Side:みほ


皆さん、1週間ぶりです。初めましての人は、初めまして。県立大洗女子学園戦車隊隊長の西住みほです。
初めての人でも分かるように、本編が始まる前に、『ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~』を少しおさらいしておきましょう。
私は小学生の時に事故で左腕を失いましたけど、其れでも戦車道の道を諦められなくて、車長専任免許を取得して、毎年1回戦負けの明光
大付属中学校に進学し、其処で掛け替えのない仲間達と出会い、大会でも2回優勝して、その後はお姉ちゃんが隊長を務める黒森峰女学
院の高等部に進みました。
そこで、エリカさんと小梅さんと共に遊撃隊を結成し、黒森峰の10連覇を達したんですが、決勝戦で起きた『戦車滑落事故』での対応でお婆
ちゃんと対立して、私とエリカさんと小梅さんは、大洗女子学園に転校する事になったんだ。



「今だから言うけど、貴女が家元に噛みついた時は正直背筋が凍ったわ……まぁ、アレが結果としてはよかった訳だけどね。」

「でも、大洗でも戦車道が出来て良かったですよ。」

「エリカさん、小梅さん。」

そして、エリカさんと小梅さんと一緒にやって来た大洗で、私達は戦車道を始めようと思ってたんだけど、生徒会の皆さんが選択必修科目に
戦車道を入れてくれたおかげで、新たな部を設立する必要は無くなったんだよね。
しかも、中学時代の後輩である梓ちゃんまで大洗に来てるとは思わなかったから。



「私の戦車道の師匠は西住隊長です――高校でも、一緒に戦いたいって思ったんです。」

「梓ちゃん……其れは師匠冥利に尽きるかな♪」

そんなこんなで全国大会に出場し、強敵を相手に色んな事を経験しながら、遂には決勝で黒森峰女学院を倒して、私の戦車道を世間に知ら
しめる事が出来た。
まぁ、其れもみんなの力があったからこそだけどね――えっと、こんな感じで良いのかな?



「良いんじゃない?」

「ばっちりですよみほさん。」

「えへへ、其れなら良かった♪」

其れでは、此れより本編が始まるので、最後までお楽しみください。ぱんつぁ~……ふぉ~~♪










ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer140
『エキシビションは序盤から白熱です』










No Side


戦車砲の怒号が飛び交うのは、大洗にあるゴルフクラブのコース……普段は、ゴルフを楽しむ会員で賑わっている此の場所は、今日に限って
は、戦車がフィールドに配置されていた。

そう、本日は大洗女子学園生徒会長の角谷杏が企画した『大洗がホストのエキシビション』の当日なのである。
既に試合は始まっているが、先ずは両校のオーダーを見て行く事にしよう。


大洗・知波単・継続連合

パンターG型×1(フラッグ車兼、隊長車)
・Ⅲ号戦車J型改(L型仕様)×1
・ティーガーⅡ×1
・Ⅳ号戦車D型改(H型仕様)×1
・Ⅲ号突撃砲F型改(G型仕様)×1
・クルセイダーMk.Ⅱ×1
・38(t)改(ヘッツァー仕様)×1
・ルノーR35改(R40型仕様)×1
・ソミュアS35×1
・ポルシェティーガー×1
・九七式中戦車(57mm砲搭載型)×4(内1輌は西絹代車)
・九七式中戦車(新砲塔搭載型)×3
・九五式軽戦車×1
・BT-42突撃砲×1
・T-34/84(フィンランド仕様)×1



聖グロリアーナ・プラウダ連合

・チャーチル歩兵戦車Mk.Ⅶ×1(隊長車兼フラッグ車)
・マチルダⅡ歩兵戦車Mk.Ⅲ/Ⅳ×5
・巡航戦車クルセイダーMk.Ⅲ×4
・T-34/76×3(内1輌はカチューシャ車)
・T-34/84×5
・IS-2×1
・KV-2×1



大洗・知波単・継続連合が、大洗の全車輌に知波単の戦車8輌と継続の戦車2輌を加えた構成であるのに対して、聖グロリアーナ・プラウダ
連合は、両校の戦車が半分ずつと言う構成だ。
此れは、大隊長を務めるみほとダージリンの考え方の違いからくるものだ――要するに、みほは安定性よりも連合軍だからこそ生まれる、一種
の化学反応を期待してチームを編成し、逆にダージリンは強豪同士が組む事ゆえに安定感を求めたと言う所だ、

だが、此のチーム構成は、先ずはみほのやり方に軍配が上がる結果となった。
大洗・知波単・継続連合vs聖グロリアーナ・プラウダ連合のエキシビションは、序盤はみほのペースで試合が進んで居た――真正面からの力
押しを苦手とする聖グロに対して、知波単の突破力をけしかけてこのゴルフ場に誘導し、其処からはミカに頼んで聖グロ・プラウダ連合のフラッ
グ車をバンカーに閉じ込める事に成功していたのだから。
つまり、現状では大洗連合が圧倒的に有利なのだが……


「あら、茶柱が立ったわ。
 こんな言葉を知っている?『茶柱が立った日には、素敵な客人が訪れて来る』。」

「もう来ているみたいですよ……此の来客が素敵かどうかは分かりませんが。」


フラッグ車であるチャーチルの車長であり、聖グロリアーナ・プラウダ連合の大隊長であるダージリンは余裕綽々――決して楽観している訳では
無く、攻め込まれている、この状況ですら楽しんでいるようだ。


「ふふ、此れを素敵な客人と言わずに、何が素敵な客人かしらペコ?
 単純な戦車の性能で言うのであれば知波単も継続も、我が聖グロリアーナや、今日の友であるプラウダには遠く及ばないモノの、その2校を
 纏め上げているのが、みほさん率いる大洗であると言う事を忘れてはいけないわよ。
 戦車の性能差なんて言うモノは、みほさんの前では何の意味もなさないのよ……黒森峰が保有する、最強の超重戦車『マウス』すらも、みほ
 さん率いる大洗は撃破してしまったのだから。」

「……そう言えば、副隊長のⅢ号も性能差を引っ繰り返して、ティーガーⅠ、ティーガーⅡ、エレファント、相討ちではありましたがヤークトティーガ
 ーと、黒森峰が誇る重戦車を4輌も撃破しているんですよね。
 みほさんの一番弟子と言うのは伊達ではないと言う事ですね……彼女も要注意です。」

「そうね。
 みほさんも凄いけれど、副隊長の澤さんもまた凄い戦車乗りであるのは間違いないわ――でも、あれで中学から始めたと言うのだから、澤さ
 んもまた天才であるのは間違いないわ。
 みほさんが『隻腕の軍神』ならば、澤さんは『軍神を継ぐ者』と言った所かしらね。」


ダージリンがこの状況を楽しんでいたのは、相手がみほ率いる連合軍だったからだ。
知波単も継続も、単体での戦力で言えば聖グロリアーナにもプラウダにも遠く及ばない(継続はプラウダから鹵獲した戦車が有るが、レギュレ
ーション違反にならない様『フィンランド仕様』になっている為、オリジナルと比べると性能が落ちる)が、その2校に大洗が加わって、大隊長がみ
ほだと言うのならば話は別――全国大会の2回戦以外は不利な戦いを強いられながら、其れを跳ね返して全国制覇を成し遂げたみほが率
いる連合軍は、戦車のカタログスペック以上の力を発揮して、自分達を追い詰めていたのだから。


「馬鹿な、私のデータでは、火力では此方が15%、防御力では20%有利な筈なのに……!」

「ふふ、みほさんの前ではデータの予測値などまるでアテにならないわよアッサム。」


そんな状況で、己のデータを覆された事に驚くアッサムだが、データは絶対ではないのだから、この現状はデータでは予測出来なかったのは当
然と言えば当然だ――そもそもにして、みほ相手にデータなんて言うモノはマッタク持って役に立たないのだから。








――――――








一方で、現在有利な状況立っている大洗・知波単・継続連合だが、決して攻め急ぐ事は無かった――此れは当然みほの判断だ。
有利な状況に浮かれて攻め急いでしまったら、必ずどこかでミスが出て勝利を逃してしまうと言う事を知っているから……だからこそ、この場面
では、じっくりと攻めながら包囲網を狭めて行くのが上策なのだ。
みほにしては珍しい手堅い戦術だが、みほとて常に奇策や搦め手を使う訳では無い――勝利が目前に迫っている状況であるのならば、其れ
をより確実にする為に手堅い戦術を選ぶ事も出来るのであり、その柔軟さこそがみほの武器なのだ。


「序盤の知波単を使った作戦が上手く嵌ったわねみほ?
 プラウダの部隊も分断してあるから、聖グロの救援に来るにしてももう少し時間が掛かるでしょうから手堅く行くのが良策……だけど、包囲網
 が完全に出来る前に決めちゃっても良いのよね?」

「エリカさん、もう少し分かり易く。」

「みほ、包囲網を狭めろとの事だったけど、此のまま倒してしまっても構わないのだろう?」

「アーチャー乙。」


そして、大隊長と大洗の狂犬は何かやってた……全国大会と違い『必ず勝たなくてはならない試合』ではない為、可成りリラックスしている様子
が窺える。
端から見れば、阿呆極まりないやり取りを試合中にしているのだから、この軍神と狂犬ノリノリである。
だが、ノリノリであっても不真面目ではなく、聖グロリアーナ・プラウダ連合(以降、聖グロ・プラウダ連合と表記)のフラッグ車を仕留める為に包
囲の輪を縮め、少しずつだが確実にプレッシャーを掛けて行く――如何にチャーチルが堅牢な戦車であるとは言え、近距離からパンターとティ
ーガーⅡの砲撃を喰らったら一溜りもない訳だから、此のプレッシャーの掛け方はダージリンにとっても嫌なモノであるだろう。

そしてもう一つ、この場で大洗・知波単・継続連合(以降、大洗連合と表記)にとって有利なのは、この場に居る聖グロの戦車では大洗連合の
フラッグ車であるパンターは至近距離からの砲撃を当てない限りは撃破する事が出来ないと言う事だ。
要するに、大洗連合の最強2輌は何処から撃っても聖グロ・プラウダ連合のフラッグ車を撃破出来るが、聖グロ・プラウダ連合は大洗連合のフ
ラッグ車を撃破するには、最低でもプラウダ保有のT-34/84が必要なのだから、この時点で可成り差が有るだろう。

尤も、戦車の総合性能で言えば聖グロ・プラウダ連合の方が上だろう……大洗連合は、継続保有の戦車は兎も角、知波単保有の日本製戦
車はハッキリ言って超低性能と言わざるを得ないのだから。
其れでも、状況を有利に持って行ってしまう辺り、みほの隊長としての能力の高さが窺えるだろう。無論、知波単の隊長である絹代と、継続の
隊長であるミカの働きも無視はできないが。


「ミカさん、プラウダの方は如何なっていますか?」

『ふふ、良い感じに分断できたけれど、矢張り戦車の性能差があるせいで抑えきるのは難しいかな?
 撃破はされなくとも、其方に向かってしまうのは確実だと思うよ――と言うか、プラウダの隊長が『戦車を返せ』だの何だのと、やたらと
 私達に敵対心を顕わにしてるからね?』


「継続はプラウダから戦車鹵獲しまくってますからねぇ……」

『撃破した相手の戦車を鹵獲するのはルール違反じゃないんだけれどねぇ?……まぁ、彼女達の戦車の幾つかは、私達の所に来る運
 命だったんじゃないかな。』


「相変わらずですねぇミカさん。
 ですが、そう言う事なら分かりました――プラウダの援軍が到着する前にフラッグ車を撃破します。」

『なら、此方もプラウダが其方に向かうのを出来るだけ遅らせるように頑張ってみるよ。
 しかし、此の試合には参加してよかったよみほさん――君の指揮下で戦うと言うのは、こんなにも心地いいモノだったんだね?……益
 々戦車が好きになってしまいそうだ。
 其れは兎も角、君に限っては有り得ないだろうが勝負を焦らない様にね?』


「分かっていますよミカさん。」


此処で別動隊のミカと連絡を取り、状況を確認する。
余談だが、この別動隊には大洗の副隊長である梓もいるのだが、みほは敢えて梓を別動隊の指揮官にはせずに、ミカを指揮官にしていたの
だ。此れは、ミカの実力を考慮しての事でもあると同時に、梓のさらなる成長を望みミカの戦い方を学ばせる意図があった。

其れは兎も角として、状況を確認したみほは、プラウダの部隊が此方に到着するまでの間が勝負と考え、一気に作戦を新たに構築して行く。
包囲の仕方、フラッグ車の護衛の倒し方、フラッグ車を確実に撃破する方法――それらを、頭の中に叩き込んだ何百と言う戦術を組み合わせ
て作り上げていく。
世界広しと言えど、みほにしか出来ない方法で、勝利へのロードを作り上げる……そして、其れは成った。


「此処で一気に攻め込むよ――包囲網を狭めるスピードを上げる。
 行くよ、Panzer Vor!!」

「「「Jawohl!!」」」


自ら構築した勝利への道。其れを成す為に、みほが号令をかけると同時に、ティーガーⅡ、Ⅳ号、ヘッツァーが速度を上げる。
逆にみほのパンターは停車――フラッグ車ゆえに、万が一にも撃破される危険性を減らす為に殿を務める事にしたのだ……が、この場に居る
知波単の面々はマッタク持って動こうとはしない。
一見すると、命令を無視しているようにも見えるが……


「西住隊長、『ぱんつぁーふぉー』とは、一体如何言う意味なのでしょうか?」

「えっと、『戦車前進』って言う意味だよ西さん。」

「了解であります!戦車前進!!」


実はただ単純に、みほの号令の意味が分かってないだけだった。
その証拠に、絹代が改めて号令を掛けたら、知波単の面々は次々に『戦車前進』を口にして進軍を始めたのだから――如何やら、連合軍を
組んだの場合には事前に号令の意味を伝えておく必要があるらしい。

だが、其れでも包囲網は着々と聖グロ・プラウダ連合へとプレッシャーをかけて行く……ただ包囲網を狭めるだけでなく、攻撃もしているのだか
ら、圧力はハンパないだろう。
このまま順調に行けばフラッグ車を撃破出来る――みほがそう考えた時、みほですら予想して居なかった事態が起きた。



――ドゴォォォォォォン!!

――キュポン!



『マチルダⅡ、走行不能。』


何と、知波単保有の九七式が、聖グロのマチルダを撃破した――撃破してしまったのだ。
此れは当然ながら、完全なラッキーパンチの類であり、普通ならば日本戦車がイギリス戦車を正面から撃破する等と言う事は有り得ないのだ
が、偶々マチルダⅡの最大のウィークポイントにヘッツァーと九七式の砲撃が同時に炸裂し、撃破に至ったのだ。
最大限にぶっちゃけて言うなら、マチルダⅡを撃破したのはヘッツァーと言う事になるのだが、九七式に搭乗するクルーは自分達が聖グロの戦
車を撃破したと思うだろう。


「おぉ!聖グロの戦車を撃破したぞ!!
 隊長、今こそ突撃の時では?否、突撃以外に何が有りましょうか!!」

「え?」

「突撃こそが、我が知波単の誇り!!いざ、全力で突撃!!」

「あ、オイ!ちょっと待て!!」

「行くわよぉ!おんどりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「東雲ぇ!!!!」


その勢いに乗って、絹代が止めるのも聞かずに、知波単の面々は全力吶喊!!魂の突撃を敢行するが――


――ドガァァァァァン!!


――キュポン!


『九七式、走行不能。』


そんな単純な突撃が通じる筈もなく、敢え無く白旗判定に――そして、其れは同時にみほが構築した勝利への道が瓦解したと言う事でもある
だろう……みほの構築した戦術では、チャーチルの逃げ場を完全になくした上でティーガーⅡで決める心算だったのだが、知波単の九七式が
複数撃破されてしまった事で、包囲網に穴が出来てしまったのだから。


「熱々のスコーンは、勝手に割れてくれた様ね……あとは、美味しく頂くとしましょうか。」


そして、此れが好機とばかりにチャーチルのダージリンは笑みを浮かべ、此れまで身を隠していたバンカーからグリーンに上がり、大洗連合の前
にその姿を現す。
その姿は、逆境を跳ね返した騎士の如く雄々しい……防戦一方だった英国ナイトが、攻勢に転じた瞬間であった。


「ふふ、本番は此れからですわよみほさん?」

「――!此れは、白い手袋……上等、受けて立つよダージリンさん!」


そして、珍しくキューポラから身を乗り出したダージリンは、みほに向かって白い手袋を投げつける――イギリスの古式ゆかしい決闘の申し込み
をして見せたのだ。
其れを受けたみほもまた、獲物を狙う肉食獣を思わせる笑みを浮かべ、其れに応える。――否、みほだけではない。


「私達に決闘を申し込むとは良い度胸じゃない?――受けてやるわよダージリン!」

「決闘を申し込んだ以上、簡単に撃破されないで下さいよ?」


大洗の狂犬の異名を持つエリカは獰猛な犬狼を思わせる獰猛な笑みを浮かべ、慧眼の隼の二つ名を持つ小梅は獲物を狙う猛禽を思わせる
凄惨な笑みを浮かべていたのだ。
嘗て、黒森峰の遊撃隊で其の力を最大に発揮した3人が、ここでその力を解放したのである――更に!!


「此処からが本番……全力で行くよ!ハァァァァァァァァ!!!」


――ドガァァァァァァァァン!!!


此処でみほが闘気を全開にしての軍神招来!!
知波単が、絹代の制止も聞かずに行った間抜けな突撃のせいで、大洗連合絶対有利だった状況は瓦解してしまったが、同時に此のエキシビ
ションは此処からが本番なのだろう。


「軍神招来……そう来なくては面白くありませんわ……行きますわよみほさん!!」

「受けて立ちますダージリンさん……私の戦車道、受け止めて貰いますよ?」


動のみほと、静のダージリン――異なる2つの闘気がぶつかり合ってスパークしている……そう錯覚させる程の闘気のぶつかり合いが、この場
では発生していた。








――――――








Side:ミカ


ふふふ、こんな事を言うのも如何かと思うけれど、こんなに戦車道を楽しいと思ったのは初めてかも知れないね――みほさんと戦った時も凄く楽
しかったけれど、みほさんと同じチームで戦うのが此れほど楽しいとは予想外だったかな。
そして、私の予想通り、今日の私は何時も以上に力を発揮する事が出来ている……みほさんによって、私の潜在能力が引き出されている感じ
がするよ。

私で此れなのだから、愛里寿がみほさんと組んだその日には凄い事になりそうだね。



「ミカさん、ゴルフクラブでの包囲網は瓦解したみたいです……隊長は一時撤退して、市街地戦に持ち込んで立て直すみたいなんですが……」

「みほさんが仕損じるとは意外だね?……此れは、知波単の一部が独断専行をしたかな?
 でも、市街地戦に持ち込むって言うのなら、プラウダの部隊を此方に引きつけなければだ――此のままでは、みほさん達はプラウダの部隊と
 鉢合わせる事になるからね。
 だから、プラウダの部隊を更に分断して、みほさん達の逃げ道を確保する……出来るかい、澤さん?」

「出来るかどうかは問題じゃありません……問題なのは、やるかやらないかです!!」

「ふ、そう来たか。
 如何やら、そよ風と思っていた子が、暴風へと成長したみたいだ……だが、やるかやらないかと言うのは至言だ――ならば、バッチリとやって
 やるだけだね。」

市街地戦はみほさんの十八番だから、ゴルフクラブでの作戦が瓦解したのは、ある意味で良かったかもしれないね?
隻腕の軍神の真骨頂とも言える市街地戦をしないで試合が終わるなんて言うのは、味気ない事この上ないし、観客席にいる黒い人が認める
とは思えないからね。

此処からがみほさんの戦車道の本領発揮だ――アキ、ミッコ……適当に本気を出すとしよう。



「其処で適当って言うのがミカだよね。」

「普通は、全力で本気を出せって言う所だよな。」

「其処には、突っ込まないでいてくれると助かるかなミッコ。」

此れが私のキャラクターな訳だしね……今やすっかり地になってしまったけどさ。
まぁ、そんなのは如何でも良い事だけど、市街地戦となればみほさんは無敵だから、聖グロとプラウダの連合軍を相手に如何戦うか、楽しみで
仕方ない感じだ。
だが、君が負けるビジョンだけは描く事が出来ないよみほさん――まぁ、当然かな……君は誰が相手であっても『負けない』戦車乗りだからね。

だから、此の試合は絶対に勝とうじゃないか――と言うか、勝とうみほさん。此の試合に勝つ事が出来れば、大洗には『西住みほ』と言う天下
無敵の軍神が居ると言う事を、世に知らしめる事が出来るのだからね。
さぁ、行くとしようか。











 To Be Continued… 





キャラクター補足