差があるからな……尤も、知っていてもみほは突拍子もない事をしてくるから油断は出来んが。
本気で、みほに勝てる戦車乗りはそう多くはない……みほに勝てる戦車乗りが居るとしたらエリカと、そして誰よりもみほの戦車道を間近で見続け、其
の全てを受け継いだ澤位のモノだろうな。
特に澤は、己にしている蓋を開ける事が出来たら、手が付けられない戦車乗りになるかも知れないからな。











ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer221
高校選抜vs大学選抜です!!』









No Side


試合開始直後の稜線での攻防は、互いに被害はなかったとは言え、高校選抜側に軍配が上がったと言えるだろう――大学選抜側の作戦を崩し、そし
て部隊をバラけさせる事に成功したのだから。
部隊を細分化すると言うのは、フレキシブルな動きが出来るようになる反面、各個撃破されやすいとも言える諸刃の剣なのだから。

そして其れだけではなく、高校選抜の奇襲攻撃は、大学選抜側に常に奇襲の可能性がある事を擦り込む効果もあった――試合開始直後のフィールド
ならば兎も角、此の擦り込みは市街地戦に入った時に大きな効果を発揮するのだが。
だが、そうであっても常に奇襲を意識すると言うのは精神的にキツイモノが有るだろう……常に気を張って無ければならないのだから。


「く……やってくれたわね……!」

「西住みほ、やっぱりトンデモないわアイツ……!」

「去年は、序盤戦は甘かったけど、今年は最初からアクセル全開って感じね……こりゃ、マリーじゃ勝てない訳だわ。」


そんな中、アズミ、ルミ、メグミの『バミューダ三姉妹』は揃って行動していた。
此の三人は揃ってこそ其の力を発揮出来るので、このチームで行動すると言うのは何もオカシイ事ではないのだが、ハッキリ言って今年の三人は焦っ
ていた。
去年は中隊長を務めていた彼女達だが、今年は中隊長から平隊員に降格になったのだから……特にメグミは、高校時代の後輩である蛍に中隊長の
座を奪われたのだから余計に思う所があるだろう。
何よりも彼女達がショックだったのが、今年の中隊長も去年同様に愛里寿が選んだと言う事だった――去年は島田流の次期頭首に直々に選ばれたと
言う事に歓喜した彼女達だが、今年は一転して島田流次期頭首から、『お前達中隊長クビ』って言われたのと同じだからね、今年も中隊長に選ばれな
かったと言う事は。……まぁ、大学選抜に選ばれただけまだマシなのかも知れないが。


「メグミ、ルミ、必ず戦果を上げるわよ?隊長に、私達の有能さを見せてやりましょ!」

「勿論よアズミ……此のままで終われるもんですか!」

「フラッグ車は、必ず私達の手で討ち取ってやる……!」


だからこそ燃えていた。
去年の大洗女子学園連合vs大学選抜の試合では、遊園地に入ってからは観覧車攻撃やCV-33GPSに苦汁を舐めさせられまったりと、完全にみほに
してやられていたのだから、リベンジに燃えるのは当然と言えよう。
でもって、リベンジ果たして愛里寿に評価して貰おうって思惑もあるのだろう。……寧ろ、そっちが本命かもしれん。


「アンタ達がみほを討ち取るですって?寝言は寝てから言いなさいってのよ。」

「そして、戯言はラリってから言えってな。」

「西住隊長を舐めんでねぇ!」

「「「!!!」」」


だが、そんな彼女達の前に、突如エミと直下のティーガーⅠ二輌と、IS-2の重戦車チームが現れた――IS-2には、去年までのKV-2の乗員であるニー
ナとアリーナが乗っているようだ。


「そんな、何時の間に!?」

「小規模の茂みしかなかった筈なのに……って、まさか!!」

「はい、そのまさかよ!
 戦車に表面に糊を塗ったブルーシート被せて、糊が塗ってある面に小枝やら葉っぱやらをはっ付けて小規模の茂みに見せかけたって訳……トリック
 プレイってのは、市街地以外でも出来るのよ!」


バミューダ三姉妹からしたら突然現れた様に感じた三輌は、実は完全に景色に溶け込んでその存在をカモフラージュしていたのだ……其れは宛ら、擬
態して獲物を狩る肉食昆虫の如しだ。
だからこそ、効果は大きいだろう。擬態に騙されて捕食者に近付いてしまった獲物に、生き残る術はないのだから。


「狩らせて貰うわ、アンタ達の魂ごとね。」


エミがどこぞのナンバーズハンターのようなセリフを吐いた瞬間に戦車戦開始!
戦車の性能で言うのならば、パーシングはティーガーを撃破する為に作られた重戦車なので、ティーガーⅠ相手に有利に戦えるのだが、IS-2相手だと
有利とは言えない。
IS-2もパーシング同様にティーガーを撃破する為に作られた戦車なので、火力と防御力はティーガーⅠを上回っているのだ――砲弾が特殊故に発射
間隔が長く、搭載出来る砲弾の最大数が少ないと言う欠点はあれど、スペックだけを見れば可成りの化け物戦車なのである。
ぶっちゃけて言うと、IS-2の火力ならば、戦車戦になればパーシングの何処に当てても撃破出来るのだ。


「ほらほら如何したの?みほを撃破するんでしょ?アタシ等を倒せないようじゃ、みほを撃破するなんて土台無理な話よ?」

「遠慮しないで来なよ、お得意のアレを、バミューダアタックをさ!」

「クソ……コイツ等……!!」

「高校生の分際で、此処まで!!」

「ヤバいのは西住みほだけじゃないって事ね……!」


そしてバミューダ三姉妹は完全に手玉に取られていた。
完全に虚を突かれたと言うのもあるが、エミ達の連携が余りにも見事だったのだ――エミと直下は常に動き回って的を絞らせないようにし、IS-2が当た
れば必殺となる砲撃を叩き込んでくるのだ。
エミと直下はIS-2の欠点である、『発射間隔が長い』と言うのを、自分達が攪乱する事で補っているのだ。
そして、ただIS-2の欠点を補うだけでなく攻撃だって行っている――此れだけの連携を、事前の打ち合わせなしにやってのけてしまうのだから、恐ろし
い事この上ないだろう。


「喰らえ、太陽拳!!」


更に此処で、エミが閃光弾を炸裂させて大洗女子学園と言うか、みほ流の伝家の宝刀『視界抹殺』を発動!!
直下とIS-2のクルーは、エミが閃光弾を手にした瞬間にアリストトリストブランドのサングラスを装着したので大丈夫だったが、バミューダ三姉妹は閃光
を遮る事が出来ずにスタン!


「く……此れは!!」

「目が、目がぁぁぁ!!」


……何かどこぞの大佐みたいな事を言っているが、視界が効かなくなってしまっては戦車を動かす事は出来ない――車長だけじゃなく、操縦士も視界
を奪われてる訳だからね。
目を瞑って、車の運転しろとかマジで無理ゲー以外の何物でもないから。
だから、如何したって足を止める事に成り、そして動かなくなった戦車と言うのは最早只の的でしかない。


「虎殺しが虎に殺されるってのも、傑作ね?」

「大戦期における傑作重戦車の座は、やっぱ渡せねーんだわ。」

「コイツで、終いだべ!!」


動きを止めた三輌のパーシングに対して、ティーガーⅠの88mm砲、IS-2の122mm砲が炸裂し、装甲をぶち抜いて、粉砕!玉砕!!大喝采!!!
如何に分厚い装甲を誇るパーシングであっても、至近距離から此れだけの火力を叩き込まれたら堪ったモノではないのだ。


――キュポン!!


『大学選抜、パーシング三輌、行動不能!!』


なので見事に白旗判定。
名誉挽回をしようと意気込んでいたバミューダ三姉妹は、名誉挽回をする所か大学選抜側初の被害となってしまったのだった……何とも、哀れ極まり
ない結果となってしまった訳だ。


「こんな馬鹿な……私達が負けるだなんて……!」

「現実を受け入れなさい?アタシ達の方がアンタ達よりも強かった、只それだけの事よ。」

「「「グッハァ!!」」」


そんなバミューダ三姉妹に対し、エミは『死体蹴り』とも言える追撃をブチかます……いやまぁ、確かに其の通りなんだけど、この一撃はバミューダ三姉
妹にはキッツイだろう。……アズミもルミもメグミも盛大に血を吐いてキューポラに倒れ伏しちゃった訳だからな。


「中須賀、アンタ容赦ないな?」

「アンタだったら容赦した直下?」

「いや、する筈ないじゃん。」


取り敢えず、エミも直下も相手には容赦しない方向らしい――みほの幼馴染のエミと、みほ率いる遊撃隊の一員だった直下が、相手に対して容赦する
なんて事は有り得ないわな。
何にしても、稜線での攻防に続き、戦車の撃破に於いても高校選抜が先手を取った形になったのだった。








――――――








だが、だからと言ってやられっぱなしの大学選抜ではない。


「安斎、其方を頼む!」

「任せとけ西住!!」


まほと千代美のタッグは、エンカウントしたアリサ・ルクリリ・エクレールのチームと交戦を開始し、車輌数では劣っているにも係わらず、戦車戦を有利に
進めていた。
ドイツへの留学で実力を底上げして来たまほと、そのまほが『生涯唯一の好敵手にしてパートナー』と認めた千代美のタッグは、大学戦車道界隈で『最
強タッグ』との呼び名も高い……重戦車の圧倒的な火力で制圧するのを得意とするまほがパーシングに乗り、機動力で相手を攻めるのを得意としてい
る千代美がチャーフィーに乗ってると言うのも、此のタッグを更に強力にしていると言えるだろう。


「だぁぁぁぁ!何だってこんな所で西住まほとエンカウントするのよぉ!今日のアタシの星座占いって第三位だったのに!!」

「ゴメン、此れ多分アタシのせいだ。今日のアタシの運勢、最下位!」

「序に私は下から二番目ですわ。」

「アンタ等のせいかい!!」


この大学最強タッグを前に、アリサ達は被弾しない様にするのが精一杯だった……と言うか、M4シャーマンとマチルダ歩兵戦車ではパーシングの装甲
を抜く事が出来ないのだ。
一応アリサの乗っている76mm砲搭載型ならば、徹甲芯弾を使えば正面装甲を抜く事が出来るが、徹甲芯弾は『威力が高すぎて特殊なカーボンすら
貫通する恐れがある』との事から、戦車道では使用が禁止されているのでやっぱ無理なのである。
ARL-44の90mm砲ならばパーシングも撃破可能だが、『重戦車を扱わせたら右に出る者は居ない』とまで言われているまほと真面に戦車戦を行おうと
は思わないのが普通だ。
『だったらチャーフィー狙えば?』とも思うだろうが、チャーフィーはこの中ではダントツに機動力がずば抜けている為、シャーマン、マチルダ、ARL-44で
はその動きに付いて行く事が出来ないのだ。
……そんな圧倒的に不利な状況であるにも拘らず、此の状況に陥ってしまったのをルクリリとエクレールの『本日の星座占い』の結果のせいにしちゃっ
てる辺り、まだ余裕があるようにも見えるが。


「あ~~、もう如何しろってのよ!
 考えなさいアリサ……みほに中隊長に抜擢された以上、無様は曝せないわ――勝てないまでも、負けない策を……勝てなくても負けない――よし。
 西住まほ!安斎千代美!」

「「?」」


とは言え、此のまま戦車戦を続けたら何時かは消耗させられた挙げ句に磨り潰されてしまうと考えたアリサは、何を思ったのかキューポラから身を乗り
だし、更には何の為に積んでたのか分からないが拡声器を取り出し……


「同性とは言え、相手が居るからっていい気になるんじゃないわよ!!
 アタシだって!アタシだって絶対に良い人見つけてやるんだから!サンダースは日本最大級のマンモス校で生徒も多いんだから、必ず卒業までに相
 手を見つけてやるわ!!」


果てしなく戦車道とはマッタク関係ない事を絶叫してくれた。
マッタク関係ない事ではあるが、行き成りこんな事を絶叫されたまほと千代美は完全に虚を突かれ攻撃の手が止まってしまった……マッタク関係ない
事だからこそ呆気に取られてしまった訳だ。


「隙あり!喰らえ!!」


――ボウン!!


その隙を逃さず、アリサは発煙筒を投げるとその煙に紛れてルクリリ、エクレールと共に戦線を離脱――マッタク持って凄まじい自爆技とも言える一手
で窮地を脱したのだ。
隊長、車長としての能力は前隊長のケイには劣るアリサだが、土壇場での閃きとなりふりの構わなさはケイ以上であり、『負けない戦い』をさせたら、も
しかしたら高校戦車道でもトップクラスなのかも知れない。


「逃げられたか……実力は私達の方が上だが、巧さに関しては彼女の方が上だったみたいだな?」

「マッタクだな……見事にしてやられたが――」


『高校選抜、M4シャーマン二輌、九七式中戦車新砲塔型、行動不能。』


「他の連中が成果を上げてくれたみたいだな……加地と野島かな?」

「かもな……アイツ等は卒業しても相変わらずの名コンビだからな。」


如何やら別の場所では他の大学選抜メンバーが、アリサ以外のM4シャーマンと玉田の九七式を撃破したらしかった――此れで残存車輌数はタイとな
ったが、試合形式がフラッグ戦である以上、残存車輌数と言うのは余り意味をなさない。
ぶっちゃけて言うのならば、フラッグ戦は残っているのがフラッグ車一輌であってもそのフラッグ車で相手のフラッグ車を撃破してしまえば勝ちになると
言う一発逆転が有り得る試合形式なので、大切なのは残存車輌数よりも如何にしてフラッグ車を撃破するかなのだ。
因みにだが、戦車道ファンの間ではフラッグ戦は殲滅戦よりも圧倒的に人気の試合形式だったりする――殲滅戦は、戦車の性能で略勝負が決まって
しまうのに対して、フラッグ戦は戦車の性能だけでは決まらない所があるからな。意外なジャイアントキリングが起こりうるフラッグ戦の方がファンとして
もドキドキなのだろう。


「とは言え、フラッグ車を叩かねば勝つ事は出来ん……安斎、市街地に向かうぞ。」

「市街地って……みほ相手に市街地戦をする心算かお前?」

「みほを市街地から引き摺り出す事は出来るだろうが、其れをやろうとしたらみほを引き摺り出すまでに此方が甚大な被害を被る可能性がある……な
 らば、戦力が充分にある状態で市街地に乗り込む方が遥かに上策だ。」

「『虎穴に入らずんば虎子を得ず』って事か……みほが相手だと、虎穴に入ったらゴジラが出たって事になりそうなんだけど如何よ?」

「甘いぞ安斎……出て来たのはゴジラではなく、百体を超えるゴールデンフリーザ様だ。」

「何その絶望!?」


絶望通り越して悪夢だ其れは。崖の上に現れた百体を超えるメタルクウラ以上の絶望と悪夢だろ其れは……まぁ、確かに市街地でのみほはフリーザ
様も真っ青なラスボスと化すけどな。
そしてそのラスボスのお供には梓とエリカと小梅とエミの中から二人がランダムに選ばれて現れるだろうからね……隻腕の軍神は本気でハンパないと
言わざるを得ないだろう。


「隊長、此れより私と安斎は市街地に向かう。フラッグ車を撃破する。」

『了解した。
 では、私も市街地に向かう……私もみほさんと戦いたいから。』



まほが愛里寿に市街地に向かう旨を伝えると、愛里寿もまた市街地に向かうと来た……愛里寿からしたらみほと戦える絶好の機会なのだから、逃す
手はなかった訳だ。
そして同時に其れは『大学最強チーム』が市街地にて結成される事を意味していた。
大学選抜チームの隊長である愛里寿と副隊長兼中隊長のまほと、中隊長の千代美が一つになったチームなのだから――若しかしたら、此処にもう一
人の中隊長である蛍も加わるかもだ。

序盤のフィールドでは互いに三輌を失ったが、しかし本番は市街地だ。
市街地戦となればみほが率いる高校選抜が圧倒的に有利だが、だからと言って大学選抜だってそう簡単にはやられはしないだろう――通常の市街
地であれば、去年の遊園地の様な奇抜な作戦は流石にないだろうからね。


『此方アリサ、市街地への誘導は取り敢えず完了したわ。』

『此方西絹代!西住隊長、市街地への誘導、完了いたしました!』


「アリサさん、西さん、お疲れ様……さて、本番は此処からだね。」

「そうですね、西住隊長……高校戦車道の底力、見せてやりましょう!!!」

「頼りにしてるわよ、妹隊長……!!」


だがしかし、アリサと絹代から市街地への誘導が完了したとの報告を受けたみほはその顔に笑みを浮かべていた……其れも、JKが浮かべてはいけな
い『ダークな笑み』をだ。
市街地戦になればみほが十全に其の力を発揮出来るのだから、大学選抜チームを市街地に誘導できたと聞けば、そんな笑みを浮かべてしまうのも仕
方ないのかも知れないがな。
だが、そんなみほのチームは可成りガチだった。
みほと梓の師弟タッグに、黒森峰の次期隊長であるツェスカが加わっているのだ――詰る所、大戦期最強の中戦車と言われたパンターが此処に三輌
も揃ったと言う訳である。
攻守速を高い水準で纏めたパンターは、中戦車の中だけでなく、戦車道で許可されている戦車の中でもトップクラスの性能を備えた戦車と言えるだけ
でなく、其れに乗っているのは隻腕の軍神であるみほと、そのみほの一番弟子の梓と、その梓のライバルであるツェスカなのだ――此れは間違いなく
高校選抜最強チームと言えるだろう。
まぁ、大学選抜が市街地に入ったと同時に高校選抜も市街地入りしたので、本番は正に此れからなのだろう。


因みに……



「田尻!今日こそここでアンタをぶっ倒すわ!!」

「エリカさん……そうは行きませんわ。逆に返り討ちにして差し上げましょう。」

「やってみな……アンタにゃ無理だと思うけどね田尻。」

「誰が田尻ですの誰が!!田尻ではなく。大後ですわ!!」

「誰がって……お前ー!m9(^Д^)」

「こらこら、其れは言い過ぎだよエリカ?……ダージリンはからかい甲斐があるから、気持ちは分からなくもないけどね。……ダージリンってば、良い反
 応をしてくれるからからかい甲斐があるのよね。」

「アールグレイ様!?貴女どっちの味方ですの!?」

「難しい質問ね其れは……アンタをからかう事に関しては、取り敢えず私はアンタの敵だーー!!」

「自信満々に言わないで下さいまし!!」


エリカチームと琳チームの間でこんなやり取りが成されていたとかなんとか――取り敢えず分かった事は、逸見姉妹はダージリンを弄り倒さぜずにはい
られないって事だろうね。恐るべし逸見の遺伝子である。
其れでも琳は撃破される事なく市街地に到達したのだから大したモノと言えば大したモノだろう――尤も、辿り着いた市街地では、地獄すら生温いレベ
ルの市街地戦が発動するのは確定事項だけどね。


「さて、其れじゃあ私達も動こうか梓ちゃん、ツェスカちゃん?」

「そうですね、動きましょう。」

「この動きに、どう対応して来るかね。」


そんな中でみほは梓とツェスカを連れて市街地に繰り出す――しかも見晴らしの良い駅前にだ。一切視界を遮るモノが一切ない場所と言うのは一見不
利に見えるかも知れないが、みほが此処を選んだのならば此処が決戦の地になる事だけは間違いないだろう。












 To Be Continued… 





キャラクター補足