Side:みほ


渡河を無事に終えて、市街地に入った私達を待っていたのは、史上最強の攻撃力と防御力を備えた、カタログスペックで言うなら間違いなく大
戦期最強の超重戦車『マウス』。
マウスの極厚装甲は、大洗の戦車じゃ、其れこそティーガーⅡやポルシェティーガーの主砲でも貫くのは不可能なレベルだって言うのに、マウ
スの主砲なら大洗の戦車を簡単に撃破する事が出来るって言うんだから、分が悪い所の騒ぎじゃないかな此れは。

だけど、マウスを残しておいたら其れこそ大洗の勝率は0になるかも知れないから、確実に此処で撃破しないとだよね。
でも、本当にマウスを持ち出してくるなんて……並の戦車乗りだったら、圧倒的な攻守力に戦意を削がれちゃう処だよ。ルールで使用が許可
されてる戦車の中で、真っ向からマウスを撃破出来るのは、同じマウスかヤークトティーガー位だからね。



「まったくマウスまで持ち出してくるとか、幾ら何でも過剰戦力じゃないの黒森峰は――無名の大洗を相手にするにしてはやり過ぎよ。」

「まぁ、其れだけ黒森峰はみほさんを脅威に感じてるのかも知れません――まぁ、マウスを投入した所でみほさんが如何にかなるとも思えませ
 んけど。」

「赤星先輩、みほさんは誰が相手でも絶対に怯みませんよ。」

「其れはもう、存じ上げていますよ澤さん。」



だけど、最強レベルの兵器が出て来たとしても、私達のチームは、大洗は怯まない!――あらゆる手段を持ってして、狩らせて貰うよマウス。
黒森峰の本隊が市街地に入ってくるまでには必ず撃破して見せる。
マウスは、必ず此処で仕留めるよ!!――幸いにして、此処は市街地だから、私の切れる手札は無限にあるって言っても過言じゃないから!



「確かに、市街地戦での西住隊長は無双ですからね。――そのノウハウを全開させれば、マウスとて恐れる相手ではないって事ですね。」

「そう言う事だよ。」

さて、その巨躯は迫力があるけど、決勝戦の舞台には邪魔になるから、早々に退場して貰うとしようかな。









ガールズ&パンツァー~隻腕の軍神~ Panzer134
『超モンスター重戦車マウスです!』










No Side


無事に渡河した大洗だが、進んだ先の市街地には、トンデモない相手が獲物を求めて佇んでいた――そう、最強の超重戦車と言われる『マウ
ス』だ。
エンジンが弱いせいで極めて鈍足だが、128mmの主砲と、200mmオーバーの装甲を備えているなら『動く砲台』としても優秀と言えるだろう。
足が遅いと言う唯一の弱点があるモノの、マウスは黒森峰にとって『虎の子』とも言える戦車だ――故にシークレット登録し、別行動を執らせて
市街地に潜ませていたのだ。
この辺りはまほが『みほは必ず市街地戦を仕掛けてくる』と予想しからだろう。

大洗最大のティーガーⅡが小さく見えてしまう程の巨躯は、見る者を圧倒する迫力があり、この最強重戦車の登場には観客席もざわつきを見
せている。


「マウスだと?グァッデーム!!オイ天山、お前も何か言ってやれ!!」

「冗談じゃねぇぞ、何とかしろよオイ!!」


……ごく一部は、過剰戦力とも言える黒森峰の編成に、更に怒りを募らせていたが。

だがしかし、大洗の面々は怯まない。怯まない所か――


――ダン!!


みほはキューポラの上に右足を踏み載せ、立てた膝に肘を乗せ鋭い眼光でマウスを睨み付け、梓もまたキューポラの上に立ちパンツァージャ
ケットの上着を右手で持って肩に引っ掛けている。


「乙女と戦車の二つの道が、捩じって交わる戦車道!!」

「仲間を信じて強敵を砕く!硝煙の中で勝利を掴む!!」

私を!

私達を!!


「「誰だと思っていやがる!!!」」


突然のみほと梓の啖呵切り!!
其れを合図に始まる大洗の部隊の一斉攻撃!!微妙に発射間隔をずらして行われる攻撃は、稜線での攻防で見せた戦車砲でのマシンガン
攻撃だ。
並の戦車なら、其れこそ重戦車であっても速攻で撃破されてしまうであろう波状攻撃だが、しかしマウスには全く通じない――大洗の攻撃力
トップ2であるティーガーⅡの超長砲身88mmと、ポルシェティーガーの長砲身88mmですらマウスの240mmにも及ぶ正面装甲は貫けない。


――ドガン!!

――キュポン!!



『大洗女子学園、ルノーR35走行不能。』


逆にマウスの一撃はルノーR35改(R40仕様)を軽々と撃破し、其のまま続けてⅢ突をも撃破してしまう――此処で2輌失ったと言うのは大洗に
とっては痛手だろうと思われるが、みほとて無傷でマウスを撃破出来るとは思っていない。
寧ろ、最悪の場合はマウス撃破時にフラッグ車以外に、ティーガーⅡ、ポルシェティーガー、何れかの戦車1輌の計4輌が残っていれば良いと
すら考えていたのだから、2輌撃破される事位は織り込み済みなのだ。


「はっはー!思い知ったか!!」


だが、此処で状況を優位と見たのか、マウスに随伴していたⅢ号がマウスの前に出てくる。――大方、マウスと共に居る状況ならば一気に押
し切れると判断し、戦果を上げるべく出て来たのだろうが、其れは悪手だ。

考えても見て欲しい、ルノーとⅢ突は撃破されたとは言え大洗の部隊はマシンガンの如き攻撃を行っていたのだ――其処に不用意に飛び込
んだら果たしてどうなるかは想像に難くないのではないだろうか。


「飛んで火に入る夏の虫。馬鹿は死んでも治らない。華さん……やっちゃって下さい。

「了解ですみほさん♪」


みほの号令の下に放たれたパンターの砲弾が、不用意に出て来たⅢ号を粉砕、玉砕、大喝采!!同時に、このⅢ号の撃破は黒森峰の機動
力を狩りつくしたのと同じだった。
このⅢ号が撃破された事で、黒森峰に残っている機動力のある戦車は直下のヤークトパンターのみとなったのだから。
そのヤークトパンターも直下が乗っている以上、何処かで履帯が切れる事が略確定しているので大した脅威ではない――軍神の加護がない
と、直下はその高い能力を生かし切れないのだから。


だが、Ⅲ号を撃破したとは言えマウスは未だ健在なのだから状況が好転したとは言い難いだろう。


「カモさんチーム、カバさんチーム、大丈夫?」

『こちらカモ、そど子以下3名無事よ!!』

『こちらカバ。此方も全員無事だ――尤も煤塗れだけどね。……隊長、後は頼んだ。』


「うん、任せておいて。」


だが、安全確認をした仲間からの声を聞いてみほの闘気は更に猛る――其れこそ、其の背後に毘沙門天を幻視してしまう位には。
そしてその瞬間、みほの中で何かが弾ける感覚が起ると同時に、瞳孔が極端に収縮した『超集中状態』へと移行する――其れはみほだけで
なく、エリカと小梅と梓もだ。
みほ達は既にこの力に覚醒していたが、マウスと言う難敵を前にして梓もまた覚醒を果たしたようだ。


「隊長、此処はマウスを中心地に!!」

「私も其れが良いと思うわ――欲を言うなら、道中で電柱を倒すとかして、其れでの撃破も狙い所よね?
 ある程度の搦め手を使わないとマウスを撃破するのは容易じゃないでしょうからね――さて、最強の巨大ネズミをどうやって仕留めましょうか
 ね、みほ?」

「中心街……そのもっとも開けた部分までマウスを誘導する。
 機動力に関しては此方の方が圧倒的に上だから、砲撃を続けながら後退!ジグザグに走って、マウスに的を絞らせないで!!」

「了解ですみほさん!」


同時に砲撃を適度に続けながら後退を開始し、マウスを目的地まで誘導する。
そして、マウスには後退を始めた大洗を見逃す等と言う選択肢は存在しない――圧倒的な力の差と言うモノを見せつける為に投入されたモン
スター重戦車の使命は、あくまでも大洗の部隊を全滅させる事なのだから。

その巨体故に足は遅いモノの、主砲の射程は2000m超なので、多少大洗の部隊に距離を開けられた所で、撃破に至る一撃を放つ事は可能
なのだ。
尤も、数の差がある上にジグザグに走っている大洗が相手では、そう簡単に撃破出来るモノでもないだろうが。


一方後退を始めた大洗は、絶妙なフォーメーションをもってマウスの攻撃を回避していた。
あくまでも牽制攻撃を行うのは最後尾に位置する3輌のみに限定し、更にその最後尾を入れ替える事で攻撃の間隔をずらし、入れ替えの際の
不規則な動きでマウスに的を絞らせない。
当然、フラッグ車であるパンターだけは最後尾に回る事なく先頭を走っているのだが。

だが、此の後退である意味もっとも凄い事をやってのけているのはカメチームのヘッツァーだろう。
回転砲塔を持たないヘッツァーは、本来ならばパンターと共に先頭を走っているべきなのだが、何とカメチームは後ろ向きで走りながら攻撃を
行い、尚且つ皆と同じ速度で後退すると言うスゴ技をやってのけていたのだ。
普通なら先ず出来る事ではないが、操縦士の柚子は自身のスマホをスピーカーモードにし、戦闘を行くパンターのみほからナビして貰う事で、
後が見えないながらも略完璧な操縦をしていたのだ。

しかし、この状態では他の戦車との入れ替わりは無理なので、ヘッツァーだけは最後尾を交代せずに、絶えず攻撃を続けている。――続けて
いるのだが、ヘッツァーの装填士と砲手って誰だったっけ?


「装填完了!」

「はいよー♪」


言うまでもなく装填士は桃で、砲手は会長こと杏だ。
桃はマウスと言う規格外のモンスター重戦車の登場にすっかり動転し、『1秒でも早く倒さねば』と言う思いから凄まじい速度で次弾装填を繰り
返し、杏もまた装填された瞬間に撃ち、的確にマウスに命中させていく。
並の重戦車が相手だったら此れで撃破も出来ただろうが、マウスが相手ではヘッツァーの75mm砲は決定打にはなり得ないのが現実。最大
限ぶっちゃけて言うなら、ヘッツァーの攻撃は無駄弾消費にも等しいのである。


「よっしゃ命中!
 にしても堅いねマウスは。かーしま、次弾装填。」

「か、会長!」

「如何したかーしま?」

「砲弾がなくなりました~~~!!」(泣き)

「なんだってーーー!?」


そして、ヘッツァーは此処で弾切れに!!
此れから中心街でマウスを迎え撃とうと言う場面でのまさかの大失態!!中心街でのみほの策が発動する前に撃破されるのは仕方ないにし
ても、弾切れで戦う事が出来なくなる等冗談にもならない。
桃の装填速度は大洗一と言えるレベルだが、それが今回は仇になったと言う形だろう。……無論、装填された端からぶっ放していた杏にも責
任はあるのだが。


『あはは……ゴメン西住ちゃん、弾切れになっちゃった♪』

「……何してるんですか会長さん。」


『弾切れ』の報告を聞いたみほは、これでもかと言う位の呆れ顔をして溜め息を吐くが、其れもまた仕方ないだろう――みほとしては、マウス撃
破後は、ヘッツァーにⅢ突に変わっての待ち伏せ作戦をお願いしようと思っていたのだから。
だがしかし、起きてしまった事は仕方ない。責めるのは簡単だが、其れをしたって事態は何も解決しないのだから、この状態で如何するかを考
える方が重要だと言えるだろう。


『お詫びと言っちゃなんだけど、弾切れになっちまったアタシ等に出来る事なら何でも言ってよ?
 弾切れなんて馬鹿な事をやっちゃったんだから、多少の無茶は覚悟の上――土下座しろってんならアタシがするし、脱げと言うなら小山が
 脱ぐし、クソを食えと言うならかーしまが食うから。』

『会長!?』

『か、かいちょ~~~!?』


「其れって、結局自分が物理的にダメージ喰らう事は絶対にしないって言う事ですよね……?」


そんな中で杏から提案された内容に、みほは突っ込みを入れつつも、『多少の無茶は覚悟の上』だと言うのを聞き、即座に新たな作戦を構築
して行く。
弾切れになった以上、ヘッツァーを戦力として考える事は出来ない――Ⅳ号D型改とパンターの砲弾も75mmだが、規格が違うので、譲渡して
代用するのは不可能。
ならば如何するか……


「会長さん、大洗とカメチームを天秤にかけた場合、会長さんは何方を取りますか?」

『んなモン決まってるじゃん……大洗だよ。
 大洗を守る為なら、アタシはどんな汚れ役でも引き受けるし、捨て駒にもなる――マウス撃破の代償がアタシ等で済むなら、迷わないで其
 の一手を選べ西住ちゃん!
 此れは勝利の為なんて言う小さな犠牲じゃない。大洗の学園艦を、あそこに暮らす人達を守る為の重要なコストだよ!』


「会長さん……ごめんなさい。そして、ありがとうございます。」


己の考えに戸惑ったみほだったが、杏自らの後押しを受け、考え付いた策の決行を決断し大洗の部隊はマウスを撃破する為の狩場である市
街地中心街に到着したのだった。








――――――








大洗に大幅に遅れる形で中心街に到着したマウスだが、其処に大洗の戦車は1輌たりとて視界に入らない――普通に考えるなら、何処かに
潜んでいるのだろうが、マウスの車長である『根津美野里』は、みほの凄さを知っているが故にただ隠れているだけではないと考えていた。


「みほめ、何処に潜んでる?」


目標は全車殲滅だが、そうでなくともフラッグ車を撃破すればそれで片が付くので、美野里もまたフラッグ車であるパンターを最優先に探してい
るのだ。
だが――


「何処を見てるんですか根津さん?」

「みほを警戒するのはよく分かるけど、私達の事を疎かにするってのは頂けないわね?」

「逸見!赤星!!!」


その隙を突く形でライガーチームとオオワシチームがマウスを両サイドから強襲し、車体を幅寄せして肉薄して回転砲塔の動きを略封殺!!
両脇を固められたマウスの砲塔は最低限の回転しか出来なくなり、略真正面からの攻撃しか出来なくなってしまった――其れだけなら、未だ
何とかなるのだが……


「ネズミの最大の武器は牙!!」

「なら、先ずは其れを砕くのみです!!」


――バガン!!

――ズドン!!



「な!マウスの主砲が!!」


此処で、両脇を固めたティーガーⅡとⅣ号戦車D型改が主砲を放って、マウスの128mm砲を撃滅!!如何に強力な主砲であるとは言え、其
の主砲其の物が破壊されたのではマウスとて堪ったモノではない。
唯一の救いがあるとするなら、主砲を潰される前に放った一撃が、ヘッツァーを引っ繰り返したと言う事だろう――撃破認定のアナウンスが流
れてないので白旗は上がって無いが事実上の戦闘不能なのだから。

だが、白旗判定になっていないのならば戦車を動かす事は出来る。


「今だよ、西住ちゃん!澤ちゃん!!小山、全力でアクセル踏み込め!!」

「了解です!!」


逆さまになったヘッツァーは履帯を高速で回転させる。
そして、そのヘッツァーに向かって梓のⅢ号と、みほのパンターが縦列走行で向かって行き、ヘッツァーに乗り上げるとそのまま加速して大ジャ
ンプ!!
そしてそのままマウスにダイビング・パンツァー・プレス!!
まずは梓のⅢ号が既に使用不能となったマウスの砲身を根元から叩き折り、続いてみほのパンターが回転砲塔を押し潰してターンエンド。


――キュポン!


『黒森峰女学院、マウス行動不能!』


如何にマウスと言えども、落下速度も加わった中戦車2輌のダイレクトアタックに耐える事は出来ずに白旗判定に――最大のネズミであっても
女豹の狡猾さと虎の勇猛さを併せ持つ軍神が率いる大洗には通じなかったようだ。


――キュポン!


『大洗女子学園、ヘッツァー行動不能。』


だが、此処でヘッツァーも白旗判定に。
マウスの砲撃で引っ繰り返された上に、自らをカタパルトとしてヘッツァーよりも5t以上重いⅢ号と、3倍近く重いパンターを『射出』した事で車
体が限界を迎え、白旗判定になってしまったのだ。


「会長さん……」

「なぁに、此れもアタシ等の役目だから気にすんな!――其れに、マウスを撃破したからと言って終わりじゃないんだ……アタシ等は此処でリタ
 イアだけど、アタシ達の思いは君に託すよ西住ちゃん!」

「会長さん……はい、確かに受け取りました!!」

「任せなさい会長さん。アンタ達の犠牲、無駄にはしないわ。」


白旗判定になったカメチームだが、其れもまた『己の役割』だと言い、みほに全てを託す――否、みほだけでなく、生き残った全てのチームが
カメチームの遺志を(死んではいないが)受け継ぐ。


「此れより最後の作戦を開始します!Jedes Mitglied verbreitet sich!!(各員散開!!)」

「「「「「Jawohl.(了解。)」」」」」


黒森峰の本隊が市街地に到着するよりも前にマウスを撃破した大洗の部隊は、此れから市街地に入って来るであろう黒森峰の部隊を迎え撃
つ為に散開し、その時に備える。
そして、この瞬間、市街地は黒森峰を喰らう為の狩場となったと言っても過言ではなかった。


残存車輌

大洗:6

黒森峰:14








――――――








Side:まほ


みほ達ならばマウスをぶつけた所で如何にかしてしまうんではないかと思っていたが、まさか本当に撃破してしまうとは驚きを隠せないな?
同じ戦力で、私に同じ事をしろと言われたら多分無理だ……西住流の型に収まらないみほと、そのみほの戦い方を受け継いだ澤、そしてみほ
のライバルにして盟友であるエリカと小梅、そして戦車道の常識に囚われない大洗だったからこそ、機動力以外は全てが劣る戦力であっても
マウスを撃破出来たのだろうな。

しかも、此処までの撃破数を見れば、大洗が6輌なのに対して、此方は相討ちを含めて4輌と言う体たらく……絶対王者が聞いて呆れるが、此
の試合を観戦している人達には、お祖母様の言う西住流が如何に脆いかと言う事を印象付ける事は出来たか。

ともあれ、この市街地が決勝戦のファイナルステージになるのは間違いないだろうな――みほが、己が最も得意とする市街地戦で仕掛けて来
ないと言う事は有り得ないからな。



「まほ……この市街地戦は……」

「みなまで言うな凛、分かっているさ。」

最善の策を言うならば、私達は市街地の外でみほが痺れを切らして出てくるまで待つべきだろうさ。――だが、みほは中々に忍耐強いから折
れるのを待つのは略不可能だろうな。
ならば、此方から攻め入るしかあるまい?



「其れは、確かにそうだけど……はぁ、みほ相手に市街地戦とか、本気で悪夢だわ此れ。」

「心中察するぞ凛。」

「まほ、貴女の妹、本気で恐ろしいわ。」



あぁ、私だって恐ろしいよ――みほの戦い方は何時だって予想が付かないから、西住流の『王道』がマッタクもって通用しないのだからな。
だから、市街地戦でみほが何か仕掛けてくる事は予想出来ても、具体的にどんな事を仕掛けてくるのかは予想もつかん……が、逆に其れを
楽しみにしている私が居るのも事実だ。

黒森峰の隊長&お祖母様の西住流の体現者としてはみほは何とも戦いたくない相手だが、西住まほとしてはこれ程本気で戦いたいと思った
相手は安斎と、お前以来だ凛。

武神が軍神に何処まで喰らいつけるのか……私の死力を尽くして挑ませて貰うぞみほ。そして、澤、エリカ、小梅!!
私を、私達を、黒森峰を超えて見せろ――!!
















 To Be Continued… 





キャラクター補足


・根津美野里

マウスの車長を務める黒森峰機甲科の2年生。
まったくの偶然だが、名前を『ネズミ乗り』と読める事から、マウスの車長はある意味でピッタリなのかも知れない。
黒森峰時代のみほ、エリカ、小梅とは其れなりに交友があり、親友ではないにしろ『ダチ公』とは言えるだけの間柄であった。