Side:みほ


エキシビジョンでの勝利に水を刺す形で告げられた『大洗女子学園廃校』の一報……此れには、私だけじゃなくて戦車隊の皆が愕然としてたけ
ど、其れは当然の反応だよ。
優勝すれば、廃校は撤回になる……其れを信じて戦って来たのに、其れが反故にされたんだから。
だけど会長さん、優勝すれば廃校になるって言うのは確約されてたんじゃないんですか?……ボイスレコーダーで、その時の会話も記録されて
るんですよね!?



「確かに記録されているけど、アレは辻局長個人がその場で決断した事であって、文科省の総意と言う訳ではないので無効だそうだ。
 無論、全国大会優勝と言う成績は加味して考えはしたが、1度の全国制覇ではマグレと言う可能性を捨てる事は出来ず、学園の実績として認
 める事は出来ないらしい。」

「……ふっざけんじゃないわよ!!
 何よ其れ!勝っても負けても、大洗は廃校になる事が決まってたって言うの?……だったら、私達の戦いは一体何だったの?……絶対王者
 である、黒森峰を下して手にした優勝は何だったのよ!!」



――バキィィィィ!!



うわぁ、エリカさんが怒り任せに殴った壁が割れたよ……結構頑丈な素材を使ってるにも拘らずね……じゃ、なくて、大洗の廃校は決まってしま
った事なんですね、会長さん?



「スマナイ……西住ちゃん達の頑張りを無駄にする事になってしまったのは、本当に申し訳ないと思っている。
 私も考えが甘かった……会話の録音だけでなく、互いに記名捺印した書類を作っておくべきだった……其れが有れば、此処までの事にはなら
 なかったかもしれないからね――本当にスマナイ。」

「会長さん……」

顔をあげてください。
確かにこんな事になってしまったのは、納得できませんけど、だからと言って此れで終わりとするのはまだ早いと思うんです――何を如何すれば
良いかなんて全然分かりませんけど、足掻くだけ足掻いてみましょうよ?
悔いるのは、其れが終わってからです。



「西住ちゃん……確かに其の通りだね――足掻くだけ、足掻いてみるとしようじゃない!!」

「そうです。其れでこそ会長さんです!!」

如何やら、文科省のお偉いさんは、如何しても大洗を廃校にしたいみたいだけど、そうは問屋が卸さないよ――何よりも、隻腕の軍神と言われて
いる私のホームタウンを奪われる訳には行かないからね。










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer145
『こんな事は、絶対に許せないです!』










取り敢えず、その日は其処で解散――戦車まで取り上げられるって言う話だったけど、アイスブルーのパンターと、漆黒のティーガーⅡは私が持
ち込んだ私物だから接収はされないみたいだね。
だからと言って、大切な戦車を取り上げられるなんて言うのは、黙って見てられる物じゃないんだけどね。

でも、あの後会長さんから聞いた話の中に、どうにも腑に落ちない部分があるなぁ?……何で今年一杯での廃校が、8月31日付けでの廃校に
前倒しされるんだろう?
夏休み終了と同時に廃校だなんて、夏休みも残り僅かになってる事を考えると、大洗女子学園の生徒の編入先を都合する期間が短すぎるだけ
じゃなく、編入先の学校の準備だって間に合わない筈だよ――幾つかにバラけさせるとは言え、其れでも結構な人数になる訳だから。

文科省の人なら、其れ位の事は分かってると思うんだけど、その辺についてエリカさんと小梅さんは如何思う?



「そうね……ブラックな事を言わせて貰うなら、文科省の役人かもっとお偉いさんが船の解体業者と癒着してる可能性があるわね。
 既に大洗の廃校は決定されていて、癒着業者に仕事を回す代わりに裏金を受け取ってるとかしてたら、何が何でも大洗は廃校にしなくちゃな
 らないし、廃校の前倒しは、可成り大きく報じられる上に各所からのバッシングも受けるでしょうけど、世間様の目を其方に向けて、業者との癒
 着から目を逸らすのが目的かも知れないわね。」

「うわぁ、其れが本当だとしたら本当にブラックですねぇ?
 でも、そうだとしても文科省の大臣が其れを決めたとは思えません――文科省大臣の馳浩氏が政治家になったのは私達が生まれる前ですけ
 れど、父に聞いた話だと政治家になってから只の一度も不祥事もスキャンダルもない人らしいので。
 父曰く『あれ程真面目に政治家をやってる人間は、他には居ない』との事ですから。」

「となると、さっきのモノクルのオジサンが大洗廃校の黒幕って見て間違いないかな。」

だとしたら、あの人は文科省大臣よりも上の権限を持ってる事になるんだけど、あんな人テレビで見た事ないから……恐らくだけど、既に表舞台
からは退いたけど、未だに文科省に対して強い影響力を持つ人って所かな?
あの人のコネで文科省に入った人が結構いるとか、そんな感じの。



「あり得るわね……ったく、汚い大人の事情で人の居場所奪うんじゃないわよマッタク。
 みほ、貴女の中学時代の仲間であるアノ3人が大洗に居たら、間違いなくパンターで文科省に突撃かましてたんじゃない?……こう言っちゃな
 んだけど、あの3人と一緒だと、貴女も結構はっちゃけるだろうし。」

「あ~~~……うん、その可能性はスッゴク否定できない。」

今のあんこうチームも良いんだけど、やっぱり中学時代のチームはナオミさんとローズヒップさんが戦車道経験者だったって言う事も有って、可成
りやり易かったのは事実だから。
って言うか、ナオミさんは兎も角ペパロニさんとローズヒップさんは間違い無く文科省にカチコミかけてたと思うな、うん。

でも、今は其れも出来ない……私達、どうなっちゃうんだろうね?
お婆ちゃんの西住流に『NO』を突き付けて黒森峰を飛び出して大洗に来て、其処で新しい仲間と、全く新しい戦車道を始めて自分の戦車道って
言うモノを見つけたと思ったのに、其れを見つけた場所がなくなるなんて……

何よりも、大洗が廃校になったら、二度とあのメンバーでの戦車道は出来ないんだよね。



「……でしょうね。
 少なくとも私達3人は、古巣である黒森峰に戻される可能性が高い訳だし――まぁ、澤辺りは貴女の事を追って、無理をしてでも黒森峰に来る
 かも知れないけどね。」

「それ以外のメンバーは、きっと散り散りになってしまうと思います。」

「やっぱり、そうなるよね……」

折角、大洗の皆と戦車道を楽しむ事が出来たのに、其れがこんな形で終わっちゃうなんて言うのは、なんか嫌だな。――勿論、諦める心算はな
いけど、今の所何か策がある訳じゃないからね。

……ねぇ、エリカさん、小梅さん、学校に行ってみない?



「みほ?」

「みほさん?」

「もしかしたら、見納めになるかも知れないから、私達の第2の母校、ちゃんと見ておきたいんだ。」

「そうね……そう言うのもアリね。」

「幸いにして、荷物は纏め終わりましたから、行ってみましょうか?……尤も、夜の学校である以上、何か出るかも知れませんけれど。」



確かにそうかも知れないけど、怖い事を言わないでくれるとありがたいかな小梅さん。――だけど、私達の第2の母校である大洗女子学園の姿
は、学園艦を去る前に見ておかないとだからね。








――――――








Side:優花里


はぁ、大洗が廃校になるとか、一体どんな悪夢でありますか……夢なら覚めて欲しい限りであります――と言うか、西住殿達と力を合わせて『絶
対王者』である黒森峰を倒して優勝したのに、廃校になるだなんて納得できないでありますよぉ!!
とは言え、現状で私に出来る事など何もないのでありますがね。



「陸に戻ったらどうすればいいんだ?そもそも店は続けられるのか!?」

「大丈夫よ、お父さん。」

「何が大丈夫なんだ!
 今までは学園艦のお客さんが居たが、陸に戻って新たに店を開いたとしても、お客さんが来てくれる保証なんて無いんだぞ!!其れを考えた
 ら大丈夫だなんて言えないだろう!!
 最悪の場合は、一家揃って路頭に迷う事になるんだぞ母さん!!」

「だから大丈夫だって。きっと何とかなるわよ。」

「そうは言っても母さん!!」

「大丈夫だっつってんだろうが!其れとも、テメェはオレの言う事が信じられねぇってのか淳五郎!!
 大体テメェは、秋山家の大黒柱だろうが!!その大黒柱がドッシリ構えてなかったら、巧く行くモンも巧く行かなくなるだろう、此の馬鹿野郎!
 其れにだ、大洗廃校の話は、遠からずしほや千代の耳にも入るだろ……こんなフザケタ事を聞いて、あの2人が黙ってる筈がねぇんだ――絶
 対に、この状況を何とかしようと動く筈だ。
 何よりも、戦車道の競技者ってのは仲間意識ってのが強くてな?特に一度でも戦った事のある相手には、不思議な友情みてぇなモンを覚える
 モンなんだ――今年の大洗は、練習試合を含めりゃ高校戦車道の有名所全てと何らかの関わりを持ってる。
 となれば、そいつ等が大洗廃校の事を知れば、ヤッパリ黙ってるとは思えねぇ――だから、絶対何とかなる!分かったか!!」

「よ、よく分かったけど、興奮すると昔の調子に戻るのは何とかならないのか母さん……」

「あ……コホン。
 分かってはいるんだけれど、気持ちが昂るとついね?……大洗の荒熊は、中々牙が抜けてくれないらしいわ。」



お母さんとお父さんは、ある意味で平常運転でありますなぁ?
まぁ、お母さんが昔は戦車乗りで、大洗の戦車道の隊長で、更に当時の大洗所か戦車道を通じて全国に名を轟かせていたスケ番だった事には
人生16年目の大ショックでありましたが……其れだけに、お母さんの言う事には説得力があります。
確かにこの事を、しほ殿が知っていて黙っているとは思えませんし、西住殿は人柄でも戦車道でも人を惹き付ける方なので、西住殿と戦った、あ
るいは同じチームを組んだ事のある人ならば、やはり黙ってはいないでしょう。
現状で、私にできる事は何もないかも知れませんが、確かにお母さんの言うように、存外何とかなるかも知れないであります。

そもそもにして、あのやり手の角谷会長殿が、此のまま黙って引き下がるとは到底思えないでありますからな。



「兎に角、きっと何とかなるから大丈夫よお父さん。
 其れで優花里、貴女は行かなくてもいいの?」

「へ?行くって何処に?」

「学校よ。
 最終的にどうなるかは別として、学園艦からは明日で退去になるから、大洗女子学園とは今日でお別れと言う事になるから……見ておかなく
 ても良いの?」

「其れは……」

そうでありますな。
最終的にどうなるかは分からないとは言え、最悪の事態になってしまった場合には、二度と大洗女子学園を訪れる事は出来なくなってしまう訳
ですから、見納めに行ってもいいかも知れないであります。
お母さん、お父さん、ちょっと出かけて来る。



「はい、行ってらっしゃい優花里。」

「もう暗くなってるから気をつけて行くんだぞ。」

「うん!」

言うが早いか、駆け出していたであります。
もしかしたら、私の様に学園の見納めに来てる人が居るかも知れないと言う思いが、私にそうさせたのかもであります……兎に角、私にとって大
切な思い出が沢山ある大洗女子学園の姿は、学園艦から去る前に確りと目に焼き付かせておかねばであります!








――――――








Side:みほ


最後の見納めと思って学校に来たんだけど……まさか、戦車道履修者の殆どが来てるとは思わなかったよ――優花里さんも来てるみたいだし、
後は沙織さんと華さんと麻子さんが居れば、戦車道履修者が全員揃う事になるね。



「あ、みぽりん達もやっぱり来てたんだ!」

「こんばんは、皆さん。」

「如何やら、戦車道履修者が全員集まってるようだな……」



そんな事を思ってたら、沙織さんと華さんと麻子さんも参上。
流石にこの場に集まった人達は、制服じゃなくて私服だね?みんなそれぞれ個性があって良いと思うんだけど、アインさんの服装には、若干ツッ
コミ所があると思うのは私だけかなエリカさん、小梅さん?



「いや、アレは寧ろツッコミ待ちと言われても仕方ないんじゃない?」

「黒地に青紫のラインが入ったチャイナドレス風の衣装……アレが私服って、本気かとは思います。」

「だよね。」

まぁ、すっごく似合ってるからツッコムのは無粋なのかもだけどさ。
で、この場に集まった皆は、チームごとに分かれて、自分達の戦車とお別れをしてるみたいだね……廃校になるだけじゃなくて、戦車まで取り上
げられるなんて、そんなのはあんまりだよ。
私のパンターと、エリカさんのティーガーⅡは西住家から持って来た『私物』だから接収は免れたけど、それ以外の戦車は文科省預かりになった
上で、きっと売り捌かれちゃう……戦車は戦車乗りにとっての相棒、其れを奪われるなんて、幾ら何でも辛すぎるよ。

何とかして、接収を逃れる事は出来ないかな――



――ゴォォォォォォォォォォォォォォォ!!!



って、何この轟音!?
只のジェット機の音じゃないよ此れは――もっと強力な馬力を持った、超大型の輸送飛行機のエンジンだよね?



「あーーー!
 アレは、サンダースのC-5M輸送機『スーパーギャラクシー』であります!!」

「流石、詳しいわね優花里。」



サンダースの大型輸送飛行機だったんだ。
でも、なんでそんな物が、大洗の学園艦に来るのかな?……まさか、学園艦の人達を纏めて何処かに輸送するって事ではないと思うんだけど、
此れは一体如何言う事でしょうか会長さん?



「にしし、やられっぱなしってのは好きじゃないから、先ずはせめてもの意趣返しに戦車だけでも守ろうと思ってね。
 サンダースに、パンターとティーガーⅡ以外の戦車を、私等の移動先――あぁ、この場合は転校先じゃなくて当面の生活場所ね?其処が決ま
 るまでの間、預かってもらう事にしたのさ。」

「そ、其れは良いアイディアですけど、文科省が黙ってるでしょうか?」

「其れに関しては大丈夫よみほさん――紛失届を作ったから。」

「失くしてしまった物であれば、幾ら何でも接収のしようがないからな。」



其れはまた、反則ギリギリの裏技ですねぇ?
まぁ、文科省の方から仕掛けて来た訳だから、此方も使える手段は全て使って出来る事をしなくちゃですから、この裏技も全然ありだと思います
よ――そもそもにして、正攻法でダメな場合は裏技を使うのは当然の事だと思いますから。



「OK、OK!其れは至言ねみほ!
 なんだかとんでもない事になっちゃったけど、取り敢えず、大洗の戦車はサンダースで預からせて貰うわ!!戦車すらなくなったら、本当に大
 洗はお終いになっちゃうからね。」

「ケイさん……ありがとうございます。」

「水臭い事は言いっこなしよみほ。
 其れに、デイジーの真似をする訳じゃないけど、こんな言葉を知ってる?『カウボーイは決して仲間を裏切らない。』ってね。――アメリカンな校
 風のサンダースは、絶対に仲間を裏切ったりしないわ。
 仲間の危機には力を貸すのが本物のカウボーイってモノだからね――あ、戦車道的にはカウガールかもだけど。」

「何よりも、貴女の戦車道が、此処で途切れるなんて言う事は見過ごせないのよ、みほ。」



ケイさんだけじゃなくナオミさんまで!!――よくよく見ればアリサさんも来てるみたいだね?
サンダースの隊長と副隊長が、来てくれるとは思ってなかったから、此れは驚きだよ――でも、ケイさん達になら安心して戦車を任せる事が出来
ます……皆の事をお願いできますか?



「Tah's right!!(任せなさい!!)
 其れじゃあ、戦車を積み込んで!皆、Halley up!!(急いで!!)」

「「「「「「「「I,m Manm!!」」」」」」」」」」



アハハ、相変わらずのノリの良さだけど、そのお陰で滞る事なくパンターとティーガーⅡ以外の戦車をスーパーギャラクシーに搬入出来たね。
でも、幾らサンダーズ自慢の大型輸送機とは言え、8輌もの戦車を積んだ状態で真面に飛ぶ事が出来るのかな?……戦車の重量はまちまちと
は言え、ポルシェティーガーが居るせいで最大積載重量は約173tだからね。



――ギュオォォォォォォォン……ゴォォォォォォォォ!!!



「やったぁ!!」

「凄く重そうだったけど、飛んだ!!飛び立ったぁ!!」

「此れで、戦車は守られたであります――学校を守る事は出来ませんでしたが、戦車を守る事は出来ました。」



無事にスーパーギャラクシーは飛び去ってくれた……約173tもの追加重量がありながらも、飛行が出来るって言う事は、あのスーパーギャラク
シーのエンジンの馬力は相当にチューニングされてるのかもしれないね。
でも、戦車を守る事が出来たって言うのは僥倖だよ……戦車さえ無事なら、この状況を何とかできるかも知れないからね?と言うか、会長さんも
其れを見越して戦車の紛失届を思いついたんだと思うからね。

そもそもにして、大洗が廃校になるなんて言うには絶対に認められないから、足掻けるだけ足掻かせて貰うよ――その先にどんな結末が待って
いたとしても、何もしないで手をこまねいているよりは遥かにマシだからね。

何よりも、彼方達は私にケンカを売ったに等しい事をしたんだから其れなりの覚悟は出来てるんだよね?……なら、私にケンカを売った事を後悔
すると良いよ。
隻腕の軍神は、敵対する相手には容赦しない――其れこそ、骨の髄まで粉砕するレベルだからね。……だから、彼方達の事は、西住みほの名
に掛けて必ず叩きのめす!!



――轟!!


――バガァァァァァァァァァァン!!!




「みぽりんの闘気で地面が割れた!?」

「此れが、限界を超えた怒りに到達した戦車乗りだけが到達できる境地……スーパー戦車長であります!!」



優花里さん、其れって何処の戦闘民族?
でもまぁ、其れを否定する気はないかな?……今の私なら、誰が相手になっても負ける気は無いからね……最上級にフザケタ事をしてくれたけ
ど、私達は其れには絶対に屈しない!!
どんな手を使ってでも、大洗の廃校を撤回させてあげる!!――こんな結末は、絶対に認める事は出来ないからね!!








――――――








Side:辻


可能性は可成り低いと思っていたのですが、探してみれば見つかりましたよ馳大臣!彼と、解体業者との癒着を確定する音声データと文書が!



「其れは本当か?
 よくやってくれた辻君……此れが有れば、最大の切り札は此方に有る事になるからね。――此れが世間に公表されれば、流石の彼も『知らぬ
 存ぜぬ』で通す事は出来まい。
 彼には、そろそろ本当に引退して欲しいと思っていたから、そう言う意味ではタイムリーだったよ此れは。――だが、此れを公開するのは暫し待
 つとしよう。
 そうだな、夏休みが残り10日になったら、其れを全国に一斉送付してくれ。」

「其れは……確かに、其方の方がベターでしょうね。」

世間は今、大洗女子学園の奇跡の優勝に沸いているから、其処に『大洗廃校』の劇物が飛び込んで来れば、何らかの混乱が起きるのは必至。
だからこそ、大洗廃校を知った戦車乙女達が何をするのか楽しみでならないのが本音ですね。



「楽しそうだな辻君?」

「此れは失敬。」

ですが、楽しそうだと言うのは間違いではありませんよ馳大臣……実際に私は、今この時を純粋に楽しんでいるのですから。
此度もまた、厄介事に巻き込まれた感じではあるけど、大洗女子学園の面々ならば、この状況すら跳ね返してしまうのではないかと思ってるのを
否定できません――己の戦車道を確立した戦車乙女ならば、この状況をも跳ね返す事が出来ると信じていますからね。

其れだけの可能性を考えると、大洗の廃校は無かった事になるかも知れないと言うのは希望的観測とは言い難いです。



「成程な……なら、俺は蝶野とムトちゃんに連絡を取ってみる――西住しほさんと、あの2人が一緒に押しかければ、流石にあの爺さんも耐える
 事は出来ないだろうからね。」

「其方の方は、全面的にお任せしましょう。」

だから、決してあきらめないでくれたまえよ大洗女子学園の諸君――君達が諦めてしまったら、其れこそ全てが水の泡となってしまうのだから。









 To Be Continued… 





キャラクター補足